火山についてのQ&A集

Question #158
Q 火山のメカニズムを教えて

(11/17/98)

米山たかひと:中学生:14

A 質問があまりに漠然としすぎています. 火山のどんなメカニズムをおたずねになりたいのでしょうか?再度質問下さい. また,質問するに至った理由や動機なども必ずお書き下さい. (11/17/98)

ホームページ管理者


Question #156
Q 私は岩手県の盛岡市に住んでいるんですけど、 岩手山が噴火すると、どこまで被害が及ぶんですか? また、どんな被害を受けるんですか? (11/8/98)

hina:中学生:13

A 岩手山火山災害対策検討委員会が岩手山火山防災マップとハンドブックを10 月初めに出しました.これには噴火によっておこる災害の種類や範囲につい て分かりやすく示されています.恐らく盛岡市にお住まいであれば,御自宅 や学校にも配付されていると思います.これを是非参考にして下さい.ホー ムページでは防災マップを以下で見ることができます.

http://www.iwate-np.co.jp/news/hzmap1L.jpg

また,過去におきた山崩れの分布図も以下で参考にすることができます.

http://www.iwate-np.co.jp/news/Gansetsu.jpg (11/10/98)

中田節也(東大・地震研)


Question #154
Q 先日、北海道の駒ケ岳が噴火いたしました。TVで放映中、北海道には15の活火山が有ると報じておりました。 そこで妻と数えたのですが、15の火山名が思い浮かびません。疑問が消えません。恐縮ですがお教えください。 (11/3/98)

masasi tumura:自営業:50

A 知床硫黄山,羅臼岳,摩周,アトサヌプリ,雌阿寒岳,丸山,大雪山,十勝岳,樽前山, 恵庭岳,倶多楽,有珠山,北海道駒ヶ岳,恵山,渡島大島の15火山です. (11/5/98)

中田節也(東京大学・地震研)


Question #152
Q 空震とは、どのようなものを言うのでしょうか。震度計と空震計は、どうちがうのでしょうか。また空震と噴火の関係(火山性微動と火山性地震の関係も)を教えてください。 (10/27/98)

Taka:公務員:33

A
 空震(空振)とは,火山の爆発や火砕流の発生により火口周辺の空気が 動かされ,その振動が遠くまで伝わる現象です.噴火の衝撃で窓ガラスが 震えたりするのも,この空振が発生するからです.空振計のセンサーは基 本的にはマイクロフォンです.風が強いとその振動が記録されます.


 一方,震度は,地震によって地面が揺れる強さを階級で示したもので す.この階級(震度2とか震度3とか)は,かつては気象台職員などが各 自の体感で決めていました.が,最近では,地面が揺れる際の加速度を計 測し,それを基に客観的に震度を決める計器が用いられるようになりまし た.これが震度計です.加速度や地面の変位そのものを測るのは,地震計 と呼ばれています.


 まとめると,空気の振動を測るのが空振計,地面の振動を測るのが地震 計,地震計のデータをもとに震度を決めるのが震度計,ということになり ます.それぞれの機械は,名前は似ていますが,測ろうとする振動現象の 種類や設置する目的が異なっているんです.設置する場所なども,当然な がら違ってきます.


 さて,空振に戻ります.火山の噴火は,地下の物質を空気中に放出する 現象ですから,結果として周囲の空気を乱すことになります.爆発的な噴 火が起きれば,衝撃的な空気振動が生じます(ボンという音を想像してく ださい).一般的には,爆発が大きければ空振も大きくなります.です が,噴火現象は単純ではないので,厳密な比例関係は成り立ちませんが. また,噴煙柱が立ち登るような噴火では,空振は衝撃的なものではなく, 連続的な振動になります(ゴーという音を想像してください).


 火山性地震,火山性微動は,いずれも火山の活動に関連した地面の振動 です.これまでの話に関連させると,空振計ではなく地震計で記録される 振動ということになります.地震と微動の区別は,主に振動の継続時間に よってなされることになります.火山性地震は単発的な振動で,地下でな んらかの破壊現象が起きて発生すると考えられています.一方火山性微動 は,振動が数十秒から数分,時には何時間も継続する現象で,地下のマグ マやガス,熱水といった流体の移動が原因ではないかと考えられていま す.


 以上,似たような単語が並んでわかりにくいかもしれませんが,ご理解 いただけましたでしょうか.ご不明な点があれば,またご質問ください. また今後は,できれば質問だけでなく,その背景(どうして知りたくなっ たのか)を少しでも書いていただけると嬉しいです.こちらもお答えしや すいし,応答ももっと楽しくなると思います. (10/28/98)

西村裕一(北海道大学・理・有珠火山観測所)


Question #149
Q 秋田県男鹿半島に在住しています。この地では一の目潟や寒風山の火口跡など様々な過去の火山活動の跡が見られます。 今回の質問というのは、以下の内容が直接に火山活動と関係ありそうかまた、ほかに事例があるかどうかをおたずねしたいのです。 というのは、地下水脈の形成についてです。最近の地下探査で二万年前の火山活動で形成された男鹿半島・寒風山の地下に盆地状にくぼんだ基盤があり、浸透した雨水が基盤の起伏に沿って移動ののちこのくぼみに集まり、あふれる形で湧水となっているという調査結果がありました。これは寒風山の北側に一日二万五千トンもの水量の湧水となり、古来干ばつでも枯れない霊水、名水として地域を潤してきたものです。そばにそれほど高い山もなく小さい半島内にあるこの湧水の集水流域を調査したのが今回のものです。浅学モノの推察として、数度にわたる噴火活動により…地下から噴出物…地盤沈下…その上に堆積…火成岩の山が形成というカルデラ地形の形成に似た経緯でできたのではないか、もしくはできた可能性はないか、ということです。また偶然目にした『地下水盆』という語句についてももし何かありましたらお願いします。さらに阿蘇山などのカルデラ周辺の湧水群などにそういった地下構造の例はないのか併せてお教えください。

(10/21/98)

柏崎 潤一:公務員:39

A
 寒風火山の湧水ですね?その話をするには氷河期の寒風山の状況から説明 する必要があります.ちょっと気の長い話しですがお付き合い下さい.
 寒風山付近では,2〜3万年前に淡水の湖が存在していました.現在の寒風 山のかなりの部分から箱井近辺の低地まで広がっていたと思われます.この 湖の中に堆積したのが箱井層と言われる地層です.寒風火山の溶岩(複数) の一部はこの湖の中に流入しました.溶岩の流入と箱井層の堆積が同時に進 行しましたので,箱井層と溶岩の境界は複雑な形態をしています.
 さて,寒風火山はその後陸化してしまいます.箱井層をためた湖もひあがっ てしまいます.
 箱井層は,透水性が悪いのですが,寒風山の溶岩は水をよく通します.溶 岩を浸透した水は箱井層のところで地下水になって,水平方向に移動を始め ます.したがって,箱井層の上面でも低くなった谷状の地形の部分が地下水 の通り道になっていると考えられます.それの一つの現れが滝川の湧水と考 えています.
 というわけで,寒風山付近の湧水は寒風山の生い立ちと密接な関係を持っ ていると思います.が,カルデラではありません.
 盆地状にくぼんだ構造については,今後調査して行くつもりで,研究計画 を練っております. (11/10/98)

林信太郎(秋田大学・教育文化学部)


Question #146
Q 先日、学校の修学旅行で箱根へ行ったのですが、箱根の山の多さに驚きました。 そこで質問なのですが、箱根の山々はどのようにしてできたのでしょうか?ぜひ、教えてください。お願いします。 (10/16/98)

浅岡良彦:高校生:16

A
 箱根の山が,同じ火山であるのにもかかわらず隣の富士山のような単一 の峰ではなく,たくさんの峰によってできていることに驚かれたのですね. このことは,箱根山のでき方(火山としての箱根山がたどった歴史)と深 くかかわっています.


 まず,富士山は今見えている形の大部分が過去1万年間に作られたもの であるのに対し,箱根山は50万年もの長きにわたる噴火の歴史,つまり は,より複雑な火山形成のプロセスを経てきているのです.


 さらに,箱根山は富士山よりもずっと大規模かつ爆発的な噴火を何度も おこし,大きなカルデラを少なくとも2度作っています.このカルデラは 今でも地形としてはっきり残っており,カルデラの中には,その後たくさ んの小型の火山(中央火口丘群)が誕生しました.駒ヶ岳や神山・二子山 がそれらの仲間です.カルデラの底の一部には水が溜まって芦ノ湖ができ ました.


 以上はごくおおざっぱな説明ですが,より細かな火山形成史が火山学者 の努力によって判明しています.もっと詳しいことが知りたければ,以下 の文献が参考になります.

中村一明ほか著「火山と地震の国」岩波書店 高橋正樹・小林哲夫編「フィールドガイド日本の火山(2)関東・甲信 越の火山II」築地書館

町田 洋著「火山灰は語る」蒼樹書房 (10/20/98)

小山真人(静岡大学・教育学部)


Question #143
Q 将来的な火山の噴火についての質問です。 鳥取県の伯耆大山は先ごろ大きな岩盤の崩落がおきましたが、こういった現象は火山がその活動を 終え、浸食されていく過程と考えていいですか。 それとも火山の成長過程で活動が一時的に停止しているのでしょうか。 今後”数万年数十万年”というスパン長の中で活動が再開することは考えられるのでしょうか。 同じように、関東の赤城山、北海道の後方羊蹄山なども 同じようなスパン長の中で再噴火することは考えられますか。

(10/15/98)

火山研究サラリーマン:会社員:39

A
 ご質問の大山火山については,少なくとも1万数千年前までは活発な噴火活 動をたびたびしていましたが,近年の火山活動は知られていません.その意味 では,大山では現在浸食されていく過程にあるといえます.しかしながら,火 山の寿命は数十万年以上に及び,その間に数千年から数万年の休止期を挟む場 合があります.ですから,大山火山が火山活動を再開することはありえます.
 また,赤城火山は2-3万年前まで,羊蹄火山は数千年前までの活発な噴火活 動が知られていますので,同様に長期的にみて再噴火の可能性はあると考えて います.ただし,現時点では噴火活動を再開するような兆候はないことを念の ため申し添えます. (11/17/98)

星住英夫(工業技術院・地質調査所・地質部)


Question #141
Q 火山灰と、堆積岩は、どういうつくりになっているのですか。 教えてください。 (10/14/98)

清水 唯:小学6年生:12才

A
 清水さんは火山灰を見たことはありますか?空から降ってくるところか, あるいは地層となってたまっているものを,見たことがあるかも知れませ んね.火山灰は火山の噴火でできた,2mm以下,細かいものでは1mm の100分の1以下といった細かい粒です.細かいので風に運ばれて相当 遠くにまで飛んでいきます.といっても映画「ボルケーノ」で出てくるよ うなフワフワした紙のようなものではなくて,粒の多くはガラスのかけら です.ガラスは,高温で液状のマグマが噴火の時に急激に冷やされて固ま ってできます.割れた窓ガラスの破片のように,先がとがっていることが 多くてジャリジャリしています.火山灰には,そのほか,鉱物の破片も含 まれています.


 火山灰がたまってできるような層を地層と呼びます.理科で習う地層の ほとんどは,海に運ばれてたまった砂や泥ですよね.地層は,たまったあ としばらくは,やわらかくてくずれやすい状態ですが,何万〜何百万年も の長い時間がたつと,固くなってきます.それを堆積岩と呼びます.砂や 泥が固まれば砂岩とか泥岩とか名付け,火山灰が固まれば凝灰岩(ぎょう かいがん)と呼びます.「岩」が最後についているのは固い岩石であるこ とを示しています.固くなる理由は,長い年月の間に,粒と粒の間のすき まを,地下水などの中の炭酸カルシウムや二酸化珪素などの成分が固めて しまうためです. (10/20/98)

三宅康幸(信州大学・理学部) 


Question #139
Q 日本には86の活火山が有ると聞いてます その中で霧島山ですが御鉢と新燃岳が噴火記録がありますが 火山群として一つの火山として数えられています 又 北海道の樽前山と風不死岳(活火山ではないですが)は隣同士の ように思いますが個々の火山となっているようです そこで火山群にするのか個々の火山にするのか決める基準が有りましたら 教えてください(上記火山の違いも出来ましたらそれぞれお願いします) 又 海外での基準も有りましたら実例を挙げて教えていただければ有り難く思います (例えばカムチャッカのクリチェフスカヤとカーメン ベズイミアンはスケールが 違いますが隣同士のように思えるのですが) 素人ですので質問に間違いがあるかもしれませんが宜しくお願いいたします (10/4/98)

松井:会社員:36

A
 「火山群」というのは,「地理的分布が近接し,同時代でかつ成因的にみて 親縁関係にあると考えられる複数の火山の集まり」に対して用いられている言 葉です.東伊豆単成火山群が最も典型例とされています.御指摘の風不死や樽 前火山は恵庭火山とともに,支笏カルデラ形成後(約3万年前)にできた火山 で,そのうち,最も若いものが樽前火山です.大きなスケールでは,すべてを 含めて支笏火山群と呼ぶことも可能です.実際に,この3火山は「世界の火 山」カタログでは支笏火山地域として一括されています.現在86個とされる活 火山は,火山群を含んだり単独の火山体を含んだりしています.これらは,ス ケール,地形,時代的に明瞭な区分があって,それぞれを,1「火山」として いるわけではありません.噴火ポテンシャルの高い86の火山地域があると理解 すべきでしょう.
 外国でも明瞭な区分がありません.「世界の火山」カタログでは複数群がっ ている火山をできるだけ少なくまとめる傾向にあるようです.御指摘の,カム チャツカの3火山は隣接した独立の大きな火山ですが,今のところ,それぞれ 単独の火山として扱われています. (10/7/98)

中田節也(東大・地震研・火山センター)


Question #138
Q 火山灰の岩石記載的特徴として、よく、他国由来の火山灰 (例:白頭山、鬱陵島由来)はアルカリ長石を含むといいますが、アルカリ長石を顕微鏡で識別できるのでしょうか? 分析するために、鏡下で選別したいのですが、日本の火山起源のテフラに含まれる長石との区別ができなくて困っています。 よろしくお願いいたします。 (10/4/98)

FUJINE:建設コンサルタント:24

A
 火山灰の鉱物同定は,地学団体研究会の地学ハンドブックシリーズ4 「火山灰分析の手びき」にあるように,通常は双眼実体顕微鏡で鉱物の 色や形態を観察して同定しますが,アルカリ長石の正確な識別には, 偏光顕微鏡を用いる方がよいでしょう.


 直交ニコル下で,常に暗黒に見える鉱物粒を探せば,その粒の 光軸は鏡筒と平行になっているので,その屈折率はω(オメガ:一軸性 の場合)またはβ(ベータ:二軸性の場合)です.アルカリ長石は,正長 石がβ=1.522-1.533,サニディンがβ=1.523-1.525,アノーソクレース が1.526-1.536です.それに対し,石英はω=1.544,斜長石はβ= 1.534-1.583です.通常の火山岩に含まれる斜長石はカルシウムが多く, β>1.54のものがほとんどです.したがって,屈折率が1.536-1.540程度 の1種類の浸液を使えば,それよりβが低いものはアルカリ長石,高いも のは斜長石や石英(これら2種は劈開や双晶の有無などで区別できる) というようにはっきり区別できます.火山灰の中のアルカリ長石は通常 サニディン-アノーソクレース系列のものですから,屈折率1.52-1.54程度 の浸液を予め多数用意しておけば,屈折率を決定してだいたいの化学 組成を知ることもできます.浸液は直接スライドグラスにつけず,細かく 割ったカバーグラスに数滴つけて,それをスライドグラスにかぶせるように するのがコツです.火山灰の粉をスライドグラスに薄く塗り広げておけば, この方向で能率的に屈折率を決定することができます.


 また,直交ニコル下で暗黒に見える鉱物粒について,コノスコープ観察 を行えば,アルカリ長石は斜長石よりも光軸角が小さいので,アイソジャ イヤーの曲がり方から同定することも可能です.偏光顕微鏡の載物台に 「スピンドルステージ」を取り付け,その針の先に鉱物粒を接着して,直交 ニコル下で鉱物粒を様様な方向に回転させて光軸角を測定する方法も あります.


 いずれにしても,鉱物の偏光顕微鏡観察法について詳しく知りたい場合 は,都城・久城の「岩石学T」(共立全書189)や坪井誠太郎の「偏光 顕微鏡」(岩波書店,絶版)などを参考にして下さい.


 また,もし既に長石だけを集めておられて,その中からアルカリ長石を 分離したいという場合は,重液分離が最も簡単で能率的です.アルカリ 長石の比重はだいたい2.60以下ですが,斜長石はそれ以上ですから, この比重の重液を用意しておけば簡単に分離できます. (10/8/98)

石渡 明(金沢大学・理学部・地球学科)


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