火山についてのQ&A |
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Question #1772 | |
Q |
先日、阿蘇山の見学に行って来ました。火口を見ていてふと思ったのですが、阿蘇山の火口には なぜ水がたまっているのですか?水面から湯気が立ち上っているところから見て、相当温度は高いようですが、あれは、やはり火山活動と何か関係があるのですか? (06/20/01) 黒狼:学生:13 |
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A |
非常におもしろい質問です. 1.雨水や地下水が火口に流れ込み,それが漏れないからです.また,噴気の中に も多量の水が含まれるので,これも水位を保つ要素のひとつです.問題はどうして漏 水が起こらないかです. 2.温度は50℃程度ありお風呂の温度より高い状態です.これは地下深部からやっ てくる高温の火山ガスによって温められているからです.ご覧になったのは中岳第1 火口です.現在(2001年6月)ここには灰緑白色の湯が溜まっています.これを阿蘇 山の「湯だまり」と呼んでいます.その水面は火口の縁から100m余りの深さのとこ ろにあります.4,5年くらい前までは,さらに50m下にありました.このように湯の 水位は一定ではありません.火山活動が活発化するにつれて,お湯の色が灰色から黒 色に変わり,温度も60,70℃と上昇して,火口内で爆発が起こるようになります.さ らに爆発が活発化すれば,お湯が火口の外へ飛び出し(この湯は強酸性で,一瞬のう ちに金属を溶かしてます),お湯も蒸発して湯だまりが消えます.そうなると乾いた 火山灰と赤熱した噴石が噴出するようになります. さて,何故「湯だまり」が生じるのでしょうか.窪地であれば,雨水が溜まりま す.阿蘇山中岳には窪地となっている火口が,第1火口の他に,大きいものでは南側 の第3,第4火口があります.そちらには,現在,水が溜まっていません.第3,4 火口も大雨が降れば一時的に雨水をたたえますがすぐに漏水して乾いてしまいます. 阿蘇山では古来から中岳火口は神霊池,宮池,宝池などと呼ばれ,水は着色してお り,干ばつ時でも存在していたといいます.最近は第1火口で活動が繰り返されてい ますが,50,60年ほど前は,第1火口の他に第2,第3,第4火口も活動を繰り返し ていました.そのころの記録を見ると,これらの火口には湯だまりが出来ていたこと がわかります.このようなことから「湯だまり」は活動中の(噴気活動がある)火口 に出来ると言えます. 噴火によって火山灰や噴石が放出され,火口は底が見えないほどの深くなります が,活動後には噴出物が雨水とともに流れ込んで火口は浅くなります.地下から噴出 し続ける高温の火山ガスによって,これらの火山灰などが変質すると水を通さない地 層となるために漏水が起こらなくなるものと考えられます.こうして,水の入った土 鍋をコンロにかけたように,火口に溜った水は高温の火山ガスによって温められ続け る「湯だまり」になります. (06/30/01) 須藤靖明(京都大学・地球熱学研究施設・阿蘇火山研究センター) |