火山についてのQ&A |
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Question #58 | |
Q |
今年の8月に和歌山県の湯の峰温泉に行ってきましたが、100度近いお湯が湧き出る「湯筒」というのがありました。このあたりには火山が全くないのにどうしてこんな熱い温泉が湧きだしているのでしょう。地質図を見るとこのあたりに火山岩が存在しているようですが、古い火山があるのでしょうか。近くの名勝の橋杭岩は火山岩が地表に出てきて冷えたものだと聞いた記憶があります。
(12/5/97) |
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A |
さすがに火山学者を夢見たロマンチストのおじさんでいらっしゃるだけあっ て,重要なポイントに興味をもたれましたね.和歌山県の温泉,特に龍神・湯 の峰・川湯などの温泉は温度の高いものです.これらの温泉の分布地域には何 千万年前の海底にたまった砂岩や泥岩が広く分布しているのですが,龍神・湯 の峰・川湯などの温泉のある一帯ではその岩石が白く変質しています.この変 質帯は果無山脈から大塔山の南まで南北に延びて帯をなしていて八丁涸漉(は っちょうこしか)変質帯と呼ばれています.この変質作用は熱をもった水によ るもので,しかもこの変質帯の中,およびその南延長上には石英斑岩という火 成岩の岩脈がだいたい南北にならんで分布しています.橋杭岩もその一つで す.これらの火成岩ができたのは千数百万年前ですので,この変質帯ができた のもそのころだと考えられています. で,湯の峰などの温泉の熱源なのですが,諸説ありまして,ひとつはこの千 数百万年前の火成岩の熱がまだ地下には残っているのだというものです.しか しこんなに長期間マグマの余熱が残っているということには懐疑的な学者もい て,昔マグマが上がってきた通り道であったこの地域は,今でも地下からの熱 を帯びた水や,地表から浸透した地下水の通り道になっているのであって,地 下深くからの熱がこれらの水にバトンタッチされながら運ばれてきているのだ という漠然とした考えもあります. 疑問はつきませんが,湯の峰に限らずまわりには見かけ上火山がないのに高 温の温泉が出ているところは有馬温泉などほかにもあります.これらの成因を 探ることは重要な問題だと思います.火山学をさらに夢見てください. (12/30/97) 三宅康幸(信州大学・理学部)
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