火山についてのQ&A |
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Question #5810 | |
Q |
先月伊豆大島の火山博物館を見学してきました。日本の火山災害の展示を見てベースサージ災害がよくわからないので説明お願いします。火口から環状に拡がる横殴りの噴煙による災害とまでしかわからないので。
(05/16/05)
TAKO:高校生/大学生:20 |
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A |
ベースサージ(base surge)は地表での核実験ではじめて認識された現象で、爆発中心から地表を這うように走る爆発煙を指した言葉です。これと同様の現象が火山噴火でも発生することが、明神礁の噴火(1952年)やフィリピン・タール火山の噴火(1965年)で確認されました。 ベースサージを含む火砕サージと呼ばれる火山現象は、一言で説明するのには以外と苦労する現象です。火砕サージは火砕流と似ていますが、火砕流に比べて全体に占める固体粒子の量が少なく、希薄で密度が低い流れ現象です。固体粒子の量が少ないため、火砕サージによる堆積物1枚1枚は薄いことが一般的です。 ベースサージは、浅い海や火口湖などでマグマ水蒸気爆発が発生したときに、火口から垂直に立ち上がる噴煙とは別に、火口から環状に横殴りの噴煙が広がる火砕サージの一種です。サージを発生させる爆発は何回も起きるため、薄層が何層にも積み重なり、風紋状の地形を残すこともあります。規模や性質は、水と反応するマグマの量などで大きく変わってきますが、火砕流より希薄とは言え速度は非常に高速で、破壊力は無視できません。マグマ水蒸気爆発発生時にもっとも危険な噴火現象です。1965年のタール火山の噴火では、ベースサージにより火口湖周辺の住民約150名が死亡しています。日本でも明神礁噴火で海上保安庁の観測船がベースサージの直撃を受け、31名全員が犠牲になっています。伊豆大島や三宅島でも、海岸付近でマグマ水蒸気爆発が起きたときに、ベースサージが発生しており、火口周辺数kmの範囲を破壊しています。 (05/30/05) 川邉禎久(独立行政法人 産業技術総合研究所・地質調査情報センター) |