火山についてのQ&A

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「Q&A火山噴火」

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Question #87
Q 最近は、あまり騒がれなくなってますが、 現在の富士山のマグマの量はどのようになってるのでしょうか? また、そのマグマの量で噴火した場合、 富士山周囲にどのような影響を及ぼすのでしょうか?

(6/10/98)

MAOW:学生:18

A ご質問ありがとうございます。富士山は日本を代表する優美な山ですが、万一 噴火した場合、その影響があまりに大きいこともあり、何かにつけて騒がれる 火山です。さて、富士山は江戸時代の1707年に噴火したのを最後に沈黙を守っ ています。しかし、歴史時代にも絶えず噴火を繰り返しており、現在は比較的 長い休止期間と考えるのが妥当です。さて、ご質問の富士山のマグマの量です が、正確な量は判りません。ただ、地震が起きる場所などから富士山の山頂の 地下20kmくらいの所に直径数kmのマグマ溜があるのではないかと言われていま す。また、最近2000年間についてみると、噴火している時や休止している時は ありますが、マグマが溶岩や火山灰として噴出する量は、100年で0.075km3と ほぼ一定です。ですから、休止期間が長くなるほど次に噴火する時のマグマの 噴出量は大きくなると予想されます。

さて、富士山が噴火した時の影響ですが、どこで、どのくらいの規模で、どの ようなタイプの噴火をするかで変わってきます。最近2000年間について見る と、富士山の山頂からマグマを吹き出すような噴火はなく、北東、北西、南東 斜面で噴火が起きることが多いようです。ですから、富士山がこれまでと同じ ような噴火を今後も続けると仮定すると、これらの地点で噴火が起きる確率が 高いと思われます。噴火の規模ですが、たとえ多量のマグマが地下に溜まって いても、必ずしも溜まっているマグマの全てが噴出するとは限りません。仮に 最悪の災害を考えるなら、これまでに富士山で起きた最大規模の噴火が今度起 きたらどうなるか、を考えるべきでしょう。富士山の噴火の大半は溶岩か火山 灰(や火山レキ)を噴出するタイプのものです。このうち広範囲に大きな影響 を与える噴火は火山灰によるものです。富士山の歴史時代の噴火の中でも最大 規模の噴火である1707年噴火の時には、火山灰のみが約半月間にわたり噴出 し、この時に出た火山灰は南関東一円を覆い、富士山の東麓で約3m、東京でも 5cmくらいの厚さの火山灰が積もりました。火山灰は雪と違って融けませんの で、麓の町が元の状態に戻るのに50年以上かかったそうです。もし、現在、こ の時と同じような噴火が起きれば東名高速道路は止まり、羽田や成田などの空 港も閉鎖され、建物の隙間から入り込んだ火山灰は電子機器にも悪影響を及ぼ し、人間にも呼吸器障害を及ぼすことが予想されます。また、富士山の周辺で は積もった火山灰が雨で流れ出し、河川を埋めて洪水を引き起こすことなども 考えられます。ただし、この噴火が起きた時にどのような方向から風が吹くか により火山灰が積もる場所は変わります。溶岩による災害は富士山のごく周辺 に限られますが、溶岩が町を襲うか山の中で止まるかにより影響は全く異なり ます。 (6/10/98)

宮地直道(静岡県農業試験場・海岸砂地分場)


May 2012. The Volcanological Society of Japan.  kazan-gakkai@kazan.or.jp