岩手山が噴火するかどうかは,現段階では可能性は大きくなりつつあるとは
言えても,確実なことはまだ言えないという状況であるということを念頭にお
いて以下をお読みください.
さて岩手山が噴火するとして,現状ではもっとも可能性が高いのが大地獄付
近での水蒸気爆発です.水蒸気爆発では,規模にもよりますが,おそらく火口
周辺の岩塊や火山灰の放出が起こるでしょう.
大地獄は西岩手カルデラと呼ばれるところにあります.西岩手カルデラの南
側の鬼ヶ城と北側の屏風尾根では,屏風尾根のほうがやや低く,岩塊を遮る効
果もやや低いと言えそうです.ただ大きな岩塊はそう遠くまでは届きません.
桜島などの観測では,巨大な岩塊の飛散する距離は最大でも4kmほどです.幸
い大地獄から最も近い集落までは,約5kmほど離れていますから,爆発で吹き
飛ばされた岩塊による被害は,山頂付近にいない限りあまり考えなくてもよい
でしょう.
ただ細かい火山灰は周辺に風によって運ばれますから,地形にあまり左右さ
れず広い範囲で降灰すると思われます.また火口付近では火山灰が大量に堆積
し,土石流が発生する可能性もあります.西岩手カルデラからは,焼切沢が北
西方向に流れ下っていますから,噴火が始まれば,焼切沢の流域では土石流に
注意したほうがよいでしょう.
火山災害は多くの場合地形に左右されます.特に溶岩流や火砕流,土石流は
地形の低い所つまり谷などを通ります.ですから予想される噴火口の位置と地
形を知ることができれば,危険が及びそうな範囲を推定することができます.
災害予測図(ハザードマップ)は,そのようにある火山について起こりそうな噴
火の種類と規模,火口の位置を推定してつくります.
噴火が始まったときになにが起こりうるかは,地質調査などで過去の噴火を
調べるのが,役に立ちます.
岩手山の過去の噴火活動について,地質調査所の伊藤順一さんがまとめられ
たものが
http://www.aist.go.jp/GSJ/~jitoh/opn/iwate/index.html
にあります.
(6/29/98)
川辺禎久(工業技術院・地質調査所・環境地質部)
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