噴火現象と噴出物・岩石・鉱物
火山砕屑物・火山灰(テフラ)・火山弾 |
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Question #78
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Q |
質問は2点ありますがよろしくお願いします。
1.南極の氷雪のボーリング結果について
1年前の新聞報道かと思いますが、
南極の氷雪をボーリングした結果、過去何十万年間の氷雪の中から
数万年間隔で火山灰の堆積が見つかったとのことですが、
火山灰を調査することにより、火山を判明、断定することはできるのでしょうか。また、その中に日本列島に属する火山もある可能性はありますか?
また、このように、南極の氷雪にまで痕跡を残すような火山の噴火レベルはいかようなものなのでしょうか?
2.九州の霧島高千穂峰について
高千穂峰の美しさに魅せられて今年も御鉢火口までですが、登りました。前回も質問しましたが、レストハウスから火口までに赤色の軽に混在して、かなり大きめの黒灰色の岩石がありましたが、軽石と同じに噴火した堆積物なのでしょうか。それとも噴火した年代が異なるのでしょうか?
(5/22/98)
火山研究サラリーマン:会社員:39
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A |
1.南極の氷雪のボーリング結果について
申し訳ありません.私はその新聞記事を読んでいませんので,氷床のボーリン
グコアを用いた火山噴火の研究の一般的なことについて答えたいと思います.
地球規模の環境変遷を研究するために極地の氷床コアを用いるのは1970年代か
ら盛んに行われるようになりました.夏と冬に降る雪(降水)の酸素同位体比
が違うために,氷には(目には見えませんが)年縞というのができます.その
数を数えることによって,±1年くらいの精度でその氷がいつ形成されたかわ
かるのです.そして氷に閉じこめられた大気や氷そのものを分析することによ
って過去の環境が精度よく復元できるというわけです.氷床コア中に火山灰粒
子が見つかったら,その粒子を分析することによって噴出源を特定できること
があります.しかし,火山灰は近いところに落ちてしまいますので,火山灰が
見つかるのは氷床に比較的近い火山で起こった噴火に限られるようです.一
方,大規模な噴火が起こると,火山灰以外に大量の硫酸エアロゾルが大気中に
放出されます.硫酸エアロゾルは何年にもわたって大気中にとどまり,全地球
に広がっていきます.そのため,その時代にできた氷は水素イオンや硫酸イオ
ンに富むことになります.氷床コアから検出される過去の火山噴火は,ほとん
どの場合,水素イオン濃度,硫酸イオン濃度の高い層準の年代とこれまでに知
られている大規模噴火の年代を比較して決められています.それゆえ,候補と
なる噴火がいくつもあったり,全く候補の見つからないものもあります.日本
と同じ北半球にあるグリーンランドの氷床コア中には,日本で起こった噴火が
原因と考えられる,水素イオン濃度,硫酸イオン濃度のピークがいくつか見つ
かっています.鬼界-アカホヤ噴火や十和田a噴火などVEI=7~6のものから,北
海道駒ヶ岳1640噴火や開聞岳874噴火などVEI=5~4クラスの噴火まで噴火の規
模にはかなり幅があります.南極の氷床で日本の噴火を示すピークが見つかっ
たという話は(私の不勉強かも知れませんが)まだ聞いていません.
2.九州の霧島高千穂峰について
御鉢の登山道で地表付近に見られる噴出物は,ほとんど同じ時(13世紀)の噴
出物です.スコリアが赤いか黒いかは,鉄の酸化の仕方の違いによります.
Fe2O3になっていれば赤く,FeOだと黒くなります.それぞれどのような条件で
あったか考えてみて下さい.質問には黒灰色の岩石とありますから,おそらく
発泡していない緻密な岩石のことだと思います.同じ噴火の時にマグマが急冷
されてガラス質になったもの(黒光りするように見える)が放出されたのだと
思います.ただ,御鉢は13世紀の噴火以降もたくさん噴火を繰り返しています
から,その後の噴火の時に飛んできたものかもしれません.周りのスコリアと
の関係などを詳しく調べる必要があります.
(6/3/98)
井村隆介(鹿児島大・理学部)
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Question #141
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Q |
火山灰と、堆積岩は、どういうつくりになっているのですか。
教えてください。
(10/14/98)
清水 唯:小学6年生:12才
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A |
清水さんは火山灰を見たことはありますか?空から降ってくるところか,
あるいは地層となってたまっているものを,見たことがあるかも知れませ
んね.火山灰は火山の噴火でできた,2mm以下,細かいものでは1mm
の100分の1以下といった細かい粒です.細かいので風に運ばれて相当
遠くにまで飛んでいきます.といっても映画「ボルケーノ」で出てくるよ
うなフワフワした紙のようなものではなくて,粒の多くはガラスのかけら
です.ガラスは,高温で液状のマグマが噴火の時に急激に冷やされて固ま
ってできます.割れた窓ガラスの破片のように,先がとがっていることが
多くてジャリジャリしています.火山灰には,そのほか,鉱物の破片も含
まれています.
火山灰がたまってできるような層を地層と呼びます.理科で習う地層の
ほとんどは,海に運ばれてたまった砂や泥ですよね.地層は,たまったあ
としばらくは,やわらかくてくずれやすい状態ですが,何万~何百万年も
の長い時間がたつと,固くなってきます.それを堆積岩と呼びます.砂や
泥が固まれば砂岩とか泥岩とか名付け,火山灰が固まれば凝灰岩(ぎょう
かいがん)と呼びます.「岩」が最後についているのは固い岩石であるこ
とを示しています.固くなる理由は,長い年月の間に,粒と粒の間のすき
まを,地下水などの中の炭酸カルシウムや二酸化珪素などの成分が固めて
しまうためです.
(10/20/98)
三宅康幸(信州大学・理学部)
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Question #1063
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Q |
先ほど質問いたしました「ふくろう」です。わかりづらかったように思いますので、もう一度質問します。
質問:火山灰とは、上昇してきたマグマの破砕(ガス成分が発泡c張することによる破砕)によって吹き飛ばされたマグマの小さな(2mm以下の)かけらが空気中で冷やされて固まった粒子であると考えて良いのでしょうか。マグマ由来ではなく、すでに火口にたまっていた火山灰も同時に吹き飛ばされたり、火口付近の山体の一部が破壊され粉々になって火山灰となる(?)こともあるのでしょうか。また、降下してきた火山灰がマグマ由来か、すでに火口にたまっていた火山灰が吹き飛ばされたものかはわかるのでしょうか。
それから、火山灰の各粒子は、どんな物質であるのか。
お願いします。
(09/27/00)
ふくろう:教諭:33
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A |
「ふくろう」さんの質問はかなり専門的ですが、大変重要なことで、有珠山や三宅
島噴火でも地質学研究者がマグマの関与を調べるためにしばしば検討していることで
す。
水蒸気爆発の場合にはマグマ由来の物質が含まれず、火口の下の既存の岩石が粉々
に破壊されて細かい火山灰が生産されます。岩石の破片が地上までの狭い通路を水蒸
気と一緒に勢いよく通過し、火口の中を行ったり来たりしている間に、岩石どおしが
ぶつかり合って大変細かくなってしまうのです。一方、マグマ噴火の場合にはマグマ
が爆発自身によって粉々になったり、同様に、マグマの破片どうしがぶつかってやは
り粉々になります。この場合は一般に粗い粒子からなります。その中間的な噴火であ
るマグマ水蒸気爆発の場合には、火山灰粒子を見てすぐにどれが噴火を起こしたマグ
マの粒子かを言い当てることは簡単ではありません。
古い岩石の破片であれば一般にやや変質の進んだ岩石(火山岩、深成岩、堆積岩)
です。新鮮で気泡の入ったガラス質の破片があればマグマと疑ってみることができま
す。ガラスは液体マグマが急激に冷やされたものです。でも、古い堆積物にもそのよ
うな物が残っていることがありますので注意が必要です。新鮮な発泡したガラス質粒
子が時間とともに次第に多くなったり大きくなれば恐らく本当のマグマでしょう。粒
子一粒ごとのできた年齢を正確に測定できれば確実に判断できますが、残念ながら、
今のところそのような手法はまだ確立されていません。
(9/29/00)
中田節也(東京大学・地震研究所・火山センター)
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Question #1396
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Q |
はじめまして。
私は、建築の設計をおこなっている者です。
火山灰の事について教えて下さい。
現在、北海道の道南の駒ヶ岳の近郊に施設を設計しております。
避難施設としても活用したいと考えており
建物の屋根の仕上げ等を決めるにあたり
火山灰の温度、比重はどのくらいあるのか教えて下さい。
また、TV報道にて車の上や道路に溜まった灰を水で洗い流している
映像を良く見ますが、
無落雪屋根(フラットルーフ)等に積もった灰の処理はどのように
しているのでしょうか。なにか、参考になる資料等ありましたら
教えて下さい。宜しくお願いいたします。
(01/09/01)
kanayama:建築設計士:39
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A |
火山灰の性質、粒径、厚さによって対処の仕方が異なりますので、一概には言えませ
ん。とはいえ、三宅島での事例について紹介したいと思います。
2000年7月14-15日の噴火による降灰は細粒(1mm以下)でした。当初、水に濡れるま
では乾いた小麦粉のようなものでしたが、雨などで塗れたとたんに、ヘドロ泥状とな
りました。その後、乾いたあとは堅い板状のモルタルのような堅い板状になり、つぎ
に水をかけるとあっという間にしみこみ、さっと流れ出すという興味深い性質をもっ
ていました。そのため、1cm程度と薄い場合には屋根に上って水を掛けるという方法
で洗い流すことも可能でした。
しかし、雨樋がある場合はそこに溜まりますし、第一大量の水が必要となります。ま
た、流れ落ちた泥水はスリップの原因となるということで、水の使用は禁止されま
した。そのため屋根に上がって、固結した固まりを物理的にはぎ取るという方法を採
らざる を得ませんでした。かといって乾いているうちに掃き落とすと、気管にや目
に入って始末に負えません。
道路上の火山灰除去も量の少ないときはロードスイーパーやバキュームカーも使用さ
れましたが、大量の降灰には太刀打ちできなかったので場所によっては、コンクリー
トミキサー車に水を満タンに入れて坂の上のほうから一気に灰ごと流すという方法も
とられたようです。
このような性質のため、ほうっておいても雨が降れば自然に流れ落ちてきれいになり
ますから屋根にはある程度の勾配があった方がよいと思います。雨樋はない方がよ
く、流れ落ちた泥水を流せる水路や沈砂池もあるとよいかもしれません。
なお、フラットルーフの場合は雪のように解けませんから上に上がって除去する以外
に方法はありません。
なお、軽石やスコリアなどのように空隙の多い比重の小さな角張った粒子が厚くつも
った場合には水で洗い落とすのは難しいと思われますので留意してください
なお、火山灰粒子の比重は、一般に0.9-2.5くらい堆積した状態では空隙があるので
もう少し小さくなります温度は、砂粒子以下の場合は無視できる程度と思いますが数
十センチの火山弾や軽石などの場合は高温のために、火災を引き起こしたという記録
がありますから、800℃程度のものもあると思われます。
(01/18/01)
千葉達朗(アジア航測株式会社・防災部)
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Question #1653
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Q |
始めまして。
(色々調べたのですがわからなかったもので教えて頂きたく投稿しました。)
火山灰の粒子ですが最小でどの程度の大きさになるのでしょうか?
(具体的には桜島鹿児島市内で粒子最小どの程度になるのかになります
又、桜島でどの時期どの程度の降灰があるかが紹介してあるHP又は
文献がわかりましたら教えて頂きたいのですが。
お手数ですがよろしくお願い致します。
(04/09/01)
調査員:会社員:31
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A |
うーん.難しい質問ですね.私の不勉強かも知れませんが,具体的に「火山灰には,
どのくらい小さいものまであるのか?」といった研究を私は知りません.一般には
2mmより小さい火砕物の総称として「火山灰」という言葉が用いられています.環境
科学的には,粒径10マイクロ・メートル以下の粒子を浮遊粒子状物質(SPM)と呼
び,環境基準が設定されています.10マイクロ・メートル以下の火山灰粒子もSPMの
一つです.鹿児島市に降る火山灰で,50マイクロ・メートルより小さい粒子のうちの
約20%が10マイクロ・メートル以下の粒子であるという報告(大庭ほか,1980:鹿大
紀要)があります(火山灰全体の約20%でないことに注意!).
桜島の降灰状況については,鹿児島県から毎年発行されている,「災害の記録」とい
う冊子を参考にされるとよいと思います.
(04/17/01)
井村隆介(鹿児島大学・理学部・地球環境科学科)
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Question #1922
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Q |
・一回の噴火で、どれくらいのマグマや火山灰が出るんですか。(量)
・火山灰にはなぜたくさんの色があるんですか。また何種類ぐらい色があるんですか。
・私達が調べた火山灰は磁石に少しくっつきました。火山灰の中にはくっつくような石が入っているんですか。
(10/17/01)
川俣小学校の子供たち。6年5名:小学生:12
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A |
一回の噴火でほうり出される火山灰の量は噴火によってまちまちです.火山灰は,
噴火の時にマグマがちぎれてできた「かけら」や,古い岩がくだかれてできた細かい
「はへん」です.1991年6月にフィリピンのピナツボ山で起こった噴火でほうり出さ
れされた火山灰の量は数立方キロメートルにもなります.火山灰は約40kmも上空に舞
い上げられました.火山灰には,空から降った火山灰と,山はだを「かさいりゅう
(火砕流)」となって流れたものとがありました.2000年8月に三宅島で起きた噴火
では約千5百万立方メートルの火山灰が一回にほうり出され,火山灰は約15kmもの高
さまで舞い上がりました.世の中には火山灰をほとんど出さずにすむ穏やかな噴火か
ら,火山灰をたくさん出す大きな噴火までいろいろあります.9万年もまえに起きた
阿蘇山の噴火のように,大きなカルデラを作る噴火では,一回で数十立方キロメート
ルものたくさんの火山灰がほうり出されることがあります.
かたまったマグマ(つまり溶岩のこと)の色は,もとのマグマの組成や冷えるはや
さによって黒くなったり灰色っぽくなったりします.マグマが泡だっている場合に
は,もともと灰色っぽい溶岩であれば白っぽくなります.例えば,リュウモンガンと
いう溶岩はふつうは白っぽい色ですが,水の中などで急に冷えたものは黒っぽい色を
しています.また,火山灰は高温で焼かれるとすぐに赤っぽくなる性質があります.
古い岩であれば火口のそばに長い間あれば焼かれて赤くなったり,イオウなどが付着
して黄色っぽくなっていることもあります.さらに,マグマの中には結晶が入ってい
ます.マグマがちぎれてたり岩石がこなごなになって火山灰ができるとき,結晶だけ
のつぶができることがあります.このばあいは,結晶の色がつぶの色です.このよう
に,いろいろな色の火山灰があるのは,もとのマグマの組成がちがったり,冷え方が
ちがったり,結晶の混ざりかたがちがったり,泡の割合がちがったり,いくつもの岩
のはへんが入っていたりするせいです.
マグマが冷えると「じてっこう(磁鉄鉱)」という磁石の力を持った結晶が産まれ
てきます.鉄をたくさん含んだ結晶です.磁石にくっついたのは,恐らく,火山灰の
中にあった磁鉄鉱のつぶでしょう.
(10/18/01)
中田節也(東京大学・地震研究所・火山センター)
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Question #3501
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Q |
火山砕屑物、特に火山灰の成因について教えて下さい。
(1) 一般的に火山砕屑物はマグマの飛沫と考えて良いのでしょうか? (←固結する以前のマグマの飛沫が空気中に放出され、それが空気と触れて固体となった物である?) それとも、マグマだまりや火道で既に固体となった物が放出されているのでしょうか?
どちらか一方の成因によるのか、それとも両方ともの成因があるのか教えて下さい。
(2) 火山灰は主にマグマの発砲によってできるとのことですが、そうであればマグマの表面(空気に触れているところ)で、発砲によりマグマの微少な飛沫が形成される所でだけで火山灰は誕生しているのでしょうか? それとも、マグマの中に既に含まれていた固体成分が火山灰になることがあるのでしょうか?
(11/21/02)
青葉マーク:公務員:45
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A |
火山砕屑物(かざんさいせつぶつ)とは、独立した火山岩の粒子(大きさによ
って、火山灰、火山礫、火山岩塊と呼びます)のことで、それが集まって堆積
したものをさすこともあります。これには、直接マグマから飛び散ってきたも
のの他に、一旦固まってからくだけたものもあります。さらに火口周辺の古い
岩石がくだけてできる場合もあります。後者は、直接火山活動と関係のない、
土石流や山体崩壊による岩なだれ(岩屑なだれ)などの運搬によって生産され
ることもあります。火山砕屑物は成因を含んだ言葉ではありません。
例えば、水蒸気爆発では、古い溶岩が細かくくだけて火山灰や火山岩塊とな
り、火口から勢い良く放出されます。また、雲仙普賢岳の火砕流では、火口で
一旦固まった溶岩が崩れて粉々になった火山砕屑物が流れ下りました。
火山灰は火山砕屑物の一部ですから成因を含んだ言葉ではありません。大きさ
が2ミリメートル以下の粒子です。上のどの過程によってもできます。マグマ
が発泡して泡が弾けたときや、まだスポンジ状の軽石が噴煙中でぶつかって壊
れて生産されるのももちろん火山灰です。
(11/23/02)
中田節也(東京大学・地震研究所・火山センター)
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Question #1014
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Q |
静岡の友人と話しをしていて、もし富士山が噴火した場合、火山弾はどこまで飛ぶかと議論して結論が出ませんでした。
約3600mの山頂から8000m上空まで45度の角度で噴出したとしても、空気抵抗を無視して約20Km、初速度は秒速400m超です。
頭に当たると危険な大きさの火山弾は、実際どの程度離れたところまで飛ぶのでしょうか?
(09/12/00)
Anonymous:ガラス技工:30
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A |
直径64mmより大きな岩が火山から飛んできた時に,それを火山岩塊と呼びます.また
,火山岩塊のうちで特徴的な形や内部構造(紡錘状,パン皮状など)をしたものを火
山弾と呼びます.このような大きな岩は,富士山に限らず,どこの火山でもおおよそ
5km以上飛ぶことはめったにないことが,経験上わかっています.
火山弾・火山岩塊は,その大きさ(>64mm)からわかるように,例外なく頭に当たれ
ば危険です.一方,それより小さい火山礫(直径2~64mm)であっても,頭に当たれ
ば致命的な場合が当然あり得ます.この程度の大きさのものは,噴煙にのって上空高
く舞い上がった後に風に流されて落ちてくる場合がありますから,とくに風下におい
て5kmをはるかに越えた範囲に落下することがあります.どこまで飛ぶかは,噴煙高
度,風力,岩の密度などによって違ってきます.たとえば,1707年富士山宝永噴火で
は,直径2cmの岩片が20km程度風下に飛びました.
実際にどの程度の大きさの岩片が頭に致命傷を与えるかは,医学的な専門知識がない
のではっきり答えられません.しかし,たとえば直径5cm,密度2500kg/立方mの岩片
の空気中の終端速度は毎秒数十mとのデータがありますので,そういうものが降って
くる場所には行きたくありませんね.
(9/28/00)
小山真人(静岡大学・教育学部・総合科学教室)
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Question #3948
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Q |
火山砕屑性堆積岩中には火山ガラスとか岩石片が含まれたりしますが,火山砕屑性堆積岩中のglass shards(火山ガラス?)が保持されていることが堆積作用の速度が急速であったことを示していると論文で読みましたが,それはなぜですか? それとglass shardsは火山ガラスでいいのですか?
(05/01/03)
ゼノリス:学生:22
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A |
「堆積作用の速度」という用語をどうとらえるかによりますが,これを「堆積速度」
と解釈した場合,火山砕屑性堆積物中のglass shardsの存在や,それが保持されてい
ること自体は,堆積速度の速さを示す直接的な証拠にはなりません.glass
shardsは,地表に噴出したマグマが”急冷”されることによって出来ますが,この成
因と堆積速度との間には直接的な関係はありません.また,glass shardsは風化に弱
いため,glass shardsを含む堆積物は,非常に新しいか,風化や浸食を被りにくい環
境下(例えば深海底や湖底など)で形成されたことを示します.しかしこれらのこと
も堆積物の堆積速度とすぐには結びつきません.むしろ,深海底や湖底の堆積速度
は,通常は非常にゆっくりです.
ただし,ご質問の中の「火山砕屑性堆積岩」という用語がちょっと気になります.
「火山砕屑性堆積岩」(~つまり凝灰岩)は,泥岩や砂岩といった堆積岩に比べては
るかに大きな堆積速度を持ちます.凝灰岩が2地点間をつなぐ鍵層としての役割を果
たす事ができるのは,凝灰岩自身の異常な堆積速度の速さが,地質学的な同一時間面
を広域的に作り出すことが出来るためです.通常,凝灰岩は露頭で容易に識別するこ
とが出来ますが,堆積物の産状や露頭条件によっては,野外で凝灰岩か泥岩かを瞬時
に識別することが困難な時もあります.そんな時は,堆積岩中にglass shadeがある
かどうかを調べます.もしglass shardsが中に多量に含まれていれば,その堆積岩が
形成された当時は,普通の砂や泥に混じって火山性の砕屑物もその場に供給されたこ
とになりますから,「glass shadeを含む(火山砕屑性)堆積岩は,他の泥岩や砂岩
に比べて堆積速度が急速であった」と言えるかもしれません.でもこの場合も,
glass shadeの存在は,砂や泥以外に火山性の砕屑物も供給されたことを判断するた
めに用いたのであって,堆積速度の速さを直接示している訳ではないことに留意して
ください.
それから,「glass shards」という用語ですが,せっかく疑問をもたれたのですか
ら,これを機会にいろいろな教科書や文献を読んでみると良いと思います.「glass
shards」を手持ちの辞書で調べると”直径2 mm以下の角張ったガラス質の粒子”と書
いてあります.粒径の定義に留意すれば,「glass shade ~ 火山ガラス」としてよ
さそうです.
(05/06/03)
大野希一(日本大学・文理学部・地球システム科学科)
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