火山についてのQ&A

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「Q&A火山噴火」

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Question #1836
Q 今自由研究で富士山の低周波地震についてやっているのですが、低周波地震がマグマの動きと関係しているだろうというのは、低周波地震がマグマのある位置でおこっているから、マグマの動きと関係があるだろうということなのか、それとも、地下深くで低周波地震がおこっているので、おそらくそこにマグマがあって動いているのだろうということなのですか?マグマだまりの位置はわかっていないのですか?

 あと、ほかにも低周波地震が現在起こっている山や、昔起こっていた山があったら教えて下さい。

  (08/05/01)

みっこ:中学生:14

A (1)低周波地震は火山の火口周辺の浅い場所では、しばしば観測される地震です が、深さ10kmより深いところ、すなわち地殻深部やマントルの上部では、そのような 低周波地震は限られた場所でしか観測されません。その多くは火山地域の下で発見さ れています。このため火山の活動と関係していると考えているのです。
 またほとんどの低周波地震は噴火と関係なく発生しているのですが、なかには噴火 の活発化と同じころに発生した場合があります。フィリピンのピナツボ山は1991年 6月に大噴火をしました。このときは5月下旬にピナツボ火山の下、30kmくらいの深 さで低周波地震がたくさん発生しました。日本では1998年に岩手山の火山活動が活発 化しましたが、そのときも深さ10kmくらいと深さ30kmくらいの2カ所で低周波地震が たくさん起こりました。このことからマグマが地下で動く時に低周波地震が発生しや すくなると考えられます。

(2)マグマ溜まりでは、溶けたものがあるため地震の波がゆっくりと伝わると性質 があります。このため地下の地震波速度の空間分布を詳しく調べ、地震波速度の遅い 場所にマグマ溜まりがあると考えられています。
 東北地方では深さ200kmくらいまでの地震波速度の分布がよく調べられています。 それによると低周波地震は地震波速度の遅い場所の周辺、すなわちマグマ溜まりの周 りで発生しているようです。
 低周波地震とマグマ活動がどのように関係しているのかはまだわかっていません。

(3)低周波地震が火山の深いところで発生していることがわかったのは、微小地震 を調べる観測網が整った1980年代始めです。ですから活動の様子がわかるのは古くて も1980年以降です。
 日本では、低周波地震について、富士山の他に北海道の十勝岳、岩手山や安達太良 山、磐梯山等の東北地方の火山、榛名山や日光白根山など関東地方の火山、伊豆大島 や三宅島等の伊豆諸島の火山など、20火山以上で報告があります。
 海外でもハワイのキラウエア火山、フィリピンのピナツボ山、アラスカのスパー火 山など、10火山地域以上で観測されたという報告があります。これらの地震は、ほ とんどがマグニチュード3より小さい微小地震と呼ばれる地震なので、地震の観測設 備の整った火山地域でないと観測できません。日本は地震の観測網が世界一整備され たところなので、たくさんの火山で低周波地震が見つかっています。
 (8/07/01)

鵜川元雄(防災科学技術研究所・固体地球研究部門)


May 2012. The Volcanological Society of Japan.  kazan-gakkai@kazan.or.jp