(HPの管理の都合で掲載が遅れました)
これはトンチ問題みたいですね.私の知識ではこの問題にまと
もに答えることはできないので,問題の周囲を回るだけにしたい
と思います.
まず珪素が黒いかどうかですが,純粋な珪素の結晶は金属
光沢を持っていて,表面は「銀色」です.理化学辞典によると
結晶質のものは「暗青灰色」,無定形のものは「褐色」と書いて
あります.鉄,銀,亜鉛などの金属元素に比べて,色が濃いこと
は確かなようです.ただし,例えば炭素の結晶も,石墨(セキボク,
グラファイト)は真っ黒ですが,ダイヤモンドは無色透明であるよう
に,同じ元素でも結晶構造によって色は大きく変化します.
次に酸素が結びつくと無色になるという点ですが,酸化物の
色は様々です.酸化アルミニウム,酸化マグネシウム,酸化
亜鉛などは白色ですが,鉄は酸化すると黒い磁鉄鉱になり,
更に酸化すると赤い赤鉄鉱になります.マンガンの酸化物も,
酸素とマンガンの割合によって,黒,緑,赤など様々な色を呈し
ます.そもそも,酸素自身が必ずしも無色ではなく,例えば酸素
を冷却して液体にすると,青い色になるそうです.オゾンも酸素
だけでできているガスですが,やや青みを帯びていて,冷却固
化させると黒紫色になるそうです.
要するに物質の色というのは元素の種類だけでは決まらず,
元素の結合の状態によって大きく変わります.これは,物質を通
過する(または反射される)光の性質は,その物質をつくる原子
の一番外側の電子に影響されていて,隣の原子との結合状態
を決めているのもこの外側の電子だからです.石英もわずかな
不純物の存在や放射線を照射することによって黒,紫,黄など
様々な色を呈します.物質の色の問題は不思議で,だれでも
疑問に思うことですが,きちんと説明するのは難しいことです.
(10/11/01)
石渡 明(金沢大学・理学部・地球学科)
|