火山についてのQ&A

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「Q&A火山噴火」

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Question #5953
Q 中学校の理科の教科書を見ていて疑問に思ったことなのですが、「マグマの粘性が強いと激しい爆発を伴う噴火が起こり、粘性が弱いと溶岩が穏やかに流れ出る」と記載されていました。私自身はこの文章を読んだ時気付かなかったのですが、中学生から「粘性の弱いマグマの方が、噴火の時にマグマが激しく噴き上げられていて、逆に、粘性の強いマグマはゆっくりと押し出されているイメージがある」という指摘を受けました。この場合、どのように説明すべきでしょうか? (11/01/05)

大学生:高校生/大学生:21

A
 大変いい質問だと思います.粘性はマグマの流動性を示しているだけで,爆発的な噴火になるかどうかとは直接の因果関係はありません.中学の教科書で書かれていることの内容は,粘性の高いマグマは爆発的噴火を起こすことが多いという意味程度です.
マグマ噴火の場合,爆発の原動力はマグマに含まれるガス(主に水蒸気)で,地下深部ではマグマにとけ込んでいますが,地上に近づくとガスの泡となってマグマから分離し急激に泡の量が増加します.粘性が低いとガスを含んだ泡がマグマ中を地表に向かって移動し,時には泡どうしが集まって大きくなり,シャボン玉のように破裂(爆発)することがあります.夜の噴火シーンでシャワーのように噴き上げているのがこの爆発です.
 一方,マグマの粘性が高くなると泡がマグマ中を移動しにくくなり,高い圧力を保持したままでガスが泡の中に封じ込められます.同時に,高い粘性のマグマや泡を含むマグマは力を加えると割れやすくなる性質があります.このため,地上への移動中にマグマが破砕し,中の泡も一緒に割れて,封じ込められていた高圧のガスが突然爆発を起こします.この爆発の方が大きな規模になります.
 しかし,中学生の質問のように,溶岩ドームのように高い粘性のマグマでも爆発を起こさずに地上まで押し出されたものもあります.これはマグマが大変ゆっくり地上まで上昇してきた間に,マグマからガスが上手く抜け出ることができたからであると考えられています.つまり,爆発の度合いを左右するのはガスの抜け方で,どうも「マグマの上昇の速さ」が大きな鍵を握っているようです.中学生にはむずかしいかも.
(11/1/05)

中田節也(東京大学・地震研究所・火山センター)

May 2012. The Volcanological Society of Japan.  kazan-gakkai@kazan.or.jp