火山についてのQ&A |
≪前のQ&A≪ ≫次のQ&A≫
|
Question #6128 | |
Q |
姫路に住んでいます。周辺の山々は、ほとんど凝灰岩や角礫凝灰岩でできており、白亜紀末の噴出物と言われています。これだけ大規模な噴出物が、どのような噴出の仕方をしたのか、と思ってみるに、いろいろ本などを見た範囲では、噴出源となった場所(複数?)が述べられていません。 一方、北の方にある雪彦山は火山岩頸といわれていて、一枚岩の(聞くところでは)流紋岩でできています。こういう場所が噴出源の一つなのでしょうか、それとも噴出源を確定できないくらい広域で噴出したものなのでしょうか? あるいは噴出源が多くあって、いちいちここ、あそこといえないくらいなのですか? (このような大量の噴出物が、近代もたまにあるような火砕流噴火がコツコツと繰り返されてたまったのか、それとも比較的限られた数の大規模噴火(例えばイェローストンだとかトバ湖だとかのような)でもたらされたのか、この頃の噴火スタイルがどんなものだったのかなア・・・というのがそもそもの疑問です) (03/28/06) 柴田 徹:社会人:56 |
|
A |
5万分の1の地質図幅の龍野地域や山崎地域を見てみると白亜紀後期の火山 岩類が大量に分布しています。それぞれの地域で上部白亜系を構成する地層 は、複数あって、それぞれが、直径15 km以下の凹地(カルデラ)を埋積し、 カルデラ形成期の火砕流堆積物とカルデラ形成に伴って生じた岩屑なだれ堆積 物で構成されていると地質図幅説明書に書かれています。龍野・山崎地域では 全部で少なくとも14個のカルデラがあったと推定されていますので、カルデラ を作るような噴火が少なくとも14回あったことになります。現在は、当時カル デラを作りながら噴出してカルデラ内に堆積した大規模火砕流や、カルデラ陥 没に伴って、不安定になったカルデラ壁が崩れて発生した岩屑なだれが地表に 露出しているものと思われます。阿蘇カルデラのような若いカルデラではカル デラ地形が残っていますが、姫路周辺は後期白亜紀の古い地層ですから、当時 の地表地形はほとんど削剥されて、現在は、昔、地下だったカルデラ内部が露 出しています。地形的にはどこが火口かということは判断が難しく、地質を調 べた上で位置を推定することになりますが、大規模な火砕噴火が14回以上存在 したことは確かでしょう。 雪彦山は確かに流紋岩で出来ている山ですが、流紋岩の分布は広く、直径8 kmの半円形のように分布しています。この分布とこの流紋岩が、火砕流堆積物 に挟まれて露出し、さらに流紋岩の上にカルデラ湖を埋めたであろう湖成堆積 物がのっていることから考えるとこの流紋岩はカルデラが出来たあとに貫入し てきたマグマが冷えて固まったもののように思われます。雪彦山は確かに広い 意味での火口にあたりますが、もっとサイズの大きいカルデラそのものの一部 と考えた方がよいでしょう。この地域にはカルデラが密集しているように見え ますが、年代幅を個数で割ると約100万年に1度くらいの割合になりますの で、特別多いというわけではないと思います。 参考文献:(1) 山元孝広・栗本史雄・吉岡敏和(2000)龍野地域の地質。地域地質 研究報告(5万分の1地質図幅).地質調査所. 66p. (2) 山元孝広・栗本史雄・吉岡敏和(2002)山崎地域の地質. 地域地質 研究報告(5万分の1地質図幅).産総研地質調査総合センター. 48p. (09/11/06) 鎌田桂子(神戸大学・理学部・地球惑星科学科) |