火山についてのQ&A集 | |
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Question #196 | |
Q |
火山は、人間に被害を与える以上にやくだっているのは、知っているのですが
どのように、やくだっているのですか?
おしえてください。
(3/2/99)
ゆうこ:学生:13 |
A |
お答えします。
1)湧水
2)温泉
3)軽石
4)風景
5)土
6)金属資源
筒井智樹(京都大学・理学部・火山研究センター)
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Question #192 | |
Q |
色々な火山がある中で、噴出物も色々と変わってくると本で読みました。先日、北海道の硫黄山に行ったんですが、岩っぽいものが出てくるのは想像に難しくないのですが、硫黄が出てくるのはなんだか考え辛いです。一体どうして、硫黄だけが流れて来ることがあるんですか?たまたま地下で硫黄が集まっているところで火山ができるとあんな風になるのか、と思っても、箱根とかでもなにかとよく硫黄があるので偶然とも考え辛いなぁ、と思っています。教えて下さい。よろしくお願いします。
(2/7/99)
イガイガ:大学生:20 |
A |
イガイガさんが訪れた北海道の硫黄山というのは、恐らく"知床硫黄山"のことだと
思います。この火山は、前回1936年の噴火の際、溶けた硫黄を噴出したことで世
界的にも有名です。このときの硫黄の総噴出量は、約20万トンにのぼったそうで
す。この火山では過去の噴火でも硫黄を流出するような噴火がありました。世界で
も知床硫黄山のように、大量の硫黄を流出する火山は珍しく、他にはチリ北部にあ
るLastarria火山が知られています。
火山で見られる硫黄は、もともとはマグマ中に溶け込んでいたものです。マグマが 上昇し、圧力が減少するのに伴い、硫黄などの揮発性成分がマグマから抜け出し、 火山ガスとして地表へと上昇します。火山ガス中の硫黄はSO2, H2S, S2の形で存 在します(S2の存在度は他の二つのガス成分に比べ非常に小さい)。これらの硫黄 のガスは、火山ガスが地表に近づき温度が低くなると(例えば100℃くらい)、一部 が硫黄の結晶として晶出します。箱根などで噴気孔の周りに見られる、黄色い結晶 が、晶出した硫黄です。このような硫黄の晶出は、噴気孔の周りだけでなく、火山 ガスが上昇してくる地下のガスの通り道でも起こっているのです。 さて、硫黄を晶出するような噴気活動が長期にわたって続くと、結果的に相当量の 硫黄が噴気地帯やその地下に蓄えられることになります。知床硫黄山の場合、長年 にわたって蓄積された硫黄が、火山活動の活発化に伴う温度上昇とともに融解し (下の「硫黄の性質」を見てください)、火口内にたまり、それが地下の水蒸気圧の 増大ともに噴出したと考えられます。つまり、知床硫黄山で噴出した硫黄は、たま たま硫黄が存在するところに火山ができたのではなく、火山活動の過程で蓄積した 硫黄なのです。 ちなみに、先に大量の硫黄を流出する火山は珍しいと書きましたが、小規模の溶融 硫黄噴出は噴気地帯では時々見られる現象です。硫黄の性質硫黄の融点は約113℃ です。160℃になると、水のようにさらさらの流体になります。(それ以上の温度 になると、逆に粘性が急激にたかくなる) (2/15/99) 森 俊哉(東京大学・大学院理学研究科・地殻化学実験施設)
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Question #191 | |
Q |
火山の質問箱をはみ出すのかも知れませんが、学校以来、あの火山岩−半深成岩−深成岩(縦軸)と珪長質−苦鉄質(横軸)の表を何回も
見る機会があります。そこで質問ですが、火山岩の代表として安山岩、深成岩の代表として花崗岩が日本全体ないし県規模の地質図では地表
分布面積が多いようにおもいます。安山岩は地表火山熔岩として地質時代も噴出していたというのはわかるような気がしますが、一方、広大な
面積や点分布をしている花崗岩は、地下深所(10〜15kmぐらい?)でゆっくり冷却したと理解しています。とすると、花崗岩はどういう理由で地
表火山になれなくて地下深所にとどまったものなのでしょうか。また、現在花崗岩が冷却生成中の場所の見当がついているのでしょうか。また、
地殻変動・隆起浸食作用で花崗岩を現在、地質図の地表地質としてみているのでしょうか。
(2/5/99)
市井では地質の”プロ”と称して生計を立てているおじさん:会社員:45 |
A |
広義の花崗岩(花崗閃緑岩や石英閃緑岩を含む)は,全く独立した深成岩体とし て産する場合もありますが,火山・深成複合岩体として産する場合も多く,例えば 「コールドロン」がその例です.コールドロンでは,溶岩や凝灰岩からなる成層火 山のカルデラ状陥没体の中心部や,環状の陥没断層に沿う周縁部に花崗岩類が貫入 しています.これは,火山体を形成したマグマ溜まりそのものが,地下数kmの浅い ところまで上昇してきたことを示します.例えば,米国カリフォルニア州のLong Valley Caldera (長径30km)の中心部には再生ドームがあり,その直下数kmには 「現在冷却・生成中の」花崗岩体の存在が推定されています.大きなカルデラをも つ安山岩〜流紋岩質の火山の下には,必ず花崗岩体が形成されつつあると見てよい でしょう.
石渡 明(金沢大学・理学部・地球学科)
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Question #190 | |
Q |
わたしは,社会の時間に,長野県南牧村の勉強をしました。その時,クラスの友だちが,「よう岩の流れる速さってどれくらいの速さ?」とみんなに聞きました。先生が辞典で調べたけどのっていませんでした。それで,わたしは,よう岩の流れる速さが知りたくなり,お父さんにインターネットで調べる方法を教えてもらいました。よろしくお願いします。 (2/3/99) さのかよこ:小学4年生:10才 |
A |
かよこさん.返事が遅くなってすみません.
溶岩の流れ下る速さは溶岩の粘り気や流れる斜面の傾斜によってちがいます.最
大で毎秒10m(時速36km)程度のようです.ハワイでは傾斜30度の斜面を毎秒
15mの速さで流れたことが記録されています.最近良くテレビで見るハワイのキ
ラウエア火山やイタリアのエトナ火山の噴火映像では,真っ赤な溶岩が川の水のよ
うにとても勢い良く流れていますが,これらは粘り気の非常に小さい溶岩で,日本
ではほとんど見かけません.三宅島でおきた1983年に噴火した溶岩は比較的粘り
気の低いものでしたが,それでも毎秒0.3mとゆっくり流れました.一方,ずっと
粘り気の強い普賢岳のドームを作った溶岩は,最も速いときでも一日約50mの速
さ(遅さ?)でしか流れませんでした.
(2/25/99)
中田節也(東京大学・地震研究所・火山センター)
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Question #188 | |
Q |
現在、産業廃棄物の処理を巡ってさまざまな問題が取りざたされております。
その一つが、焼却処理をした場合に発生するダイオキシンの問題です。
これは焼却時の温度が1200℃以上だと問題ないそうですが、この温度を保つのは
難しいみたいです。
そこで、いきなり突拍子もない質問になるのですが、火山の火口に産業廃棄物を
ほうり込めば、問題ないと思うのですが如何なものでしょうか?
ただし、火山の立地条件としては無人島みたいなところで火口までブツを運べる
ことが条件になりますが。
商業ベースでペイするとは思えないのであくまで個人的な興味からなんですけど。
(1/31/99) Nick:商社勤務:29 |
A |
【溶岩と火口】
溶岩の温度は普通900度から1100度くらいです.溶岩の組成によっては,1200度を越
えるものも存在するかもしれません.ですが,これはあくまで噴火中,もしくは噴出
直後の溶岩の温度でして,実際の火山の火口の中で,このような高温の溶岩がドロド
ロと溜まっている状況はほとんど存在しません.あるとしたら,せいぜいハワイくら
いでしょうか.他の火山の火口は,噴火中で近づけないか,表面が冷えているか,あ
るいは噴出物で閉ざされているはずです.
【放り込む?】 また,化学的なことを考えても,溶岩の組成は単純ではありません.しかも,その組 成は火山により,また同じ火山でも時期により変化します.起こりうる反応をすべて 予測することは簡単ではないでしょう.ご質問のケースでは,高温を得るということ だけで解決を図るのは,やはり単純すぎると思います.自然は複雑でパワフルですか ら,思っても見なかった結果が返ってくるかもしれません.私たちは,こういう例を 多く経験しているはずです.「問題ない」はずはありません. 【火山を制御】 少しはずれますが,個人的には,火山という自然をゴミ処理に利用する発想には,強 く抵抗を感じます.私たちが火山から恩恵を受けることはいいと思いますが,まだま だコントロールできる対象ではありません.例えば,溶岩流については,流れを先端 を止めたり,流路の一部を変えようという試みはなされていますが,実際には「ビル を倒して流れを変えたりできる」のは映画の中だけです.宮沢賢治の「グスコーブド リの伝記」にあるように噴火を制御することは,今日でもまだ夢のような話なのです. (2/3/99) 西村裕一(北海道大学・地震火山研究観測センター) |
Question #187 | |
Q |
はじめて質問させていただきます。
CG制作に携わるものですが、海底噴火の様子を海中映像でとらえた資料はあるでしょうか?
また文書資料で同様のものがあったら教えてください
(1/30/99)
佐久間敏郎:映像プロデューサー:44歳 |
A |
高温のマグマと水が接触すると
水蒸気爆発が発生することがあります。
これは、水とマグマの量比やマグマの温度、マグマの噴出率、
水深、マグマ中に含まれる揮発成分の量によります。
水が多すぎず少なすぎずの場合には、時として大水蒸気爆発が発生します。
海底噴火の場合、水は十分にありますので 水深が浅く、噴出率が高いと大爆発が発生しやすいわけです。 伊東沖の海底噴火の時の映像にもありましたが コックステイルジェットという弾道を描いて飛行する特徴的な噴煙を伴ったり、 水面上を横殴りに高速で広がるサージを発生させたりします。 明神礁の噴火ではサージで調査船が沈没したのではないかと言われています。 このような激しい噴火の映像は、なかなか捉えることはできないものです。 アイスランドのスルツェイ火山の噴火では そのような爆発的な噴火の映像がごく近くで撮影されています。 「Birth of iland」という映画でで、日本語版のビデオもあります。 レイキャビクのvolcano showというところで入手できます。 ただし、これは海面よりも上の映像です。 残念ながら、このような、 激しい海底噴火を水中で捉えた映像はありません。 ハワイのキラウエア火山では、 1983年からずっと噴火が続いています。 火口そのものは山の上の方にあるのですが 延々と地表や溶岩トンネルの中を流れて やがて海岸に到達します。 そこでは、水と反応して爆発したりもしますが、 爆発を起こす揮発成分が抜けきっているためか 意外なほど静かに水中に流れ込む場合もあります。 そのような場合には、水中を静かに流れる溶岩流の様子を ダイバーが撮影することも可能なようです。 水中の溶岩流は急冷され、すぐに表面にガラスの殻ができます。 これが枕のような形をしていることが多いので「枕状溶岩」と呼ばれます。 この枕は、餅が膨らんではガスが抜けるような感じで 次々に子供を産み落とすように、流れていくのです。 この様子を水中カメラで捉えた見事な映像は結構有名です。 はじめて撮影されたのは1976年頃と思います。 その後、いろいろな撮影者がいたようですが、このごろは コナのアマチュアグループが積極的にやっているようで、 最近のdiscovery channelでも紹介されていました。 くわしいことは、そちらにお問い合わせください。 ただし、これは海底火山の噴火の映像ではありません。 陸上を流れていた溶岩流が 海に流れ込んだあとの水中の映像であって これを、「海底噴火」と呼ぶかは意見が分かれるかもしれません。 (2/12/99) 千葉達朗(アジア航測(株)防災部)
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Question #186 | |
Q |
マグマ溜りに溜まっていたマグマが、噴火に至るまでのメカニズムについて
質問させて頂きます。
マグマ溜りに溜まっていたマグマを地表に上昇させるドライビングフォー
スは、蓄積による圧力増加と気泡の発泡による浮力の増加と習いました。
ここで疑問に思ってしまう事は、蓄積による圧力増加によりマグマに対す る揮発性成分の溶解度が上がる事で、気泡の発泡が起こりにくくならない のかと言う事です。つまり、マグマ溜りでの発泡を促すような現象(温度上 昇・温度下降に基づく結晶分化作用・地震等)の効果を、蓄積による圧力増加 は打ち消す方向に働かないのかと言う事です。例えば、この圧力増加はマ グマ溜りの周囲の岩石(地表に繋がる天井部分も含む)を破壊する方にだけ使 われたりするだけなのでしょうか?火山について勉強したての身ですので、 見当違いの事をお聞きしているかもしれませんが、よろしくお願いします。 (1/30/99) 山口:学生:20 |
A |
質問の現象は,ビールやコーラの瓶を栓したまま振ると泡立ちますが,直ぐに泡 は消えてしまうことに良く似ています.栓を抜くか,瓶が割れないかぎりビールは 自由には泡立たないでしょう. マグマが発泡するには,液体部分(メルト)に融けている揮発性成分量が,その 溶解度を「大きく」上回ることが必要です.このような現象は,冷却による結晶作 用の進行や,上昇による減圧によってもたらされます.マグマを閉じ込めている容 れ物(マグマ溜まり)の体積や形が変化しなければ,栓をしたビール瓶と同じで, メルトが飽和状態からやや過飽和状態になったまま発泡せず,不安定な状態で地下 に居続けようとします.しかし,冷却による結晶作用の進行でメルトの固化が進む と,内容物(メルト+結晶)全体の体積が小さくなるため,容れ物のすき間を補う ように,過飽和状態になったメルトからは気泡が成長します.このような軽い気泡 の成長によって,マグマの平均密度が急に小さくなるために浮力で容れ物に変形が おきることがあります.あるいは,下から新たなマグマが無理やり注入されて圧力 が高まれば,ついには容れ物が破壊されてマグマは上昇し始めることになります. この結果,減圧によってマグマでは急激な発泡がおこり,噴火に至ることになりま す. 大きな地震など外からの振動が,揮発性成分に過飽和状態のマグマに対して,発 泡の引きがねや発泡の促進を行う作用となる可能性が考えられます.この結果,内 圧が高まっている容れ物の変形や破壊がおこり,さらにマグマが激しく発泡・上昇 して噴火が誘発されることがおこりうるでしょう. (2/15/99) 中田節也(東京大学・地震研・火山センター)
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Question #185 | |
Q |
@水中火砕流について、地学事典では水底噴火の場合に熱の保持がありうるとか、ありえないとか掲載されているのですが、実際の話、水底噴火による水中火砕流という噴火はあるのですか?
あるとすれば、その堆積物の特徴を教えて下さい。同じように水中軽石流についても、水底での噴火様式と堆積物の特徴を教えて下さい。
A数年前より、防災上の観点から水中火山岩が注目されております。 水中火山岩といえば火山屋さんより地質屋さんの研究が多いような印象を受けます。また、水中火山岩の分類について未だ判然としない点もあると思います。 火山屋さんの中には、水中火山岩について噴火様式→堆積様式をより明確に認識している方々も居られると思います。 不明瞭な質問かもしれませんが、堆積構造より火山噴火の観点から見た、水中火山岩の分類を行っている研究などがありましたら是非教えて下さい。 また火山学会として水中火山岩の位置づけを教えて下さい。 (1/29/99) しみず:建設コンサルタント:28 |
A |
日本のグリーンタフ地域には凝灰角礫岩や火山角礫凝灰岩などの岩相が非常に多く
発達しています。そのなかには成因的に水中火砕流と考えて良いものが多く含まれ
ています。
水中火砕流は連続性がよく鍵層として有効で、特に軽石流は連続性がよいようで す。南部フォッサマグナでは富士川層群の和平凝灰岩層や丹沢の大沢凝灰岩層など が有名です。繊維状発泡した軽石が変質してあざやかなグリーンのパッチを持って いることが多いから明瞭です。 和平凝灰岩層を記載したFiske and Matsuda(1968)は大規模水中軽石流の特徴と して二重級化構造を持つことを指摘しています。まず、単層内部で、上方に細粒化 する級化構造をもち、粒子の構成でも上方ほど軽石が多く下部ほど岩片が多いとい う特徴があります。さらに、一つの水中火砕流は多数の単層群から構成され、その 中でも全体として上方細粒化と上方薄層化がみられるという特徴です。このような 特徴は、水底で発生した密度流の特徴とされています。 この中でも、上部ユニットのの細粒部分は、ガラスの粒子が多いため石器状に割れ ることが特徴的であり、いくつかの遺跡では石器として加工されたものも発掘され ています。 また、粗粒部分は節理があまり発達しないために非常に大きなブロックとなって崩 壊することが多いようです。 これらの火砕堆積物の分類を他の火山噴出物との関連で系統的に行ったのは中村一 明先生で、このような水中火砕流はW-W-W型と分類されているものに相当すしま す。水中噴火-水中運搬-水中堆積というわけです。 このような水中火山岩の研究は最近では北海道地下資源調査所の山岸先生が精力的 に研究されています。 (2/13/99) 千葉達朗(アジア航測(株)防災部)
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Question #184 | |
Q |
各マグマ(玄武岩マグマ・安山岩マグマ・流紋岩マグマ)の粘性度に関してお尋ねします。
マグマに揮発性成分(成分がマグマに溶けている場合)が多く解けている場合、そのマグマの粘性は
小さくなると本で読みました。又、上記の3種のマグマにおいては、シリカの含有量に応じ玄武岩>
安山岩>流紋岩の順で粘性が上がると習いました。ところが、この3種のマグマの揮発性成分含有量
も、粘性が高くなる順番と同様に、玄武岩>安山岩>流紋岩の順で上がるとこのHPにはありました。
以上から、揮発性成分含有量に応じて決定される粘性度よりシリカの含有量によって決まる粘性度の
方が強いと理解してよろしいのでしょうか?よろしくお願いします。
(1/29/99) クマノミ:学生:19 |
A |
クマノミさんのご質問は,シリカ(SiO2)の含有量が高いほどマグマの粘性は 高い(ねばっこい)が,一方でマグマ中の揮発性成分が多ければ粘性は小さくなり, しかもシリカの含有量の多いマグマほど揮発性成分量は多いから,両者の作用はうち 消すように働くはずである.実際には両者の効果を比較すると前者のほうが大きいの ではないか,というご質問ですね. おおむね,そのようなご理解で良いだろうと思います.マグマはシリカを主成分と する化学組成をもつ液体ですが,シリカが非常に多いマグマでは,珪素の原子のまわ りを酸素原子4個が取り囲むSiO4四面体がお互いに酸素を共有しあって骨組みを 作ります.これが粘性を高くしています.マグマ中の他の元素の陽イオンはそのSi O4四面体をばらしていく役割を果たしますので,それらの多い,つまりシリカ含有 量の少ないマグマほど粘性は低くなります.一方,マグマ中の揮発性成分,主として 水の分子もやはりSiO4四面体をばらしていく役割を果たします.したがってシリ カ量の多い流紋岩質のマグマであっても水が多ければシリカ量の少ない玄武岩質マグ マと同程度にまで粘性は低くなることもありえます.しかし,そうなるのに必要なだ けの水の量は8-10%にもなり,地表に噴出したマグマの溶かし込みうる水の量はそん なに大量ではありませんので,結局,流紋岩質のマグマはたとえ玄武岩よりも多くの 水を含んでいたにしても粘性はそれよりも高いということになります. なお,マグマの温度も粘性に大きく影響し,高温であるほど粘性は下がります.一 般的にシリカの多いマグマほど温度は低いので,このことからもシリカの多いマグマ の粘性は高くなります. (2/25/99) 三宅康幸(信州大学・理学部・地質科学教室)
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Question #181 | |
Q |
火山の噴火の定義を教えてください。教科書などには噴火の一形態として、マ
グマの流出を伴わない水蒸気(ガス)爆発も表の中に入れてあります。しか
し、先日、火山の水蒸気爆発は噴火とは言わないという話を聞きました。用語
の意味を厳密に考えると爆発と噴火はなるほど違う気がしますが、ガスもマグ
マの組成の一部だといえます。液体のマグマの流出を持って噴火というのかど
うか、定義を教えてください。
(1/21/99)
吉永:unknown:unknown |
A |
たとえ「液体のマグマ」だけが噴出する噴火であっても,その噴火が激しくなれば 爆発的なものになります.いわゆる「水蒸気爆発」も,噴火とみなすのが普通です( *).ただし,特殊な条件下で発生したごく小規模な「水蒸気爆発」(**)を噴火と みなすかどうかについては,学者間の議論があります. (*)噴火によって地表にもたらされたマグマ量を研究上重視する立場に立つ場合, 水蒸気爆発の中にはマグマが直接関係しないもの(つまり,噴出物は既存の岩石のみ という場合)もあり得ますから,そのような爆発は噴火としてカウントしない,とい う立場もあり得ます.ただし,防災科学的な視点に立てば,そのような水蒸気爆発も 噴火として当然カウントすべきものです. (**)工事などによる人為作業が引き金を引いたものや,地熱地帯で起きた地滑りが 引き金を引いたものなど. (1/21/99) 小山真人(静岡大学・教育学部)
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