火山についてのQ&A集 | |
---|---|
![]() ![]() | |
Q |
5月に霧島山高千穂峰を登山し、天候不順のため御鉢火口までしか行けなかったので、7月に再度挑戦し、高千穂峰山頂まで行きました。 御鉢火口の縁を歩いていて気がついたのですが、スコリアの堆積が赤い部分と黒い部分とではっきり違いが見受けられます。背門丘側の方が黒いスコリアが多いのはなぜでしょうか? 高千穂峰は、成層火山の山頂にあった火口が溶岩ドームで覆われているとのことですが、御鉢火口は、この溶岩ドームのためにマグマが高千穂火山の弱線上に噴火したと考えていいでしょうか?また、火山学的に高千穂峰の溶岩ドームで覆われた火口が噴火することは将来的にあるのでしょうか? 御鉢火口直下の登山道に赤いスコリアに混ざり少し緑灰色の硬い岩類が見受けられますが、私の感では溶岩流に思えるのですが正解ですか? 少し、長くなりましたがよろしくお願いします。 (7/12/98) 火山研究サラリーマン(北陸在住):会社員:39 |
A |
ご質問には「背門丘の方が」とありますが,どこと較べられているかがわか りませんので,十分にお答えできませんが,以前お答えしました(Question #-78)ように,スコリアの赤/黒は含まれる鉄の酸化の状態によります.一般 には酸素が十分にある状態でゆっくりと冷えると赤くなります.大きなスコリ ア粒子の中には,(空気に接していた)外側が赤く,(酸素がほとんどない状 態で冷えた)中心部が黒いものが見られます. また,厚いスコリア層では地面と大気に接した下部と上部が赤く,その中央部 が黒いという事もあります.背門丘は御鉢火口の東側ですね,どのような状態 でスコリアが堆積したか考えてみて下さい. 高千穂峰に溶岩ドームという「栓」があったために御鉢が現在の位置にでき たかどうかについては,よくわかりません.ただ,高千穂峰の山群は,東から 二子石,古高千穂,高千穂峰,御鉢と,東西に並んだ4つの火山体で構成され ており,その年代は東から西に向かって若いということがわかっていますの で,「栓」が原因と考えなくてもよいのかも知れません.東西に並んだ火山列 からわかるように,このならびにマグマの出やすいところがあるようです.将 来,御鉢の西麓の高千穂河原に新しい火山ができるかも知れません.火口をふ さいだ溶岩ドームを吹き飛ばして噴火が起こるということは珍しいことではあ りませんから,将来的に高千穂峰で噴火が起こらないとは言い切れません. どこの登山道のどのあたりのことかわかりませんので,質問に直接お答えで きませんが,高千穂河原から御鉢へ登山道の1200m付近より上では,登山道の 南側に大きな窪みがあって,それが御鉢の火口縁まで続いているのをご存じで しょうか?実はこの窪みは溶岩の通った跡なのです.御鉢の火口縁は西側が最 も低く,溶岩はそこから溢れ出して西斜面を流下したのです.登山道はこの溶 岩流が作った堤防の上についています.登山道脇のこの窪みの中には厚さが1m 以下の薄い緻密な溶岩が見られます. (7/17/98) 井村隆介(鹿児島大学・理学部)
|
![]() ![]() | |
Q |
国内規模、あるいは世界規模で、火山活動の活発な時期とそうでない時期があると思うのですが、具体的にそれを示すような資料がありましたら、教えていただきたいと思います。また、その中で現在の火山活動の位置づけ(つまり、現在は比較的活動的な時期なのかそうでないのか)を教えていただきたいのですが。
過去に近隣の火山がほぼ同時期に噴火するようなパターンが知られているようでしたら、具体的に教えてください。
(7/11/98)
鈴木 邦彦:高校教員:36 |
A |
ご質問の内容は2つありますが,まず,火山活動の時代的な消長についてお 答えします. 世界の火山活動についてまとめた,Smithonian Institution監修の Volcano of the World(second edition) Geoscience Press, Tucson, AZ, 1994, ISBN 0-945005-12-1 が参考になると思います.それによると,地球全体のマグマの年間平均噴出量 は約4立方キロメートルで,その4分の3程度は,海洋中央海嶺で噴出してい ます.しかし,海洋中央海嶺における活動度の消長については,なにぶん海の 底のことでありよく判りません.一方,日本も含めてプレートの沈み込み帯の 火山の多くは陸上火山を形成し,その活動は人によって観察されてきました. またハワイ島などの海山(ホットスポット)の火山活動も観察されています. これらの観察されている火山の活動度についてみると,その年々に活動したと 報告された火山の数自体は歴史的に急増しているのですが,これは人類文明の 進展にほぼ対応していて,しかも社会的事情で報告数は左右されているので活 動度の消長といえるものがあるのかどうかよく判らないといわざるをえませ ん.ただし,0.1立方キロメートルを越すような量の噴出物を伴う比較的大規 模な噴火は見逃されていないと考えれば,その数は19世紀以降世界中で年間 に0回から4回の回数を数えていて,その回数の時代的変化にはっきりした規 則性は見られません.なお,個々の火山についてみればその火山固有の周期性 が見られることはあります.日本列島で第四紀に噴出した噴出物の量と年代の 関係をまとめるプロジェクトは現在進行中です. ところで,以上は平常時における話ですが,時折,巨大な噴火が起こること があります.例えば鹿児島県の姶良カルデラでは2万5千年前に450立方キ ロメートルを越す噴出物を伴う巨大な噴火が起こりました.この規模の噴火は 日本列島だけでも過去10万年間に約10回という割合で起こっています.ま た,洪水玄武岩と呼ばれる巨大な溶岩が噴出することもあります.例えば北米 西岸のコロンビア台地では1700~1500万年位前に総量15万立方キロ メートルを越すような膨大な玄武岩が噴出しました.中生代末のデカン溶岩台 地などもそのひとつです.このような大規模な噴火のない現在は比較的平穏な 時代というべきかもしれません. もうひとつの質問,近隣の火山が同時期に噴火する例としては以下のものが あります.小アンチルス諸島のプレー火山とセントヴィンセント火山は1日違 いで噴火し,その5ヶ月後にはグアテマラのサンタマリア火山が噴火しまし た.日本では,1983年の三宅島,86年の伊豆大島,89年の伊東沖の噴 火が連続した例があります. なお,以下の本も参考となります. 火山噴火と災害,宇井忠英 編,東京大学出版会 1997年発行、A5版219ペー ジ、定価3700円(税別) (7/15/98) 三宅康幸(信州大学・理学部)
|
![]() ![]() | |
Q |
初めまして。今話題になっている、岩手山麓の網張温泉にある国民休暇村に、7/24~頃に出掛け
る予定にしています。宿泊施設や交通規制などはあるのでしょうか?小岩井農場へも立ち寄りたい
と計画しているのですが…
現地の情報をお知らください。
(7/6/98)
ようすけのパパ:会社員:40 |
A |
地元役場の観光課に聞かれるか,宿泊施設に直接に聞かれるのがよいでしょ
う.
「岩手山の入山規制について」については雫石町のホームページなどを参考に
して下さい.
http://www.town.shizukuishi.iwate.jp/title.html
(7/7/98)
ホームページ管理者
|
![]() ![]() | |
Q |
イタリアのシチリア島の火山が噴火した事の詳細を、お教え願えればと思い、
メールいたしました
妹が旅行に行くようで、詳しいことを知りたいとのことだす
宜しくお願いいたします
(7/3/98)
妹:OL:25 |
A |
シシリー島にあるエトナ山(標高3350m)はしばしば噴火を繰り返していま す.1995年夏頃からも新たな活動を始め,シャワーのように溶岩のしぶきが火 口から飛び散るストロンボリ式噴火をしばしば繰り返し,火口の外にも溶岩が 流れ出ています.この7月1日夜にもやや活発な噴火をしました.質問は,こ の噴火シーンがテレビで放映されたことだと思います.現在,エトナ山の火口 付近への接近は巨大な火山弾が飛来する可能性があるので極めて危険ですが, 火口へ近づかないのであれば特に問題はありません.どこまで登れるかは地元 の観光局におたずね下さい. イタリアの火山については,このコーナーの回答者である小山さんの本が参考 になるかもしれません. 小山真人著「ヨーロッパ火山紀行」ちくま新書 (7/4/98) 中田節也(東大・地震研・火山センター)
|
![]() ![]() | |
Q |
岩手山の活動についての質問です.仮に溶岩を噴出するような噴火が
西岩手カルデラ内で起こったとしたらカルデラ内の沼もしくは帯水層
との接触でマグマ水蒸気爆発が起きるでしょうか?それとも先に水が
枯れてしまって穏やかな溶岩噴出になるのでしょうか?沼はそんなに
深くないと聞きましたがどうなんでしょうか.
(7/1/98)
センダ ヨシミチ:学生:21 |
A |
地下から上昇してくるマグマの温度は、化学組成などによって変わります が、およそ1000℃前後と考えられます。この高温の物体が地表面に到達する と、溶岩流が流れ出したりするわけです。 しかし、地表に達する以前に地下水や湖水などと接触した場合、水は高温の マグマによって熱せられて、1000倍の体積の水蒸気に相変化し、その際に爆発 が発生することがあります。これがマグマ水蒸気爆発と呼ばれる噴火様式で す。ただし、マグマと水の割合によって爆発力はおおきく変化します。マグマ の割合が高く水が少ない場合や、マグマが少なく水が多い場合はそれ程ではあ りません。中間のちょうどよい割合で、しかも水蒸気が封じ込められると、よ り大きな爆発が発生します。 西岩手カルデラ内には、御苗代湖や御釜湖の湖や大地獄谷などの噴気地帯が あり、地下水も豊富であると考えられます。高温のマグマが上昇してきた場合 には、水と接触しマグマ水蒸気爆発が発生することは多いにありうることだと 思います。マグマの関与は不明ですが、大正8年には大地獄谷に直径10mの火口 が生じ、周囲に礫が飛散したという記録もあります。 御質問の、「マグマの熱によって水が蒸発し、枯れてしまってから穏やかな 溶岩噴出になる可能性」ですが、マグマの温度が低く少量で、上昇速度がきわ めて遅い場合には、確かにあるかもしれません。しかしながら、岩手山の場 合、これまでの地質調査結果からみると、地下から上昇してくるマグマの温度 は、それ程までには低くはないのではないかと想像します。 なお、この西岩手カルデラの状況は「空撮岩手山のページ」にあるいくつか の写真をごらんになるのがいいかと思います。URLは、 http://www.geo.chs.nihon-u.ac.jp/tchiba/1wate/Iwate.html です。 (7/7/98) 千葉達朗(アジア航測(株)防災部)
|
![]() ![]() | |
Q |
私は盛岡市に住んでいるので、岩手山の活動を注目しています。6月28日の火山性地震の震源が山の東側に変化したそうです。また、これまで数分程度だった火山性微動も10分以上続いたそうです。これらの変化をどうとらえたらいいのでしょうか。岩手山の東側は民家もあり、ちょっと心配です。
(6/29/98)
かつひこ:会社員:45才 |
A |
岩手山の活動については,日本中の火山研究者も注目しています.
ご質問にお答えすると,この東側の地震は,そのまま地表の噴火地点を示すこ とはないように思います.理由は,比較的深いところで起きているからです. このような地震は,火山の深いところの構造を主に反映していると考えられて います.浅い地震が噴火地点を示す例は,北海道の有珠山など他の火山では報 告されています.しかし,これについても必ずしも一般的ではなく,どこの火 山でもそうだという訳ではありませんので,注意が必要です. 微動については,そもそも発生メカニズムがよくわかっていないのが現状で す.ですから,その継続時間が何を意味するのかは,今のところ不明としか言 えません.ただ,一般的には,継続時間が長くなったり振幅が大きくなったり するのは,火山活動の活発化を示すものだとは認識されています. いずれにしましても,最近の地震や微動の起こり方が,火山活動の活発化を示 していることは確かです.現在,気象庁や東北大学で地震観測網をつくり,こ うした起こり方に注目しています.観測データは他のデータとともに十分に検 討され,大事なことは情報として気象庁から公表されます.今後はこれらの情 報に注意していていただきたいと思います. (6/30/98) 西村裕一(北海道大学・理学部・有珠火山観測所)
|
![]() ![]() | |
Q |
岩手山の件ですが、6/25に臨時火山情報が出され緊迫した状況であると感じております。
危険箇所が大地獄谷周辺と言われており、万が一噴火した際には、岩手山北側の方が
危険に感じられますが、どうなんでしょうか?南側は鬼ガ城と呼ばれる尾根があり、北側よりは
安全な感じがしますがどうでしょうか。
(6/28/98)
齊藤博士:会社員:25 |
A |
岩手山が噴火するかどうかは,現段階では可能性は大きくなりつつあるとは 言えても,確実なことはまだ言えないという状況であるということを念頭にお いて以下をお読みください.
http://www.aist.go.jp/GSJ/~jitoh/opn/iwate/index.html にあります. (6/29/98) 川辺禎久(工業技術院・地質調査所・環境地質部)
|
![]() ![]() | |
Q |
私は時々ですが、家族を連れて三瓶山に出かけます。三瓶山の火山活動については、学生時代に林・三浦(1987)や松井・井上(1971)の研究論文を読んだ記憶があります。しかしその後は、職業がらそういった研究に触れる機会がありません。
そこでお尋ねしたいのですが、三瓶山の火山活動について、最近10年でどのようなことが明らかになってきているでしょうか。できましたら、参考文献とともに教えていただければ幸いです。
(6/24/98) かつて地質学を専攻していた会社員:小売業:33 |
A |
ご質問ありがとうございます. さて,ご質問の三瓶火山に関する研究ですが,最近以下のようなことがわか ってきました. ご存じのように,三瓶火山では,男三瓶山,女三瓶山,子三瓶山,孫三瓶山 の4つの峰々がほぼ円形に並び,そのあいだに窪地(室ノ内火口)がありま す.これらの峰々の成因として2通りの考え方がありました.1つはそれぞれの 峰が独立の溶岩ドームとして形成されたとの考えです.もう1つの考えは,も ともと1個の大きな溶岩ドームであったものが,その後の噴火や侵食により見 かけ上4つに見えるだけである,との考えです.最近の研究では,これらの4 つの溶岩ドームには,それぞれ固有の化学組成と斑晶量があることがわかり, 別々の溶岩ドームである可能性が高くなりました(松元,1994). また,三瓶カルデラについて詳しい重力測定が行われました(小室ほか, 1996).その結果,三瓶カルデラには明瞭な低重力異常が存在し,その形は多 角形状であることが判明しました. そのほかに三瓶山本体ではありませんが,三瓶山に由来するテフラ(火山灰や 軽石)が,中国地方のみならず,最近では北陸や東北地方でも確認されていま す.個々の文献はここではあげませんが,町田・新井(1992)や第四紀学会編 (1996)を参考にして下さい.
松元拓朗(1994)三瓶火山円頂丘溶岩の化学組成.地質学雑誌,vol.100, p.639-641. 小室裕明・志知龍一・和田浩之・糸井理樹(1996)重力異常からみた三瓶カルデ ラの基盤形態.火山,vol.41,p.1-10. 町田 洋・新井房夫(1992)火山灰アトラス-日本列島とその周辺.東大出版 会,276pp. 第四紀学会編(1996)第四紀露頭集-日本のテフラ.352pp. (6/27/98) 星住英夫(工業技術院・地質調査所・地質部)
|
![]() ![]() | |
Q |
鹿児島大学の井村先生にできればおたずねします。実は私も鹿児島大学
法文学部(昭和46年卒)です。よろしくお願いします。
質問ついでにもう少し教えて下さい。
(1)指宿の近くの成川はマール、とありますが噴出物は残っていますか?
地図で見ても地形がよくわかりません。 (2)山川港は伊豆大島の波浮港と同じ成因でしょうか? 爆裂火口跡と覚えています。 (3)加治木の西の方にある住吉池、米丸もマールですが、噴出物は ありますか? (6/24/98) 平木 英治:会社員:49 |
A |
そうですか.開かれた大学を目指しておりますので,鹿児島においでになるこ
とがありましたら,お立ち寄り下さい.さて,ご質問にお答えいたしましょ
う.
(1)成川マールはきれいな円形の火口を残していませんが,そこから出たベー
スサジ堆積物が指宿市の西部に分布していることが知られています.ベース
サージ堆積物中の様々な堆積構造から,成川付近から来たことがわかるので
す.この噴火は池田湖を作った池田火砕流とほぼ同時(5000から4500年くらい
前)に起こったものです.
(2)山川港も波浮港も,上昇してきたマグマと海水が反応して激しい爆発を起
こして作られた火口地形です.爆裂火口の定義は研究者によって違うようです
が,私は出てきたマグマよりふきとばされた既存の岩体の量が多い,既存の岩
体の上に開いた火口について爆裂火口と言ってはどうかと思っています.
(3)住吉池,米丸のマールの噴出物はその周辺でベースサージ堆積物が見られ
る他,米丸マールの火山灰は東南東に約30km離れた福山町の遺跡でも見つかっ
ています.住吉池,米丸マールの噴火はいずれも7500年くらい前に起こったと
考えられています.
(7/3/98)
井村隆介(鹿児島大学・理学部)
|
![]() ![]() | |
Q |
今度、伊豆に行こうと思っているんですが、地形的にどこか面白いところがあったら教えてください。
(6/23/98)
学生21歳:大学生:21 |
A |
ここは火山学会のページなので,火山と関連する地形についてお答えします.
まず,天気のよい日を選んで伊東市の大室山に行って,リフトで山頂に登るこ
とをお勧めします.大室山自体が美しい円錐形の火山(スコリア丘)であり,
山頂にスリバチ状の火口があります.また,大室山から流れ出た溶岩流が作る
雄大な裾野(伊豆高原)を上から眺めることができますし,他の火山(一碧
湖,小室山,矢筈山,天城山など)の地形を楽しむこともできます.
大室山や他の伊豆半島の火山についての詳しい解説は,以下のホームページ や図書にありますので参考にしてください. http://www.ipcs.shizuoka.ac.jp/~edmkoya/Izu/IzuOpen.html 「フィールドガイド日本の火山(2)関東・甲信越の火山II」,高橋正樹・小 林哲夫編,築地書館.(6月末発売予定) 「写真でみる火山の自然史」町田 洋・白尾元理著,東京大学出版会. (6/23/98) 小山真人(静岡大学・教育学部)
|