火山についてのQ&A集

Question #92
Q 単成火山に特に興味をもっています。昨年夏、五島列島の小値賀島に 行ってきましたが今年は福江島を訪問しようと思っています。福江市 西南にはホマーテが8つ以上地図で認められます。この狭い地域に 海上(黒島、黄島等)もふくめて全てホマーテであるのはなぜで しょうか。 (6/18/98)

平木 英治:会社員:49

A
 福江市の西南ではなくて南東には,鬼岳を含む複数のスコリア丘が密集した 玄武岩溶岩からなる地域があります.御指摘の小値賀島も同様にスコリア丘が 狭い場所に密集した玄武岩火山の地域です.これらのスコリア丘は伊豆半島の 大室山と同じような単成火山です.単成火山は地殻が引っ張られている場所に よく出現します(質問42の小山さんの回答も参考にして下さい).福江島や 小値賀島にこのような単成火山が密集する理由は,五島列島周辺の地殻が部分 的に開いているためであると思います.なお,ホマテとは形の割に大きい 火口を持つ火山砕屑丘のことで古くに用いられた言葉ですが,アスピーテ・ト ロイデ・ベロニーテなどと同様に,現在の火山学ではほとんど使用しません. (6/20/98)

中田節也(東大・火山センター)


Question #91
Q 鹿児島県の鰻温泉の東に池底というところがあります。地形的にみて マールのようですが、何か溶岩、スコリアなど火山的な特徴が 残っているかご存知のかたは教えて下さい。 (6/17/98)

平木 :会社員:49

A 鰻温泉の「北西側」の間違いですね.ご指摘のように,鰻池の北西に池底と呼 ばれる円形の窪地があります.この窪みが火口地形であることは間違いないの ですが,その成因についてはよくわかっていません.次の三つのアイデアが考 えられています.(1)付近に分布する池底岳溶岩を噴出した火口,(2)その 南東にある鰻池と同様の爆裂火口,(3)成川,山川(港)と同様のマール. 今のところこの火口から直接噴出したと思われる噴出物は知られていません. (6/19/98)

井村隆介(鹿児島大学・理学部)


Question #90
Q 以前読んだ地学の本に、次の様な内容のことが書いてありました。

「温泉とは本来、地下でマグマが冷えて固まり、最後に水と岩石に成り きれなかった鉱物だけが残り、それが地上に湧き出したものである。 ところが、日本の温泉の99%は、単に地下水が地熱で熱せられただけ である」

そこで質問です。上記の定義に当てはまる残り1%の温泉とは、 どこの何温泉でしょうか。 (6/14/98)

外城 寿哉:大学研究員:33

A 温泉水を分析すると、その水の起源を知ることができます。例えば、温泉水の 水素や酸素の同位体比を調べると、その水が地下水などの循環水に由来するも のなのか、岩漿水(マグマ水)に由来するものなのか、それとも、それらが混 合したものなのかを推定することができます。こうした分析を行うと、ほとん どの温泉で、温泉水の大部分が循環水に由来することがわかります。ただ、す べての温泉で100%循環水に由来するわけではありません。例えば、別府や 箱根ではマグマによる水がそれぞれ約7%と約5%含まれているという分析結 果もあります。

さて、外城さんが読んだ地学の本の中の、99%や1%という数字の出所や、 この一節の前後の文章が、わからないのではっきりしたことはいえません。あ くまでも個人的な感想ですが、もしかしたらこの本の著者は「日本の温泉の多 くで、温泉水の99%が地下水に由来し、残りの1%がマグマ水に由来する」 というようなことを言いたかったのではないのかと感じます。

残念ながら私には、このような定義に当てはまる「残りの1%の温泉」がどこ にあるのかわかりません。もし本当に、そのような温泉があるのならば、私自 身も行って入ってみたいものです。何かの機会に見つけたら教えてください。 (6/16/98)

森 俊哉(東大・理学部・地殻化学実験施設)


Question #89
Q 妙義山や戸隠のような険しい地形を作っている角礫岩について、 質問します。ぼくは、よく山を歩くのですが、この2つの山域の ほか、群馬の武尊山や、茨城の袋田近辺の山並みなど、いつも 険しい地形を作っているように思われます。 どれも、安山岩質の溶岩塊を含んだもののようですが。 あれは海底火山の噴出物だと、昔教わったのですが、最近、あれ は陸上に生じた陥没地にできた湖沼で起こった火山活動であると いう話を聞きました。 火山活動の結果陥没するのではなく、陥没した場所に火山活動が 起こるというのが、なんか、不思議です。 このメカニズムは、どのように考えられているのでしょうか? よろしくご教授願います。 (6/10/98)

山好きな人:会社員:28

A
 火山角レキ岩には大きく分けて3つのタイプがあります。一つは水中に流出 した高温の溶岩が水と接して急冷破壊し、角レキの集合体となったもの。水中 自破砕溶岩といいます。もう一つは、溶岩などの火山噴出物が水に運ばれて2 次的に水中で堆積したもの。最後が、陸上火山体で火口の近くに噴出し堆積し たものです。群馬県の武尊火山の中心部に露出するのは最後のタイプで、袋田 周辺に分布するのは最初のタイプです。もっとも、武尊火山は第四紀前半(約 百万年前)に形成された火山で、袋田周辺のものは1千5百万年前のもので す。
 袋田周辺では、棚倉断層という大きな横ずれ断層が走っており、これが中新 世という時代に横ずれ運動を起こしたときに、断層に沿って陥没盆地ができ、 そこに水中堆積物(陸上の湖でも海でもよい)が溜まって、さらに水中火山活 動が生じています。火山活動の結果生ずる陥没地を陥没カルデラといいます が、最近ではマグマが地下から突き上げることによって地面が円形に隆起し、 その結果多角形の陥没地が形成され、しかるのちにその中でマグマの噴出が起 こるという場合もあるのではないかと考えられています。 (6/19/98)

高橋正樹(茨城大学・理学部)


Question #88
Q 岩手山の噴火は近々あるのか (6/10/98)

TS:会社員:48

A No.76の回答を参考にして下さい. その当時(5月中旬)と状況は特に変わっていませんが,関係者は噴火が起こ りうることを念頭において対処しています. (6/10/98)

中田節也(東大・火山センター)


Question #87
Q 最近は、あまり騒がれなくなってますが、 現在の富士山のマグマの量はどのようになってるのでしょうか? また、そのマグマの量で噴火した場合、 富士山周囲にどのような影響を及ぼすのでしょうか?

(6/10/98)

MAOW:学生:18

A ご質問ありがとうございます。富士山は日本を代表する優美な山ですが、万一 噴火した場合、その影響があまりに大きいこともあり、何かにつけて騒がれる 火山です。さて、富士山は江戸時代の1707年に噴火したのを最後に沈黙を守っ ています。しかし、歴史時代にも絶えず噴火を繰り返しており、現在は比較的 長い休止期間と考えるのが妥当です。さて、ご質問の富士山のマグマの量です が、正確な量は判りません。ただ、地震が起きる場所などから富士山の山頂の 地下20kmくらいの所に直径数kmのマグマ溜があるのではないかと言われていま す。また、最近2000年間についてみると、噴火している時や休止している時は ありますが、マグマが溶岩や火山灰として噴出する量は、100年で0.075km3と ほぼ一定です。ですから、休止期間が長くなるほど次に噴火する時のマグマの 噴出量は大きくなると予想されます。

さて、富士山が噴火した時の影響ですが、どこで、どのくらいの規模で、どの ようなタイプの噴火をするかで変わってきます。最近2000年間について見る と、富士山の山頂からマグマを吹き出すような噴火はなく、北東、北西、南東 斜面で噴火が起きることが多いようです。ですから、富士山がこれまでと同じ ような噴火を今後も続けると仮定すると、これらの地点で噴火が起きる確率が 高いと思われます。噴火の規模ですが、たとえ多量のマグマが地下に溜まって いても、必ずしも溜まっているマグマの全てが噴出するとは限りません。仮に 最悪の災害を考えるなら、これまでに富士山で起きた最大規模の噴火が今度起 きたらどうなるか、を考えるべきでしょう。富士山の噴火の大半は溶岩か火山 灰(や火山レキ)を噴出するタイプのものです。このうち広範囲に大きな影響 を与える噴火は火山灰によるものです。富士山の歴史時代の噴火の中でも最大 規模の噴火である1707年噴火の時には、火山灰のみが約半月間にわたり噴出 し、この時に出た火山灰は南関東一円を覆い、富士山の東麓で約3m、東京でも 5cmくらいの厚さの火山灰が積もりました。火山灰は雪と違って融けませんの で、麓の町が元の状態に戻るのに50年以上かかったそうです。もし、現在、こ の時と同じような噴火が起きれば東名高速道路は止まり、羽田や成田などの空 港も閉鎖され、建物の隙間から入り込んだ火山灰は電子機器にも悪影響を及ぼ し、人間にも呼吸器障害を及ぼすことが予想されます。また、富士山の周辺で は積もった火山灰が雨で流れ出し、河川を埋めて洪水を引き起こすことなども 考えられます。ただし、この噴火が起きた時にどのような方向から風が吹くか により火山灰が積もる場所は変わります。溶岩による災害は富士山のごく周辺 に限られますが、溶岩が町を襲うか山の中で止まるかにより影響は全く異なり ます。 (6/10/98)

宮地直道(静岡県農業試験場・海岸砂地分場)


Question #86
Q 先日、ハワイのキラウエア火山にいってまいりました。黒い溶岩を眺めているうちにふと気がついた のですが、日本の黒い溶岩と違います。なぜ、キラウエア火山の溶岩は緑色の光沢を持っているの でしょうか? 教えてください。 (6/8/98)

熊本のお姉さん:主婦:25

A
 これは困りました。私はハワイに行ったことがないし、緑色の光沢といって もそれだけではどんなものか想像がつきません。たまたま熱水変質を受けて、 緑色になった部分を見たのかもしれないし、ガラス質の溶岩の表面近くでの光 の散乱のために偶然緑色に見える溶岩なのかもしれないし、かんらん石の斑晶 を多量に含む溶岩で、その部分が緑色に見えるのかもしれないし、はたまた、 表面にコケ類や菌類がへばりついていて緑色に見えるのかもしれません。


 明るい緑なのか、暗い緑なのか、割った面が緑なのか、自然の面が緑なの か、緑色の粒が多量に入っていて緑に見えるのか、更に割っても中まで緑なの か、その辺の、もう少し詳しい観察がないと、私には、この質問には答えられ ません。大学にあるハワイの溶岩の標本は、普通の黒い玄武岩です。 (6/8/98)

石渡 明(金沢大学・理学部)


Question #83
Q
 昨年、鹿児島県の鰻温泉に行ってきました。集落というか民家の裏手からも噴気が有りびっくりしました。通常、観光地などでは噴気地帯は立ち入り制限などが有るようですが、とても心配でした。と同時に、噴気の大好きな私は、大変うらやましく思いました。住んでいるひとは大変かもしれませんが。
 鰻温泉の場合は、多分先に噴気があってそこに人が住むようになったのかと思いますが、逆に、何もなかったところから噴気や火山が始まりつつあるところは、どこかに有るのでしょうか?火山に寿命があるとすれば、生まれたての火山もあるような気がします。できれば、大草原や町中で小さな噴気が始まりつつあるところを見物したいのですが、そんな場所はあるのでしょうか?
  (5/26/98)

島田太平:研究員:34

A
 噴気が好きだなんて物好きですね。噴気に巻き込まれるとガス中毒の恐れが あるので十分に注意してください。私も火山ガスの研究を専門としているので 噴気は大好きです。
 1943年に始まる昭和新山の活動はなんの変哲もない畑に地割れが生じて 噴気が現れたのが始まりだったそうです。また1990年11月には雲仙岳の 山頂から突然噴気が現れやがて噴火につながりました。このように噴火の初期 にはなにもなかったところから噴気があらわれることがあります。昭和新山や 雲仙岳の溶岩の種類はデイサイトという粘性の高い溶岩です。このような溶岩 はゆっくりと地表にあがってくるので噴火の前に噴気の出現などの現象が観察 されるのかも知れません。逆に粘性の低い伊豆大島のような溶岩の場合は亀裂 が生じて一気に上がってくるので噴気の出現が観察されるいとまがないのかも 知れません。
 現在のところ残念ながら私はそのような現象がおきつつある火山は知りませ ん。もしあったら火山学者が駆けつけていると思います。 (5/27/98)

大場 武(東工大・草津白根火山観測所)


Question #82
Q 今日質問させていただいた「困ったちゃん」です。 質問ではなく、お礼がいいたくて、またメールさせていただきます。早々に回答してくださいまして、どうもありがとうございました。うれしくて、会社の人に言ってまわってしまいました。さっそくお教えくださいましたサイトを見ました。本当に、本当に、どうもありがとうございました。 (5/25/98)

困ったちゃん:会社員:27

A このコーナーの回答は特定の研究者に偏ることがないようにするため,質問内 容によっては,1週間以上回答に時間を要する場合があります.今回の場合は このコーナーの管理者の所属に関係ある内容でしたので直ぐにお答えできまし た.回答の順番は質問の順では必ずしもありませんので御了承下さい. (5/28/98)

ホームページ管理者


Question #81
Q はじめまして。 私はコンサルタントに勤めているのですが、世界中の火山関連機関を調べることになってしまいました。アメリカやインドネシアなどの国は文献である程度まで調べられたのですが、その他の国(中南米、アフリカ等)につきましては、全く手がかりがなく、困り果てております。そこで、どのようにしたら調べることができるのか、お教えください。また、「世界中の火山関連機関のリストがあるはず」と聞いたのですが、本当にあるのでしょうか。あるとしたらどのように手に入れたら良いのでしょうか。 火山に関する質問とは離れていると思うのですが、どうぞ、よろしくお願いいたします。 (5/25/98)

困ったちゃん:会社員:27

A
 世界中の火山観測所の組織(WOVO:WorldOrganizationofVolcano Observatories)が発行しているリスト,"Directoryofvolcano observatories1996-1997",WOVO/IAVCEI/UNESCO,Paris,1997には,世界中の ほとんどの観測所が網羅されています.市販はされていません.お近くの大学 付属の火山関係の観測所や施設にはおいてありますので,閲覧可能だと思いま す.

なお,この1994年版は以下のフランスのIPGP(パリ地球物理学研究所)のWeb siteでも見ることができます.

http://volcano.ipgp.jussieu.fr:8080/wovo/intro.html

観測所以外の研究グループについては例えば以下のWebsite(Linksto VolcanoWWWsites(scientific))が参考になるでしょう.

http://www.geo.mtu.edu/~boris/otherscie.html

(5/25/98)

中田節也(東大・火山センター)


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