火山についてのQ&A集

Question #25
Q
 背弧海盆の形成には,どのような要因が考えられているのですか. (5/30/97)

もんちぽーら:会社員:25

A プレートテクトニクスの教科書がたくさん出ています.是非,それで背弧海盆 について勉強して下さい.

ここでは火山に関して,一般の方からの質問を受け付けています.

中田節也(東大・火山センター)


Question #24
Q
 溶岩,火砕流,凝灰岩,降下テフラ,土石流などの火山性堆積物は,フィールド調査の際にどのような点に注意して観察するのですか. 露頭における識別方法やそれぞれの堆積物に認められる特徴的な堆積構造などを教えて下さい. また,火山性堆積物の調査法に関する文献があれば紹介して下さい・ (5/30/97)

ふぁびあ:学生:23

A ふぁびあさん。こんにちは。 最初の点について学ぶには実際に現地に行って堆積物を直接観察するのが一番 です。例えば,秋の火山学会では地質巡検が恒例になっていますが,このよ うな機会に専門の研究者がいかにものを見ているか観察するのが一番だと思い ます。2番目の点は,とりあえず,日本語で書かれたものはありません。基 本的な所は岩波書店の岩波講座地球科学の第7巻の「火山」がいいと思いま す。たいていの大学図書館にあるかと思います。 また,CD-ROMで火山岩の露頭集を刊行する計画が今進行中です。これは,参考 になると思います。

林信太郎(秋田大学教育学部)


Question #23
Q
 九州西部に分布する玄武岩(天草下島や川内),溶結凝灰岩(天草下島や長島)などについて特徴・成因などを教えて下さい.
  (5/30/97)

あくろぽーら:学生:22

A 地学の学生さんの質問のようですので,以下の図書を参考にご自分で是非勉強 してみて下さい.文献を次々に調べることによって,一言では答えきれない, いろいろな特徴や成因モデルがあることが分かると思います.

日本の地質9.九州地方.共立出版株式会社.1992年. 大きな本屋さんや図書館,特に大学の図書館には必ずあると思います.

中田節也(東大・火山センター)


Question #22
Q おのおの噴火について,どのような方法でVEIを決定するのか教えて下さい (5/29/97)

野元洋一:会社員:29歳

A VEIには0〜8のレベルがありますが,その値は噴出したテフラの総量(m3),噴 煙柱の高さ(km),記述された言葉やその他のデータ(噴火のタイプや継続時 間など)を総合して決定されます.最近起こった噴火であれば,テフラの総 量,噴煙柱の高さと言った定量的なデータでVEIを決めることができますが, それ以前の噴火についても「激しい(violent)」とか「おとなしい (gentle)」と言った記録中の記述から,その値を推定できるようになってい ます.具体的な基準を説明するにはずいぶんとスペースを必要としますのでこ こでは説明できませんが,ご興味があるのでしたら,中村一明著「火山とプレ ートテクトニクス」などの本をご覧になるとよいと思います.

井村隆介(鹿児島大学理学部)


Question #21
Q 千葉大学の学生です。授業で房総半島の地質調査をしました。 そこにあった、30万年前ぐらいといわれている火山灰の地層が ありました。どこの火山から飛んできたのか分かりません。 また、地層の鉱物の様子や、比率も大まかですが調べたのですが、 そこからどうやって火山を特定するのでしょうか。 調べ方を教えて下さい。 (5/26/97)

千葉大の新入生:学生:18

A 学生実験のレポートのようですね.せっかく途中まで調べたのですから,次 の本を参考にどこから飛んできたのか,自分で勉強して下さい. 町田・新井著「火山灰アトラス」東大出版会. これは地学の図書室に必ずあります.

火山ごと,噴火ごとに,含まれる鉱物の種類,量比,鉱物やガラスの屈折率, 地層の広がり(厚さ)や色などに特徴があります.これまでの蓄積されている 研究資料(たとえば上の本)を参考にすれば,ある程度,飛んできた火山と年 代を特定することができるはずです. 最後に,自分でこれらの作業をすることが実験レポートの意義あるところで す.

中田節也(東大・火山センター)


Question #20
Q 降下テフラの到達距離等に関していくつかお伺いしたいことがあるのですが、 降下テフラの到達距離と噴火マグネチュードの間にはどのような関係があるのでしょうか。例えば,噴火マグネチュードが6の場合,到達距離が80kmであるというようなおおまかな目安が存在するのでしょうか。また、降下テフラの到達範囲は噴火時の風向および風速に影響されると思うのですが,降下テフラの到達範囲への風の影響におおまかな目安が存在するのでしょうか。降下テフラの堆積厚は火山からの距離によって大きく影響されると思うのですが,火山からの距離と降下テフラの堆積厚の関係は数式で表すことができるのでしょうか。次に噴火マグネチュードについてお伺いします。個々の火山で発生する可能性のある最大規模の噴火マグネチュードが存在するのでしょうか。例えばある火山で発生する可能性のある最大規模の噴火は噴火マグネチュード5であるといったものは存在するのでしょうか,また、噴火マグネチュードごとの発生頻度を数値で表すことは可能でしょうか。それから噴火マグネチュードと火山爆発指数(VEI)の間にはどのような関係が成り立つのでしょうか。よろしくお願いします。 (5/22/97)

野元洋一:会社員:29歳

A 噴火マグニチュード(噴火M)は群馬大学の早川由紀夫さんが「噴出したマグマ の総重量を用いて噴火の規模を表現するとよい」と1993年に提唱されたもの で,具体的には噴火M=log(噴出マグマ質量kg)-7で求められます. さ て,ご質問の降下テフラの到達距離と噴火Mの関係ですが,ご質問のような単純 な目安や関係式は存在しません.なぜなら,噴火Mは噴出マグマの質量で決まり ますが,噴火によって生産されるテフラの量は噴火様式でずいぶん異なる上, 降下テフラの到達距離はご指摘のように主として上空の風速によって決定され るからです.たとえば,ハワイの火山のように溶岩をダラダラと流出し続ける ような噴火では,ほとんどテフラは生産されませんから,たとえ噴火Mが大き くとも遠くまでテフラを飛ばすようなことはありません.また,トータルとし て同じ量だけテフラが噴出しても,上空の風速は場所や季節によって大きく変 わりますから,降下テフラの到達距離もその時々で変わるわけです.したがっ て,降下テフラの到達距離と噴火Mに単純な関係を求めることはできないわけ です. 降下テフラの到達範囲と風の影響に関してですが,噴煙柱の高度を限 定し,特定の大きさのテフラ粒子に注目すれば,風速と到達距離のおおよその 目安は存在します.噴煙柱の高度に関する詳しい議論はとても難しいので省き ますが,特定の大きさのテフラ粒子に限定する必要があるのは,大きな粒子ほ ど風で遠くに運ばれる前に落下してしまうからです.Carey&Sparks(1986) によると,噴煙柱高度が20km・風速30m/sの場合,密度2500kg/m3・直径6.4cm の粒子は火口から約10km,密度2500kg/m3・直径0.4cmの粒子は火口から約30km それぞれ運ばれるということです. 火口からの距離と堆積厚についても,噴 煙柱高度,上空の風環境などによってそれぞれ変わってきますので,火口から の距離によって指数関数的に薄くなっていくということ以上にすべてのテフラ について完全に一般化できるような公式は存在しません.ただし,比較的短時 間に放出される1回の噴火によるテフラに限定すると,きれいな関数式で近似 できることがあるようです. 噴火Mは提唱されてから日が浅いため,個々の 火山で発生する可能性のある最大規模の噴火Mについて十分に検討された研究 例はないようですが,過去の噴火事例を集めていけば各火山において1回の噴 火で噴出しうるマグマの量をおおよそ見積もれるようになるかも知れません.
 噴火Mと発生頻度については,噴火Mの提唱者である早川さんが,1994年に最 近2000年間における日本の224の噴火事例をもとに考察しています.それによ ると,最近2000年の間に日本ではM=1級の噴火が47回,M=2級が46回,M=3級が 70回,M=4級が46回,M=5級が15回起こっています.古くて小さな噴火ほど収集 もれがあると考えられますから,M=1級やM=2級の噴火の頻度は実際にはもっと 高いものになると考えられます. 最後に噴火Mと火山爆発指数(VEI)の関係 についてです.VEIは爆発的噴火の定性的な記載から求められるものですか ら,溶岩だけを流出するような噴火の規模を示すことができません.これに対 し,噴火Mはマグマを噴出したどのような噴火の規模も表現できるという点で 優れています.両者の値を変換できるような関係式は存在しませんが,爆発的 噴火についてはVEIでも噴火Mでも噴火規模を評価できます.早川さんは,噴火 M提唱以前に広く受け入れられていたVEIに噴火Mの値が近づくように噴火Mの計 算式で7を引くようにしたそうです.したがって爆発的噴火だけの場合は,およ そVEI=噴火Mとなっています.

井村隆介(鹿児島大理学部)


Question #19
Q 初めて質問させていただきます。 日頃より主に伊豆半島でダイビングを楽しんでおります。 この2ヶ月ほど水深2mから5mの海中が赤く濁っています。 赤潮とは程遠く天候の良い日中でも海中は夜のようです。 海底火山の噴火による火山灰が原因と聞きました。 その様な事があるのでしょうか。 よろしくお願いいたします。 (5/21/97)

青木:会社役員:45

A 今年の4−5月の40日間,伊豆半島沖から静岡県沖にかけて海底地質調査を していた地質調査所の研究員にたずねたところ,「今年は,赤潮が異常発生 していて,海面には真っ赤な帯が東側にずっと伸びていた」との返事でした. 海底噴火というより,遠方の赤潮がながれついたのではないでしょうか?漁業 関係者などに,今年の赤潮の状況を再度問い合わせして見られることをお勧め します.

宇都浩三(工業技術院地質調査所)


Question #18
Q 火山活動と気候変化について教えてください。 (5/18/97)

中倉:学生2回生:20

A
 爆発的な火山噴火は,大量の火山灰・火山ガスを大気中にもたらします.細 粒の火山灰は成層圏を漂い,一時的に日射量を減少させますが,やがてその大 半は地表に舞い降りてしまいます.一方,火山ガス中にふくまれる二酸化イオ ウは,光化学反応によって硫酸液滴となって数年程度成層圏に滞留し,太陽放 射を散乱・吸収して地表温度を低下させる要因となり得ます.これに対し,火 山ガス中にふくまれる二酸化炭素は地表面からの赤外放射をさえぎるため,そ の量が大量であれば長期にわたって大気温度を高める温室効果をもたらし得ま す.
 このように火山噴火がもたらす物質には,地表温度を高める要因となり得る ものと低める要因となり得るものとがふくまれ,その中には短期的な効果をも たらすものと長期的な効果をもたらすものとがあります.それぞれの物質の割 合や量は,火山によって,あるいは個々の噴火によって異なるのが普通です.
 実際に大規模な火山噴火と時を同じくして気候変化があったかどうかを歴史 記録や考古学的・地質学的記録から調べると,広域的な気候変化(とくに数年 程度の寒冷化)と相関がみられる例がありますが(たとえば,1783年のアイス ランドのラカギガル割れ目噴火や1815年のインドネシアのタンボラ火山の噴火 にともなう広域的な寒冷化),必ずしもそうでない例もあります.もちろん気 候変化の要因は火山噴火だけではなく,エルニーニョなどの海洋変動や,人間 活動に起因する物質の放出が原因となる場合もありますから,火山噴火と気候 変化の関係を調べる際には注意が必要です.

小山真人(静岡大学教育学部)


Question #17
Q Basalt volcanoes とAndesite volcanoes と Rhyolite volcanoes の違いを解りやすく説明して下さい。

(5/12/97)

Kamimura: :学生:22

A basaltは玄武岩といって珪酸の量が53.5%以下の火山岩,andesiteは安山岩で 53.5%から62%,rhyoliteは流紋岩で70%以上の火山岩を指します.62%から70%の ものはデイサイト(dacite)と呼びますが,ここではandesiteに入れておきまし ょう.

マグマは主に珪酸の量によって粘り気が変わってきます.basaltは粘り気が小 さく,andesite→dacite→rhyoliteと珪酸が多くなるにしたがって粘り気が大 きくなってきます.そのため噴火の様式が大きく変わってくるのです.粘り気 が小さいbasaltvolcanoは比較的穏やかな噴火で,マグマのしぶきを吹き上げ るような溶岩噴泉やストロンボリ式噴火,薄くて比較的速く流れる溶岩流など が特徴的です.andesitevolcanoでは,粘り気が大きな火山弾を数km先まで飛 ばすようなブルカノ式噴火や,厚くてゆっくりと流れる溶岩流や溶岩ドームを 作ります.rhyoliteでは大規模な火砕流噴火を起こすことがあります.

このように噴火様式が違うと火山の形も変わってきます.例外もありますが, 大体次のような事が言えるでしょう. basaltvolcanoは比較的ゆるやかな傾斜の火山体を作ります.ハワイやアイス ランド,日本だと伊豆大島などがあります.andesitevolcanoは日本のような 沈みこみ帯に多く見られ,桜島や浅間山が典型的です.浅間山の鬼押し出し溶 岩はandesiteの溶岩流の例です.雲仙岳のような溶岩ドームはdaciteによく見 られます.rhyolitevolcanoはandesitevolcanoと似たところもありますが, 大量(100立方km以上)の火砕流と火山灰を噴出して大きなカルデラをつくるこ とがあります.日本のほとんどを覆っているAT火山灰,南九州を覆っている入 戸火砕流と,その噴出でできた鹿児島湾奥の姶良カルデラはその典型例です.

川辺禎久(工業技術院地質調査所)


Question #16
Q 九州地方にある第四紀の地形・地質はどのようなものがありますか。 (5/6/97)

広大3年:学生:21

A 九州地方には、新しい時代(地質学の言葉では第四紀−今から過去にさかのぼ ること160万年間)の火山が多くありますので、地形・地質も火山に関連した ものが多くあります。もちろん火山に関係ない地形・地質もありますが、それ はほかにあたって調べていただくとして、以下のようなことがらが主要なもの です。北から順に;久重火山群:比高500〜1,000mの溶岩円頂丘(ド−ム)が約 10個、それに溶岩流・成層火山と南北の裾野などからなっている.溶岩円頂 丘群は東から黒岳・中岳(九州本土の最高峰,標高1,791m)・三俣山・久住山・ 星生山・黒岩山など.平治岳は玄武岩と輝石安山岩の小成層火山.南の裾野の 久住高原と北の飯田(はんだ)高原は,火砕流と泥流による緩斜面. 阿蘇カルデラ:火砕流台地の中に大規模なカルデラのくぼ地があり、その内側 には中岳などの中央火口丘群がある。27万ー9万年前の阿蘇火砕流の4度の大 規模な噴出によってカルデラが形成された.中央火口丘はほぼ東西に配列する 十数個の成層火山・火砕丘・溶岩流・溶岩ドームなど. 雲仙:長崎県島原半島に位置.半島中央部には普賢岳(1,359m)を含む主にデ イサイト質の溶岩流・溶岩ドームからなる複数の火山がある.これを取り巻い て火砕流,土石流堆積物からなる火山麓扇状地が発達. 霧島:鹿児島・宮崎の県境に位置する。北西−南東に長い30km×20kmの地域 に、20以上の小さな火山体や火口がある。約3.5万年前に夷守岳で大規模な山 体崩壊が起こった。その後、約2.5万年前から今日まで続く活動によって韓国 岳・新燃岳・高千穂峰・御鉢などの火山体、白紫池・不動池などの単成溶岩流 および大幡池・御池などのマールが形成され、小林軽石・牛のすね火山灰・御 池軽石・高原スコリアなどのテフラが噴出した。 南九州:鹿児島湾の北端には南北l7km,東西23kmの姶良カルデラがある。カル デラの大部分は海中に没しているが,陥没地形はきわめて明瞭で,おもな火砕 流(入戸−いと−火砕流)の噴出(約2万5千年前)によってできた。いわゆる シラス台地が広く分布していてその大部分は入戸火砕流堆積物に相当し,約 30km3のマグマの噴出によって生じた。桜島は姶良カルデラ南部にある複合成 層火山,約2万年前に活動を始めた。まず北岳(1,118m)が成長し,次いで 4000年前には南岳(1,070m)が南北に半ば重なりあって生じた。山麓には多く の側火山(鍋山:軽石丘,権現山:溶岩ドームなど)がある。

このほか、福江島などの島々、金峰(キンポウ)、由布、鶴見、開聞、それに 薩摩硫黄島や諏訪之瀬島などの島々も火山です。 個々の火山などは平凡社の新版地学事典(1996年刊)のそれぞれの項目お よび付図31日本の火山を参照して下さい。

三宅康幸(信州大学理学部)


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