火山についてのQ&A集

Question #365
Q さらに連続の質問ですいません
山梨県の地形図を見ると富士山を取り囲むように赤石山脈と御坂山地が円弧を描いています。得に御坂山地の稜線はは富士山の底面の円と相似形の円弧を描いてるので(うまく表現できないのですが)いかにも富士山を中央火口丘(!)に持った外輪山のようにも見えてきてしまいます。これは全くの偶然なのでしょうか。また偶然だとしても御坂山地が外輪山の一部を思わせる、綺麗な円弧を描いているのは何故なのでしょうか (12/29/99)

yoshiaki:大学生:24

A
 まず地形的に,「取り囲んでいる」かですが,御坂山地から富士川谷にかけての山 地は,たしかに円弧状をしているように見えます.しかし,東側の丹沢山地の尾根の 方向は東西で,富士山を取り囲む方向とは直交します.また,南側にはそのような地 形は全くありません.富士山を取り囲むきれいな円弧状の地形があるというには非常 に無理があります.次に,地質学的には,御坂山地から富士川谷にかけては、新第三 紀の海成層や火山岩類が分布しています.富士山や小御岳から噴出した火砕流などは 分布していません.また富士山を取り囲むような、環状の正断層も知られていません .したがって,富士山のまわりにカルデラがあるというのは,地形学的にも地質学的 にもまったく支持できないと思います.
 では,なぜ円弧を描いているかですが、富士山は、二つのプレートの衝突境界のほ ぼ真上に位置しており特に地殻の厚い伊豆バーと呼ばれる部分が,日本列島側に楔状 に食い込んだ位置にあります.そのため,その北側や西側には,主に海底火山の噴火 でできた厚い地層が日本列島側に次々と衝突することによって押しつけられ圧縮され 変形した地層が分布しています.全体として東西方向に軸を持つ褶曲構造が発達しつ つ,やや北に凸に曲がっていることも知られています.
 また,最近の地殻変動で考えると,御坂山地の北に位置する甲府盆地は,ほぼ三角 形をしており,最近数十万年間に急激に沈降していることが知られています.また, 盆地の南側には東西性で南傾斜,南側隆起の逆断層があります.大まかにいえば御坂 山地全体が,甲府盆地側すなわち北側に移動しつつ隆起ていることを意味します.こ れは御坂山地が北に凸の弧状をなしていることと調和的です. (1/5/00)

千葉達朗(アジア航測株式会社・防災部)


Question #364
Q 連続の質問お許し下さい。
私は幼い頃から火山に興味を持ち得に三宅島には魅せられ5.6回通ってるのですがその三宅島について質問させて下さい。
@ここの所、噴火が21年周期になっています。実際『次の噴火もそろそろなのでは』とおっしゃる島民の方もいました。これに関して気象台で2004年付近に焦点を合わせ観測体性を強める・・っと言った事は行われるのでしょうか。それとも21年周期説は偶然による全く意味のないものなのでしょうか
A伊豆、伊ガ谷地区で近年ほとんど噴火がおきてないのは何か理由があるのでしょうか
B幾つかの83年噴火の記録本をみると”最後のバスが阿古地区を去ろうとした時、真上の鉄砲場に火柱があがった。”という記載があります。しかし正式な記録にはその辺には火口は書かれてないし、実際に行ってみてもその辺りに火口地形は見当たりません。実際の所、阿古の真上で噴火が起こったという事実はあるのでしょうか。
C伊豆大島の噴火割れ目が富士山のと同じですべて一定方向を向いてるのに対し三宅島の割れ目は放射状に分布しています。この違いはどうして起こるのでしょうか。

  以上、よろしくお願いします。 (12/29/99)

yoshiaki:大学生:24

A (1)過去4回の噴火が22年プラスマイナス2年で発生しているという事実を,偶然と いってしまうのは大変難しいと思います.したがって,2004年をにらんで観測体制を 強めるということはもちろん着々と行われています.東京都,東大地震研究所を中心 とした大学のチーム,防災科学研究所,気象庁などが,21世紀初頭の噴火を想定して ,三宅島の監視を強めています.最近のデータでも,地下でのマグマの蓄積が,前の 噴火以降,順調に進んでいることが明らかになっています. (2)放射状に並んだ側火口列のうちのどの方向が活発に活動するのか.それは、ど のようなメカニズムによるものなのか,まだ,観測期間が短いのでわかっていないと 思います.ただ,三宅島では同一方向の割れ目火口が,繰り返し活動する傾向がある ようです.1940年と1967年の火口列はほとんど同じ方向です. (3)1983年の割れ目火口列は村営牧場から新澪池にむかう,やや弓なりの直線上に 並んでおり,それ以外の火口は知られていません.少なくとも阿古の直上で噴火した という事実はないと思います.おそらく溶岩流の先端では次々に樹木に火がつきとき どき大きな火柱があがりましたから,それを見たのではないかと想像します.記録で も「火柱」とかいてあるので,正しい表現だと思います. (4)山体に全体に加わっている広域応力の違いが原因です.プレートの衝突境界に 近い富士山や伊豆大島では,それをのせているフィリッピン海プレートの進行方向で ある北北西南南東方向に圧縮する力が相対的に強いくなっています.そのため,それ に直交する方向の引っ張りの力が働き,進行方向と平行する割れ目噴火や割れ目火口 列が形成され安いようです.それに対して,広域応力があまり偏っていない三宅島で は,ほぼ放射方向に火口列が並んでいます.ただ,三宅島でも火口列を良く見ると, 南西方向に伸びる火口列は弓なりに曲がっています.これは広域応力を反映している といわれています. (1/5/00)

千葉達朗(アジア航測株式会社・防災部)


Question #363
Q 映画”ダンテズ・ピーク””ボルケーノ”について質問させてください。
まずダンテ〜について。劇中の噴火の流れとして@マヨン山を思わせる尖った成層火山がA震度6クラスの地震とともに噴火を開始しB水のような溶岩を流しC最後に山そのものを吹き飛ばす大爆発、っといった流れですが、@の様な山がBのような溶岩を流すのか、またBのように玄武岩質の噴火に続いてCのような噴火が起こり得るのか疑問です。全体の流れとしてBが余計なのではと思うのですがどうでしょうか。

 次にボルケーノについて。玄武岩質の単生火山形成のパターンとしてパティキュリン山とか伊豆の大室山とか、まずスコリア丘を形成しその麓から溶岩を流す、というものだと認識してるのですが映画の中ではいきなり溶岩噴泉が上がっています。こういう事もあり得るのでしょうか。また灼熱の溶岩の上に飛び下りあっという間に体が溶けてしまうというシーンがありましたが、たかだか1000度くらいであのようになってしまうのでしょうか。岩波文庫の『火山』という本で”流れ出たばかりの溶岩でもその上をピョンピョン飛び跳ねるようにしてれば歩ける”っといった文を読んだ記憶があります。実際どうなのでしょうか (12/29/99)

yoshiaki:大学生:24

A 1997年に火山を描いた映画がたてつづけに公開されましたね.どちらも映画館で 見ましたが,火山を扱った映画として,どちらもそれなりに楽しめました.

まず“ダンテズ・ピーク”についてです. “ダンテズ・ピーク”のモデルとなった火山は,アメリカのカスケード地方にあ る,1980年に大噴火を起こしたセントヘレンズ山と思ってよいでしょう.セント ヘレンズ山は,富士山に似た安山岩質溶岩,火砕岩からなる,円錐形の成層火山 でしたが,山体内へのマグマの貫入で変形が進み,大地震が引き金となって崩 壊,プリニー式噴火,火砕流,ブラスト,岩屑なだれが発生しました.“ダンテ ズ・ピーク”に描かれた火山活動と比べると,溶岩噴泉と流れの速い溶岩流を除 いてよく似ています.また映画の最後で映されるダンテズ・ピークは,崩壊後の セントヘレンズ山そっくりです. カスケード地域の火山は安山岩質の火山が多く,玄武岩質の火山に特徴的な,溶 岩噴泉,流れの速い溶岩流はあまり見られません.また玄武岩質の火山噴火に, 規模の大きな火砕流はあまり起きません.溶岩噴泉や流れの速い溶岩流の部 分は,おそらく映画としての脚色がなされている部分です.安山岩の厚くてゆっ くりと流れる溶岩では,やはり絵として面白くないということなのでしょう. もっとも火口が異なったり噴火が進むに従って,異なる組成のマグマが噴出する ことは,ありえないことではありません.例えば,南九州,池田火山の噴火で は,まず水蒸気爆発が起こり,ついで安山岩質のスコリアが噴出し,ついでデイ サイト質の降下軽石,火砕流が発生しています. なお“ダンテズ・ピーク”は,アメリカ地質調査所カスケード火山観測所が考証 に協力しており,個々の火山活動を描くという点では,致命的な間違いはそうあ りません.それでもややおかしなところ,誇張されているところなどがあり,こ の映画公開と同時に,カスケード火山観測所では「“ダンテズ・ピーク”よくあ る質問集」をweb上で公開しています.また私はこのFAQ集を日本語訳して公開し ているほか,千葉達朗さんのwebページにも“ダンテズ・ピーク”に関するページ があります.よろしければ以下のURLを参照してください. DANTE'S PEAK FAQ'S ダンテズ・ピークFAQ'S (DANTE'S PEAK FAQ'Sの日本語訳) 「ダンテズ・ピーク」を火山学的にまじめに考えるページ “ボルケーノ”のほうは,“ダンテズ・ピーク”に比べ火山学的にやや荒唐無稽 な描写が多く,科学考証という点ではあまり高い評価を与えることはできませ ん.ちょっと首をひねるような描写が目につきますが,疑問に思われたいきなり の溶岩噴泉は,必ずしも間違いではありません.単成火山でも火砕丘がほとんど 成長せずに,溶岩流を流しただけの火山というものも,東伊豆単成火山群などに あります.単成火山ではありませんが,ハワイのリフトゾーンや伊豆大島の側火 山にも,スコリア丘がほとんど成長せずに,溶岩噴泉と溶岩流を流す活動をした ものがあります. 一方,ご指摘の溶岩流の上に落ちただけで,半ば一瞬に蒸発してしまうという描 写などは,誇張が過ぎる描写のひとつと言ってよいでしょう.ハワイなどでは, 表面だけが黒く固化した溶岩流の上を,「ピョンピョン飛び跳ねるよう」に歩く ことができたこともあるようです.ただし非常に危険なことには変わりなく,ハ ワイ火山観測所には,溶岩流を踏み破ってしまい,大やけどを負った研究者のズ ボンが展示してあります. (12/31/99)

川辺禎久(工業技術院・地質調査所・環境地質部)


Question #362
Q 火山ができるまでの道を教えてください。
どこからはじまって、どのくらいで火山は死んでしまうんですか?
それとも火山は永久に噴火し続けるんですか? (12/22/99)

ラン:中学生:15

A 火山の寿命についての質問だと思います.火山の寿命にはいろいろあります.長いも のの代表は,ハワイのようなマントルの深部から熱い物質がわき上がっている場所に できる火山(ホットスポット火山)で,数百万年近くも活動が続いています.日本の ように,海洋プレートが大陸プレートの下に沈み込んでいる場所にできる火山(島弧 型・大陸弧型火山)では,数10万年程度の寿命を持つ火山が多いようです.例えば箱 根火山は50万年近くも活動した老齢の火山ですし,富士山や伊豆大島の三原山は数万 年の年齢を持つまだ若々しい火山です.一方,同じ島弧型火山でも地殻が引っ張られ ている場所にできた伊豆半島の大室山は例外で,一回だけの噴火活動をした火山です .ただ,寿命の長い火山だからといって,いつも溶岩を出しているわけではありませ ん.火山は長い時間をかけてゆっくりゆっくり成長するのです. (12/30/99)

中田節也(東京大学・地震研究所・火山センター)


Question #355
Q 初めまして。今、温泉について調べていくうちに火山にたどり着いてしまいました。火山が噴火して温泉ができる歩みを調べているんですが何かいい方法で調べることはないでしょうか?できれば、北海道の駒ヶ岳のことについて調べているんですけど・・・。そして、昔、森町の濁川でも、噴火して温泉ができたと聞いています。そのことについても詳しく教えていただけませんか? (12/17/99)

326:学生:18歳

A こんにちは。 火山のまわりに温泉が多いのは,火山活動に伴ってマグマが浅いところまで上昇し, そのマグマが熱源となって地下水を暖めて温泉を作るからです。最近,火山活動とは 直接関係のない場所で,深いボーリングによって温泉がいたるところに出ていますが ,これらの多くはマグマとは直接関係ありません。地下深いところほど温度が高いの で,どこでも数100から1000m程度の深さでは温泉に適当な温度になっているのです 。温泉の成分等については過去のQ&Aを参考にして下さい(例えばQ342)。

火山が噴火して温泉ができる歩みですが,火山毎に色々で一概には言えません。フィ ールドガイド「日本の火山」(築地書館)などで知りたい火山毎で調べるのがいいか もしれません。あなたは北海道の方のようですのでいくつか例をあげてみます。例え ば洞爺湖温泉や吹上温泉です。洞爺湖では有珠山の明治の噴火以前には温泉がありま せんでしたが,噴火以後に温泉が沸きだして日本有数の温泉街に成長しました。この 明治の噴火ではマグマが温泉街の近くまで上昇して地面を持ち上げ明治新山を作りま した。このごく浅いところまでやってきたマグマが温泉の熱源になったことは明かで しょう。十勝岳の吹上温泉は1962年の噴火以後,1988年までは温泉の温度がどんどん 下がり入浴には適さないほどでした。しかし1989年の噴火以後,温泉の温度はどんど ん上昇して再び脚光をあびるようになりました。この例も火山活動と温泉の密接な関 係を示しています。

北海道の駒ケ岳は日本を代表する活火山のひとつで,現在は西暦1640年の大噴火から 始まった活動期の最中です。1640年以降にも、1694・1856・1929にマグマを放出する かなりの規模の噴火をしています。詳しくは「フィールドガイド・日本の火山3,北 海道の火山」(築地書館)を参考にして下さい。このような活発な活動を続ける火山 なので,鹿部温泉や東大沼温泉などの温泉があります。これらの温泉は山から離れた 山麓にあり,より駒ケ岳に近いところでは温泉ありません。これは火山体では内部は 隙間の多い構造になっており,熱源があっても肝心の地下水が存在しないためです。 火山体深く染み込んだ地下水は山麓部で湧きだしますが,その過程で暖められて温泉 となります。

一方の濁川は約1万年前の噴火によって生じた小型のカルデラです。その時の一連の 噴火活動によってマグマが浅い所まで上昇しています。現在ではマグマはほぼ固まっ ていますが,十分に高温を保っています。つまり高温な岩体が地表近くに存在してい るのです。その岩体を熱源として濁川には温泉が存在しますし,地熱発電も行われて いるのです。 (1/17/00)

中川光弘(北海道大学大学院・理学研究科・地球惑星科学専攻)


Question #342
Q 》なぜ、伊豆半島には、温泉が多いのですか?
》なぜ、狭い地域に2種類の温泉が沸くところがあるのですか?(熱海だったら、塩化物泉戸と、硫酸塩泉とか…。温泉のでき方に違いがあるのですか?)
》なぜ、静岡県には、酸性泉、放射能泉が無いのですか? (12/03/99)

Kndo:学生:15

A 伊豆半島の下では太平洋プレートがフィリピン海プレートの下に潜り込んでいます。 このため伊豆諸島や伊豆半島には火山が多数存在します。火山の近くでは地下水がマ グマの熱で温められて温泉が形成されます。これが伊豆半島温泉が多い原因です。 狭い地域に異なった水質の温泉が出来る原因は地下で蒸気と熱水が共存しているため と考えられます。温泉が存在する地域の地下では圧力釜のような部分があり,蒸気と 高温の水が共存しています。このとき水の部分には塩化物が溶けやすいのですが蒸気 には塩化物は含まれません。一方,硫化水素というガスは蒸気の方に多く含まれます 。硫化水素は地下を移動する間に酸化されて硫酸になり地下水に溶けて硫酸塩泉を形 成します。高温の水の部分も地下水に混ざり塩化物泉を形成します。このために狭い 地域に異なった泉質の温泉が存在すると考えられます。 静岡県に酸性泉や放射能泉が存在しないかとても少ないのは私には簡単には答えられ ない質問です。火山の種類によって随伴する温泉の泉質には明確な違いが見られます 。すなわち伊豆半島には酸性泉や放射能泉を随伴するタイプの火山がないか少ないと 言えますがこれでは完全な答えにはなっていないでしょう。理論的には答えられない のですが,経験的には玄武岩質の溶岩を出す火山には酸性泉や放射能泉はすくないよ うです。安山岩質〜流紋岩質の溶岩を出す火山は酸性泉や放射能泉を伴うものがいく つか存在するようです。伊豆半島や伊豆諸島の場合は玄武岩質の溶岩を出す火山が多 く存在します。 (12/6/99)

大場 武(東京工業大学・草津白根火山観測所)


Question #339
Q 薪窯焚きで中の火を見ていると、足元の奥深くで燃えているマグマを思いドキドキします。
炎の色は温度の目安になりますが、1300度では白くなり、炎と言うより光という感じです。
地球の中心の温度は6000度と言われていますが、太陽のように白く輝いているんでしょうか?!

(12/03/99)

maguma:陶彫作家:33

A こんにちは。私もマグマが大好きです。 地球中心の温度は、プラスマイナス1000度程度の不確定性はありますが およそ6000度、太陽の表面温度と同じ程度です。だから、もし地球を 2つに割って中を見ることができれば、中心部はご想像のように 太陽と同様にまぶしく輝いて見えると思います。ただ、色の知覚というのは 多分に人間的な要素(網膜の視細胞と脳)に影響されますから、 「白」という色表現が適当かどうかはわかりません。

人間の目には色を感じる3種類の細胞がありそれぞれ赤〜黄色、黄色〜緑、 青〜紫の光の波長を中心に敏感になっています。 窯の中などにおかれた高温の物体は、その熱エネルギーを光として放出します。 この光は連続スペクトルですから赤く見える光も緑色の光も青く見える光も その中に含まれています。温度によって色が変わって見えるのは、放出される 光の波長ごとの強度が変化するためです。例えば、人間の目が赤〜黄色と 感じる波長域の放射量と青〜紫色と感じる波長域の放射量とを比較すると、 1000度Cの時には赤〜黄の光は青〜紫の光の80倍も放射されていますが、 1300度Cになると青〜紫の光の割合がやや強まって30倍程度になってしまいます。 6000度Cでは逆に10%程度青〜紫色の光のほうが多く放射されるようになります。 放射光自体の強さでみると、どの波長についても温度が上がるにしたがって 放射光量は増加します。1000度Cの時と比較した場合、1300度Cの時には 赤〜黄色の光は50倍、青〜紫の光は130倍も放出されます。6000度Cの時には、 赤〜黄色の光はなんと数百万倍、青〜紫の光は数億倍もの放射があり、 とてもまぶしいだろうと思います。

蛇足ですが、火山の分野でも放射の情報を使って溶岩などの温度測定が 行われています。この場合は、上のような放射光の温度依存性を用いて、 異なる波長に敏感な複数のセンサーの受光量の比や受光強度から温度を 求めています。人間の目と同じなんですね。 (12/4/99)

安田 敦(東京大学・地震研究所)


Question #337
Q 熔岩と火成岩の違いを教えてください。 (12/02/99)

家庭教師で生徒に聞かれて困った:学生:22

A 「小中学生から多い質問」の(2)の回答を参照下さい. (12/3/99)

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Question #332
Q はじめまして。 洪水玄武岩とは何か、なぜできるのか、を教えて頂けませんか? お願いします。 (11/24/99)

鶴谷京子:大学生:19

A
 洪水玄武岩は,台地玄武岩とも呼ばれていて,膨大な量の玄武岩質溶岩が流れ出し, それの粘りけ(粘性)はたいへん低いものですから,既存の山谷地形を埋めて平坦な 地形を作り,それが現在では浸食に耐えて台地を作っているものです.なにしろその 量は想像を絶するものでして,インドのデカン溶岩台地を作るもの(約6千5百万年 前)は52万平方キロ,アメリカ北西部のコロンビア高原をつくるコロンビアリバー玄 武岩(約千六百万年前)は16万平方キロの面積を占めています(日本の領土面積は37 万平方キロ).地球の歴史でも幾度かしかおこらなかった大規模な玄武岩質の火山活 動の産物です.
 そんな大規模な溶岩は,多くは割れ目状の火口から噴出しました.その割れ目状火 口の長さは数十キロから二百キロメートルにおよぶものもあります.温度も高くて粘 性の低い溶岩は噴出口の位置をずらしながら幾度も幾度も噴出し,コロンビアリバー 玄武岩の場合は,総数三百枚もの溶岩が積み重なっています.長いものでは一枚の溶 岩が六百キロメートルも流れました.日本の地理で例えれば富士山から八ケ岳にいた る大割れ目から出た溶岩が中部・近畿地方を埋め尽くして岡山あたりまで流れたと想 像して下さい.一枚の溶岩はそれだけの距離を一週間程度(時速4キロ程度)で流れ たと考えられてきましたが,最近では,もっとゆっくりと,たとえばハワイの溶岩が 流れるのと同程度で時速百メートル程度かそれ以下の速度で,何ヶ月〜何年もかけて 流れたという説が有力になっています.どちらであるかは,ある時間内の溶岩の噴出 率の問題,ひいてはこの溶岩の噴出による地球寒冷化の程度の問題ともからんでくる だけに真剣に議論されているところです.
 それにしても,それだけ膨大なマグマが地下で生産されたこと自体がたいへん不思 議な現象です.地下のマントルが連続的に溶け続けるということが起こってこれだけ の量のマグマができたと考えられてきましたが,それにしては,溶岩の化学組成はい ろいろと説明つきにくい性質をもっていました.たとえば,溶岩の組成は一枚一枚で 相当ちがっていて,その違いかたも生成順に関係なくまちまちで,そしてマントルが 溶けてでてきたばかりのマグマ(初生マグマ)とは異なり,かなり地殻中で分化した と考えなければならないものであること,珪酸の量は結構高くて玄武岩と安山岩の中 間的なものが多いこと,などです.最近は,マントル深部にあった玄武岩質な部分が 上昇してきて溶融してできたマグマであるという説が唱えられています.その玄武岩 質な部分というものは沈み込んだ海洋地殻がマントル中で集積したものであるという 考えに関連しています. (12/1/99)

三宅康幸(信州大学・理学部・地質科学教室)


Question #327
Q
 はじめまして。石川県金沢市付近の火山について教えて下さい。
 わたしは金沢市内で小学校の教員をしているのですが、理科の学習でいくつか疑問が でてきました。
 1.医王山山系の山以外にも火口があったのではないかという話を聞きました。具体的には
   犀川の上流の方や鶴来につながる山々の方とのことですが、それは本当でしょうか?
 2.金沢の地下のボーリング資料を見ると、金沢のかなり広い部分に凝灰岩層は広がって
   いるのでしょうか?(ボーリング資料に凝灰岩の層が含まれているのでしょうか?)
   また、それらの凝灰岩は医王山の噴火に起因するものと考えていいのでしょうか?
 3.こういった金沢市の地史について書かれた文献はないでしょうか?ぜひ紹介して下さい。


 どうぞよろしくお願いいたします。 (11/23/99)

TEG:小学校の教員:39

A 1.医王山以外にも火口があるか.

医王山は確かに「火山岩」(流紋岩の溶岩や凝灰岩)でできてい ますが,約1500万年も前の地層なので,「火口」はもう残っていま せん.「火山」は地表付近のマグマ活動によって生じた地形(山や 凹み)のことを言うので,既に火山地形が完全に失われている医 王山は「火山」ではありません.なお,医王山と同じ地層(「医王山 累層」)は,確かに犀川上流から鶴来,そして更に小松市南方, 加賀市南方を経て福井市付近まで続いています.しかし,これらの 火山岩を噴出した「火口」がどこにあったのかは,まだわかってい ません.ところで,医王山山系の金沢市側にある戸室山やキゴ山 は約50万年前の火山ですが,これらは溶岩円頂丘で,表面に はっきりした「火口」はありません.

2.金沢の地下に凝灰岩層は広がっているか

金沢の地下には多量の凝灰岩層があります.上で述べた医王山 累層(厚さ1000m)は日本海側へ傾斜しており,金沢市の下にも 広がっています.また,医王山累層の上には「砂子坂凝灰質互層」 (170m),七曲凝灰岩層(100m),下荒谷凝灰岩層(30m)などの 凝灰岩の地層が重なっていて,これらは湯涌温泉へ行く道沿いに 露出しています.これらの地層は,金沢市中心部の直下では, 卯辰山層・大桑層・高窪層など泥岩・砂岩の地層の下,地下約 300-500m付近にあるものと思われますが,森本断層より海側で は,それより更に500m以上深くにあるでしょう.これらの凝灰岩層 を作った火山灰を噴出した火口がどこにあったかは,残念ながら まだわかっていません.石川県内のボーリング資料をまとめた 本は金沢大学にありますが,上の数字は私の大雑把な推定です. もし正確に知りたい場合は,大学にいらして下さい.

3.金沢市の地史について書かれた文献

一般向けの本としては,次のようなものがあります(発行年順).

今井功「5万分の1地質図幅 金沢 および説明書」通産省地質
  調査所,1959年(絶版です.図書館・大学でどうぞ) かせ野義夫編著「北陸の地質をめぐって(日曜の地学6)」
  築地書館,1979年(絶版です.図書館・大学でどうぞ) 石川県理科教育研究協議会・石川県理科協会編「石川の理科
  ものがたり」日本標準,1981年(販売中.小学生向け) 藤則雄監修「理解しやすく・親しめる石川の地形・地質案内 
  野外観察のガイド」東京法令出版,1985年(販売中) 日本地質学会第97年学術大会(富山)見学旅行案内書.1990
  (専門家向き.石川県内のコースもあり.大学でどうぞ) 北國新聞社出版局編「徹底検証地震と防災 石川は安全か」
  北國新聞社出版局, 1995年(販売中) 石川県化学教育研究会編「科学風土記 加賀・能登のサイエンス」
  裳華房ポピュラーサイエンス,1997年(販売中) 相馬恒雄「富山のジオロジー 富山の大地の成り立ちを探る」
  シー・エー・ビー(とやまライブラリー5),1997年(販売中,隣
  の県ですが,地元の地史を様々な学説と結びつけて説明) 北村晃寿文,夏目義一絵「暖かい地球と寒い地球」福音館書店,
  1998年(販売中,大桑層に関する小学校中・高学年用絵本) 鹿野和彦ほか「20万分の1地質図幅 金沢」通産省地質調査所
  1999年(販売中,裏に詳しい説明あり.地図専門店でどうぞ)

なお,私のホームページ もご覧下さい. (11/27/99)

石渡 明(金沢大・理学部・地球科学科)


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