火山についてのQ&A集

Question #643
Q
 有珠山は、火山性地震が起こった後に山腹から噴火しましたが
岩手山は、火山性微動は確認されながら未だに噴火していません。
北海道大学の岡田教授は、「有珠山は、嘘をつかない山と言いま
したが、火山によって噴火する性格があるのですか?逆に、火山
性微動があれば、どんな地形でも噴火するのですか? (06/02/00)

たあさん:大学生:21

A
 有珠山は,珪酸分の多いマグマの火山としては頻繁に噴火を起こす世界でもめずら しい火山です.しかも,過去の噴火の前には必ず地震が群発しました.この癖を利用 して今回も噴火を上手く予想できたわけです.
 火山性微動はいくつかの理由でおこると考えられています.今回の有珠山の噴火前 には,はっきりとした火山性微動は観測されていません.逆に,火山性微動があれば 必ず噴火をするわけでもありません.
 火山性地震や火山性微動が多発してもなかなか噴火には至らない火山がいくつもあ ります.今のところ,岩手山もその例です.噴火を起こすには,山の地形やマグマの 性質によるのではなく,山ごとにもっと複雑な背景があるようです.山によって噴火 にまで至る経緯はさまざまです. (6/3/00)

中田節也(東京大学・地震研究所・火山センター)


Question #642
Q 北海道大学、岡田弘先生、宇井忠英先生へ。
本日虻田小学校体育館での有珠山噴火火山活動報告会で終息および今後の見通しについて質問を
いたしました、洞爺湖温泉町の宮崎です。私の愚問に親切にわかりやすくご説明いただき有難う
ございました。神戸の時事通信の中川さんからも「いい方だから」と言われておりました。
今後とも、虻田町、洞爺湖温泉町、壮瞥町などのためにご尽力お願い申し上げます。 (06/01/00)

宮崎 秀雄:土産店経営:52

A 質問ではありませんが,上のようなメールをいただきました.岡田・宇井両教授も日 本火山学会会員であることから本Q&Aのコーナー寄せられたものと思います.宇井先 生は前学会長です.現会長は千葉とき子さん.

参考: 北海道新聞社記事「地盤沈降が終息の時期」 (6/02/00)

ホームページ管理者


Question #625
Q 箱根の駒ヶ岳は「溶岩円頂丘」となってますが山頂に火口があって地形図を見るとオタマジャクシ型の溶岩流を沢山流しています。円頂丘と言うと普賢岳の平成新山のように火口に栓をしてしまうものと思われますが実際には山頂に火口を持ちそこから溶岩を流している例も少なくないように思われます(日光白根の山頂溶岩や九重山など)。単純にこれについて考えるて考えるとまず粘性の強い溶岩が大量に吹き出してドームをつくりその後溶岩の粘性が低下してドームの屋根を破って溶岩流となった、と言うことが考えられるとおもいますが実際この様なことが起きているのでしょうか。

 また久住の三保山は溶岩円頂丘でありながら二重式の構造に見えます。これはどうやって出来ているのでしょうか (05/22/00)

アマンタジン:医師:25

A
 溶岩円頂丘(溶岩ドーム)と呼ばれている火山がじつは何個かの溶岩ドームがつみ 重なっているものだったり、山頂部だけが溶岩ドームで下の部分は違うタイプの火山 体だったりすることがあります。箱根火山の駒ヶ岳は3〜2万年前頃に厚い溶岩流や 溶岩ドームをつくる噴火を数回くり返して形成されたと考えられています。山頂部分 のみが溶岩ドームで、最後の噴火の時に火口を塞いで成長したものです。
 アマンタジンさんが駒ヶ岳で火口と思われたのは山頂部の細長い浅いくぼみのこと だと思いますが、火口にしては形は不明瞭で、ここから噴出物が出た証拠もありませ ん。溶岩の流れによる溶岩じわか、活動の終わりにマグマの一部が地下へ逆流したた めに溶岩ドームの表面が落ち込んでできたくぼみと考えられます。久住の三保山の場 合では一度マグマが逆流してくぼみを作り、再びマグマが上昇してきて中央の溶岩ド ームを作ったと考えられています。
 もちろん御指摘のように一度の活動の途中で溶岩の粘性が変化する可能性は十分あ ります。もともと粘性が違うマグマが上がってくる場合だけでなく、地上に噴出する ときのガス成分の抜け方や冷却のしかたなども影響します。また土台となる地形にも 左右され、粘性が同じでも斜面では重力の効果で流れやすくなります。 (6/03/00)

長井雅史(東京大学・地震研究所)


Question #618
Q 鹿児島県山川町の者です。私の町に「竹山」という山が有ります。今,私の職場で,この山が「トロイデ」か「コニーデ」か問題になっています。是非,判定をお願いします。また,「トロイデ」「コニーデ」の違いをわかりやすく簡単に説明してください。 (05/19/00)

こーじ:地方公務員:31

A 竹山は確かに変わった形の山ですよね.3月に近くまで行きましたが,海岸へりにぬ っと烏帽子のように立っている姿はとても印象的です.この山はどうやってできたん だろうと不思議に感じられるのも当然でしょう.

さて,トロイデ,コニーデなどの言葉は,20世紀の始めごろドイツ人のシュナイダー が,火山を地形で分類した言葉です.簡単に言うと,トロイデは釣鐘のような,急傾 斜で上に凸の山腹を持つ火山,コニーデは富士山のような円錐形で,上に凹な山腹を 持つ火山のことです.シュナイダーの分類には,他にもアスピーテやホマーテなどが あり,学校の地理の授業で習った方も多いのではないでしょうか.ところが現在では 日本や世界の火山研究者の間では,使われていないのです.理由の一つには,火山を 外形だけで分類しているので,実際の内部構造や発達成長史を反映していないことが あります.そのため現在では,構造や成因を反映した,成層火山や溶岩ドーム,盾状 火山という言い方を使うようになっています.おおまかには,トロイデは溶岩ドーム ,コニーデは成層火山に相当しますが,実際には異なることがよくあるので,できれ ばシュナイダーの分類は使わないほうが良いかと思います.

さて肝心の竹山です.正確な年代はわかっていませんが,これは古い火山のマグマの 通り道が,硬いために侵食に耐えて残ったものと考えられています.こういうものを ,火山岩頸(かざんがんけい)と呼びます.竹山は,もとは地下にあったものが,今は 侵食されて地表に飛び出しているように見えるわけです. (6/05/00)

川辺禎久(工業技術院・地質調査所・火山地質)


Question #532
Q 地球科学系の本を読んでいると「地殻」という言葉と「プレート」という言葉を
よく目にします。それぞれの意味は、本などの説明からだいたいわかるのですが、
「地殻」と「プレート」の違いについてイマイチわかりません。
この2つのものは、同じもの、つまり
「地殻」=「プレート」
として構わないものなのですか?それとも、厳密には違うものなのですか?

この点について、教えていただけますか。お願いいたします。 (05/02/00)

ライアン:大学生:21

A
 どうも読んだ本の書き方がまずかったようですね.
 「地殻」と「プレート」は全く違う概念です.単純に言えばプレート=岩石圏(リ ソスフェア)であり,言いかえればプレート=地殻+最上部マントルです.地表から モホ面までが地殻で,厚さは海洋地域で約5km,大陸地域で約30kmです.その下がマ ントルですが,地下約100kmの深さのマントル中に地震波の速度が数%遅くなる柔ら かい層(低速度層)があり,それより上が硬いプレートです.低速度層はアセノスフ ェア(軟弱圏,軟流圏,岩流圏などと訳す)とも呼ばれます.海嶺や島弧の下では, プレートが薄くてアセノスフェアが地殻の直下まで上昇してきている場所があり,そ こでは地殻=プレートということになりますが,他の多くの場所ではプレートはもっ と厚くて,100km程度の厚さがあるということです.
 地殻は長石を主とした花崗岩や玄武岩・斑レイ岩でできていますが,最上部マント ルは長石を含まないカンラン岩でできています.低速度層ではカンラン岩が部分的に 溶けていると言われています. (5/09/00)

石渡 明(金沢大学・理学部・地球学教室)


Question #531
Q 長野県の中学生ですが、浅間山をはじめとする、長野県の火山について調べたいと思いますが、どのようなホームページで情報を収集するのがよいでしょうか。 (05/01/00)

塩尻西部中学校:中学生:14

A 長野県の中学生のかたへ.
 長らく,回答できなくてごめんなさい.信州大学で校舎の建て替えをやっていて, 忙しくて答えることできませんでした.新築の理学部校舎に一度おいで下さい(宣伝 !).長野県と,その近傍には,全国80いくつかの活火山のうちの一割になる,8 つの活火山があるのです.ですから,同じ長野県民として,あなたのような中学生が 火山に興味をもってくれて,大変うれしいです.
 さて,お尋ねの,ホームページですが,ほんとうは,私がちゃんとつくらなくちゃ いけないのですが..すみません..作ってません.それで,群馬大学の早川由起夫 先生が作られているホームページを紹介します. 関東甲信越地方の火山噴火史
 さらに,日本全国の火山については,日本火山学会のホームページにある,「日本 の第四紀火山カタログ(CD-ROM版)」をご覧下さい.同じ,日本火山学会のホームペ ージの,4回公開講座 「信州の火山と地震」テキスト集も参考になると思います.な お,あまりまとめてませんが,私自身のホームページにも,関連したことが書かれて います. http://geogate.shinshu-u.ac.jp/Miyake/index.html (6/16/00)

三宅康幸(信州大学・理学部・地質科学教室)


Question #530
Q 最近はテレビにあまり有珠山の噴火についての話題も少なくなってきましたが
有珠山の噴火はもう終わったのでしょうか。
今回の噴火は新しいマグマが関係していると聞いたんですが
それはどうやってわかったのですか?

(05/01/00)

北高に合格しました:高校生:15

A
 有珠山では,現在も,噴煙を活発に上げる活動がまだ続いています.報道される頻 度が減ったのは火山活動がおさまったからではありません.ニュース(特にスクープ )として流したいほどの大きな変化が見られていないためです.火山活動が長期化す ると報道される頻度が減るということは4年以上続いた雲仙普賢岳の噴火でもあった ことです.
 噴火でしばしば起こる水蒸気爆発では,マグマが直接地表には噴出せず,水蒸気と 一緒に火口付近の古い堆積物が粉々になって吹き飛ばされると考えられています.今 度の有珠山の噴火では,初期(3月31日)の噴出物に新しいマグマが含まれているこ とが分かりました.これは,噴火直後に降ってきた灰や湖岸に流れ着いた漂流物の中 に泡の空いた軽石が含まれていたためです.軽石はいってみればマグマのしぶきのよ うなものです.当初,火口のそばにあった古い軽石が水蒸気爆発で吹き飛ばされたの ではないか,との疑いもありましたが,詳しく調べた結果,全く新しい物質であるこ とが分かりました.3月31日の噴火では,勢いのあるモクモクの火山灰噴煙が高さ 3.5kmまで上昇しました.これは新しいマグマが混ざっていて温度が高かったためで あるというわけです.その後1ヶ月間の活動では,マグマのしぶきがほとんど入って いないようです.今回のマグマに関する詳細は,いくつかのホームページで公開され ていますので参考にして下さい.例えば,工業技術院地質調査所に以下があります. http://www.gsj.go.jp/~tomiya/magma2000.html, http://www.gsj.go.jp/~imiyagi/Works/Event/Usu2000/petrol/0331/sum/ (5/1/00)

中田節也(東京大学・地震研究所・火山センター)


Question #520
Q 有珠山噴火の新聞記事で、地下から上昇してきたマグマの岩脈が薄い板状に描かれていますが、
なぜマグマのような流動体が板状になるのでしょうか。板の方向などは何によって決まるのでしょうか。 (04/26/00)

坂本正明:会社員:54

A
 自然界では,一般に仕事が最小になるように物事が決まります.少しでも楽に,地 球は余剰な力を開放し,マグマは移動したいのです.
 岩石のようにより堅い物質中を,マグマのようにより柔らかい物質が移動するとき は,堅い物質(岩石)を破壊してその割れ目をつくり,その中を板状に流体(マグマ )が移動するのが一番楽な方法です.
 地面や岩石から,建造物の壁まで,世の中にはたくさんの割れ目があるの気がつく と思います.地球は割れ易いのです.神戸の地震の場合も,断層という割れ目が動い て地面が振動しました.
 水の中とは異なり,岩石中では,岩盤の”圧力”は方向により異なります.マグマ が岩石を押し広げる力がより楽な方向に割れ目は拡大します.つまり,この方向に板 の幅が広くなります.よって,板(割れ目)の延びの方向は,仕事が楽な方向に垂直 になります.
 ガラスに石をぶつけてできる割れ目は,放射状になったり,同心円状になったりし ます.衝突する石という,ガラスに対して局所的な圧力源が存在するときの割れ目で す(局所的な力).
 一方,紙を両側から引っ張って破るときは,直線上の割れ目ができます.これは, 紙全体に両側から一様な力がかかっているからです(広域的な力).
 日本列島では,火山という”局所的な力源”と,太平洋プレートから押される”広 域的な力源”の2種が重なっています.有珠火山のマグマで満たされた割れ目も,こ れら2種の力源がつくる力に対して,一番楽な方向に割れているのです. (5/02/00)

高田 亮(工業技術院・地質調査所・火山地質)


Question #519
Q 今回の有珠山噴火の報告で「コックステイルジェット」という単語をよく見かけます.
一体どの様なものなのでしょうか? (04/26/00)

kane-G:大学院生:24

A コックステイルは,英語でいえばcock's tail,つまり,おんどりの尾のような形状の ことをさします.有珠の噴火を見られていて,白や灰色のもくもくとした噴煙がきの このように上がるのに対して,黒っぽい岩石混じりの噴煙がより速い速度で上がって いくのが時々見えます.その軌跡がおんどりの尾のように見えることから,コックス テイル状の噴煙だとか,噴出しているという意味からコックステイルジェットと呼ば れているわけです.きのこ状の噴煙は噴火口から出たときの速度はそれほど大きくな くて,高温の水蒸気の浮力も合わさって上昇するのに比べると,コックステイル状噴 煙はかなり速い初速度で打ち上げられているということです.だからこのような噴煙 はマグマ水蒸気爆発(このコーナーのQuestion-#446参照)のような爆発力の強い噴火 に特徴的とされていますが,水蒸気爆発でも,初速度が大きければ見られることがあ り,たとえば1979年の御嶽山の水蒸気爆発でも観察されています. (4/26/00)

三宅康幸(信州大学理学部地質科学教室)


Question #500
Q 中学校の理科の授業で、マグマのねばりけの違いで、噴火のしかたも違ってくることを学習しました。そこで、先生もわからなかった事なので、教えてください。
「マグマのねばりけは、何の違いで変わるのですか?」 (04/24/00)

稚沙:学生:15

A マグマの粘り気(粘性)については回答の52と184を参考にして下さい.そこに上手 くまとめられています.このページの下からたどって行って下さい.地中深くではマ グマの中にガス成分が溶け込んでいますが,地表に近づくとガスが分離して泡になろ うとします(ちょうどコーラ瓶の栓を抜いた時のように).マグマの粘り気によって ガス(気泡)の成長の仕方や外への逃げ出し方が大きく左右されます.粘り気の高い マグマの中で存分に成長できなかった泡が地上に来て,突然,破裂すれば激しい爆発 になるわけです. (5/02/00)

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