火山についてのQ&A集

Question #718
Q 有珠山の場合、噴火までに時間がかかると言われていました。一方で三宅島の場合は、数時間以内に噴火するだろうと言われていました。
このことは何を意味しているのでしょうか。教えてください。

(06/29/00)

あい:大学生(1回):19

A
 有珠山と三宅島は噴火と噴火の間がそれぞれ30年ぐらいから20年ぐらいと比較的短 い火山です。このため、現在までに何回も噴火が観測された経験があります。それら の記録に基づいて次の噴火がいつ来るのかおおよその目安をつけることができます。 これに基づいて、有珠山や三宅島では、地震や地殻変動の観測が強化されていました 。
 有珠山の場合は、地震活動が始まってから早くて1日あまり、遅い場合で数ヶ月で 噴火が起こるという癖がありました。そして、3月の噴火も地震が起こりはじめて4 日ほどで噴火しました。一方、三宅島の場合には遅くても6時間くらいの短さで噴火 が起こる癖がありました。今回は、「噴火と思われる現象」が起こるまでには半日程 度もかかりました。
 一方、噴火の経験が少ない火山では、地震活動が起こってから噴火が起こるまでの 時間をきちんと予想することができません。例えば、雲仙普賢岳では地震活動が起こ ってから噴火が始まるまでには1年近くもかかっていますし、岩手山では地震活動が ここ数年続いていますがまだ噴火は起きていません。
 このように、地震が起こり始めてから噴火が起こるまでの時間の長さは火山ごとに 異なります。この原因は、マグマの性質(粘り気など)、岩盤の性質(地下水が多少 など)、そして、火山のある場所におよぶ地殻内部の力などが複雑に関係しているの だと考えられています。ひとつの火山であれば、前の噴火と比較的よく似た性質のマ グマが次も噴出することが多いので、噴火前の地震などの現象もよく似た状態で起こ ると考えられる訳です。 (6/30/00)

中田節也(東京大学・地震研究所・火山センター)


Question #717
Q 三宅島の海底噴火をテレビで見ましたが、なぜ、海底が青っぽくなっていたのですか?
また、他にも色々な色に変色するのでしょうか? (06/29/00)

sanae:公務員:22

A
 今回の三宅島の火山活動で海水の表面に現れた青白い濁りのようなもののことをご 質問されていると思います。これは変色海水と呼ばれるものです。これは次のような プロセスで発生すると考えられています。

1)海底でマグマが海水を加熱します。この加熱された海水はマグマから出てきたガ スを取りこむために酸性(*)になると考えられます。(*)マグマから出てきたガ スは塩化水素や二酸化硫黄などのガスを含むのでこれが海水にとけると塩酸や硫酸に なるのです。マグマから出てくるガスにはこれらのガス以外にも窒素ガスや水素ガス などが含まれます。

2)酸性でかつ高温の海水が形成されると海底の岩石と接触し,岩石から,鉄(Fe) ,アルミニウム(Al),珪素(Si)等の元素が溶けだします。

3)しかしこの高温の酸性海水は冷たい海水と混ざり,酸性度が低く,中性に近くな ります。

4)中性の水溶液には鉄(Fe),アルミニウム(Al),珪素(Si)等の元素は溶けた ままで居られない性質があるので,これらの元素は水酸化物(Fe(OH)3,Al(OH)3)な どの形の極めて細かい粒子状の鉱物に変化します。

5)これらの粒子を含んだ海水はマグマから出てきた海水に溶けない不活性なガス( 例えば窒素ガス)の上昇に巻き上げられて海面に到達します。これが変色海水の正体 です。


 つまり変色海水はマグマの活動によって発生するもので,海底での火山活動の証拠 です。鉄(Fe),アルミニウム(Al),珪素(Si)の組成割合により色が変化します 。鉄(Fe)が多いと黄色あるいは茶色になり,アルミニウム(Al),珪素(Si)が多 いと白っぽくなります。経験的には海底火山活動が激しいと鉄(Fe)が増えるようで す。意外なことに変色海水の温度は周囲の表面海水よりも温かくないのです。これは 海底の冷たい海水が巻き上げられるので,高温の海水が混ざったとしてもそれ以外の 海水の量が多いので冷やされてしまうからです。

大場 武(東京工業大学・火山流体研究センター)


Question #678
Q 私は鹿児島に住む元理科の教師です。
今回の有珠山の噴火については,
近くに桜島という火山もあることもあって,大変興味深くニュースなど
見てまいりました。
さて,質問ですが,
有珠山は約30年に1回の周期で噴火しているという話を聞きました。
しかし,今回の噴火は23年目ということで,いつもの周期より若干早いように思います。
そこで,今回噴火の周期が早まったのは,
噴火の規模や場所に関係があるのでしょうか?
お教え下さい。 (06/20/00)

ash:主婦:30

A
 有珠山は2万年〜1万5000年前ころから活動をはじめ,玄武岩質〜安山岩質の溶岩, スコリアが小さな富士山型の山体をつくったあと,7000〜8000年ほど前に山頂部が崩 壊し,岩なだれを発生しました.その後長い休止期間をおいて,江戸時代の1663年に 噴火活動が再開し,デイサイト質〜流紋岩質のマグマを噴出しました.それ以降1769 年(前の噴火の終了から105年),1822年(同52年),1853年(同30年), 1910年( 同56年),1943年(同33年),1977年(同32年),そして今回2000年(同22年)に噴 火をしました.


 御質問にあるように,確かに,江戸時代以降では過去3回,30数年の間隔をおいて 噴火することがありましたから今回の噴火の前から,多くの火山研究者も経験からこ の先10年以内に噴火の可能性が高く,注意深く観測する必要があるとは考えていまし たが,やはり噴火するのはもう少し先だと思っていた人が多かったと思います.


 さて,噴火の間隔の規則性について,残念ながら現在,そのしくみを充分説明がで きているわけではありません. 一般に噴火がおこるのは, 1. マグマ溜まりの中には,もっと深いところから絶えず少しづつマグマが供給され るが,マグマの圧力がたかまり,耐えきれなくなったところで,地表に達する通り道 を作って,噴火する. 2. マグマ溜まりの中のマグマが過剰でなくても,火山活動以外の理由(たとえば広 い範囲にわたる地殻変動)によって,マグマ溜りにかかる力が増してしぼりだされて 噴火に至る. 3. 火山活動以外の理由(たとえば広い範囲にわたる地殻変動)によって,逆にマグ マの通り道にかかる力が弱くなって容易に上昇できるようになって噴火に至る、など の場合が,考えられます.


 1.のようなしくみが続いていて,しかもマグマの供給量が一定ならば,噴火が同 じような間隔をおいて起こることは理解しやすいと思います.
 そこで,今回の有珠山の噴火を考えてみます.
 もし,最近の有珠山のマグマの供給量自体が増加して1.のしくみで噴火に至った とすれば.噴火の規模(噴火にかかわるマグマの量)は特別に小さいということはな いと考えられます.
 また,2または3の理由で噴火したとすれば(かつマグマの供給量が一定ならば), 前の噴火以降マグマ溜りの中に蓄えられていたマグマの量は少ないと考えられるので ,全体としてやや小規模な噴火で終わる可能性もあります.
 マグマはその時その時に最も楽な(仕事要の少ない)出口(通り道)を探して上昇 すると考えられますので,噴火の間隔と火口の場所はあまり関係がないのではないで しょうか.


 ついでながら,三宅島火山では21〜22年(あるいはその2倍,3倍にあたる40数年, 60数年)の間隔をおいて噴火した例が多く,前回1983年から21年後の2004-5年前後に 噴火するのではないかと注目されています. (6/21/00)

津久井雅志(千葉大学・理学部・地球科学)


Question #674
Q 小学校の図書館で司書をしています。

6年生の児童が、「世界の火山がいつ噴火したかっていう一覧の資料が欲しい」と
いう相談に来ました。
現在、資料探しをしているところですが、なかなか日本語でのサイトが少なく、
すぐに手渡してあげることができません。どこを調べたら見つかるのか、教えて下さい。 (06/17/00)

りん:学校司書:29

A 外国の火山を紹介した日本語のホームページが少なくて申し訳ありません。No.666で 紹介された「火山防災情報」のホームページの中に「世界の火山一覧」があり、そこ では、代表的な世界の火山や噴火が紹介されています。その他、丸善から出版されて いる「理科年表」の中の「世界の火山」、朝倉書店から出版されている「火山の辞典 」の「世界の活火山リスト」などでさらに詳しく扱っています。 火山防災情報 (6/17/00)

ホームページ管理者


Question #670
Q 火山帯のことで教えて頂きたいのですが。日本の活火山が86あると聞いたのですが、この86火山の千島火山帯、那須火山帯、富士火山帯など日本の7火山(子供の頃にこのような区分けを聞いた記憶があるのですが)に所属している山々を調べたいのですがどのような方法で調べればよいのかお教えください。世界の火山についてもどのくらいの数があるのかわかりませんが火山帯ごとの山々の区分けを調べたいと思っています。よろしくお願いいたします。 (06/15/00)

火山のこと何も知らないトラさん:無職:51

A
 最近では、日本の火山の分布を東日本火山帯と西日本火山帯の大きく2つに分ける ようになってきており、従来の千島、那須、鳥海、富士、乗鞍、白山、霧島火山帯な どの「火山帯」名はあまり使わなくなってきています。中学や高校の教科書からも消 えています。この理由は、それぞれの「火山帯」の境界が曖昧であること、マグマの 発生の仕組みから考えるとあまり意味のない分類であることと、年代測定や地質調査 が進んだ結果「火山帯」に属しない火山がいくつも出てきたことなどが上げられると 思います。
 質問の内容を調べられたいのであれば、百科事典や古い高校の地図帳などで調べる のが最もてっとり早い方法だと思います。火山帯の項を調べて下さい。世界のものも 同様に百科事典に掲載されているはずです。 (6/16/00)

中田節也(東京大学・地震研究所・火山センター)


Question #668
Q 水蒸気爆発ではマグマは噴出しないで、その周りの岩体の物質が噴出するそうですが、マグマ水蒸気爆発でもマグマがふんしゅつしないことはあるのですか?

(06/15/00)

ねこすけ:大学生:20

A
 ねこすけさんの質問は大事なポイントなのです.水蒸気爆発とマグマ水蒸気爆発の 違いは,#446の質問で答えたとおりですが,実際に眼前でおこっている爆発が, どちらであるのかを決めるためには,噴出してきた火山灰や噴石などのなかに,マグ マ由来の物質が含まれているかどうかで判断します.ですから,有珠山の場合でも, #530の質問への回答にあるような努力がはらわれているわけです.で,地下のマ グマが水に触れて,マグマ水蒸気爆発が起こっているにもかかわらず,マグマ由来の 物質は噴出してこない,ということが起こりうるかというご質問ですね.
 うーん,意地悪い質問ですが,マグマ水蒸気爆発であれば,丹念に良く探せば,マ グマ由来物質は見つかるはずだと,多くの火山学者は考えています.なぜならば,こ の爆発の場合には,マグマの外の水にたくさんの熱を急速に与えて,水の沸点よりも はるかに高い温度にまで熱しているのです.そのためには,マグマから水への熱の移 動が急速に起こる必要があり,そのためには,マグマと水の接触面積が大きくなくて はならなくて,従って,マグマは非常に細かく粉砕されます.ですから,そのマグマ の細かい粒は,外に噴出してきているはずだと考えられます.ただし,有珠などの場 合に,どれがマグマ由来のものかを見極めるのはたいへん難しい問題です. (6/16/00)

三宅康幸(信州大学・理学部・地質科学教室)


Question #667
Q 鹿児島県姶良郡加治木町の蔵王岳は火山と聞いていますが、どのようにして出来た火山なのでしょうか。また分類上はどういう種類の火山になるのでしょうか。
とても変わった形をしていますが、珍しい火山なのでしょうか。
教えてください。 (06/14/00)

ロッキーU::38

A
 蔵王岳は,九州縦貫自動車道加治木インターチェンジの東にある,プリンの背を少 し高くしたような,特徴的な形をした小山です.映画「未知との遭遇」に登場する, デビルズタワー(アメリカ,ワイオミングに実在)のような形で,とても目立ちます .
 さて,ご質問にあった「蔵王岳は火山」というのは,実はちょっと正確ではない表 現なのです.蔵王岳は,浅い海の底にたまった加治木層と呼ばれる地層の中にマグマ が貫入(かんにゅう)し,固まったものです.このようなものを貫入岩体といいます .蔵王岳では,その後,まわりの柔らかい堆積岩が浸食されて,マグマが冷えて固ま った堅い安山岩の部分が残って,飛び出したような地形を作ったのです.蔵王岳の山 頂には,マグマの熱によって堅くなった堆積岩が残っていますから,貫入したマグマ が地表に噴出する事はなかったと考えられます.
 ですから「蔵王岳は火山」というより「蔵王岳はかつての火山活動の名残り」とい った方がいいでしょう.蔵王岳と同じような貫入岩体は鹿児島湾北岸地域にたくさん 見られ,同じ加治木町内で大きな採石場のある湯湾岳もその一つです. (6/21/00)

井村隆介(鹿児島大学・理学部・地球環境科学科)


Question #666
Q 世界には約64の活火山があると聞いたのですがこれらの火山の、標高、火山帯名、国名、噴火形式、災害状況を調べるにはどうしたらよいですか?
宜しくお願いします。 (06/13/00)

富永宗現:会社員:31

A 世界の活火山の数は少なくとも1500以上あると考えられています。このコーナーでし ばしば回答されているように、日本でも86個の活火山があります。ただし、活火山の 定義がはっきりしておらず、地域や国ごとに数え上げられる活火山の基準、あるいは その元となる情報量がまちまちです。質問の64個というのは何の数かはわかりません 。世界中の活火山のデータは合衆国スミソニアン自然史博物館の"Volcanoes of the World"(下の英語サイト)で調べることができます。また、日本の火山については、 例えば、日本火山学会が出版しているCD_RM版火山カタログ(ホームページからのア クセスは中止)か千代田火災の火山防災情報(下のサイト)にあります。

スミソニアン自然史博物館 火山防災情報

(6/14/00)

中田節也(東京大学・地震研究所・火山センター)


Question #662
Q 小学6年生の娘が、火山のガスって何? と聞くのですが、なんと答えたらよくわかるのでしょうか。 (06/11/00)

後藤 チーママ:福祉施設職員:37歳

A
 ちょっと汚い例えで申し訳ありませんが,火山から流れ出る溶岩は,いわば地球の ウンチのようなものです。これに対し火山ガスは地球のオナラです。
 火山ガスとは活火山から立ち昇る噴煙のことです。火山の噴煙は主に水蒸気と火山 灰の混合物です。火山ガスは正確には火山灰以外の気体の部分を指します。今年の有 珠山の噴火では,噴火の初期のころに黒いきのこ雲が出ましたが,あれは火山ガスと 火山灰が混ざったものです。最近の噴煙は白くてほとんどが火山ガスであり火山灰は ごく僅かしか含まれていません。
 火山ガスはマグマから抜け出てきた気体と,マグマの熱で地下水が沸騰して発生し た水蒸気が混ざったものです。噴火中の火山でなくとも,例えば箱根の大湧谷のよう に噴気がでている火山もあります。それも火山ガスです。
 火山ガスは主に水蒸気からなりますが,二酸化炭素や二酸化硫黄,硫化水素などが 含まれ人体に悪影響があるので,火山ガスが出ているところへは近づかないように注 意して下さい。 (6/12/00)

大場 武(東京工業大学・火山流体研究センター)


Question #652
Q 石川県にある白山は、死火山ですかそれとも休火山ですか近いうちに 活火山になるおそれがありますか。6月7日早朝にあった地震は、火山活動と関係ありますか? (06/07/00)

ひろみ:会社員:32

A 白山は立派な活火山です.現在の気象庁の「活火山」の定義は「約2000年以内に噴火 した火山」で,白山は西暦1042-1239年と1547-1659年に何回も噴火した記録がありま す.数え方にもよりますが,日本には活火山が86個あり(世界全体の1割以上),白 山はその中の1つです.ただし,常時観測を行っている20個の活発な活火山の中には 入っていません.金沢大学の河野芳輝先生らのグループは白山周辺で地震観測を行い ,山頂の直下で火山性の微小地震が頻発していることを明らかにしました.これは現 在もマグマが地下で活動していることを示します.石川県白山自然保護センターの東 野外志男博士によると,昭和10年に山腹で噴気活動が発生したことがあり,白山のこ れまでの火山活動には約400年の周期があるので,そろそろ次の活動期に入った可能 性があります.白山は周辺の村落からも遠く,噴火しても直接的な被害が出る可能性 は低いですし,火山性の地震や噴気活動など前兆現象に注意していれば,登山中にい きなり噴火ということにはならないと思います.金沢大学の守屋以智雄先生は大規模 な火砕流や山体崩壊が発生した場合の被害を心配されています(白山では過去にそれ らが発生した証拠があります)が,現時点で特に差し迫った危険があるというわけで はありません.6月7日の北陸地方の地震は海岸から100km程度離れた日本海の海底下 で発生した地震で,白山の活動とは何の関係もありません. (6/09/00)

石渡 明(金沢大学・理学部・地球学科) 


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