火山についてのQ&A集 | |
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Q |
中学校で理科を教えています。 質問1;「二酸化珪素が多い岩石は流動性に乏しく、少ない岩石は流動性に富む」わけですよね。 したがって、流紋岩はきわめて流動性に乏しいと思うのですが、あの流紋は文字からすると流れた紋様となるのですが、 どういうことなのでしょうか。 質問2;普賢岳にしろ有珠山にしろ安山岩のドームだと思うのですが、粘性が高いからドームをつくるわけですよね。 マグマから水や火山ガスの抜けて、粘性を増しているのかなと思うのですが、とにかく溶岩ドームをつくるのは安山岩し か聞かない気がします。最初にも述べたように、二酸化珪素の量からすれば、流紋岩がもっともドームを作りやすいと 思うのですが、聞いたことがありません。なぜ安山岩ドームばかりで、流紋岩ドームがないのでしょうか。 教えていての素朴な疑問ですがよろしくお願いします。 (08/17/00) 地学大好きの先生:中学理科教員:40 |
A |
質問1(流紋岩マグマは流動しにくいのになぜ流紋がある?)
流紋岩の流紋は,もともと化学組成や発泡の程度,結晶度や色が違う,流れにくい マグマのかたまりが不規則に混在していて,それらが流動によって引き伸ばされ,縞 模様になったものだと思います.もし流れやすいマグマだったら,かきまぜると拡散 して混じり合ってしまい,流紋は残りません.例えばコーヒーに薄い牛乳を混ぜてか きまわしても,白と黒の縞模様にはなりませんね.コーヒーに濃いミルクを混ぜると ,最初は白と黒の流紋がはっきり見え ますがそのうち均等に混ざってしまいますね.しかし,白と黒のチョコレートを少し 暖めてかきまわし,均質になる前に冷やすと.きれいなマーブル模様のチョコができ ますね.粘性が大きく,なかなか混じり合わないことが,流紋が残る条件だと思いま す.流動しにくいからこそ,流紋があるのだと思います.
質問2(溶岩ドームをつくるのは安山岩マグマしかない?)
石渡 明(金沢大学・理学部・地球学科)
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Q |
8月13日に阿蘇山に行ったんですが、前日から火口周辺が立ち入り禁止になっていました。 現在、阿蘇山の活動のレベルはどのくらいなのでしょうか?また、噴火の時間的な間隔はどの くらいなのでしょうか? (08/15/00) 福岡の高校生:高校生:18 |
A |
夏休みで,観光客がとても多い阿蘇火山です.せっかく火口の近くまで来たのに,登
山規制にあい,火口が見られずに帰る人々の多い日々です.
質問に答えます.
1.現在、阿蘇山の活動のレベルはどのくらいなのでしょうか?
(答え)
2.噴火の時間的な間隔はどのくらいなのでしょうか?
(答え)
須藤靖明(京都大学・大学院理学研究科・地球熱学研究施設) |
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Q |
はじめて質問させて頂きます。 北海道の地図を見ていると、内浦湾(噴火湾)と記載されていますが、 形的に見て、内浦湾は陥没によってできた大きなカルデラなのでしょうか? (08/01/00) sasa:会社員:36 |
A |
こんにちわ。
そうですね,噴火湾はほぼ円形をしていますし,まわりを活火山(恵山,駒ケ岳,有
珠山)がとりまいていることから,いかにもカルデラのような気がしますね。でも残
念ながらカルデラである可能性はほとんどありません。
もしカルデラであるならば,その陥没量に見合うだけの火山噴出物が周囲に分布して いるはずです。その量は阿蘇や支笏などの日本を代表するカルデラ形成時に放出され た噴出物量(数100立方キロメートル)より1桁多いはずです。しかしながらそのよう な噴出物(火砕流)は周囲には存在しません。また地下から大量の物が放出された場 合に期待される重力の異常も見つかっていません。 ちなみに噴火湾の名称は19世紀に訪れた外国船の船長によって与えられました。とい うのも当時は恵山,駒ケ岳そして有珠山が噴火を繰り返した時期で,それらの火山は 盛んに噴煙を上げていたと想像できます。それを見た船長が「噴火湾」と名付けたの です。 (8/27/00) 中川光弘(北海道大学大学院・地球惑星科学) |
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Q |
有珠山と三宅島の具体的なプロフィール(粘性や周期、今回までの歴史etc...)を比較したいのですが、教えていただけないでしょうか?詳しく書いてあると嬉しいです。
(07/28/00)
T.Kspeci@l:高校生:16 |
A |
有珠山と三宅島は,どちらも最近は20-30年ほどの間隔で噴火を繰り返している火山
ですね.しかし火山としての特徴は対照的です.有珠山は,最近340年ほどは,粘性
の高いデイサイトを噴出し,軽石噴火や火砕流,潜在ドーム,溶岩ドームをつくる噴
火をします.一方,三宅島は,粘性の低い玄武岩を噴出し,山腹割れ目噴火を起こし
ます.海岸近くでは地下水や海水と接触して,マグマ水蒸気爆発を起こすこともあり
ます.
噴火の詳しい歴史ですが,ここで書くと長くなってしまうので,とりあえず次にあげ るところを参照してみてください. 「火山防災情報サービス」(千代田火災)の 有珠山と三宅島 「日本の第四紀火山カタログ」(webバージョン) (ブラウザの検索機能で探してください.有珠山は「洞爺」火山の中にあります) 「有珠山火山地質図」(地質調査所) 「有珠火山のページ」(地質調査所東宮さん) 「三宅島火山災害予測危険区域予測図」(千葉大津久井さん) 「火山土地条件図「三宅島」について」(国土地理院) (8/3/00) 川辺禎久(工業技術院・地質調査所・環境地質) |
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Q |
理科の一研究で火山について研究するのですが、噴火の被害を防ぐ方法はあるんですか? あったら、できるだけくわしく教えてください。 あと、私は長野に住んでいるんですが、周辺に火山はありますか? 有珠山と三宅山などの火山のしゅるいに、違いがあったら教えてください。 (07/27/00) 19:学生:15 |
A |
19さん
学校で火山のことを勉強しているようですね.とても良いことです.せっかく火山に
興味をもった機会ですので,是非とも本を読んでみて下さい.噴火の被害とその防ぎ
方については,以下の本にくわしく書かれています.高校生(中学ですか?)にも理
解できる部分がたくさんあります.
公共の図書館などにもあると思います.この本に書かれているように,火山の災害に は実のたくさんの種類のものがあります.ですからそれから身を防ぐ方法も,災害の 種類に応じてたくさんあるのです.また,火山には個性があって,それぞれの火山毎 に災害の種類に特徴があります.ですから,ひとつひとつの火山の個性をちゃんと日 頃から調査しておくことがたいへん重要です.次に長野県のまわりに火山がどれだけ あるかということですが,以下の本に日本の火山の分布が書かれています.
学校か公立の図書館で上の本がないか尋ねてみて下さい.特に「日本活火山総覧(第 2版)」には,日本の活火山83個について噴火の歴史まで書かれていてたいへん勉 強になると思います.それを見るとわかるように,長野県とその近傍には,草津白根 ,浅間,新潟焼,妙高,弥陀ヶ原,焼岳,乗鞍,御岳と,8つの活火山があるのです . 上にあげた本には,それぞれの火山のマグマが固まってできた火山岩の名前,または 二酸化珪素(SiO2)量が書かれています.これが,その火山の噴火の特徴を決定する もっとも大事な要素です.三宅島と有珠とでは,それがちがっていることがわかると 思います.信州のまわりの8つの火山はどちらのタイプになるでしょうか?調べてみ て下さい. ところで,これだけ調べたらせっかく火山の近くに住んでいるのですから,行って見 たくなりますよね.そうしたら,次の本を手にもって実際に行ってみましょう.
これには焼岳・乗鞍・御岳が載っています.同上の@「関東・甲信越の火山T」には 浅間・草津白根・妙高が載っています.また,同上のA「関東・甲信越の火山U」に は新潟焼・八ケ岳が載っています.で,わからないことがあったら,松本の信州大学 理学部の私を訪ねてください. (8/3/00) 三宅康幸(信州大学・理学部・地質科学教室) |
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Q |
阿蘇のカルデラを形成したときの火砕流は島原半島や宇部市付近まで到達していると聞きましたがこれからもこんなに大きな火砕流が発生する可能性はあるのでしょうか。また、今後これほどの火砕流が発生しそうな火山はどこの火山でしょうか
(07/23/00)
テツヤ:高校生:15 |
A |
海を越えて島原半島や山口県まで到達した火砕流とは、約9万年前に噴出した阿蘇 -4火砕流堆積物のことですね。今後も、これほどの規模の火砕流が発生するかどう か、すなわち阿蘇-5火砕流のイベントがあるかどうかは、現在の火山学では全く分か らないと言った方がよいでしょう。かつての日本列島では、このような巨大噴火は、 九州、北海道、東北地方で比較的多く見られました。しかし、近い将来、これほどの 火砕流が発生しそうな火山を特定することは、できません。数万年前から数十万年前 までの火山噴出物の研究から知りえた知識をもとに、未来の噴火を予想することは、 大変に難しいのが現状です。 (9/28/00) 鎌田浩毅 (京都大学・総合人間学部・地球科学分野) |
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Q |
小生、三宅島に住んでおります。 きょう(2000.7.22)現在不安な日々を過ごしております。 さて、今回の噴火に関する火山噴火予知連絡会の記者会見資料の中で、「三宅島島内の重力の時間変化」というのがありますが、重力って地球上どこでも一定ではないのですか。 時間や場所で変わる物なのですか。 また重力を調べることがどうして噴火の予知につながるのですか。 よろしくおねがいします。 (07/22/00) さだぞう:自営業:38 |
A |
最初の問に対するお答え.
重力は時間や場所で変わるものであり,「地球上どこでも一定」ではありません.お
そらく,それに人類が気づいたのは1672年のフランス人リシェーの振子時計に関する
報告が最初でしょう.振子の周期Tは重力加速度の平方根に反比例します.場所によ
って重力が違うなら,振子の周期も場所によって異なるはずです.実際,フランスで
正確に調整した時計を赤道地方にもっていくと,振子の周期が延びてしまい,時計が
1日あたり2分28秒も遅れてしまうのです.
第2の問(火山活動と重力変化の関係)に対するお答え. 火道のような空隙を伝わって,重いマグマが地下深部から上昇してきたと想定しまし ょう.ここで高校の物理学でならうようにニュートンの万有引力の法則がはたらくこ とを思い出しましょう.つまり2つの物体の間には引力がはたらき,その大きさは質 量に比例し,距離に反比例します.ですからマグマに近いところには大きな引力が働 き,遠いところには小さな引力がはたらきます.引力の変化は重力の変化としてとら えられます.したがって,地上の重力変化をくまなく測定するとマグマの水平位置や 深さ,質量などを推定することができます.逆にマグマが地下深くに戻っていくとき には,重力の大きな減少が認められるはずです.7/22の資料にはこのような減少がみ とめられています. (8/05/00) 大久保修平(東京大学・地震研究所) |
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Q |
はじめまして。今度,白山に登る高校生です。 今,下調べ中なのですが、どうしても分からないので質問します。 石川県の,古白山火山はいつ頃,どのように起こったのですか?また,新白山火山の活動はいつ頃からどのように続いているのですか? 質問は以上です。よろしくお願いします。 (07/21/00) マミー:高校生:16 |
A |
白山火山については,石川県白山自然保護センターから「白山の人と自然」シリーズ
が出版されていて,その「地学編」(平成4年)の62-65ページに「白山火山の形成
年代」という章があります.この本は,石川県内の主な図書館には必ずあると思いま
す.
これによると,白山で最も古いのは加賀室火山で,その溶岩のカリウム・アルゴン年 代は42.7万年前と31.8万年前の2つの測定値が報告されています.白山の北西側山腹 の「加賀室」付近から噴出したと考えられています. 次の古白山火山の溶岩のカリウム・アルゴン年代は13.2万年前と10.8万年前です.現 在の地獄谷付近に中心をもつ大規模な富士山型の成層火山だったと考えられています が,山体崩壊と侵食によって,現在は一部の溶岩だけが残っています. 新白山火山は現在の白山山頂部から噴出した溶岩や火砕流の重なりです.カリウム・ アルゴン年代は,測定限界(10万年程度)より若すぎるため測定できませんが,広域 火山灰層との上下関係から,8,000年以上前から活動が始まったことがわかり,歴史 記録からは約350年ほど前まで何度も噴火していたことがわかっています.新白山火 山は活火山で,将来も噴火の可能性があります. (8/3/00) 石渡 明(金沢大学・理学部・地球学科) |
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Q |
先日は質問に答えていただきありがとうございました。 さて,今回は6月26日から始まった三宅島の活動についておしえてください。 今回7月8日の雄山での噴火はあまり火山灰が出ていないのに, 大きく山の頂上が陥没していました。 カルデラが出来る時,中のマグマやガスがたくさん出て, 空洞ができて陥没するというのは知っていますが, 今回の雄山では,あまり噴出物が多くないのに,大きく陥没したのはなぜですか? また,三宅島の火山活動は海に移動したと発表されていましたが, 今回雄山で噴火活動が見られたのはなぜですか? (07/09/00) ash:主婦:30 |
A |
7月8日の夕方に起こった三宅島山頂部の陥没事件は、陥没した量に比べて、火山灰 などの噴出物の量が非常に少ないので、陥没前に地下に空洞ができたために地表部分 が落っこちたと考えられています。また、噴出物には今回の一連の活動を引き起こし たと考えられるマグマ物質(新鮮な溶岩の破片)は含まれていません。空洞ができた 理由は完全にはまだ分かっていませんが、地上には出なかったマグマが島の西側に移 動したためや、地下に引き戻されたためであろうと考えられています。伊豆大島の 1986年の噴火の1年後に、三原山の火口が大きく陥没したことがあります。これは一 旦火口を満たした溶岩が地下に戻ったため空洞ができたためと解釈されています。 それでも、今回の事件では陥没量をマグマの引き戻しだけでは完全には説明できな いので、あらかじめ空洞か空隙の多い部分が山頂の地下にあったのかもしれないと考 えられています。 (7/11/00) 中田節也(東京大学・地震研究所・火山センター) |
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Q |
阿蘇や草津の火口湖の青白色と今回の三宅島の火山活動での変色海水とは、同じ原因ですか? もし違うのなら、その原因を知りたいです。 (07/07/00) yuujionda:学生:21 |
A |
阿蘇や草津の火口湖の青白色は,おもに鉄イオン(電荷は+2)が溶存しているため
に生じると思われます。三宅島の火山活動での変色海水は,海底でマグマの熱により
発生した熱水と岩石が反応して熱水に溶け出したアルミニウムや珪素が海水の中で沈
殿し微細な粒子になって発生します。この微粒子の色は白色ですが鉄成分が混ざると
黄色や茶色になります。今回の変色海水の青白い色は海の青い色を背景にして見てい
るためと思われます。水の色というのは採取することが出来ない上に,天候,それを
見る方向,太陽の位置,など複雑な要素に影響されるので簡単なようでなかなか原因
を特定するのは難しいと感じています。
(7/11/00)
大場 武(東京工業大学・火山流体研究センター) |