火山についてのQ&A集

Question #1094
Q はじめまして。ずっと疑問に思っていましたことを質問します。
マグマですが、これは、どうして地球に存在しつづけるのでしょうか。何億年も前から、高温のままだと思いますが、そのエネルギー源は何なのでしょうか。核反応の一種でしょうか。
時間が経つと地球から熱が放射されて地球が冷えてマグマも固まるような気がするのですが。 (10/06/00)

まさみ:会社員:50

A 御考えのように放射性元素(例えばウラン、トリウム、カリウム)の壊変によるエネルギーが 地球の冷却を遅らせていることは事実ですが、現在の地球上にマグマが存在する理由としては 別の要因も考える必要があります。

現在の地球の場合、マグマが作られる状況として3つ考えられます。 一つは減圧融解というメカニズムが働く状況です。 地球を構成する岩石の融けはじめる温度は圧力が低くなるとともに低温になっていきます。 このため、地下400km(圧力約14万気圧)で1400度の岩石は固体ですが、 地表では1200度の岩石はどろどろに融けてしまいます。 このため、マントル内の上昇流で地表近くにまでマントルの岩石が持ち上げられると 岩石の一部が融けてマグマを作ることになります。 海嶺と呼ばれる海洋プレートのわき出し口では、 このようなメカニズムで玄武岩マグマが生産され、海洋地殻を作っています。 マグマを作る別のメカニズムとして、低融点成分(例えば、水)との混合があります。 例えばマントルを構成するペリドタイトという岩石は、深さ100kmの圧力下では 水の存在しない環境では1400度近くまで融けません。 しかし、水が多量に存在すると1000度程度で融けてしまいます。 日本列島など島弧に火山が多いのは、プレートの沈み込みによって大量の水がマントル内部に 持ち込まれるため、岩石の融点が下がって、マグマを生産しやすい環境ができているためと 考えられます。 マグマ生産の3番目の状況は、融点の異なる物質どうしの接触や混合です。 一口にマグマといっても、その温度はマグマの組成によって大きく異なります。 最初は低温の低融点の岩石が高融点で高温の岩石と接触すると、高温の岩石から しだいに熱をもらって低融点の岩石が融けはじめてマグマを作ることがあります。

以上のように、マグマが存在しつづけているといっても、ずっと同一のマグマが存在しているのではなく、 温度や圧力、揮発性成分の量といった周辺の環境変化によって固体岩石であったり、融けてマグマになったり 形を変化させながら存在しているわけです。ずっと高温状態が必要なわけではありません。 マントル対流やプレート運動などが、岩石のおかれた環境の変化をもたらしているわけですから、 マントル対流やプレート運動の原動力、すなわち地球のゆっくりとした熱の放出が マグマがずっと作り続けられている原因と考えることもできるでしょう。 (10/09/00)

安田 敦(東京大学・地震研究所・地球ダイナミクス)


Question #1063
Q 先ほど質問いたしました「ふくろう」です。わかりづらかったように思いますので、もう一度質問します。
質問:火山灰とは、上昇してきたマグマの破砕(ガス成分が発泡c張することによる破砕)によって吹き飛ばされたマグマの小さな(2mm以下の)かけらが空気中で冷やされて固まった粒子であると考えて良いのでしょうか。マグマ由来ではなく、すでに火口にたまっていた火山灰も同時に吹き飛ばされたり、火口付近の山体の一部が破壊され粉々になって火山灰となる(?)こともあるのでしょうか。また、降下してきた火山灰がマグマ由来か、すでに火口にたまっていた火山灰が吹き飛ばされたものかはわかるのでしょうか。
それから、火山灰の各粒子は、どんな物質であるのか。
お願いします。 (09/27/00)

ふくろう:教諭:33

A
 「ふくろう」さんの質問はかなり専門的ですが、大変重要なことで、有珠山や三宅 島噴火でも地質学研究者がマグマの関与を調べるためにしばしば検討していることで す。
 水蒸気爆発の場合にはマグマ由来の物質が含まれず、火口の下の既存の岩石が粉々 に破壊されて細かい火山灰が生産されます。岩石の破片が地上までの狭い通路を水蒸 気と一緒に勢いよく通過し、火口の中を行ったり来たりしている間に、岩石どおしが ぶつかり合って大変細かくなってしまうのです。一方、マグマ噴火の場合にはマグマ が爆発自身によって粉々になったり、同様に、マグマの破片どうしがぶつかってやは り粉々になります。この場合は一般に粗い粒子からなります。その中間的な噴火であ るマグマ水蒸気爆発の場合には、火山灰粒子を見てすぐにどれが噴火を起こしたマグ マの粒子かを言い当てることは簡単ではありません。
 古い岩石の破片であれば一般にやや変質の進んだ岩石(火山岩、深成岩、堆積岩) です。新鮮で気泡の入ったガラス質の破片があればマグマと疑ってみることができま す。ガラスは液体マグマが急激に冷やされたものです。でも、古い堆積物にもそのよ うな物が残っていることがありますので注意が必要です。新鮮な発泡したガラス質粒 子が時間とともに次第に多くなったり大きくなれば恐らく本当のマグマでしょう。粒 子一粒ごとのできた年齢を正確に測定できれば確実に判断できますが、残念ながら、 今のところそのような手法はまだ確立されていません。 (9/29/00)

中田節也(東京大学・地震研究所・火山センター)


Question #1055
Q 00/8/27に奈良県で地震がありました。震源地が二上山という山の近くだったので、「二上山が火山活動を始める予兆では?」といううわさを聞きました(たぶん非常にローカルなうわさだと思います。)。「二上山は地殻変動で出来た地面が盛り上がっただけの山だ」という調査結果を以前何かで読んだと言う人もいます。
この二上山という山は火山ですか。

(09/24/00)

奈良県民:会社員:38

A
 はい,二上山は,昔は火山でした.二上山及びその周辺には,中新統の火山岩類が 分布していることから,二上山は昔の火山であったと考えられています.その活動は ,中新世後期にまず流紋岩などの酸性岩の活動に始まり,黒雲母安山岩・角閃石安山 岩を引き続いて噴出し,特異な讃岐岩(サヌカイト)の噴出で終わっています.雌岳 およびその東部には流紋岩溶岩や流紋岩質岩脈が存在していることから,当時の火口 に近いと思われますが,現在では表面がどんどん削剥されて、芯の部分だけが残って いるということになります.二上山の活動時期は放射年代測定から約1400万年前と推 定されています.火山の寿命はせいぜい100万年くらいと見なされますので,二上火 山は死火山で,将来噴火する可能性は全くありません.二上山西方の屯鶴峯公園には 二上山から噴出したと考えられる火砕流堆積物が公園一帯に広く露出しています .1991年〜95年の雲仙普賢岳と同じような火砕流がかつて発生したことになります. (9/28/00)

鎌田桂子(神戸大学・理学部・地球惑星科学教室)


Question #1047
Q 今、現在の三宅島雄山の噴煙の状態、風向・風速等が知りたいのですが、HP等あれば教えていただけないでしょうか。火山性ガスがどの方向へ流れていくのか、だいたいの予測を知りたいのです。日本気象協会のサイトの「アメマメ分布図」は、ある時間に噴煙があったと想定して、の拡散予想図で、リアルタイムでの状況から計算したものではないようですので。 (09/22/00)

水本 みか::

A 三宅島から放出される火山ガスは,風下側に流されて関東や遠くは阪神地区にまで異 臭騒ぎをもたらしていますね.

三宅島の風向などの現状を報告しているサイトは残念ながらないようです.一日前の 予測ですが,気象庁は前日に発表される火山観測情報で,翌日の風向・風速予報を出 しています.また噴煙の状態については,御蔵島に設置されている東大地震研究所の 御蔵島カメラ(はちろうカメラ)が公開されているものでは唯一でしょう. 三宅島火山監視カメラ(御蔵島カメラ)

また1時間おきですし,曇っていると必ずしもうまくいくとは限りませんが,気象衛 星「ひまわり」の可視光画像を使うと,三宅島からの噴煙がどちらに流されているか がわかることがあります.日本気象協会webページのひまわり映像から「日本(可視) 」を選ぶと,1時間おき24枚前の画像まで見られます.同じく可視画像の日本周辺の 拡大したものは,高知大学気象情報頁にあります. 日本気象協会ひまわり画像 高知大学気象情報頁 (9/22/00)

川辺禎久(工業技術院・地質調査所・火山地質)


Question #1045
Q 最近、浅間山の火山性地震が多発しています。しかし、火山性微動は観測されていないといわれていますが、火山性微動が観測されなければ、大規模な噴火は起きないと言う事なのでしょうか。もし、大規模な噴火や地震が起こるとすれば、被害はどの程度であると考えられますか。
そして、最近日本各地で起こっている火山活動と、今回の浅間山の火山性地震との関連はあるのでしょうか。

(09/21/00)

wm:アルバイト:19歳

A
 まず、浅間山の火山性地震と、最近活発な日本各地の火山活動との関連性ですが、 数十年以下の時間スケールで見れば関係はないようです。たまたま活動が活発になっ たのが同じ時期だったのでしょう。


 それから、火山性微動が観測されなければ大規模な噴火がおきないかどうかですが 、これは一概に答えられないと思います。火山性微動と火山性地震の区別は実際には すこしあいまいなところがあって、火山性地震が数秒間隔で起きた場合には火山性微 動と見なされることもあります。火山性微動にしろ火山性地震にしろ火山内部の活動 を示していますから、そのどちらかが、あるいは両方の規模が大きくなりかつ発生の 頻度を高めるようであれば要注意です。特に浅間山を中心として広い範囲で有感地震 や有感微動、鳴動などが頻繁に感じられるようであれば、活動の規模は大きい(自分 にも避難などの必要が出てくるなど)と思って間違いないでしょう。


 これまでの浅間山の活動の歴史をひもときますと、大きな活動としては227年前の 天明三年のものが知られています。天明三年の噴火では熱泥流による北麓の集落の壊 滅、鬼押し出し溶岩流の流出などが記録に残されています(このへんの記録の概略は 丸善から出されている理科年表にも紹介がされています)。このことから考えると、 天明三年の活動と同じぐらいの規模の活動が起きた場合、火口から半径20km以内では 何らかの被害を被るとかんがえてよいでしょう。またそれから離れていても長野新幹 線や上越新幹線、高速自動車道などが降灰によって運休や通行制限などになることは 必至でしょう。


 今回の浅間山の火山性地震がこのような活動につながるものかどうかについては、 私にはなんともお答えのしようがありません。 (9/23/00)


 筒井智樹(秋田大学工学資源学部)


Question #1028
Q 楽しく拝見いたしています。
さて、
中国地方にある火山の形跡がある山を、教えていただけませんでしょうか?
分布図なんかあればベストです。
史跡巡りじゃないですが、火山跡巡りをしてみたいと思います。
是非、宜しくお願いいたします。 (09/17/00)

バイク好きなサラリーマン:会社員:26

A
 秋空のもと,楽しいプランですね。
 中国地方限定ということであれば,西日本火山帯を見学ということで,山陰側のコ ースをお薦めします。日本海に面した9号線をバイクで走るのは爽快でしょう。東か ら西へのコースとしては,大山→三瓶山→青野山→萩というのはいかがでしょうか。 大山(1729m)は鳥取・岡山県境にあって文字どおり中国地方で最も高い山です。三 瓶山は中国地方でもっとも新しい火山で,男三瓶,子三瓶,孫三瓶,女三瓶などのド ーム群があります。青野山付近には,9号線沿いに,お椀をふせたような形をした火 山がいくつか見られます。小さい火山が10以上あります。その分布図が「山口県地学 のガイド」の209頁に載っています。また,その風景は「山口県の岩石図鑑」の78頁 にカラー写真で紹介しています。黄金色の稲穂の実った田んぼの中を走る9号線から の風景は格別です。山口県では,萩市の笠山も小さいながら火山地形を良く保存して います。笠山山頂から日本海を展望すると,相島,羽島,尾島などの溶岩平頂丘(円 頂丘ではなく)が見られます(山口県の岩石図鑑の74頁)。一見の価値があります。 守屋以智雄著「日本の火山地形」の表紙裏には全国の火山分布図が掲載されています 。中国地方の火山について,詳細をお知りになりたい場合には,下記の本が役立ちま す。火山の生い立ちがわかれば,さらに楽しい旅になるでしょう。
               記 山口県の岩石図鑑 山口地学会編 第一学習社 日曜の地学-12 山口の地質をめぐって  山口地学会編 築地書館 日曜の地学-7 広島の地質をめぐって  鷹村 権 著 築地書館 日曜の地学-25 島根の自然をたずねて  「島根の自然」編集員会編 築地書館   山口県地学のガイド  山口地学会編 コロナ社 日本の火山地形  守屋以智雄著  東大出版 フィールドガイド日本の火山6 中部・近畿・中国の火山 高橋・小林編 築地書館 (9/23/00)

今岡照喜(山口大学・理学部・地球科学教室)


Question #1027
Q はじめまして、ひろきといいます。火山の知識は、義務教育で習った程度しか知りません、
といっても、まじめに勉強してなかったので、なしに等しいですけど(笑)。。よろしくお願いします。

質問です:
最近三宅島の火山が噴火して、たくさんの住民の方が避難してますよね。それで、火山予知の話題を
特集してる、ニュース・番組等がたくさんやっていますが、人間の力で火山の噴火をコントロールすることは、
出来ないのでしょうか?私が考えたのは、単純な発想なんですけど、爆弾などで、山を吹っ飛ばすとか、
穴を開けて、マグマの道を作って、火山以外の場所からマグマを出し、噴火をコントロールするとか、
そのようなことは、可能なのですか?そして、現実にそのようなことが行われたことはないのでしょうか?
唐突な質問で、馬鹿らしいかもしれませんが、ぜひお答えお願いします。。
ではでは。 (09/17/00)

ひろき:高校生:学生:18

A 火山の噴火エネルギーはとても大きなものです.地面に大きな穴を開けて地下のマグ マを地表に吹き出させるためには大変な量のエネルギーが必要です.たとえば,1883 年のクラカトア火山の爆発のエネルギーはTNT火薬で1〜1.5億トンだったと考えられ てます.今回の三宅島の噴火でも,TNT数千〜数万トンに相当するエネルギーが放出 されていると考えられます.これは広島や長崎に投下された原子爆弾に相当するぐら いのエネルギーです.

このような大規模な自然現象に,通常の爆薬で立ち向かうのは,まったくエネルギー 不足です.といって,原子爆弾を使うわけにはいきませんし,使ったとしても,思い 通りに新火口を開けるのは大変難しいでしょうね.

実際,ハワイの1935年のマウナロア火山の噴火の際に,6トンの爆弾投下して,溶岩 流の流れを変えようとの試みがなされましたが,うまくいきませんでした.

長崎県の雲仙普賢岳では1991年に山頂部に溶岩ドームが出現し,それが崩壊してしば しば大きな火砕流が発生しました.溶岩ドームが大きく崩壊するまえに砲撃やミサイ ルでどんどん破壊してしまおうとのアイディアもありました.でも,それがきっかけ で大火砕流が発生してしまうと,麓の町が大きく被害を受ける可能性もあり,責任問 題になってしまいます.結局このアイディアは採用されませんでした.

といって,まったく指をくわえて火山噴火を眺めているわけではありません.流れ出 る溶岩の通路にダムを造ったり,大量の水をかけて冷却して,その流れ出る方向を変 えて町を守るという手法は何度か行われています.1973年のアイスランドのヘイマイ エ島の噴火や1983年のイタリアのエトナ火山での例が有名です.日本でも1983年の三 宅島や1986年の伊豆大島の溶岩流でも消防庁によって小規模ながら実施されています . (9/24/00)

松島 健 (九州大学・地震火山観測研究センター島原観測所)


Question #1014
Q 静岡の友人と話しをしていて、もし富士山が噴火した場合、火山弾はどこまで飛ぶかと議論して結論が出ませんでした。
約3600mの山頂から8000m上空まで45度の角度で噴出したとしても、空気抵抗を無視して約20Km、初速度は秒速400m超です。
頭に当たると危険な大きさの火山弾は、実際どの程度離れたところまで飛ぶのでしょうか? (09/12/00)

Anonymous:ガラス技工:30

A 直径64mmより大きな岩が火山から飛んできた時に,それを火山岩塊と呼びます.また ,火山岩塊のうちで特徴的な形や内部構造(紡錘状,パン皮状など)をしたものを火 山弾と呼びます.このような大きな岩は,富士山に限らず,どこの火山でもおおよそ 5km以上飛ぶことはめったにないことが,経験上わかっています.

火山弾・火山岩塊は,その大きさ(>64mm)からわかるように,例外なく頭に当たれ ば危険です.一方,それより小さい火山礫(直径2〜64mm)であっても,頭に当たれ ば致命的な場合が当然あり得ます.この程度の大きさのものは,噴煙にのって上空高 く舞い上がった後に風に流されて落ちてくる場合がありますから,とくに風下におい て5kmをはるかに越えた範囲に落下することがあります.どこまで飛ぶかは,噴煙高 度,風力,岩の密度などによって違ってきます.たとえば,1707年富士山宝永噴火で は,直径2cmの岩片が20km程度風下に飛びました.

実際にどの程度の大きさの岩片が頭に致命傷を与えるかは,医学的な専門知識がない のではっきり答えられません.しかし,たとえば直径5cm,密度2500kg/立方mの岩片 の空気中の終端速度は毎秒数十mとのデータがありますので,そういうものが降って くる場所には行きたくありませんね. (9/28/00)

小山真人(静岡大学・教育学部・総合科学教室)


Question #982
Q 7月に羊蹄山へ登山に行って来ました。羊蹄山は火山と聞いたのですが、
もう、噴火しない火山なのでしょうか。
一番新しい噴火は何年ぐらい前なのですか。 (08/31/00)

木戸:学生:14

A こんにちわ 羊蹄登山はいかがでしたか?なかなか立派な山ですね。私も今まで5回,山頂を目指 して登りましたが,いずれも天気が崩れて山頂はガスの中でした。今年も登る予定な のですが,今度こそ絶景を楽しみたいと思っています。

さて羊蹄山は火山です。それもかなり新しい火山で,気象庁による活火山に指定され ていませんが,将来的には噴火する可能性が高いと思っています。羊蹄山が誕生した 時期ははっきりとはわかっていませんが,10万から数万年前から火山活動がはじまっ たようです。そして溶岩流やマグマが砕けた火砕物を噴出して火山体が成長した,典 型的な成層火山です(富士山と同じタイプとなります)。

最近では山頂の火口を中心として噴火活動が頻発したようで,約5000-6000年前にマ グマ噴火があったことは確認されています。また最近の調査によって,その後も噴火 活動があったことが指摘されています。という訳で一番新しい噴火は3-4千年前と考 えてよいでしょう。その後は噴火は認められていませんが,数千年間の火山活動のお 休みというのは,「火山としての一生」が終わったと断定するにはあまりにも短すぎ ます。羊蹄山はその誕生も最近であり,また数千年前まで活発に噴火したという実績 を考えると,これからも噴火する,と考えた方がよいでしょう。でも現在はマグマが 活動している証拠はありませんので,私や木戸さんが生きている間に噴火する確率は 低いかもしれません。 (9/18/00)

中川光弘(北海道大学大学院・地球惑星科学専攻)


Question #899
Q 九州の小林カルデラについて、その推定範囲と活動時期、カルデラからの噴出物質その他、今までに得られている知見について教えて下さい。火山学会の第四紀火山カタログでは、加久藤カルデラとあわせて取り扱っていますが、本来これらのカルデラは同じものなのでしょうか。 (08/21/00)

棚橋道郎:団体職員:52

A
 小林カルデラは,田島・荒牧(1980:地震研彙報)によって-15mgalに達する重力 異常の存在とその周辺に分布する火砕流堆積物の存在から提唱されたものです.外形 は,小林市北西部を中心とした直径18km程度のものが推定されています.小林火砕流 は,南九州では珍しく,黒雲母斑晶を特徴的に含んでいます.この火砕流の噴出年代 は,それと同時の火山灰の層位から,50数万年前と推定されます.
 火山学会の第四紀火山カタログを作成された方が,どういう理由で小林カルデラと 加久藤カルデラとをあわせて取り扱ったのかわかりませんが,小林カルデラはその後 に噴出した加久藤火砕流や入戸火砕流に厚く覆われていて,実際のところ,よくわか っていないのが現状です.小林カルデラの重力異常は,加久藤カルデラのそれ(- 10mgal)とは明らかに異なった目玉を描いていますから,この2つのカルデラは同じ ものではなく,隣接した2つのカルデラと考えた方がよいような気もします.同じよ うに隣接して大きなカルデラを作っているものに北海道の屈斜路カルデラと摩周カル デラがあります. (8/31/00)

井村隆介(鹿児島大学・理学部・地球環境科学科)


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