火山についてのQ&A集

Question #1217
Q 初めまして、授業で火成岩についてやったのですが、岩の色について教えてください
色は岩中の鉱物の石英、黒雲母、輝石、長石、角閃石、カンラン石の量に関係して決まるそうですが
その鉱物の色を出している物質、黒雲母だったらどんな物質が黒色、緑色の原因になっているのか
青色だったら銅とか赤だったら第二酸化水銀などを教えてください

(10/31/00)

会長:学生:14

A
 ある鉱物や岩石がどんな色を示すかは,様々な要因が複雑にからみ合って決まりま す.元素の種類だけでは決まりません.例えば,かんらん石や輝石は「有色鉱物」と いうことになっていますが,これは地球表層部のかなり酸化的な環境での話しで,例 えば隕石中のかんらん石や輝石は,地球に落ちてきた直後は真っ白です.地球上で色 が出る原因になっている元素は鉄で,鉄が少ないかんらん石や輝石は,地球の岩石で も淡緑色〜灰色です.流紋岩は鉄を含まない石英や長石が多いので,結晶質の場合は 白色の岩石ですが,ガラス質の場合は半透明で,岩石内部で光が吸収されてしまうた めに黒く見えます(黒曜石など).長石も微細な赤鉄鉱の包有物を含む場合は濃い赤 色になりますし(赤色花崗岩など).無色透明の長石でも,内部の細かな層状構造の ために光が干渉して青色に見えることがあります(月長石).放射線の照射によって も無色透明の鉱物に色がつくことがあります(黒水晶など).
 まとめると,通常の岩石を造っている鉱物(造岩鉱物)の色を決めている元素は何 かと言われれば,それは多くの場合「鉄」ですが,磁鉄鉱Fe3O4(黒色)または赤鉄 鉱Fe2O3(赤色)の細かい結晶を含んでいるために色が出る場合と,鉱物の結晶構造 の中に組み込まれている鉄イオンが色を出す場合とがあるということになります.も っと詳しく知りたい場合は,「地球色変化 〜鉄とウランの地球化学〜 叢書名:近 未来科学ライブラリ− 中嶋悟 近未来社」を読んで下さい. (11/1/00)

石渡 明(金沢大学・理学部・地球学科)


Question #1209
Q 三宅島の雄山の火山の形は,成層火山,盾状火山のどちらに分類されているのでしょうか。
中学校の教科書では,ハワイのキラウエア火山と同じ分類で,溶岩のねばりけが少ないグループに入っています。HP上の文献では成層火山とされています。
どちらを生徒に教えればよいでしょうか。 (10/31/00)

木村 紳一:塾講師:50

A
 三宅島は玄武岩溶岩からなる成層火山です。盾状火山とは、古代ヨーロッパの兵士 が手に持っていた盾(今の日本では機動隊が持っているジュラルミンの盾?)をちょ うど伏せたように、傾斜が数度程度の非常に緩い斜面からなる火山のことで、その典 型がハワイのキラウエアと紹介されています。これは粘り気のたいへん小さな(低 い)玄武岩溶岩が山の中央にある火口から四方八方に流れてできたものです。三宅島 の溶岩はキラウエアの溶岩ほど粘り気が小さくはありませんが、桜島や雲仙に噴出す 安山岩やデイサイトの溶岩よりは粘り気のない玄武岩です。溶岩が流れる時の粘り気 は、溶岩の化学組成、温度、含まれる結晶や気泡の量などによって大きく異なりま す。 (11/06/00)

中田節也(東大・地震研究所・火山センター)


Question #1190
Q
 秋田県大曲市の西方(神岡町と南外村の行政界付近)に、姫神山・神宮寺岳・土大森山・
雷電山など、標高300m前後の急峻な山が集まってます。その山容からして、周囲の出羽丘陵
の山々とは成因が違うのでは、と以前から気になっていたのですが、「第四紀火山カタログ」
を拝見したところ、この一帯は載ってませんでした。

 しかし、それより古い火山の名残では?と諦めきれずにいるのですが、成因は火山とは関係
ないのでしょうか?

(10/24/00)

Sugawara:地方公務員:38

A Sugawaraさん,こんにちは.

これらの山々はおっしゃる通り第四紀火山ではありません.

秋田県発行の地質図幅「大曲」を見ますと,これらの山々はすべて姫神山安山岩の分 布地域にあります.これは第三紀の火山岩の岩体ですのでたしかに周辺の堆積岩とは ちがいますね.

船川層や天徳寺層という,海で堆積した地層と同時期の火山岩ですので,おそらく海 底火山だったと考えられます.東北の第三紀火山岩の生き字引,秋田大学の大口健志 先生にお聞きすると「たぶん海底火山だと思いますが,まだきちんとは調査されてい ないのです,誰かやらないかなあ」とのことでした.なお,640万年前というK-Ar年 代測定値があります.

私はまだ行ったことはありませんが,姫神山安山岩は採石場で見ることができるの で,ご覧になってはいかがでしょうか? (11/2/00)

林信太郎(秋田大学・教育文化学部・地学研究室)


Question #1189
Q お忙しい中恐縮ですが、ご教示頂ければ幸いです。
本土における三宅島から排出される火山ガスの危険性についてお伺いします。
先日、一部週刊誌で三宅島からの火山ガス(二酸化硫黄)が首都圏に健康被害をもたらすとの趣旨の記事が掲載されていました。
私自身、噴火以後、(気のせいかもしれませんが)街中で「硫黄臭い」と感じることが多くなった他、
噴火が激しくなった時期に、搭乗中の旅客機から三宅島方面をみると、その方向から多量の黄色い雲が関東方面に流れているのが観察できました。
気象庁の火山情報では、日量2〜4万トンの二酸化硫黄が排出されているとのことでしたが、この排出量は私のように首都圏に住む者にも影響が出るようなものなのでしょうか。
被災された方に比べれば大したことではないのでしょうが、我が家に幼児がいまして喘息などの影響がでることが気がかりです。
そこで、
1.風向・降雨などにもよるのでしょうが、どれぐらいの排出量となれば我々は注意せねばならないのでしょうか(あるいは既に要注意なのか)?
2.火山ガスが流れてきた場合、どのような対策をとればいいのでしょうか?
3.三宅島の火山ガスに対する注意報・警報などは発令される(あるいは情報提供される)システムは本土にあるのでしょうか?
4.上記の情報については、どこに問い合わせればよいのでしょうか?
すべて杞憂であれば良いのですが、不用心な地域での二次災害を防ぐ意味からもお教えいただければ幸いです。 (10/24/00)

MINE:会社員:33

A
 8月下旬から南から南東の風に乗って,三宅島から放出された火山ガスが本州方面 に流れ込むことが起きはじめています.問題となる火山ガスは二酸化硫黄(SO2)と硫 化水素(H2S)です.
 このうちSO2は大気汚染要因として,各自治体などで測定されていますが,東京周 辺でも最も多いときで,1ppm近くに達したことがわかっています.日本のSO2の大気 汚染環境基準値は0.1ppm(1時間値)ですから,それの約10倍の濃度なります.三宅島 島内での測定では,噴煙の風下で5ppm近くに達することもあるようです.また腐った 卵やドブくさい臭いを感じるのはおそらくH2Sだと思われます.三宅島周辺での測定 では,H2SはSO2の1/4から1/10程度含まれるようです.


 1日数万トンのSO2が放出されている現状では,排出量よりは風向きに気をつけたほ うがよいでしょう.三宅島島内でも,風上や噴煙からちょっと離れると問題にならな いレベルの濃度に下がります.
 健康被害という点について述べると,SO2もH2Sも急性毒性が問題になるのは数百 ppmの濃度であることから,少なくとも本土では,健康な人が急性毒性を気にするレ ベルにはならないと思っていいでしょう.ただし喘息など呼吸器に疾病を持つ方は, SO2濃度が1ppm程度でも発作を起こすことがありえますので,注意は必要です.
 9月上旬までの異臭騒ぎを受けて,環境庁などでは環境基準を超えるSO2濃度が連日 観測されている場合には,念のため次のような対処法を呼びかけています.

(1) 外出はなるべく控えること (2) 外から戻ったときには、目を洗ったり、うがいをすること (3) 目に刺激を感じたり、咳が出たりした場合は、医療機関に相談すること


 また,喘息等の呼吸器系疾患を持つ方々については,外出中に硫黄臭などを感じた ときは,以下の事項を緊急避難的に行うことも薦めています. ・近くの建物などに入ること ・近くに建物などがないときは,タオル等を水で濡らし,口や鼻を覆うこと


 本州や三宅島周辺の島には,風向きしだいで火山ガスが到達する可能性があるの で,例えば本州なら南よりの風が吹くような天気の場合には,注意したほうがよいで しょう.天気予報などで風向き予報を確認してください.


 SO2濃度については,関東地方なら環境庁の連続測定値が公開されていますから, そちらを参照してみてください.また他の地域に関しては,各県,自治体の大気保全 担当部局に問い合わせるようにとのことです.自治体によっては観測値をリアルタイ ムで公開しているところもあります. 環境庁大気汚染物質広域監視システム(そらまめ君) (10/24/00)

川辺禎久(工業技術院・地質調査所・環境地質部)


Question #1187
Q 火山性地震についてお聞きします。いろいろな古い本を読むとA型地震、B型地震、爆発地震という区分があるようですが科学技術庁防災科学研究所KNetに掲載されているようなマグニチュード3クラス以上の有珠山の火山性地震三宅島の火山性地震は、すべて爆発地震と考えたほうがよろしいでしょうか?? (10/23/00)

YY:学生:24

A 爆発地震とは,爆発的噴火そのものによって生じる地震のことです.爆発地震の特徴 としては,爆発音や空振を伴うこと,地震波はすべての観測点で押し波で観測される ことが多いこと,等が挙げられます.桜島が爆発的な噴火を起こす際には,このよう な爆発地震がよく記録されます.

さて,今回の有珠山や三宅島の地震のうち,K-Net で記録されているような規模が大 きな地震は爆発地震ではありません.両火山とも空振を伴う炸裂型の噴火は繰り返し ましたが,個々の炸裂に対応する地震は観測されませんでした. 有珠山や三宅島の地震が火山活動に関係していることは事実ですが,地震の特徴は活 断層などで発生するものと基本的に同じと考えられます.すなわち,分類するとした ら,ほとんどがA型地震でしょう.

爆発などの表面現象を伴わない火山性地震をA型地震,B型地震と分けるやり方は,震 源や波形の特徴をあらわす際に便利なので最近でも使われることがあります.ただ, 一般には明瞭に区別されるものではなく,その中間型のイベントはたくさん起きてい ます.また,火山から少し離れたところで起きる地震(三宅島の例ではたくさんあり ますが)を,どこまで火山性地震と呼ぶか,ここは見解の分かれるところです.すな わち,火山で起きる地震の分類基準は,山によっても,また分ける方針によっても結 構違っていることがあるんです.

西村裕一(北海道大学・大学院理学研究科・地震火山センター(有珠火山観測所))


Question #1154
Q 以前、北アルプスの鷲羽岳に登り、山頂直下の鷲羽池をおとずれて、なぜこのような
所に火口があるのか、不思議に思った覚えがあります。鷲羽池はいつごろ、どのよう
な噴火でできたものなのでしょうか? そしてなぜあのような高所で噴火が起こった
のでしょうか? また、鷲羽岳の南東に、硫黄尾根という荒々しい地形が見えていま
すが、あれも火山地形なのでしょうか? (10/17/00)

登山R大好き中年:自営:43

A
 鷲羽池火口は美しい火口です。この位置から南東方向に2km以上流れた溶岩があり ます。放射年代測定によると、約12万年前に流れ出た溶岩です。これが、鷲羽池火口 のあたりに火山が生まれた最初だと思います。ただし、今の明瞭な形の火口はそんな に古いものではありません。鷲羽池火口ではもっと後にも噴火がおこっています。火 口を縁取る溶岩はもっと新しいものですし、その上に爆発的な噴火で放出された噴出 物が火口の周辺だけに残っていますが、これらがいつ噴火したか、確かなことはわか りません。1万年前よりも新しい時代に噴火がおこっているとも言われていますが、 残念ながら私はそのことを確認していません。
 硫黄尾根は火山ではありません。ただし、硫黄沢(鷲羽池火口と硫黄尾根の間)で は今でも高温の温泉が湧き出し、硫黄を含んだガスが何カ所からもでていますが、そ れらの影響で硫黄尾根一帯の岩石はかなり変質しています。この尾根を作る岩石は火 山から噴出したものではなく、古い時代の花崗岩の仲間や変成岩などです。硫黄沢で はときどき、熱水(?)を吹き上げるといわれています。火山学会のホームページ に、第4回公開講座 「信州の火山と地震」テキスト集 がありますが、この中の「 北 アルプスの火山をめぐる」 にも少 し書いてあります。この中には、鷲羽池 火口や硫黄尾根を写した写真があります。
 鷲羽池火口のある火山を鷲羽池火山といいますが、これは、鷲羽・雲ノ平火山 (群)の一部です。鷲羽池北西の雲ノ平はもっと大きな火山ですが、この火山は鷲羽 池火山よりも古いと考えられています。硫黄沢一帯での硫気活動がさかんなことか ら、この火山群は生きている火山といってもいいと思います。もし、この火山群につ いてもう少し知りたいならば、私のホームページの中の鷲羽・雲ノ平火山をご覧下さ い。
 なぜあのような高所で、という質問ですが、これはむずかしい質問です。私にはき ちんと答えられません。鷲羽池火口は花崗岩でできた鷲羽岳の中腹にありますので、 いちばん高いところというわけではありませんね。どういうわけか、火山は高いとこ ろにあることは珍しくありません。北アルプスでも山脈上にいくつもの火山が分布し ていますが、その両側の盆地には火山はありませんね。東北地方や関東地方でも火山 は高いところにたくさんあります。火山の土台となっている岩石・地層それ自体が高 いところまで分布しています。高いところをねらって火山ができるのか、火山ができ るから土台が高くなってしまったのか、どちらでしょうか。火山活動と山脈の形成は 密接に関係しているのではないでしょうか。 (10/18/00)
  中野 俊(工業技術院・地質調査所・地質部)
Question #1153
Q 最近、新聞で三瓶山の火山活動による埋没林が発見されたとの報道がありました。
今から4500年程前のものだとのことですが、地質学的にはつい最近のことだと
思います。将来、三瓶山では埋没林ができるほどの火山活動は起きるのでしょうか

(10/17/00)

山田 智広:病院職員:39

A 三瓶山さんは今から10万年前頃から活動を始めています。もっとも激しい活動は10万 年前の活動で,火山灰は青森まで飛び,また軽石は日本海を北上して,これまた青森 まで達しています。その後,休止期をはさんで,3万年-2万年前,1万5千年前に活動 しています。その後,さらに5千年前と4千年から3千700年前の噴火があります。埋没 林の炭素14年代は3500年前(実年代で3700年前)です。つまり,この時に樹木は死ん だのです。杉の巨木を埋没させた直接の原因は火砕流です。この時期発生した火砕流 を太平山火砕流と呼んでいます。この時,三瓶山の溶岩ド−ム(男,女,子,孫三瓶 山)もできました。この時の活動も激しいもので,神戸川沿いに分布する火砕流堆積 物(太平山から直線距離にして5.5kmも離れています)の定置温度は500℃を越えてい ます。この火砕流堆積物にはたくさんの炭化木片が含まれており,火砕流によってな ぎ倒されたものと考えています。この火砕流堆積物に覆われて縄文遺跡があります。 イタリアのポンペイと同じように,縄文人は大打撃を受けたことでしょう。 いずれにしても三瓶山は中国地方でもっとも若い火山です。3700年以降も小規模な噴 火はあった可能性があります。(ちなみに大山は1万数千年前に活動を停止しています) (10/23/00)

沢田順弘(島根大学・総合理工学部・地球資源環境学教室)


Question #1116
Q 私の住んでいる美又には、温泉があります。土地の様子を調べると、花崗岩が圧倒的に多かったです。私の住んでいるところには、火山はないと聞いているのですが、昔は火山があったのでしょうか。または地下でマグマが活発に活動しているのでしょうか。又、マグマは、温泉にどのように影響しているのでしょうか。温泉と火山の関係について詳しく、教えてください。よろしくお願いします。 (10/11/00)

綾:小学生:11

A (1)白亜紀の大規模火砕流堆積物 もっとも古い火山からの噴出物は主に火砕流堆積物でこの時代の噴出物は広く中国地 方を覆っています。美又温泉付近では旭町から匹見町(匹見渓谷)にかけて分布しま す。この時代は白亜紀と呼ばれる時代です。この時代、つまり今から約1億年から6 千5万年前は1億数千万年もの間栄えた恐竜が絶滅に向かい、やがてその終焉を迎え た時代です。ちなみに本や映画で有名な「ジュラシック・パーク」のジュラシック( Jurassic)とは恐竜の栄えた中生代の真ん中の時代、ジュラ紀(今から2億1千万年 から1億4千万年前)を意味しています。実際には映画に出てくる恐竜はジュラ紀の 次の時代の白亜紀のものですが、語呂が白亜紀(Cretaceous) ParkよりもJurassic P arkの方がよかったのでしょう。白亜紀の頃は中国地方は陸上だったので、きっと恐 竜がのし歩いていたに違いありません。この時代にはまだ日本海は出来ておらず、中 国地方は朝鮮半島の東、ユーラシア大陸の東縁にあったとされています。 当時の中国地方の様子はどうであったでしょうか。ユーラシア大陸の東縁では想像を 絶する激しい火山活動が起っておりました。火山活動は、雲仙普賢岳で多くの犠牲者 を出したあの火砕流の何十倍何百倍にも匹敵する大規模なもので、その堆積物は今も 中国地方を広く覆っています。恐竜がいたとしても大規模な火砕流のためにバーベキ ューになってしまったにちがいありません。

(2)後期古第三紀の火山とカルデラ 旭町の雲月山の西に長径6km,短径4kmの楕円形をした火山性の陥没地があります.こ れは今から約4千万年から3千万年前にかけて出来たカルデラです.この時代は山陰 地方はまだユーラシア大陸の東縁にあったと考えられております。この時期、山陰地 方では西から田万川、益田、浜田、波佐、桜江、川内、大万木山などにカルデラを伴 う火山活動があり、火山岩類や深成岩類が分布しております。このカルデラ群は、現 在の日本列島で例えるならば九州南部から薩南諸島にかけてのカルデラ群に似ている でしょう。カルデラ形成に伴って激しい火砕流が発生しました。浜田市下府のゴルフ 場には当時の火砕流によってなぎ倒され炭化した巨木が残っており、火砕流が高温で 威力のあるものだったことを物語っています。一方、この頃すでに西側から入り込ん できた海が少なくとも浜田にまで達していました。

(3)160万年前以降の火山 百数十万年前には大江高山火山群が噴火しました。大江高山火山群は20数個の溶岩 ドームからなっており、当時大森町あたりまであった入り江には火山砕屑物や崩壊し た溶岩が堆積しておりました。戦国の覇権を争った毛利、尼子、大内が財源確保のた めに血眼になり、最終的には徳川政権の重要な財源の一つとなった大森銀山の銀鉱床 をつくった鉱液は大江高山火山群をつくった時のマグマに由来するものです。津和野 から徳山にかけて分布する青野山火山群は130万年前から2万年前にかけて活動したも のです。 火山活動の最後をかざるのが三瓶山です。三瓶山は今から3万年ほど前から活動し始 め、3千7百年前まで活動が続きました。もっとも初期の火山灰は偏西風に乗って、ま た軽石も海流に乗って青森まで運ばれていきました。活動の初期に直径が6kmx4kmの カルデラが形成されました。1万5千年前から5千年前の間に男三瓶山、女三瓶山、 子三瓶山などの溶岩円頂丘ができました。現在の室ノ内火口の窪地は一つの溶岩円頂 丘の中央部が爆発によりなくなったためにできたという説と、もともと別個の溶岩円 頂丘によりできたという説があります。最後に5千年から3千7百年前に火砕流や降 下軽石をともなう大規模な噴火がありました。この堆積物は島根県東部を広く覆いま した。 (10/12/00)

沢田順弘(島根大学・総合理工学部・地球資源環境学教室)


Question #1114
Q 初めまして。化学系の研究者ですが、地球科学にも大変興味を持つ者です。

今回、三宅島の雄山から大量のSO2ガスが噴出しましたが、これは雄山の噴火史からして
異例の出来事なのでしょうか?また、そうであるなら今回に限ってその様な事が生じた
原因(メカニズム)はどの様なものなのでしょうか?ご教示お願いします。

(10/11/00)

地震雲:公務員:42

A 火山ガスは記録に残りにくいのですが,それを考慮しても三宅島ではこれほど大量の 火山ガスが放出されたという噴火歴史記録はありません.1ヶ月以上一日1-5万トンの SO2が放出されるのは,三宅島に限らず,世界的に見ても前例がありません.ただし 1回の噴火で放出されたSO2量としては,数十万から数千万トンのものもあります.

三宅島と似た玄武岩質マグマを噴出する伊豆大島では,山頂での噴火の後,山頂火口 からH2O,SO2などの火山ガスを放出することがあります.伊豆大島では割れ目噴火の 1年後の1987年噴火後から1990年ごろまで,今回の三宅島の1/100程度の量ですが,三 原山山頂火口から一日あたり数百トンのSO2が放出されていました.一方割れ目火口 からの火山ガスは,山頂火口からのものに比べると極めて少ない量でした.また 1950-51年噴火の後もカルデラ内に立ちこめるほどの火山ガスが放出されていたと聞 きます.伊豆大島のカルデラ内に植生がなく砂漠と呼ばれるのは,火山ガスによって 植生が破壊されることも原因の一つです.

伊豆大島の例などからみると,おそらくすぐに火道が閉塞してしまう割れ目噴火の火 道と違い,比較的安定して存在する山頂火道では,火山ガスの放出が安定して起こり うるということなのでしょう.これまで三宅島で火山ガスの放出があまり起きなかっ た理由として,少なくとも最近約500年間は,三宅島山頂から大規模な噴火がなく, 山腹からの割れ目噴火が主な噴火様式だったからと考えられます.今回は山頂部に大 きな陥没カルデラが作られたため,火道径が大きいこともあって,大量の火山ガスが 放出されやすくなっていると考えられます.

三宅島でも山頂噴火が起きていた500年以上前は,山頂火口からの火山ガスの放出が あった可能性は高いですが,なにぶん歴史記録もなく,堆積物として残らないもので すから,はっきりとしたことは今のところ言えません. (10/12/00)

川辺禎久(工業技術院・地質調査所・環境地質部)


Question #1113
Q 3月31日に有珠山噴火の時、北海道にいて、そのすごさに驚きました。
その後、三宅島や北海道駒ヶ岳の噴火が続いています。
僕はスキーをするのですが、火山の近くのスキー場は多数あります。
冬のスキー場で近くの火山が噴火した場合、噴火の規模や気象や地形によって違うでしょうが、どんな災害が考えられますか?
あまり火山学とかと関係ないかもしれませんが、よろしくお願いします。 (10/10/00)

Rainbow:中学2年:14

A 雪が積もっている火山で噴火により高温の噴出物が急速に地表を覆うと、融雪型の泥 流が発生します。高温の火砕流ばかりでなく、上空に吹き上げた高温のマグマ物質が 火口の付近に急速に積もった場合もこうした現象が起きます。1926年5月の十勝岳の 噴火では融雪型泥流が山麓の平野部まで達し、144名の犠牲者が出ています。南米コ ロンビアのネバドデルルイス火山の1985年の噴火では犠牲者は23000名を越えていま す。泥流は地形的に低いところに向かって流れますから、発生したらいち早く高台に 逃げるべきです。 (10/11/00)

宇井忠英(北海道大学・大学院理学研究科・地球惑星科学専攻)


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