火山についてのQ&A集

Question #1388
Q マグマの結晶分化についてご教示ください。教員をしておりますがkにマグマの結晶分化を教えるのが大変難しい。温度が下がるにつれ晶出してくる鉱物に規則的な順序があります。カンラン石→輝石→角閃石→黒雲母里最後に石英の順といわれていますがK則性を支配している法則性を知りたいのです。有色鉱物は]酸塩のネソ→1重鎖イノ→二十鎖イノ→フィロとなり四面体がx降下により単独からより重合していくのは納得します。しかしF鉱物のテクト珪酸塩である石英は最後の最後に晶出するので上の理屈でも合うのですが炎迴oします。上手く説明できません。生徒にわかりやすく説明する方法はないでしょうか。

 もう一つ。花崗岩は昔のマグマ溜が地表に露出したものだと思います。火山の地下にはマグマ溜があるはずなので}グマ溜は火山前線の地下に分布していると考えられます。そうすると白亜紀の花崗岩の分布から当時の火山前線、つまり当時の海溝の形を推定することができR前線との比較からプレ−トの運動の変化の様子が推定できるかなと思うのですが如何でしょうか。 (12/31/00)

迷える親父:教諭:53

A (1つ目の回答) まず、カンラン石→輝石→角閃石→黒雲母そして最後に石英の順ではありません。カ ンラン石→輝石→角閃石→黒雲母は鉄やマグネシウムを含んだ有色鉱物についての系 列で、これとは別に斜長石→石英→(カリ長石)という無色鉱物の系列があります。 また、こうした晶出順はいわば単純化されたきわめて概念的なものであり、いつでも こうなるというものではありません。鉄に富む還元的な雰囲気では珪酸分に富んだマ グマから鉄に富むカンラン石が石英と一緒に晶出しますし、水に乏しいマグマからは 角閃石は晶出しません。またカリウムに乏しいマグマからは黒雲母は晶出しません。 したがってこうした順序から法則性といったものを導き出すことはあまり意味がない かもしれません。こうした鉱物の晶出順序は基本的にマグマの組成に依存していると いえます。マグマの温度が低下すると結晶化が進行し、残液の組成は変化していきま す(結晶分化作用といいます)。カルクアルカリ系列とよばれる組成のマグマでは、 分化が進むと残液の組成は珪酸分に富むようになります。御指摘のように、珪酸分に 富むようになると四面体([SiO4]4-)の重合度が増すので、ネソ珪酸塩→一重鎖イ ノ珪酸塩→二重鎖イノ珪酸塩→フィロ珪酸塩と重合度の大きな珪酸塩が出来やすくな るでしょう。また、他の成分に対して珪酸分が十分に多くなると重合度が大きくて珪 酸だけからなる石英が長石とともに晶出するようになります。何れにしても鉱物の晶 出順は温度のみならず水なども含んだマグマの組成に大きく依存します。カンラン石 →輝石→角閃石→黒雲母といった晶出順序を一般的な法則であるとして絶対視しない 方が無難といえるのではないでしょうか。 (2つ目の回答) 御指摘の通りです。ある時代の花こう岩が出現しなくなる線を結んでいけば、当時の マグマ(火山)前線が描けます。こうしたマグマ前線の移動から過去のプレート運動 を復元するという仕事はごく普通に行われています。 (01/15/01)

高橋正樹(茨城大学・理学部・地球生命環境科学)


Question #1368
Q 茨城県在住のものです。茨城県には,火山はないのですか?幼い頃,両親が,「茨城には,火山がないから,安心だ」と言っていたのですが,とても気になります。例えば,筑波山などはどうでしょうか? (12/23/00)

アスカ:フリーター:26

A 私も茨城のつくばに住んでいます.今日は筑波山も職場からきれいに見えていますよ.

「茨城には火山がない」と言われたご両親は間違いではありません.筑波山は,その 形から火山と思われている方も多いのですが,筑波山は地表に溶岩などが噴出してで きた火山ではなく,地下深くでマグマがゆっくりと冷えて固まった深成岩(はんれい 岩,花こう岩)が,長い年月をかけて隆起し,侵食されてできた山です.筑波山の上 半分をつくるはんれい岩のできた年代は,約7500万年前です.もう侵食されてなくな ってしまった筑波山の上数kmの当時の地表には,もしかしたら火山があったのかもし れません.そういう意味では,古い火山の根っこを見ているといってもいいかもしれ ませんね.また大子周辺には,数百〜1500万年くらい前の火山活動のあとの地層が残 っていますが,それより若い,第四紀と呼ばれる最近170万年の間に噴火した火山は ありません.当然活火山もありませんから,茨城県内にいて火山の噴火に直接巻き込 まれるということはまずないといってよいでしょう.

とはいっても,つくばからは晴れた日には,北から西にかけて,那須岳,榛名山,浅 間山,富士山などの活火山が見えます.もしこれらの火山が大噴火したら,西風に乗 って火山灰が茨城県内にも降ることは十分考えられます. (01/16/01)

川辺禎久(産業技術総合研究所・地質調査所)


Question #1366
Q 火山噴火予知連絡会について質問です。今年になって、有珠山や三宅島の噴火予知が初めて成功しましたが、今までとはどこが違ったからでしょうか? (技術的なもの?統計的なもの?組織の仕組み?)また、有珠山では岡田教授、三宅島では井田教授の名前がよく新聞で見受けられたのですが、山ごとに責任者的な立場の人がいるのですか? その「予知連・・・部会」ごとに特色があったりするのですか?(玄武岩の専門家の集まりとか?)また、それぞれどのような仕組みになっているのでしょうか? (12/21/00)

keiyuu:学生:20

A
 これまでにもこのコーナーでお答えしたことがあります。有珠と三宅島で噴火の開 始時期がうまく予知できたのは、もちろん昨今の観測技術の向上のせいもあります が、ふたつの火山とも噴火と噴火の間隔が短く、観測された噴火が過去に何度もあっ たからです。このため、これらの「噴火の癖」が日本のほかの多くの火山よりも良く 分かっていたのです。人間でもある病気を繰り返していれば、体調がおかしくなる と、いつ頃症状が悪くなりそうだと分かるのに良く似ています。でも、ひとたび始ま った噴火の推移については、残念ながら、有珠山でも三宅島でも上手く予想できませ んでした。特に、三宅島では過去の噴火観測の記録にないできごとが起こったからで す。
 活発な噴火活動が予想される火山については、火山毎に観測の責任的立場の大学観 測所(あるいはセンター)や国立研究機関があります。火山によっては、そこにある 大学の火山観測所の先生がホームドクターとマスコミや地域の人からよばれているこ ともあるようです。また、気象庁は国の火山活動の監視機関で、多くの活発な火山の 監視を常時行っており、防災に役立てるために火山情報(緊急火山情報、臨時火山情 報、火山観測情報、定期火山情報)を発表します。
 火山噴火予知連絡会は全国の活動的火山の活動の判断をするためのあつまりです。 1974年から組織されました。学識経験者、関係機関の専門家から構成され、事務局は 気象庁におかれています。必要なときには火山活動についての見解を発表します(現 在は井田先生が会長)。予知連の下に、これまでは、伊豆諸島や伊豆半島の火山(三 宅島を含む)の活動評価をする伊豆部会と、有珠山噴火を評価する有珠山部会とがあ りました。 (1/13/01)

中田節也(東大・地震研究所・火山センター)


Question #1364
Q 地震の報道は減りましたが神津島近海のマグマの活動はとりあえず一段落したと考えて良いのでしょうか。天上山に登るのはまだ危険ですか。
また、あのマグマの大規模な貫入は1000年周期で行われてる?新島、神津島の活動の一つとして考えて良いのでしょうか。よろしくお願いします。 (12/21/00)

yo-ka:医師:25

A 神津島近海では2000年7〜8月は大きな地震が頻発しましたが,9月に入ってからは, ずいぶん少なくなりましたね.(でもまだ時々は,マグニチュード3クラスの地震が 発生し神津島で震度2程度の地震動を感じていますが.)GPS測量結果をみると, 周辺の地殻変動もほとんど停止しています.このことからも,神津島近海のマグマの 活動はとりあえず一段落したと考えてよいと思います.

地震動で大きな被害がでた神津島内も,着々と復旧工事が始まっています.天上山登 山道も,南側から登る黒島側登山道が開通して登山できるようになっています.一部 崩れているところもありますが,ローブが張ってあるところに近づかなければ安全で す.しかし他の登山道は大きくがけ崩れしており,当分の間通行はできないようで す.天上山からの眺めは最高ですね.北に式根島,新島,鵜渡根島,利島,大島.南 東に多量の噴気や火山ガスを放出している三宅島や御蔵島が一度に見渡せます.

三宅島〜神津島西方に大規模に貫入したマグマは,直接的には新島・神津島の火山活 動活動とは関係がないと思われています.その根拠は,新島・神津島の火山活動は流 紋岩質であるのに対し,今回貫入したマグマの多くは,三宅島の地下から移動してき た玄武岩質のマグマであると考えられるからです.しかし,神津島では島の北部を中 心にここ数年間膨張が続いています.神津島の地下にあるであろう流紋岩質マグマと 三宅島からの玄武岩質マグマの混合により,新たな火山活動に結びつく可能性も捨て きれません.今回の地震で,神津島の多くの観測設備が破壊されてしまいましたが, 早急に観測研究体制を建て直し,もし万が一異常が発生しても,すぐにマグマの動き をとらえ,三宅島のように一人の犠牲者も出さなくてすむようにしたいものです. (01/13/01)

松島 健(九州大学・地震火山観測研究センター島原観測所)


Question #1352
Q 初めて質問します。先日私の研究室の教授から<花こう岩を研究するのはなぜか?>という質問がありました。
地質学を専攻しているのですがその問題はあまりにも簡単なようで難しいです。自分なりに考えたのですが他の
意見も聞きたいので考えを教えてください。また火山との関係からの意見も聞きたいです。 (12/18/00)

MAKOTO:学生:21

A よい質問を受けましたね。まずは自分で考えてみるのが一番ですが、あくまで参考の ために私の意見を少しだけ述べてみます。
 花こう岩は花こう岩マグマ(珪長質マグマ:珪酸分に富んだマグマ)が地下でゆっ くりと冷えて固まったものです。すなわち、固まる前は一種のマグマ溜りだったわけ です。したがって、花こう岩を調べると珪長質マグマ溜り内でどのような現象が起き ていたのかがわかるかもしれません。実際、浅い場所に貫入した花こう岩は火山岩を ともなっていることが多く、大量の火砕流の噴出によって形成された大規模なカルデ ラの底部で形成されたと考えられているものが結構あります。また、花こう岩は珪長 質マグマが地殻内を移動し貫入して形成されるわけですから、花こう岩の貫入メカニ ズムを調べることで、珪長質マグマが地殻内部をどのように輸送されるかがわかるか もしれません。さらに、大陸地殻の上部地殻とよばれている場所は大部分花こう岩で 出来ていると考えられていますので、花こう岩の成因を調べることは大陸地殻の形成 プロセスを明らかにすることにつながっていくと思います。
 さて、あなた自身の考えはどうでしょうか。 (12/22/00)

高橋正樹(茨城大学・理学部・地球生命環境科学科)


Question #1350
Q
 はじめまして。お忙しいところ、失礼します。現在私は愛知県に住んでいるのですがごく最近、実家である静岡の家族から以下のような話を聞きました。それは、富士山の頂上の積雪が以前より非常に少なく、これは富士山のマグマ活動が始まったためだと地元の新聞で報じられていたというのです。(実際私もネット上で確認しました。)実家は富士市近辺ですので非常に心配です。そのうえ最近ではあちらこちらで地震が絶えません。静岡県中部でも小規模な地震が増えているように思います。昔からいつか東海大地震がまた来ると言われていますし、地震を引き金とした火山噴火も十分考えられると思います。そこで富士山の現在のマグマ活動と積雪の減少の関係について詳しく知りたいのでよろしくお願いします。また、そのような最新情報をネット上で公開しているところがありましたらぜひ教えてください。

(12/17/00)

Zitrone:大学生:21

A
 富士山の積雪が,ついこの間まで平年より少なかったことは事実でしょう(その後 12月10日に降った雪で今はすっかり真っ白になりましたが).おかげで今年は12月上 旬でも5合目付近の地質調査ができました.また,富士山の地下10〜20km付近で定常 的に起きている長周期地震(おそらくマグマ活動に起因する地震)の回数が,今年 10月頃より多くなっていることも事実です.このことは気象庁から公表されている資 料で見ることができますから,それにもとづいた報道もなされたのでしょう.
 しかし,それをもって積雪の少なさを火山活動と関連づけるのは,あまりに短絡的 なものの見方だと思います.富士山下の長周期地震は観測開始以来,年に十数回から 数十回程度起きている定常的なものです.つまり,もともと富士山のマグマ活動は地 下深くでずっと起きてきたのです.10月よりその回数が多くなったというだけです.
 もちろん科学技術庁や気象庁では活動の推移を注意深く見守っていますが,その深 さは別に浅くなってきてはいませんし,それ以外の山体の膨らみなどの異常も今のと ころ起きていません.現時点では富士山下のマグマが上昇を始めた証拠はありません. 活動は地下深部にとどまっています.
 ですから,今の段階で「非常に心配」するのは,明らかに心配のし過ぎです.ちな みに,初冬の富士山には積雪が少ない年もありますし,積雪の多い年もあります.も し雪を溶かすほど地熱活動が高まれば,積雪の少なさだけにとどまらない様々な異常 が発見されるでしょうが,そういう報告は今のところ一切ありません.
 なお,「静岡県中部で小規模な地震が増えている」というのは事実ではありません. むしろ,ここ2〜3年逆に地震が少なくて地震学者に注目されています.東海地震と富 士山噴火の間にはおそらく密接な関係があると私も思いますが,東海地震自体がそれ ほど差し迫っておらず,おそらく21世紀なかばに南海地震と一緒に起きるだろうと考 えている地震学者が(あまり表には出ませんが)数多くいます.
 おそらく今一番大切なことは,この機会に富士山が生きている火山であることを再 認識し,当面はそれほど心配ないとしても,将来いつかは起きるであろう噴火に備え た防災対策やまちづくりを着実に進めていくことだと思います.
 なお,残念なことに気象庁や気象協会はネット上での情報発信にそれほど積極的で はなく,今のところ三宅島などの特定の火山を除いた活火山(富士山をふくむ)の最 新情報をネット上には掲載していないと思います.こういうところは早急に改善して いってもらいたいものです. (12/22/00)

小山真人(静岡大学・教育学部・総合科学教室)


Question #1331
Q プレートの境界でのマグマの発生の原因に、水(H20)による融点降下があると聞きましたが、
やはり海水による影響が大きいのでしょうか?
また、海溝から離れるほど火山岩の種類が変わったりするのでしょうか?
よろしくお願いします。 (12/14/00)

地学高校生:高校生:18

A 海水の影響はあります。といっても、単純に海水と接しての反応ではありません。 島弧のような沈み込み帯のプレートの境界では、沈み込むスラブ(海洋プレート+海底堆積物)が マントルへ水(海水が鉱物中に固定されたものや鉱物粒間に閉じこめられたもの)を持ち込みます。 この水は、マントル中で鉱物の分解反応や鉱物粒間からの絞り出しによって沈み込むスラブから 放出されます。 これが沈み込むプレートの上に位置するくさび形のウエッジマントルと呼ばれる領域を移動して マグマ発生の場に到ると、融点降下を引き起こします。

海溝からはなれるにしたがって沈み込むスラブから放出される水の量は変化し、 また、ウエッジマントルと呼ばれる領域の温度構造も変化します。 このため、マグマ発生の場の温度や圧力も海溝からの距離で変化し、 島弧を横切る方向で火山岩の化学組成、特にアルカリ元素量、には系統的な変化が見られます。 ただし、ウエッジマントルで発生したマグマは、上昇経路の地殻を取り込んだり 地殻中で様々な結晶分化をして組成を変化させた後、地表近くに到達するので、 海溝からの距離と火山岩の種類を簡単な関係で示すことはむつかしいです。

(12/23/00)

安田 敦(東京大学・地震研究所・地球ダイナミクス)


Question #1312
Q 火山に関する質問ではないので恐縮ですが、
火山学をやるために物理と化学は必要なのでしょうか?
ぶしつけな質問でごめんなさい。 (12/07/00)

syuji:学生:15

A 火山学とは、「火山」という対象をさまざまな分野(地球物理学、地球化学、地質 学、岩石鉱物学、気象学、天文学、など)から研究する学問です。人間生活と強く関 わる火山災害を含めると、工学、環境学、心理学、社会学、法律学、などの分野もあ ります。火山現象を科学的に理解しようとするには、当然、物理・化学的な基礎力が 不可欠です。火山と人間との関わりについての仕事や研究を行う場合においても、物 理や化学に基づく理科知識や思考力は絶対に必要です。将来、火山に関係した研究や 仕事をしたいという希望があるなら、高校で、物理や化学の少なくともひとつは選択 しておきたいですね。 (12/07/00)

中田節也(東京大学・地震研究所・火山センター)


Question #1264
Q はじめまして、私は函館に住んでおりますが、今年の9月以降北海道駒ヶ岳が小噴火したというニュ−スを何度か耳にしました。近くに住むものとして、今後、大きな噴火につながる可能性があるのか気になります。また、大きな噴火があった場合どのような被害が考えられるのでしょうか。今年噴火した有珠山のような状態になるのでしょうか。火山についてはまったくの素人でよくわかりませんが、よろしくおねがいします。 (11/15/00)

鈴木 幹男:会社員:40

A 鈴木さん、こんにちわ。 お近くに住んでいる方々にとって,駒ケ岳は本当に心配ですね。私達も地元の研究機 関のひとつして,その活動の行方には大きな関心を持って監視を続けています。

駒ケ岳は1640年から数千年の休止期を終えて活動期に入っています。そしてこれまで の360年間に4回のマグマを放出したかなりの規模の噴火と,その他に水蒸気爆発と考 えられる中小の噴火を繰り返しています。20世紀には1929年(昭和4年)に大量の軽 石を吹き上げ(噴煙柱),そしてその1部は火砕流(軽石流)として山麓を流下しま した。さらに1942年には山頂火口原に約1.6kmの割れ目火口を形成した水蒸気爆発を 起こし,山麓では降灰や泥流が発生しました。その後、活動は下火になり54年間の静 穏な時期がありました。そしてご存じのように,1996年,1998年そして2000年と小規 模な水蒸気爆発を繰り返しています。

今年になって続く小規模な噴火が,より大きな噴火に至る前ぶれかどうかは,現段階 では残念ながらわかりません。ただ1929年や1942年の噴火の前には,1919-1923年( 1924?)あるいは1935-1938年に小規模な噴火が繰り返されています。そのことを考 えると,「現在の状態は1929年あるいは1942年噴火前と似ている」,ということは確 かです。しかし規模の大きな噴火には至らず,このまま活動が次第に下火になってゆ く可能性も否定はできません。そのために活動の変化や噴火の前兆をとらえるために 各機関では観測機器の充実をはかり,自治体を中心とした防災対策の整備を急いでい る訳です。

仮に本格的な噴火になった場合ですが,まずその規模を考えてみましょう。1640年以 降を考えてみると,1640年噴火が最も規模が大きく,その後は規模は1640年噴火の半 分以下の規模となり,最大でも1929年噴火クラスあるいはそれ以下になっています。 そのため将来おこりうる噴火は最大でも1929年クラス,場合によってはそれほど規模 の大きくない1942年クラスとなると考えるのが現実的でしょう。起こりうる災害とし ては,1929年程度の規模であれば山麓部での火砕流の流下による被害,風下方向を中 心とする降灰による被害が予想されます。またそれらの堆積物が多量の降雨をきっか けに2次的に移動して発生する泥流による被害が考えられ,噴火活動が下火になって も泥流の発生はしばらくは続くでしょう。1942年と同様の噴火であれば降灰と泥流が 考えられるでしょう。これまでの駒ケ岳の噴火についての情報や,どのような災害が どの範囲で起こりうるか,そして噴火に対してどのような対応をとるべきかについて のより詳しいことは,火山災害予測図,防災ハンドブックやビデオ(有料)にあり, 下記で入手可能です。 040-0063北海道茅部郡森町字御幸町144-1 森町役場駒ケ岳火山防災会議協議会事務局  電話01374-2-2181

有珠山との比較ですが,有珠山ではマグマの貫入による地殻変動も大きな災害要因と なりますが,駒ケ岳では大きな地殻変動がおこる可能性は小さいと考えられます。ま た有珠山ではマグマの貫入が長期間続くため,活動が長期化しますが,駒ケ岳では噴 火活動の主要なイベントは短期間で終わります(1929年では1日以内)。このように 地殻変動の有無や活動期間などで違いがあります。しかし駒ケ岳山麓も有珠山と同様 に,国道や鉄道など北海道の幹線交通網が走り,近くには函館空港,そして火山灰が 流れる西方海上は,国内や国際線の空路となっています。駒ケ岳でも噴火は地域への ダメージを与えるだけではなく,より広範囲への社会的影響を及ぼすことが考えられ ます。そのような点を考慮して防災対策を行う必要があるでしょう。 (11/25/00)

中川光弘(北海道大学・大学院理学研究科・地球惑星物質科学教室)


Question #1253
Q はじめまして、
質問させていただきます。
私は四国にすんでおりますが、四国には火山はありません

1.どうして四国には火山がないのですか

2.石槌山は、昔、火山だったとききますが、本当ですか。

  本当だったとしたら、いつ頃まで活動していたのでしょうか。

  また、外に火山だった山はないのですか?(たとえば剣山など)

3.今後、四国で火山活動が起こる可能性はないのでしょうか。 (11/11/00)

くま:公務員:33

A 1.どうして四国には火山がないの?
 火山は地下深部(上部マントル)から高温のマグマが上昇して来ることによって形 成され、噴火を起こします。上部マントルの温度が、岩石が溶ける温度より低いとマ グマは発生せず、その上に火山もできません。また、上部マントルが高温で溶けてい ても、マグマが地表に上昇するための通路がなければ、火山はできません。四国の地 下深部(上部マントル)は、温度の低いプレートが低角で沈み込んでおり上部マント ルでマグマが溶ける条件にないために火山がないものと思われます。

2.石槌山は、昔、火山だった?
 石鎚山は、今から1千5百万年前頃、火山として活動しておりました。その頃活動 していた火山としては、小豆島の寒霞渓や、讃岐の五色台などがあります。

3.今後、四国で火山活動は?
 上に書いたような四国の状態は数百万年にわたって維持されていたと思われますの で、私達が生きている間に、火山活動が起こることはないと思っています。 (11/13/00)

吉田武義(東北大学・理学部・地球物質科学科)


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