火山についてのQ&A集

Question #1647
Q 軽石の中の穴の出来方についての質問なのですが、あの穴は石の中の水分が、熱によって蒸発して出来たものであっているのですか? (04/06/01)

へろへろ:もうすぐ高校生:15

A 火山の地下にあるマグマ溜まりの中で、マグマには数パーセントの水が溶け込んでい ます。意外と多いと感じられるのではないですか? 多量の水がマグマの中に溶け込 めるのは、マグマ溜まりが地下深くにあるため圧力がかかっているからです。マグマ が上昇して地表に近づくと、圧力が下がるためにいままでマグマに溶け込んでいた水 が気化します。

ビールやサイダーも栓を抜くと泡立ちますが、これは栓を開けることで瓶の中の圧力 が下がり、液体の中に溶けていた二酸化炭素が気化するためです。というわけで、軽 石の穴(泡)はビールやサイダーと同じように、圧力が下がる(減圧する)ことによ ってできた、というのが正解です。

岩石が熱せられて岩石中の水が気化して泡ができ、軽石になることもあります。とい っても天然の軽石ではありません。パーライトという名称で販売されている人工軽石 で、土壌の改良や断熱材に用いられています。身近な所ではセントポーリアの土など として園芸店で入手できます。これは黒曜石という火山ガラスを熱して作られていま す。工場でできた軽石です。ぜひ探して天然の軽石と比較してみてください。

なお、園芸店には天然の軽石も多数並んでいます。産地を調べたり違いを考えたりす るとおもしろいかも知れません。 (04/12/01)

(萬年一剛 神奈川県・温泉地学研究所)


Question #1645
Q 1641番の隠岐の火山の質問をみて小学生の頃疑問に思ってたことを一つ思い出しましたので質問させて下さい。
当時地図を見てて島前の3つの島はもとは一つの島で大噴火によって分かれたのではと思ってました(サントリーニ島の様に)。実際どうなのでしょうか。よろしくお願いします (04/04/01)

アマンタジン:医師:26

A 隠岐島前の三つの島(西ノ島、中ノ島,知夫里島)はおっしゃる通り島前火山という 一つの火山の外輪山の一部です.カルデラ底と外輪山の低い部分は海底(水深55メー トルまでが火山地形)になっています.カルデラ内でも中央火口丘付近だけは西ノ島 の一部として山地になっています.中央火口丘の焼火山(たくひやま)のまわりには ,カルデラ内であるにもかかわらず,火山の基盤である新第三紀(中新世中期)層が 山地になっていますから,中央火口からの噴出を主とした富士山のような円錐体の火 山ではなかったようです.カルデラ縁は一辺10キロメートルの四辺形をしていて,外 輪山の最高地点とカルデラ底の最低点の高度差は約500メートルです. (04/06/01)

千葉とき子(国立科学博物館・地学研究部)


Question #1643
Q 上高地の梓川の流水はとてもキレイらしいですが、それはどうしてなんですか。
川底を作っている岩石と、自浄作用の両方からの答えをお願いします。

(04/03/01)

加藤京子:中学三年生:14

A
 上高地の河童橋から見ると梓川の水は大変澄んでいて美しく見えますが残念ながら 飲めるほど綺麗ではありません.上流にある山小屋やトイレなどの雑廃水の影響から か大腸菌量などが少々多いのです.そこで,なぜ澄んでいるかと言うことについてお 答えします.
 これは,水に運ばれる細かい粒子が少ないために水が懸濁しないからです.しか し,細かい粒子が少なくても山岳地帯を流れる川の場合には水が白く濁って見えるこ とがあります.それは,走っている船の後方でスクリューの回転によってできる泡の 原理と同じで,流れの速い川では水が泡立つからです.上高地は周囲に平坦な土地が 広がっていて川の水は大変緩やかに流れています.そのため水は泡立たず水が澄んで 見えるのです.
 では,なぜ川の上流部にもかかわらずに穏かな流れなのでしょうか? これには上 高地の入口にある焼岳火山群の活動と深く関係があります.焼岳火山群の活動史や梓 川下流の礫層の岩石を調べた所,次のことがわかってきました.かつて梓川は現在の ように東には流れず,西(岐阜県側)に流れていました.およそ2万年前に焼岳火山 群の活動によりこの川が堰止められ,おそらく,今の上高地の場所に湖を一旦つくっ たと考えられます.やがて行き場を失った水は東側にあふれ出て湖は消滅しました. その後の度重なる焼岳火山群の活動で梓川はたびたび堰止められ,上流に土砂がたま り谷底に平坦な土地をつくったのです.このように上高地の誕生は焼岳火山群の活動 と密接な関係があるのです. (04/12/01)

及川輝樹(信州大学・大学院・地球環境システム科学)


Question #1641
Q 地図の本を見ていましたら、「島根県隠岐諸島の西ノ島(島前)は焼火山によって形成された島
である」との記述がありました。いつ頃の活動で形成されたのですか、また今後活動する可能性
はありますか? (03/31/01)

山田 淳一:国家公務員:39

A 隠岐島前火山の火山活動は,約600万年前に始まり,外輪山・カルデラが形成された 後,約550〜500万年前にカルデラ内で噴火がおきました.このとき放出された火砕物 が火砕流となって堆積して中央火口丘(焼火山たくひやま)ができました.隠岐島前に は温泉はありませんからこの火山の地下に熱源は現在ないようです.火山活動は終息し たものと考えられます. (04/04/01)

千葉とき子(国立科学博物館・地学研究部)


Question #1636
Q
 自分は兵庫に住んでいる物です。地震に関しては、この書き込みをしている、つい昨日3月24日の中国地方の地震や、1月17日の例の地震のこともあり、頭のどこかでは気にはなっているのですが、こと火山に関しては、全くと言っていいほど気にも留めていないというのが現状です。というのも、関西の何処を見渡しても噴煙を上げている山はおろか、火山灰を吹き出している山さえありません。中国地方や、四国地方でも、第4紀ではもの凄い活動をしていたのかもしれませんが、現在では、素人目にはもう活動期を終えつつある山としか見えません。そこで質問なのですが、関西では今後数千年、数万年単位で噴火する可能性の高い山はあるのでしょうか。 (03/25/01)

とら猫:サービス業:30

A
 関西には確かに活火山と呼ばれる火山はありません。活火山の定義は今の所、過去 2000年の間に噴火した記録がある火山か又は活発な噴気活動のある火山ということに なっていますが、現在見直しが行われているようです。関西で一番若い火山という は、恐らく兵庫県北部にある神鍋火山群の中の神鍋火山だと思われます。神鍋火山の 最も新しい噴火は25000年前の鹿児島湾北部で起きたAT火山灰噴火と6300年前の鹿児 島県南方海域で起きたアカホヤ火山灰噴火の間に起きたことが、神鍋火山の噴出物が その2つの火山灰に挟まれていることからわかっています。火山の寿命というのは、 火山毎にまちまちですが、おおよそ数万年から100万年くらいだろうといわれていま す。神鍋火山群は単成火山群を作っていて、複数の小さな火山の集合体です。富士山 のように同じ火口を何度も使って大きく成長するのではなく、その地域内の色々なと ころで噴火を繰り返す火山です。一度噴火すると次は別の場所で噴火します。神鍋火 山群の場合、最後の噴火からまだ1〜2万年位しか経っていませんから、神鍋火山群 地域の中で将来絶対に噴火しないという保証はないように思います。 (04/12/01)

鎌田桂子 (神戸大学・理学部・地球惑星科学科)


Question #1635
Q
 はじめまして。

 東伊豆単成火山群について質問があります。

 僕は東伊豆町の稲取に住んでいるため、東伊豆単成火山群は近くにあるのですが、その中に三筋山(812m)という山があり時々この山には遊びに行くのですが、山のふもとには細野湿原群といわれる湿原が点在しています。この細野湿原群についての町の資料を昔読んだとき、三筋山が22000〜23000年前に噴火したときの火山灰がふもとに厚く積もり、長い間に赤土に変化し「稲取泥流層」になったが、この泥流層は水を通しにくいので水がたまり湿原になったと説明されていました。ところが、最近インターネットで資料を探してみたら、どう探しても三筋山の噴火と稲取泥流層については何も資料がないのです。ローカルな質問ですいませんが、東伊豆町内の火山灰や三筋山についてのことを教えてください。 (03/24/01)

内山 義政:中学生:14

A
 火山の地元におられる若い方に興味をもっていただき,大変ありがとうございます.
 まず三筋山ですが,現在の知識では天城火山の一部と考えられています.つまり, 数十万年〜100万年前の古い火山体の一部であり,東伊豆単成火山群には含められて いません.
 また,一般に「泥流層」と呼ばれる堆積物は,「火山灰が厚くたまって長い間に赤 土に変化したもの」ではなく,何らかの原因で山崩れが起き土石が一気に流れ下って できたもの(土石流あるいは泥流堆積物)です.いわゆる「稲取泥流層」もそのよう な堆積物と考えられます.たしかに約25000年前という年代値の報告がなされたこと がありますが,「稲取泥流層」をつくった山崩れの原因が噴火であったという証拠は まだ見つかっていません.したがって,「稲取泥流層」は今のところ東伊豆単成火山 群の一部に含められていません.
 細野湿原群がどのようにできたかについて調査したことはありませんが,湿原の下 に土石流・泥流堆積物があるとすればふつう水はけが悪いので,湿原ができたとして もおかしくないと思います. (03/27/01)

小山真人(静岡大学・教育学部・総合科学教室)


Question #1626
Q 志賀高原にある大沼は志賀山の溶岩流によるせきどめで、できた沼だと聞いていますが、なぜ強酸性の沼になったのですか? (03/16/01)

もみん:中学生:15

A 大沼池の東方,約1kmのところに赤石山があり,その西山麓には赤石沢という河川が あります.この河川の源には硫酸イオンを含む強酸性の鉱泉が存在し,そのpH は 2.8と,大変低いことが知られています.この強酸性の水が赤石沢を流れ下り,大沼 に注ぎ込みます.そのために大沼は酸性の湖になってしまい,魚が生息していないそ うです.赤石山の南にはガラン沢という沢があり,火山ガスが発生している場所があ ります.さらに南にゆくと草津白根山という活火山があります.赤石山は活火山では ありませんが,もしかしたら,昔の火山活動の名残で強酸性の鉱泉が湧き出している のかも知れません.(参考文献:「大地が語る信州の4億年」信州大学「信州の4億 年」 編集委員会編,郷土出版,1600円,ISBN4-87663-262-6) (3/21/01)

大場 武(東京工業大学・火山流体研究センター)


Question #1625
Q 火山の噴火の予知のために、火山から出る物質の中に含まれている同位体の比率を測るのはなぜですか? (03/15/01)

T.A.:大学生:21

A 火山から出てくる物質は,マグマに由来する物質と,それ以外の起源を有する物質の 混合物です.例えば,H2Oの場合なら,火山ガスや火山性温泉水に含まれるH2Oは,マ グマから抜け出てきたH2Oと,地下水に由来するH2Oの混合物です.火山活動が活発に なると,マグマから抜け出てきた物質の量が増えるので,火山から出てくる物質の中 において,マグマに由来する物質の割合が増加します.マグマから抜け出てきた物質 と,それ以外の起源を有する物質の同位体比は異なりますので,結果として, 火山 活動の変化に伴い,火山から出てくる物質の同位体比は変化すると予測されます.こ のような事情で,火山噴火予知のために,物質の同位体比を測定することは重要と考 えられています. (3/21/01)

大場 武(東京工業大学・火山流体研究センター)


Question #1575
Q 今度野外活動で山形蔵王に行くのですが、なぜ御釜には水がたまって、水の色が緑色なのでしょうか??火山となにか関係があるんですか?教えてください。
あと御釜について色々教えてください (02/17/01)

寺岡中学1年M、S:中学生:13

A
 御釜はまさに火山活動によって形成されたものです。今から1000〜2000年前の噴火 よってできた窪地(火口)に水が溜まってできたと考えられています。溜まった水 は、地下から沸きあがってきたもの、雨水、雪解け水が集まったものです。御釜の湖 水が緑色であることの理由は、やさしそうで難しい問題です。湖水の色は、含まれて いる物質の色、その数、あるいは周囲の風景の色などによって決まります。御釜の場 合、酸性度が強くて、緑色の藻などは多く棲んでいないでしょう。また、御釜の周り は黒色、褐色、赤色などの岩でできていますから、その色が反射して緑色に見えるこ ともないでしょう。そうすると、含まれている物質(20マイクロメートル以下の非常 に小さいもの)の数によると考えるのが適当なようです。数が少なくてとても透明度 が高いと青く見えます。それよりも透明度が少し低いため緑色に見えるのではないで しょうか。御釜はこれまでに何回も噴火を繰り返しています。その活動が活発化する ときは、湖水の色も地下から沸き上がってきたイオウなどのために乳白色になった り、様々な変化が見られます。
 御釜の周りは、夏でも白っぽいく見えます。近づいてみると白いものは雪ではな く、粘土質の物質です。これは、明治28年の噴火のときに、湖底に溜まっていた泥が 撒き散らされたものと考えられています。また、御釜の東方には、御釜より少し古い 時代にできた火口跡も見られます。注意して見てください。 (02/19/01)

伴 雅雄(山形大学・理学部・地球環境)


Question #1565
Q 初めまして。中学校の理科教師です。いつも火山の単元になると頭をもたげてくる疑問があります。その質問とは…
「いわゆる溶岩と、玄武岩などの火山岩は同じなのか違うのか?もし違うのならどんなところが違うのか?」ということです。
火山の単元では、まず火山噴出物として溶岩(浅間の鬼押し出しのようなあれです)を学習します。そしてそのあとには火山岩の仲間として玄武岩・安山岩・流紋岩を取り扱います。火山岩の説明はどんな本にも「マグマが地表や地表近くで急激に冷やされて固まったもの」と書かれています。
そこで疑問としてわいてくるのが、「だったら溶岩も火山岩なのか。はたまた岩石標本にあるような玄武岩や流紋岩を溶岩と呼んでいいのか。」ということです。ときどき、玄武岩質の溶岩なんて言葉もありますが、よけいわからなくなってしまいます。
お忙しい中まことに申し訳ありませんが、よろしくご教導ください。 (02/14/01)

悩める子羊:教員:35

A
 火山岩(火山噴出物)を構成するものとして、溶岩、溶岩餅、スコリア、軽石、火 山灰などがあり、後者がある程度集合したものを、溶岩流、火山砕屑岩、凝灰岩など といいます。ですから、溶岩(流)、火山砕屑岩、凝灰岩なども火山岩です。溶岩流 は「流」をはぶいて単に溶岩ということが普通です。また、溶岩とは液体状態にある マグマを指す場合と、マグマがある程度の大きさをもって固まったものを指す場合と があります。玄武岩、安山岩、流紋岩などは火山岩を化学組成や入っている鉱物の種 類・大きさで分類した時の名称で、特にこだわらない限りは溶岩のことを指します。 ですから、玄武岩・安山岩・流紋岩はもちろん火山岩です。
 あまり良い例えではありませんが、食べ物には、米、豆、なす、みかん、豚肉など があり、それらが集合して、穀物、野菜、果物、肉類などといいます。また、成分で 分けると、脂肪、でんぷん、たんぱくとなります。たんぱく質の食べ物、あるいはた んぱく質の穀物というように、玄武岩質の火山岩、あるいは玄武岩(質)溶岩という 使い方をします。
 「鬼押し出し溶岩」は安山岩(質)の溶岩(流)で、浅間山火山の一部と作ってい る火山岩です。 (02/19/01)

中田節也(東京大学・地震研究所・火山センター)


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