火山についてのQ&A集

Question #1844
Q 岩屑流・火砕流のような火山性の破壊と「山崩れ」のような非火山性の破壊は、なぜ
火山性のものの方が非火山性に比べ、遠くまで移動する傾向があるのでしょうか? (08/24/01)

ザッキ〜:大学院生:23

A 岩屑なだれ(岩屑流)の場合は,同じ規模では火山性の岩屑なだれと非火山性の岩屑 なだれを比較すると火山性の方が遠くまで流れる(流動性が高い)傾向があります. また規模が大きいほどより遠くまで流れます.おそらく火山性の物質の方がより細粒 の物質を含んでいるため,流れ全体を維持するための境界層の流動性が高くなるため ではないでしょうか? 岩屑なだれの流動機構に関しては多くのモデルが提唱されて おり,まださまざまな議論が続いています.
 (10/15/2001)

宝田晋治(産業技術総合研究所・北海道地質調査連携研究体)


Question #1836
Q 今自由研究で富士山の低周波地震についてやっているのですが、低周波地震がマグマの動きと関係しているだろうというのは、低周波地震がマグマのある位置でおこっているから、マグマの動きと関係があるだろうということなのか、それとも、地下深くで低周波地震がおこっているので、おそらくそこにマグマがあって動いているのだろうということなのですか?マグマだまりの位置はわかっていないのですか?

 あと、ほかにも低周波地震が現在起こっている山や、昔起こっていた山があったら教えて下さい。

  (08/05/01)

みっこ:中学生:14

A (1)低周波地震は火山の火口周辺の浅い場所では、しばしば観測される地震です が、深さ10kmより深いところ、すなわち地殻深部やマントルの上部では、そのような 低周波地震は限られた場所でしか観測されません。その多くは火山地域の下で発見さ れています。このため火山の活動と関係していると考えているのです。
 またほとんどの低周波地震は噴火と関係なく発生しているのですが、なかには噴火 の活発化と同じころに発生した場合があります。フィリピンのピナツボ山は1991年 6月に大噴火をしました。このときは5月下旬にピナツボ火山の下、30kmくらいの深 さで低周波地震がたくさん発生しました。日本では1998年に岩手山の火山活動が活発 化しましたが、そのときも深さ10kmくらいと深さ30kmくらいの2カ所で低周波地震が たくさん起こりました。このことからマグマが地下で動く時に低周波地震が発生しや すくなると考えられます。

(2)マグマ溜まりでは、溶けたものがあるため地震の波がゆっくりと伝わると性質 があります。このため地下の地震波速度の空間分布を詳しく調べ、地震波速度の遅い 場所にマグマ溜まりがあると考えられています。
 東北地方では深さ200kmくらいまでの地震波速度の分布がよく調べられています。 それによると低周波地震は地震波速度の遅い場所の周辺、すなわちマグマ溜まりの周 りで発生しているようです。
 低周波地震とマグマ活動がどのように関係しているのかはまだわかっていません。

(3)低周波地震が火山の深いところで発生していることがわかったのは、微小地震 を調べる観測網が整った1980年代始めです。ですから活動の様子がわかるのは古くて も1980年以降です。
 日本では、低周波地震について、富士山の他に北海道の十勝岳、岩手山や安達太良 山、磐梯山等の東北地方の火山、榛名山や日光白根山など関東地方の火山、伊豆大島 や三宅島等の伊豆諸島の火山など、20火山以上で報告があります。
 海外でもハワイのキラウエア火山、フィリピンのピナツボ山、アラスカのスパー火 山など、10火山地域以上で観測されたという報告があります。これらの地震は、ほ とんどがマグニチュード3より小さい微小地震と呼ばれる地震なので、地震の観測設 備の整った火山地域でないと観測できません。日本は地震の観測網が世界一整備され たところなので、たくさんの火山で低周波地震が見つかっています。
 (8/07/01)

鵜川元雄(防災科学技術研究所・固体地球研究部門)


Question #1829
Q 三宅島にアカコッコが戻ってきたと聞きちょっと安心しています。ようやく火山ガスの勢いも下火になってきたのでしょうか?
三宅島について二つ質問です。カルデラの種類には火砕流を伴うクレーターレイク型、大量の溶岩流出を伴うハワイ型、イエローストーンに代表される環状型、荒船山周辺のコールドロンなど幾つかのタイプがあり、三宅島のかつての八丁平カルデラや桑木平カルデラは伊豆大島とともに「ハワイ型」であると聞いたことがあります。しかし今回の噴火で出来たカルデラはほとんど溶岩を噴出してませんよね(よく逆噴火と形容されてましたが)。多分前例が無いことだと思うのですがこのタイプのカルデラを新たに「三宅型カルデラ」の様に新たに分類される可能性はあるのでしょうか。
次に現在も続く火山ガスの大量放出についてですがよく「火口直下にマグマが上がって来ていてマグマ溜まりと対流をおこしその過程でガスが放出されている」と聞きます。こういう現象はキラウエアなどの様に常に火口底にマグマが顔を出してるタイプの火山では起きないのでしょうか。(僕は他の火山に比べて三宅島の中央火道が極端に太いからこの様なマグマの対流〜火山ガス大量放出が起きてると考えてるのですが・・)
よろしくお願いします。 (07/31/01)

アマンタジン:医師:26

A
 三宅島の噴火活動が始まってから,もう1年が過ぎました.ヘリコプターから観察 していても,茶色く変色している木々から,緑の新芽が出ているところもあり,少し ずつですが元の姿を取り戻しつつあるようです.


 まず玄武岩質火山の山頂部に形成されるカルデラは,ハワイ型よりはキラウエア型 カルデラと呼ぶことが多いです.キラウエア型カルデラは,クレーターレイク型カル デラなどのカルデラ形成に伴う噴火の噴出量と,陥没量がほぼ見合うカルデラと異な り,噴出量より陥没量がずっと大きいことから,成因について議論ありました.
 さて今回のカルデラ形成は,三宅島では数千年に一度程度の比較的珍しい現象です が,他の火山で似たような事例が過去に観察されていなかったわけではありません. 例えば1924年のハワイ・キラウエア火山のハレマウマウ火口の陥没事件や,1968年ガ ラパゴス・フェルナンディナ火山のカルデラ形成事件などです.これらは玄武岩質火 山で地表への溶岩噴出量よりはるかに大きい陥没が,爆発的な噴火を伴って起きた例 で,今回の三宅島とよく似ています.
 これらのカルデラ形成事件では,いずれも地下側方へのマグマの移動が起きていた ことが知られており,それにより密度の大きな山頂部が陥没したという考えが有力で す.移動したマグマの大部分は地下にあり,地表には出てきていないので,噴出量と 陥没量が食い違うのも説明できるというわけです.今回の三宅島の噴火は,新たに三 宅型カルデラと呼ぶよりは,最もよく観測がなされている中で起きたキラウエア型カ ルデラ形成事件ということになると思います.


 次にマグマ対流による火山ガス放出モデルですが,おっしゃるように火道の実効径 がずっと大きいことが,今回大量の火山ガスを放出している原因と考えていいと思い ます.玄武岩マグマ程度の粘性の流体をぐるぐると移動させるだけなら,径3mの円筒 で大丈夫という計算があります.一方,対流させるには上昇したマグマの密度が大き くなる必要がありますが,これにはマグマからガスがどれだけ効率よく分離するかが 効いてきます.ガスの分離効率には火道の断面積が重要で,伊豆大島の例(一日数百 トンのSO2放出量)で計算した例では,実効火道径約9m強で対流しているとすると説明 できます.今回の三宅島では,放出量が伊豆大島の約100倍ですから,実効火道径は 10倍程度あることになります.陥没初期の変形せずに陥没している部分の大きさは少 なくとも径300m程度はありましたから,考えられない大きさではないと思います.
 (8/07/01)

川辺禎久(産業技術総合研究所地球科学情報部門)


Question #1826
Q 火山帯について

 以前には、那須火山帯などの言葉で表現されていた火山帯が、現在は使用されていないとのこと、東日本火山帯、西日本火山帯などの言葉で表現されていると聞きました。地図には以前の言葉で記載されています。真偽をお知らせください。また、もし変更になっている場合はなぜ変更になったのか、そして、東日本火山帯、西日本火山帯の概要をお知らせください。

 さらに、活火山、休火山、死火山などの言葉も使用されていないと聞きました。子供たちへの指導に困っていますが、現在使用してよい正確な言葉とその概要をお知らせください。

      (07/28/01)

栃木 やしおつつじ:教員:?

A
 日本列島とその周辺域の火山の分布は基本的には太平洋プレートやフィリピン海プ レートの沈みこみに伴なうマグマの生成に支配されています。前者による火山地帯を 東日本火山帯,後者のそれを西日本火山帯と呼びます。マグマの発生場所は主に沈み 込んだプレートの深さに影響されるため,火山は帯状の地域に分布します。以前は単 に地理的な並び方だけを根拠にして,細かく火山帯を分けていましたが,細分しなけ ればならない学術的な根拠がないので現在は使われなくなっています。一部の社会科 地図上に古い呼び名が残っているのは,自然科学の進展を充分に把握していないため と思われます。


 休火山・死火山という言葉が火山学分野で使われなくなってからもう30年以上経過 していますが,依然としてこの言葉が使われている書物があります。火山噴出物の調 査が進み、科学的な手法で噴火年代が定量的に測定されるようになってくると,現在 何も表面に活動的な現象が見られない火山でも将来噴火が起こる可能性があることが 明らかとなってきました。つまり防災対応の視点で考えたとき,今活発に火山活動を 繰り返しているか,今は活動を休んでいるかの識別は無意味であることがはっきりし たわけです.活火山の定義は国によって違います。日本では過去大よそ2000年以内に 噴火があったことが古文書の記録や噴出物の学術調査で判る火山と,そうでなくとも 活発に噴気活動を行っている火山を活火山としており,その数は86あります. 2000年という限定では活火山を見逃してしまう恐れがあることが判ってきたのでいく つかの国では過去1万年以内の噴火履歴のある火山を活火山とするようになってお り,日本でもまもなく過去1万年という定義に改定される見込です.活火山でない火 山は死火山とはいわずに「その他の火山」と呼ばれます。
 (8/07/01)

宇井忠英(北海道大学・大学院理学研究科・地球惑星科学専攻)


Question #1821
Q 北海道の昭和新山は、昭和時代にできたのですが今も「平成新山」なるものができる可能性はありますか?また、できるとしたらどこが一番可能性が高いですか? (07/27/01)

千葉晃平:中学生:12

A
 「平成新山」は長崎県にあります.これは雲仙普賢岳の噴火で1991年から1995年の 間に成長した溶岩ドームで,最近の国土地理院の地図にはちゃんと載っています.そ こでは地上に噴出した溶岩が新山を作ったのです.
 「昭和新山」は,有珠山の1943年から45年の火山活動によって形成された溶岩ドー ムの一種です.有珠山では,噴火が起こるたびに地下に潜伏した溶岩が地面を持ち上 げて新山(潜在ドーム)を作ってきました.昭和新山では持ち上げた溶岩の一部が顔 を出しました.有珠山の2000年の噴火でも溶岩が北西麓の地面を持ち上げて新山を作 りました.有珠山では,次の噴火でも新山ができる可能性が高いでしょう.
 (07/28/01)

中田節也(東大・地震研究所・火山センター)


Question #1809
Q 三宅島や大島など、十数年前だったと思いますが大規模な割れ目噴火を起こしました。その時以来、火山の噴火にとても興味を抱くようになりました。特に玄武岩質の火山の噴火の華々しさにはとても惹かれるものがあります。これらの火山形態について不思議に思ったことがあるで、質問させて頂きました。
一、なぜ中央火口でなく山腹から噴火することが多いのですか?素人の考えでは、山腹噴火の方が地核を破壊するのにたくさんのエネルギーを要するような気がします。中央火口から噴火した方が楽ではないでしょうか。
二、割れ目噴火によってできた火口やスコリア丘など、中央火口以外の火口は一輪廻の噴火が終わると死んでしまうと聞いたことがあります。なぜ中央火口は生き残ってこれらの火口は死んでしまうのですか?
よろしくお願いします。 (07/17/01)

TTak:エンジニア:31

A (1)岩石の破壊はマグマにとって至って簡単です.たとえば,地面を見ても道路で も壁でも割れ目は沢山あります.問題は,マグマは割れ目を作りながらどの方向に移 動するかです.中央火口の下は,マグマが上昇する確率が高い場所です.そのまま上 に移動すれば中央火口からの噴火,横に移動すれば山腹噴火になるのです.一般に, マグマの移動の原動力は,浮力と応力勾配です.
 中央火口ではより爆発的な噴火(プリニー式噴火など)が起こり,山腹ではより穏 やかな噴火が起こる場合があります.これを,浮力の効果で説明します.マグマが十 分発泡するか,さらには,マグマ自体が粉砕し軽石状になると,マグマは軽くなり, 中心火道を上昇して中央火口から噴火します.しかし,マグマの発泡度が低ければ, または,マグマ中に十分な揮発性成分が無ければ,マグマは中心火道内を上に移動で きずに,山体内を横に移動して山腹噴火をします.火山ガスや水蒸気など軽い気体 は,中心火道中を上に容易に移動します.しかし,重いマグマは,発泡がうまく進行 し軽くならないと,上昇できません.ビニール袋(火道周辺の地殻)に水(マグマ) を満たす場合,亀裂があれば水は漏れて水位(火道中のマグマの高さ)は上昇しませ ん.
 次に,中央火口と山腹で同じようなタイプの噴火を起こすことがよくあります.こ の場合は,応力勾配の効果で説明します.応力勾配は,浮力が小さくなる浅所で有効 に働きます.これにより,マグマは,より圧縮力を受けている場所からより引張力を うけている場所に移動します.さて,火山体は,発泡した熔岩とスコリア(黒い軽 石)からなり,マグマに比べて重くはないのです.このとき,玄武岩質マグマは中央 火口に至る前に浮力を失い,山体を押し広げて板状に横方向に貫入し(これを岩脈と いう),山腹で噴火を起こします.例えば,幅1mの岩脈は,周囲の山体を1m押し 広げているのです.山腹噴火の繰り返しによる多くの岩脈貫入で,山体がより圧縮的 となり,マグマは,山体を押し広げられなくなります.そのとき,マグマは,浮力を 十分獲得できなくても中央火道中を上昇して,中央火口で噴火します.ビニール袋 (火道周辺の地殻)に水(マグマ)を満たす場合,亀裂を手でつまんで(周辺の地殻 をより圧縮的にする)ふさげば,水位(火道中のマグマの高さ)は上昇します.

(2)山腹噴火をもたらした岩脈は,一般には中心火道周辺からマグマが横に移動し て形成されたものなので,連続的なマグマの供給が止まると,中央火道から遮断され ます.その結果,割れ目に充填されたマグマも短時間で固結してしまいます.
 中央火口の下は,マグマの上昇する確率が高い場所で,長い時間かけて多くの噴火 により形成されたマグマの通り道,中心火道があります.爆発的噴火は中心火道形成 により効果的です.ここは,噴火していないときでも,深所のマグマから分離してき た火山ガスやより浅所の地下水起源の水蒸気などの軽い気体の放出路として生き残り ます.中心火道周辺は,複数の噴火を経験し力学的に破砕されているだけでなく,熱 水変質もうけているので,軽い気体は上昇しやすいのです.
 (8/07/01)

高田 亮(産業技術総合研究所地質調査総合センター)


Question #1801
Q 初めまして^^/
レベルの低い質問ですが、質問します。

先日、授業で火山岩のスライドガラスの観察をしました。
大きな形の良い斜長石の結晶があって、その中に形の悪い別の斜長石が入っていました。
先生は、一回溶けて、そのあとにまた成長したのだと説明していました。

結晶がマグマの中でできるときに、溶けちゃうんですか?
マグマがもっと熱くなるのでしょうか?? (07/10/01)

さおちゃん:高校生:18

A
 この質問はかなりレベルの高い質問です.「結晶がマグマの中でできるときに,溶 けちゃう」ということは,不思議なようですが,実際によくあることです.溶ける原 因としては,(1)温度が上昇する,(2)圧力が低下する,(3)別のマグマや水 などの流体と混合する,などの場合があります.


 斜長石は「固溶体」で,カルシウムの多いものからナトリウムに富むものまで,い ろいろな化学組成のものがあります.一般に玄武岩にはカルシウムの多い斜長石が含 まれ,安山岩,流紋岩とSiO2が増えるに従ってナトリウムに富む斜長石を含むように なります.これは,温度が下がって結晶作用が進行するに従って,マグマも斜長石 も,カルシウムの多いものからナトリウムに富むものへ,連続的に化学組成が変化す るためで,斜長石は「連続反応系列」とも呼ばれます.


 さて,例えば地下のマグマ溜まりの中で,流紋岩質のマグマ(低温)の中に玄武岩 質のマグマ(高温)が入ってきて混合すると,流紋岩のマグマの中に浮いていた,ナ トリウムに富む斜長石は溶かされ,新たにもっとカルシウムの多い斜長石が結晶する ようになります.三宅島や有珠山の火山活動を見ても,マグマは数年〜数10年ごと に繰り返し上昇してきますし,その間の静かな時期にもマグマ溜まりの中で結晶作用 が進行しますから,結晶が成長したり,溶かされたりすることが繰り返し起きても不 思議ではありません.


 ところで,これとは別に,ただマグマの温度が下がって,結晶が成長しているの に,ある温度まで下がると,その結晶が逆に溶けてしまうという不思議なことが起き ます.例えば,ある種の玄武岩質マグマの中で,カンラン石という鉱物が結晶化して いるのに,ある温度まで下がると,カンラン石が溶けてしまい,この温度以下では, 斜方輝石という別の鉱物が結晶し始めるのです.この場合は,マグマの結晶作用の進 行とともに,別の種類の鉱物が結晶するので,「不連続反応系列」と呼ばれます. (逆に温度を上げて斜方輝石を溶かすと,カンラン石+マグマになります.これは 「分解溶融」と呼ばれます.)


 マグマは,いろいろな成分が混ざった複雑な液体なので,それが結晶化するときに はいろいろと不思議なことが起きます.水が0℃で氷になるような,単純な結晶化と はだいぶ違います.
 (07/12/01)

石渡 明(金沢大学・理学部・地球学科)


Question #1778
Q 仙台市近郊の太白山は、富士山のような独特の山容や、山頂東側に大規模な柱状節理が存在しています。これは大昔の太白山の火道へのマグマの貫入、あるいは溶岩ドーム成長で形成されたと聞きましたが、実際これらはどのようなケースで形成されたのでしょうか?
また、仙台北方には泉ヶ岳や七つ森、山形県境の面白山、船形山などの火山が存在しますが、太白山を含め、これらはひとまとめの火山群としてとらえるべきなのでしょうか?それとも蔵王や鳴子などの延長として扱うべきなのでしょうか?作並や秋保、定義など温泉の多さも気になってしまいます。拙い質問ですが、ご回答いただければと思います。

(06/30/01)

鳥の海:会社員:43

A
 太白山は、約8百万年〜5百万年前にマグマの活動によって形成されたもので、マ グマが地表付近で固まって生じたものと考えられています。柱状節理はマグマが固結 する際に冷却収縮して生じたものと思われます。太白山の富士山のような形は、中心 部に硬い円柱状の火山岩があり、その周囲がより柔らかい堆積岩があっために、侵食 に対する強さが異なってできたものと考えられます。


 ここにあげられた山々は確かにいずれも火山岩からなりますが、それらの形成され た時代が異なり、これらをひとまとめの火山群と考えることはできません。約8百万 年〜5百万年前にできた太白山、約3百万年前〜2百万年前にできた面白山・七つ 森、そして約2百万年〜百万年前にできた船形山・泉ヶ岳があります。特に中央蔵王 を形づくっている蔵王火山や、鳴子火山の活動はこれらよりも概して新しく、百万年 前以降に活動したと推定され、歴史時代の活動記録も残されています。


 作並、秋保、定義などの温泉と、これらの火山岩の分布とが関係があるという確か な証拠はありません。むしろ、これらの温泉は、約8百万年前から5百万年前にかけ て形成されたカルデラの分布と密接な関係がある様です。
 (07/02/01)

吉田武義(東北大学大学院・地球物質科学,地殻化学及び火山体地質学研究室)


Question #1776
Q 噴火する山と、噴火しない山の違いは何ですか?
噴火しない山はどうやってできるんですか?

(06/26/01)

恵理ちゃん・朋ちゃん:中学生:14

A
 火山にだけしぼった話をします.それ以外の山では地下にマグマがないので噴火を 起こしません.また,地下にマグマがあってもすぐに噴火が起こるわけではありませ ん.
 火山の寿命は火山によってまちまちで,数万年以上の長さになることが普通です. その間じゅう火山の下には,マグマが深部から次から次に補給されてひそみ続けてい ると考えられています.火山は噴火を繰り返すことによって大きくなりますが,噴火 1回当たりの活動時間は数日から数年程度で,長い火山の一生においては「ほんの一 瞬」の出来事にすぎません.また,ひとつの噴火と次の噴火の間隔は,数十年から数 千年と火山ごとにまちまちなのです.
 例えば,富士山はここ約300年間は噴火をしていない火山です.でも,昔はもっと 頻繁に噴火を繰り返していたことを示す記録が残っています.100年も生きることが できない人間にとっては,やや長めに一休みしている火山にすぎないのです.しか し,最近,富士山の地下で低周波地震が多く起こっています.これは,富士山の下に マグマがちゃんとひそんでいることを示す証拠であると考えられています.
 火山がずいぶんと年を取って,地下でマグマが固まってしまい,ほとんど噴火をし なくなっている火山もあります.でも,固まったマグマの余熱で温泉が湧き続けた り,小さな水蒸気爆発を起こすこともあります.ほんとうに「噴火しない火山」とは ずいぶんと年をとった火山ということになります.
 (06/30/01)

中田節也(東大・地震研究所・火山センター)


Question #1772
Q 先日、阿蘇山の見学に行って来ました。火口を見ていてふと思ったのですが、阿蘇山の火口には
なぜ水がたまっているのですか?水面から湯気が立ち上っているところから見て、相当温度は高いようですが、あれは、やはり火山活動と何か関係があるのですか? (06/20/01)

黒狼:学生:13

A
 非常におもしろい質問です.
 1.雨水や地下水が火口に流れ込み,それが漏れないからです.また,噴気の中に も多量の水が含まれるので,これも水位を保つ要素のひとつです.問題はどうして漏 水が起こらないかです.
 2.温度は50℃程度ありお風呂の温度より高い状態です.これは地下深部からやっ てくる高温の火山ガスによって温められているからです.ご覧になったのは中岳第1 火口です.現在(2001年6月)ここには灰緑白色の湯が溜まっています.これを阿蘇 山の「湯だまり」と呼んでいます.その水面は火口の縁から100m余りの深さのとこ ろにあります.4,5年くらい前までは,さらに50m下にありました.このように湯の 水位は一定ではありません.火山活動が活発化するにつれて,お湯の色が灰色から黒 色に変わり,温度も60,70℃と上昇して,火口内で爆発が起こるようになります.さ らに爆発が活発化すれば,お湯が火口の外へ飛び出し(この湯は強酸性で,一瞬のう ちに金属を溶かしてます),お湯も蒸発して湯だまりが消えます.そうなると乾いた 火山灰と赤熱した噴石が噴出するようになります.
 さて,何故「湯だまり」が生じるのでしょうか.窪地であれば,雨水が溜まりま す.阿蘇山中岳には窪地となっている火口が,第1火口の他に,大きいものでは南側 の第3,第4火口があります.そちらには,現在,水が溜まっていません.第3,4 火口も大雨が降れば一時的に雨水をたたえますがすぐに漏水して乾いてしまいます.
 阿蘇山では古来から中岳火口は神霊池,宮池,宝池などと呼ばれ,水は着色してお り,干ばつ時でも存在していたといいます.最近は第1火口で活動が繰り返されてい ますが,50,60年ほど前は,第1火口の他に第2,第3,第4火口も活動を繰り返し ていました.そのころの記録を見ると,これらの火口には湯だまりが出来ていたこと がわかります.このようなことから「湯だまり」は活動中の(噴気活動がある)火口 に出来ると言えます.
 噴火によって火山灰や噴石が放出され,火口は底が見えないほどの深くなります が,活動後には噴出物が雨水とともに流れ込んで火口は浅くなります.地下から噴出 し続ける高温の火山ガスによって,これらの火山灰などが変質すると水を通さない地 層となるために漏水が起こらなくなるものと考えられます.こうして,水の入った土 鍋をコンロにかけたように,火口に溜った水は高温の火山ガスによって温められ続け る「湯だまり」になります.
 (06/30/01)

須藤靖明(京都大学・地球熱学研究施設・阿蘇火山研究センター)


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