火山についてのQ&A集

Question #1996
Q 初めまして。
今、火山について調べています。それで、阿蘇山について調べているのですが
阿蘇山は噴火前の高さは富士山を越えていたと聞いた事があります。
その話しは本当なのでしょうか。
本当ならばどのくらいの高さだと言われているのでしょうか。
また、それにまつわるエピソードなどあれば教えてください。お願いします。 (11/05/01)

井上 由香:学生:15

A これまでもよく聞かれた質問です.

阿蘇火山は東西18 km,南北24 kmの非常に明瞭なカルデラ地形をもっています.この カルデラは,約27万年前から9万年前までに起こった4回の巨大噴火による陥没で形成 されたものと考えられています.外輪山斜面の傾斜をそのまま内側に延ばすと,確か に富士山のような巨大な成層火山があったのでは?と想像することはできます.しか し,そうした事実を示す地質学的な証拠はこれまで見つかっていません.

阿蘇カルデラを取り囲む巨大な火山の裾野のように見える斜面は,4回の大規模噴火 時に放出された大量の火山灰や軽石(火砕流堆積物)が埋め立ててできたもので,阿 蘇火山の噴火前には,かなり凹凸のある地形をしていたと考えられます.カルデラの 外輪山を注意深くみると,周りからとび出して高い部分がありますが,これがその凹 凸の名残です.また,それらの高い部分とカルデラの壁には阿蘇火山よりも古い溶岩 が認められ,岩石の種類や年代は場所によって異なっています.これらの事実から, 阿蘇火山が噴火を起こす前(27万年よりも昔),この地域には一つの大きな火山では なく,多くの独立した火山体があったことがわかっています.

阿蘇にはかつて富士山を越える高さの火山がそびえていた…・・何とも夢のある話で すが,これまでわかっている地質 の調査結果から,そうした事実は残念ながらなさそうです.
 (11/08/01)

宮縁育夫(森林総合研究所・九州支所)


Question #1968
Q 3週間ほど前高千穂の峰に登った時、お鉢火口で噴気を見ました。お鉢火口は確か昭和に入って活動していないし、自分も何度も登っていますが噴気を見たのは初めてです。噴火の前触れなのか、あるいは最近噴気が始まったのか。最新の情報を教えてください。 (10/30/01)

近藤ジュンスケ:高校教諭:41

A
 霧島は地熱活動の活発な火山群であちこちに噴気地帯があります.特に新燃 岳,御鉢,硫黄山の3つの火山は歴史時代に噴火した火山で現在も噴気地帯があ ります.御鉢には火口の一番深い部分の壁と火口の中段のテラスになった部分に 噴気がでています.さらに,火口壁の上部の南側にも噴気が出ていて,なぜわざ わざこんな所からガスが出るのか不思議に思えます.微弱な噴気は気温が高い場 合,ほとんど見えないため気がつかないことが多く,気温が低くなったり,雨上 がりに気がつくことが多いものです.地震活動などに特に異常は出ていません. 霧島にはこのほかにも大幡池で主として炭酸ガスが池の底からブクブクと出てい たりします.
 (10/30/01)

鍵山恒臣(東京大学・地震研究所・火山センター)


Question #1967
Q 先日、火山が噴火した跡の空中写真を実体視する練習をしました。それで溶岩堤防が見えたのですが、溶岩堤防とはどのように形成されるのですか?教えてください!!

(10/29/01)

ライライ雷覇:中学生:14

A 溶岩は水などと違って,ある程度力を加えないと流れ出さない特徴があります.その ため流れるときに流れの側面や前面が壁のように高くなります.溶岩の供給が止まっ ても,溶岩の流れはすぐには,特に急傾斜部分では止まりません. そのため流れやすい中心部は流れ去ってしまいます.一方,側面の壁は溶岩の流れの 中心より早く冷えていますから,溶岩流の中央部分は側面より低くなってしまいます が,側面は取り残されて溶岩堤防を作ります.

実体視すると溶岩流のいろいろな微地形が見えますね.溶岩堤防のほかに,溶岩末端 崖,溶岩じわなども面白い地形だと思います.これらがどうやってできたのか,水飴 などで実験してみるのも面白いですよ.
 (11/06/01)

川辺禎久(産業技術総合研究所・地球科学情報部門)


Question #1965
Q 白根山の湯釜はなぜエメナルドグリーンなんですか?
またその隣の空釜の底にいっぱいへこみがあるのですがそれはどうしてできたのか教えてください。

(10/29/01)

ぴろゆき:大学生:20

A
 湯釜の色の原因は,水に溶けている鉄イオン(Fe2+)と水に漂っている硫黄などの 微粒子のためであると思われます.色の原因を完全に特定するのは,なかなか容易で はありません.たとえば,湯釜の水をビーカーにいれて眺めても,エメナルドグリー ンには見えません.殆ど透明で,すこしにごっているだけです.つまり水そのものが エメナルドグリーンではないのです.おそらく,湯釜の湖水に入射した太陽光線が反 射する際に,特定の波長の光が吸収され,結果として湖がエメナルドグリーンに見え ているのだと考えられます.
 湯釜の隣の空釜の底のへこみは,1982,1983年の湯釜クレーターにおける 噴火の際に放出された岩が着弾してできた穴です.いつもは穏やかな湯釜ですが,噴 火すると暴力的になりますので,立ち入り禁止は守ってください.
 (10/30/01)

大場 武(東京工業大学・火山流体研究センター)


Question #1953
Q 今、学校の授業で溶岩について調べています。
辞書には『地下の深所にあるマグマが火山の噴出口から地表に流れ出したもの
また黷竄竦xとあり、
教科書には、『火山からでた溶岩が固まってできた岩石が火成岩』とありました。
溶岩について調べるほど何だか判らなくなってきています。
父は『固まったマグマのこと』と言ってますが、
何だか簡単過ぎるような気がします。
わかりやすく教えてください。

また、溶岩は何故火山が噴火すると遠くまで飛ばされるのですか?。
よろしくお願いします。

(10/24/01)

YamaChan:小6:12

A
 溶岩は「地表やその付近にある」マグマ(どろどろにとけた状態のもの)をさす場 合と,それが固まってしまったものをさす場合とがあります.火口から出て流れてい るものも,冷え固まったものも溶岩と呼びます.
 「火成岩」とはマグマが固まってできた岩石のことで,花こう岩のように地下の深 い場所でゆっくり冷えてできたものを「深成岩」(しんせいがん),溶岩のような地 表やその付近でできたものを「火山岩」と呼びます.深成岩+火山岩=火成岩
 飛ばされる溶岩は,とけた溶岩の「しぶき」であることや,すでに固まった溶岩の 「塊や破片」であることもあります.形や大きさなどによって,火山弾,軽石,火山 岩塊,火山れきなどと呼ばれます.これらは火口で爆発が起こることによって粉々に なり噴き飛ばされるものです.爆発は,マグマ中のガスやマグマで熱せられた地下水 が噴火までに蓄えていた高い圧力が原因でおこります.
 (11/26/01)

中田節也(東大・地震研究所・火山センター)


Question #1925
Q 黒いケイ素と酸素が結びつくとなぜ無色の石英になるのですか? (08/15/01)

ミッチ−:中学生:14

A (HPの管理の都合で掲載が遅れました)


 これはトンチ問題みたいですね.私の知識ではこの問題にまと もに答えることはできないので,問題の周囲を回るだけにしたい と思います.
 まず珪素が黒いかどうかですが,純粋な珪素の結晶は金属 光沢を持っていて,表面は「銀色」です.理化学辞典によると 結晶質のものは「暗青灰色」,無定形のものは「褐色」と書いて あります.鉄,銀,亜鉛などの金属元素に比べて,色が濃いこと は確かなようです.ただし,例えば炭素の結晶も,石墨(セキボク, グラファイト)は真っ黒ですが,ダイヤモンドは無色透明であるよう に,同じ元素でも結晶構造によって色は大きく変化します.
 次に酸素が結びつくと無色になるという点ですが,酸化物の 色は様々です.酸化アルミニウム,酸化マグネシウム,酸化 亜鉛などは白色ですが,鉄は酸化すると黒い磁鉄鉱になり, 更に酸化すると赤い赤鉄鉱になります.マンガンの酸化物も, 酸素とマンガンの割合によって,黒,緑,赤など様々な色を呈し ます.そもそも,酸素自身が必ずしも無色ではなく,例えば酸素 を冷却して液体にすると,青い色になるそうです.オゾンも酸素 だけでできているガスですが,やや青みを帯びていて,冷却固 化させると黒紫色になるそうです.
 要するに物質の色というのは元素の種類だけでは決まらず, 元素の結合の状態によって大きく変わります.これは,物質を通 過する(または反射される)光の性質は,その物質をつくる原子 の一番外側の電子に影響されていて,隣の原子との結合状態 を決めているのもこの外側の電子だからです.石英もわずかな 不純物の存在や放射線を照射することによって黒,紫,黄など 様々な色を呈します.物質の色の問題は不思議で,だれでも 疑問に思うことですが,きちんと説明するのは難しいことです.
 (10/11/01)

石渡 明(金沢大学・理学部・地球学科) 


Question #1923
Q 火山が噴火する直前は、どのようになっているんですか! (10/18/01)

崋山君:小学生:10歳

A
 火山が噴火する直前には、火山の中や火山の下に高温のガスやマグマがたくわえら れます。たとえば、高温のガスだけが出てくる場合には「水蒸気爆発(すいじょうき ばくはつ)」になりますし、マグマが出てくるときには溶岩流をともなう噴火になり ます。地下にたくわえられたものがどういう出かたをするかで「噴火のスタイル」が 決まります。
 また、噴火の直前にはいろいろな変化が地上にあらわれます。このような変化を前 兆現象(ぜんちょうげんしょう)と呼びます。たとえば、地下のガスやマグマの量が 増えると、地上にもれだす火山ガスも増えるばかりか、今までなかったところに新し く火山ガスが出るようになったり、ほんのわずかですが火山がふくらみます。また、 火山の近所だけで感じる地震の回数が増えることがあります。
 どのような形で前兆(ぜんちょう)があらわれるかは、火山によってさまざまです。
 (10/18/01)

筒井 智樹(秋田大学・工学資源学部・地球資源学科)


Question #1922
Q ・一回の噴火で、どれくらいのマグマや火山灰が出るんですか。(量)
・火山灰にはなぜたくさんの色があるんですか。また何種類ぐらい色があるんですか。
・私達が調べた火山灰は磁石に少しくっつきました。火山灰の中にはくっつくような石が入っているんですか。 (10/17/01)

川俣小学校の子供たち。6年5名:小学生:12

A
 一回の噴火でほうり出される火山灰の量は噴火によってまちまちです.火山灰は, 噴火の時にマグマがちぎれてできた「かけら」や,古い岩がくだかれてできた細かい 「はへん」です.1991年6月にフィリピンのピナツボ山で起こった噴火でほうり出さ れされた火山灰の量は数立方キロメートルにもなります.火山灰は約40kmも上空に舞 い上げられました.火山灰には,空から降った火山灰と,山はだを「かさいりゅう (火砕流)」となって流れたものとがありました.2000年8月に三宅島で起きた噴火 では約千5百万立方メートルの火山灰が一回にほうり出され,火山灰は約15kmもの高 さまで舞い上がりました.世の中には火山灰をほとんど出さずにすむ穏やかな噴火か ら,火山灰をたくさん出す大きな噴火までいろいろあります.9万年もまえに起きた 阿蘇山の噴火のように,大きなカルデラを作る噴火では,一回で数十立方キロメート ルものたくさんの火山灰がほうり出されることがあります.


 かたまったマグマ(つまり溶岩のこと)の色は,もとのマグマの組成や冷えるはや さによって黒くなったり灰色っぽくなったりします.マグマが泡だっている場合に は,もともと灰色っぽい溶岩であれば白っぽくなります.例えば,リュウモンガンと いう溶岩はふつうは白っぽい色ですが,水の中などで急に冷えたものは黒っぽい色を しています.また,火山灰は高温で焼かれるとすぐに赤っぽくなる性質があります. 古い岩であれば火口のそばに長い間あれば焼かれて赤くなったり,イオウなどが付着 して黄色っぽくなっていることもあります.さらに,マグマの中には結晶が入ってい ます.マグマがちぎれてたり岩石がこなごなになって火山灰ができるとき,結晶だけ のつぶができることがあります.このばあいは,結晶の色がつぶの色です.このよう に,いろいろな色の火山灰があるのは,もとのマグマの組成がちがったり,冷え方が ちがったり,結晶の混ざりかたがちがったり,泡の割合がちがったり,いくつもの岩 のはへんが入っていたりするせいです.


 マグマが冷えると「じてっこう(磁鉄鉱)」という磁石の力を持った結晶が産まれ てきます.鉄をたくさん含んだ結晶です.磁石にくっついたのは,恐らく,火山灰の 中にあった磁鉄鉱のつぶでしょう.
 (10/18/01)

中田節也(東京大学・地震研究所・火山センター)


Question #1867
Q 夏休みに虻田町の火山科学館に行ってきました。
1977年の噴火の時の火山灰と2000年の火山灰が展示されていましたが、色も形も違います
これは噴火の種類の違いによるものでしょうか? 1977年の噴火はプリニー型、2000年はマグマ水蒸気爆発と聞いておりA1997年のものはマグマが多く、2000年のものは火口付近の不純物が混じり、水蒸気で細かな石になったもの思いますがいかがでしょうか? (09/19/01)

Issei:高校1年:15

A その通りです.火山灰の色や形,含まれる粒子の種類は噴火のタイプによって決まっ てきます.

1977年の噴火では大小様々な爆発が起こりましたが,そのうち軽石を降らせるような 大きな爆発は"プリニー式噴火"というタイプの噴火でした.このタイプの噴火では, マグマがそれ自身含んでいたガス成分によって発泡(カルメ焼きができる場面を想像 してみて下さい)し,爆発的に噴火します.そのときに吹き飛ばされる火山灰は,発 泡した"マグマそのもの"のしぶきが急に冷やされて固まったものがほとんどで,それ らは良く見ると細かい気泡をたくさん含んでいたり,ガラスのように尖っていたりし ますし,色はマグマの組成を反映した色(有珠のようなデイサイト質マグマでは白〜 灰白色)になります.

一方,2000年の噴火は,"マグマ水蒸気爆発"あるいは"水蒸気爆発"というタイプの噴 火でした.このタイプの噴火では,基本的にはマグマが地下水に接触することによっ て地下水が急に沸騰させられて爆発(線香花火の火の玉をバケツの水に落としたとき の様子を想像してみて下さい)します.このときに吹き飛ばされる火山灰の多くは, マグマの通り道や火口付近の地層が砕かれて混じり込んだ様々な物質からなります. そのため,良く見ると火山灰粒子には様々な色・形のものが入り交じっています.有 珠火山2000年噴火の灰の場合,1977年のものに比べて全体に黒っぽく(場合によって は赤茶っぽく)見えたのではないでしょうか?

なお,有珠火山2000年噴火の爆発の中では,一番最初の3月31日噴火だけは特別でし た.このときの"マグマ水蒸気爆発"では,火山灰のうち約半分も"マグマそのもの"が 含まれていました.このため,典型的な"マグマ水蒸気爆発"と"プリニー式噴火"の中 間的な性質を持つ噴火だったのではないかとの説が提案されています.

参考までに,"マグマそのもの"が固まったものは「本質物」と言い,混入物は「異質 物」とか「類質物」などと言います.火山灰を調べる時には,どの粒子が「本質物」 であるかを突き止めることがまず大事になります.
 (10/15/2001)

東宮昭彦(産業技術総合研究所・地質調査総合センター)


Question #1853
Q よく縄文時代を扱った番組で
鬼界カルデラがでてきますが
最近の火山の噴火で近い物はどんな物でしょうか?
それともとてつもない噴火だったんですか? (09/10/01)

hazime:会社員:27

A
 鬼界カルデラを形成した噴火はとてつもない噴火でした。鬼界カルデラは鹿児島県 南方の薩摩竹島と薩摩硫黄島を陸上のカルデラ縁の一部とするカルデラで,そのほと んどが海中に没しています。6300年前の噴火はまず最初にプリニー式噴火に始まり, 多量の降下軽石を東方地域に降らせました。続いてやや規模の小さな火砕流が噴出 し,最後に巨大な噴煙柱の崩壊により,幸屋火砕流と呼ばれる大規模な火砕流が四方 に流れました。幸屋火砕流は海を渡り,九州本土まで到達し,給源から半径100km の 範囲に分布しています。また,プリニー式噴煙柱と幸屋火砕流の発生により、上空高 く舞い上がった火山灰は日本列島を縦断し、東北地方まで達しました。火砕流という 噴火現象は最近では1991〜1995年の雲仙普賢岳噴火が思い出されますが,幸屋火砕流 の規模は雲仙普賢岳の1回の火砕流噴火の数10万倍に相当します。カルデラ形成を 伴う大規模火砕流の噴火は日本列島では1万年に1度くらい発生していますが,有史 時代には例がありません。6300年前の縄文人が唯一の目撃者ですが,残念なことに当 時の縄文文化はほぼ壊滅状態に陥ったことが推定されています。大規模火砕流は文明 をも滅ぼすほどの巨大噴火なのです。
 (09/10/01)

鎌田桂子(神戸大学・理学部・地球惑星科学科)


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