火山についてのQ&A集

Question #2140
Q こんにちは。熊本県の乙女小学校の5年生です。
今、僕は火山の中に石を入れても、その石は溶けないというテレビを見て本当かなと思いました。
だから学校のパソコンでの調べ学習で、そのことについて調べようと思いましたが、なかなか見つかりませんでした。
そしたら、このホームページが見つかったので、質問しようと思って、メールを書きます。
教えてください。本当に火山の溶岩の中に入れても石は溶けないんですか?
何でなのかも教えてください。 (02/08/02)

マッキーとおしょう:小学5年生:11

A
 地表で見ることができる様々な石は温度と上げていくとどろどろに融けてしまいます. でも,実は石の種類(化学組成)によってとける温度が大きく違います. 1000度以下で簡単にとけてしまう石から,1500度まで上げてもとけない石まで様々です. 溶岩は岩石がとけた状態のものですから,火山の溶岩の温度もまた溶岩の種類によって様々で, 例えばハワイのキラウエア火山の玄武岩質溶岩のように1200度近い温度のものもあれば, 昭和新山のデイサイト質溶岩のように900度から1000度程度のものもあります. だから,火山の中に石を入れてもその石は溶けない,と断定することはできません. どんな石をどんな溶岩に入れるかで,とけることもあればとけないこともあります. (2/11/2002)

安田 敦 (東京大学・地震研究所)


Question #2112
Q 火山岩について調べると、必ずと言っていいほど『微量元素』という言葉を目にします。
どんな元素のことをいうのかは分かりましたが、それが何を示すのかいま一つ分かりません。
地球学的に何か示しているのでしょうか?

(01/29/02)

KOU。:学生:18

A
 地球上には100以上の元素が存在していますが,一般の火成岩は酸素,ケイ素,マ グネシウム,鉄,カルシウム,アルミニウムなど,このうちの十数元素で99重量%以 上がしめられています.微量元素という言葉は残りの元素に対して使われています. 分析技術が進歩したため,1グラムの岩石の中に1兆分の1グラムしか含まれていない 元素でも検出できる場合もあります.
 100以上の元素のうちには,大きさやイオンになる時の電荷数が様々なものがあり ます.また,酸素と結合しやすいか,硫黄と結合しやすいか,鉄などの金属相に入り やすいかなど化学的な性質も多様です.このため,岩石が溶融する時に,溶融したマ グマに入りやすい元素(例えばウランなど)と,溶け残りの固体にとどまりやすい元 素(例えばニッケルなど)に分かれます.このような元素の振る舞いがわかれば,火 成岩中の微量元素濃度を測定することによって,火成岩の親マグマの起原物質,例え ばマントルの岩石が溶けたものか,地殻の岩石が再び溶けたものか推定することがで きます.また,マグマができた環境,例えば温度や圧力などについての推定にも役立 ちます.
 微量元素の中には,鉛のように,放射性元素(鉛の場合はウランやトリウムです) の放射壊変によって同位体組成が変化するものもあります.同位体組成を指紋のよう に用いて,地球内部での物質の動きを追跡することも行われています.
 (2/04/02)

中井俊一(東京大学・地震研究所)


Question #2106
Q 最近、学校の課題で火山ガスについて調べる
といった課題が出されて、いろいろ調べていると
火山ガスに含まれている物質で多いのがH2Oであることを
知ってとても驚いています。
そして、このことに興味を持ったのですが、
知識を得るところがなく困っています。
火山ガスと水についての関連性について、
専門家の知識、意見を教えていただければ
幸いです。 (01/28/02)

カイト:学生:20

A 火山と水は以下の点について密接に関係しています.

1)マグマ溶存成分 2)火山熱水系 3)マグマ水蒸気爆発

1)マグマにはH2O,CO2,硫黄成分などの気体になりやすい成分(=揮発性成分)が 溶けていて,マグマが上昇するにつれて泡となり分離します.この現象を脱ガスと言 います.泡が生じるとマグマは軽くなり,浮力によりますますマグマの上昇は加速 し,泡の膨張力も加わり,ついには地表に溶岩として噴出します.これは溶岩を放出 する噴火形式の基本原理で,マグマに溶けているH2O,CO2,硫黄成分などの脱ガスが 噴火の原動力です.

2)活火山ではマグマは必ずしも地表に現われず「活動」を続ける場合があります. ここで「活動」とは具体的にはマグマからH2O,CO2,硫黄成分などの気体になりやす い成分(=揮発性成分)が抜け出ること(=脱ガス)です.マグマから抜け出たこれ らの成分は,地下水と混合し,温泉水や火山ガスなどとして地表に湧出します.この 仕組みのことを火山熱水系と言います.この場合,温泉水や火山ガスのH2Oは大部分 が 地下水起源ですが少量,マグマから抜け出たH2Oが含まれます.

3)溶岩が地下水や海水と直接接触する場合があります.この時,多量の水蒸気が発 生し激しい爆発を引き起こします.これがマグマ水蒸気爆発で,噴火としては最も激 しい形式です.
 (2/04/02)

大場 武(東京工業大学・火山流体研究センター)


Question #2078
Q 高松市の観光地に屋島がありますが、山の上が台地になっています。すぐ隣に五剣山という山がありまして、その形が地底の力で盛り上がったような形になっています。ともに古い火山ではないかと思われるのですが、瀬戸内火山帯は一千万年以上古い時代のことで、形が残っているとは考えられないとのことです。私は、高松市で育っていますが、以前より、屋島の山上の台地は、火山の活動で、富士山のような山の上が吹き飛んで出来たものと思っていました。学問的にはいかがな事でしょうか。 (01/13/02)

大西  慧:外科医師:59歳

A 屋島の台地ほぼ平坦な山頂が周囲を急崖で囲まれた地形をしており、そのような 地形は「メサ」と呼ばれます。これは堅牢・緻密で平坦な溶岩流が侵食に耐えて 残った地形と考えられています。 屋島の地質を調査すると、高さ約290mの崖の下部はまさ化した部分の多い花 崗岩ですが、その上部80mくらいが緻密な溶岩(これはいわゆる「かんかん石 =サヌカイト」の仲間の安山岩質です)で占められており、さらにその溶岩流の上 面の一部には花崗岩質砂礫層が薄く載っています。 この砂礫層の成因については、昔、佐藤源郎氏が、地形の逆転が生じた証拠と して述べています。つまり、今から1300万年昔に、当時の谷地形の低所に溶岩 流が流れました。溶岩流は地形の凹凸を埋めましたが、上面はほぼ平坦です。 その当時に周囲の花崗岩の山から流出した花崗岩質の砂礫層が溶岩流の上に 堆積しました。その後長い年月で周囲の花崗岩が風化・浸食されていったのに、 溶岩流は堅牢で侵食に耐えたために、現在のような山頂が南北に伸びた上面が 平坦な丘が生じた、というものです。もちろんここで、地形の逆転というのは、 昔の低地を埋めた溶岩流が侵食に耐えて現在の高地になっていることを云います。

屋島の隣の五剣山は、下部から、花崗岩、砂岩、流紋岩質凝灰岩、安山岩質 凝灰角礫岩からできています。八栗寺の裏の五剣をなす峰は安山岩質凝灰 角礫岩の地層からなっていますが、間に薄い凝灰岩層をはさんでいます。 これらは、当時の火山活動で流出した溶岩流が破砕されて二次的に土石流 のようにして堆積したものと考えられます。五剣山の場合も凝灰角礫岩が侵食 に耐えて残った地形です。

この他に高松地域には、飯野山(讃岐富士)、六目山、伽藍山、十瓶山、日山、 白山のような、小さな円錐状の小丘がみられますが、これらはしばしば、昔の マグマの上昇してきた通路であることが判ります。中心の溶岩が硬堅で侵食 に残って円錐状の丘が生じます。

火山爆発で山頂部が吹き飛ばされると、一般に窪地(火口)が生じます。 1980年の北米セントへレンズ山では約3000mの標高の富士山型の火山の 上部が山体崩壊で失われ、後に直径1.5kmの馬蹄形窪地が生じました。 高松地方にはそのようなタイプの爆発火口は残されていないようです。
 (1/15/02)

佐藤博明(神戸大・理学部・火山地質学研究室)


Question #2076
Q 拝啓 非常に楽しく、興味深く拝見させて頂いています。

日本では、北海道、東北および九州に形の分かるカルデラ火山が多いのですが、なぜ関東、甲信越にはそのような大規模な火山が少ないのでしょうか?(富士山、箱根、浅間などは別として)

あるいは、関東近辺の旧い地層に、火砕流の痕跡などは見出されているのでしょうか?
巨大噴火をキーワードに検索していて、ふとそう思いました。よろしくお願いいたします。


(01/09/02)

大石 直昭:会社員:45

A
 大規模なカルデラをともなう火山は,第四紀後期では東北地方の十和田火山以北お よび北海道と九州にしかみられません.この理由については火山Q&A No.2014でお答 えしましたのでそちらを参考にしてください.第四紀前期や鮮新世には,関東近辺に も大規模な珪長質火砕流の噴火が行われ,現在は溶結凝灰岩として所々に残されてい ま す.
 このうち保存のよいものとしては,栃木県最北部から福島県南部にかけて分布する 白河火砕流があります.白河火砕流は100万年前前後に噴火した大規模なデイサイト 質火砕流堆積物で,4ないし5枚の溶結凝灰岩からなります.福島県白河市から栃木県 芦野町に分布する溶結凝灰岩は石材として利用されており,白河石あるいは芦野石な どとよばれています.この白河火砕流の噴出源は,西方の福島県田島町周辺であると 推定されています.地形的なカルデラは認められていませんが,地質調査によって供 給源とみられる複数の陥没カルデラ構造がみつかっています.
 甲信越地域では,甲府北部や北アルプスの穂高岳周辺にもみられます.甲府北部の ものは600万年前とやや古いですが,東山梨火山深成複合岩体とよばれ,南北に細長 いコールドロン(カルデラ)とそれを埋積した溶結凝灰岩とそれに貫入した花崗岩か らなります.山の名前でいうと,乾徳山や小楢山がそれにあたります.穂高岳のもの は第四紀初期のコールドロンとそれを埋積した溶結凝灰岩およびそれに貫入した花崗 岩からなります.穂高岳滝谷に露出するこの花崗岩は世界的にみても数少ない第四紀 の花崗岩です.あの穂高岳が第四紀初期のカルデラ火山だったなんてご存知でした か?
 (1/29/02)

高橋正樹(日本大学・文理学部・地球システム科学科)


Question #2063
Q 現在比較的活発な火山の前線は東日本と九州以南に集中していますがプレートの沈み込みは四国沖でも起こっています。なぜ中国地方や近畿北陸の火山は静穏なのでしょうか?
日本列島の構造、特に中央構造線によって何らかの影響を受けているのでしょうか? (12/26/01)

ぼるけの:会社員:40

A
 中国地方や近畿地方の火山は一見静穏そうに見えますが、第四紀(160万年前以 降)に大きな活動をしているものや、完新世(1万年前以降)に活動した火山もあり ます。後者に対しては、今後、活火山として認定されるものが出てくると思います。 というのは、現在、活火山の定義を「2000年以内に噴火した火山」から「1万年以内 に噴火した火山」へと改訂する作業が、進行中だからです。さて、この地域にも、東 北日本と似たような火山フロントが見られます。西南日本弧を縦断して琉球弧の北部 まで、一列に連なります。しかも、たいへんに面白いことに、この火山フロントは約 150万年前から突然に出来始めたのです。中国地方から九州・琉球にまで連なる火山 フロント上で、最も初期に噴火活動をした火山体の年代を調べてみると、約150万年 前にそろうのです。このことは、火山フロント上の火山が、フィリピン海プレートの 沈み込みと何らかの関連性をもって形成されたことを示していると思います。確か に、西南日本弧の火山フロントの直下には、フィリピン海プレートは存在するので す。プレートが沈んでいる深さでの地震はほとんど見られません。しかし、地震波を 詳しく調べると、ここにある種の反射面が確認され、非震性(地震を起こさない)の プレートがあることが、20年前くらい前から分かっています。しかし、プレート運動 と火山活動との直接の関係は、まだよく分かっていません。地域的・時代的な関連性 は分かってきても、それらの因果関係を突き止めるところまでは、研究が進んでいな いのです。また、ご質問のような、中央構造線などの西南日本弧の主要な構造線が、 第四紀の火山活動に関与していることを示す証拠も、まだないと思います。あまり歯 切れがよくなくなってしまうのですが、西南日本弧に関しては、なぜここに火山が存 在するのかという問いは、実は第一級の問題でありながらも、なかなかよいモデルが できていないというのが現状です。東北日本弧に比べてまだデータが足りないこと、 地帯構造が複雑であること、研究者人口が少ないこと、などが原因だと思います。と いうことは、逆に、この地域には、まだたくさんの美味しいテーマが転がっている、 ということにもなります。若い人たちにも、是非研究に参入して欲しいなと、私はい つも思っています。
 (1/15/02)

鎌田浩毅(京都大学・総合人間学部・地球科学分野)


Question #2062
Q 鹿児島県にある口之島には弱い噴気があると聞いていますがなぜ活火山の指定がなされないのでしょうか。 (12/24/01)

本田三延:電気工事業:57

A 確かにそうですね.私も昨年,トカラ列島の火山の地熱分布を測定する調査を京 都大学防災研究所の方といっしょに行いましたが,口之島の山頂部には弱い噴気 がありました.気象庁の活火山の定義にしたがえば,過去2000年以内に噴火 した火山,あるいは地熱兆候を持つ火山に該当しますから活火山でなくてはいけ ないはずです.昨年,気象庁の方に問い合わせたところ,気象庁では現在活火山 の定義を見直す作業を行っており,その中で口之島も活火山とみなされることに なるであろうとの返事でした.
 (1/15/02)

鍵山恒臣(東京大学・地震研究所・火山センター)


Question #2014
Q 私は登山が好きでよく登っていますが、日本の火山をみてみると、九州南部と東北北部、北海道に巨大なカルデラを持つ火山が多いように思います。これには何か理由があるのでしょうか。よろしくお願いします。 (11/16/01)

みのむしころりん:中学校教員理科:44

A
 大型のカルデラは,数10からから数100km3にもおよぶ大量の珪長質マグマ(流紋岩 質やデイサイト質の珪酸成分に富むマグマ)がいちどきに噴出することで形成されま す.すなわち,地下に大型の珪長質マグマ溜まりが存在することが必要です.こうし た大型のマグマ溜まりに大量のマグマを溜めるためには,大量のマグマを短時間に生 成するか,少量のマグマを時間をかけて少しずつ溜めてやるかのどちらかのプロセス が必要です.1億円を手に入れるのに,宝くじで一発で当てるのか,長年かけてこつ こつ貯めるのかの違いです.大型カルデラの分布する,南九州や東北北部,北海道の 地下には,これらのどちらかの条件が備わっていることになります.
 一発で当てたのか,こつこつ貯めたのかをチェックする方法もあります.マグマの 長期間にわたる生成率を調べてみるのです.前者の場合には,大型カルデラ火山のマ グマ生成率は一般の火山よりも大きくなるはずです.マグマ生成率を直接知ることは 難しいので,マグマ噴出率がほぼ生成率を代表していると考えて両者のそれを比べて みますと,ほとんど違いのないことがわかります.つまり,一発当てたと考えるより も,長い時間をかけてこつこつ貯めたと考えた方がよさそうなのです.これは,大型 カルデラ火山の成因も,長い休止期を経た火山の方が大規模な噴火をする(悪いやつ ほどよく眠る)という火山についての一般的な事実の延長上にあることを意味してい ます.それでは,こうした地域ではどうしてマグマを溜めやすいのでしょうか.大型 カルデラは概ね平坦な場所にあって,高く隆起した山脈の上などにはみられません. 活断層の変位などからこれらの地域の長期間にわたる平均的な地殻の変形速度を見積 もってやると,その値が小さいことがわかります.変形速度が小さいということはそ の場所が比較的静穏な環境に置かれているわけで,そのためにマグマが溜まりやすい のかもしれません.
 (01/11/25)

高橋正樹(日本大学・文理学部・地球システム科学科)


Question #2008
Q 初めまして,私,小学校で教員をしているものですが,この度,学習発表会において,クラスの子が,地層について発表することになりました。栃木県鹿沼市の小学校だけに,子供たちから,鹿沼土はどのようにしてできるのかと質問を受けました。だいたいのことは,分かっているのですが,人前で子供が発表するだけに,しっかりした答えをしたいと思います。申し訳ありませんが,鹿沼土のでき方について,詳しく教えていただけないでしょうか。 (11/12/01)

荒川一志:教員:32

A
 鹿沼土は粒の揃った小型の軽石からできています.軽石粒の大きさが鉢植えなどに 適当な大きさであることから,園芸用として広く利用されています.粒が揃っている ことを分級がよいあるいは淘汰がよいといいます.こうした分級のよい軽石の層は, 軽石が空から降下することによってできるので,降下軽石層とよばれます.鹿沼降下 軽石は3.2万年前に赤城火山の最後の本格的な爆発的噴火によって形成されたもので す.このときの噴火の総噴出量は10km3を越える膨大なもので,現在の赤城火山の山 頂カルデラは,この噴火によって形成されたものと考えられています.噴火時には噴 煙柱がおそらく1万m以上もの空高く噴きあがり(プリニー式噴火といいます),偏西 風に流されて東へとたなびきました.この噴煙から大量の軽石が地表に降下し,距離 にして50kmあまり離れた鹿沼や宇都宮では100cm以上,100km以上離れた水戸でも 40cmもの厚さで堆積しました.当時の赤城火山の東側の北関東地域,鹿沼・宇都宮か ら水戸にかけては,白い軽石によって一面に厚く埋められた不毛の世界となっていた ことになります.この噴火は1991年に起きたフィリピンのピナツボ火山の大噴火に匹 敵する大規模なものでしたが,火砕流の噴出は伴いませんでした.
 (01/11/25)

高橋正樹(日本大学・文理学部・地球システム科学科)


Question #2004
Q こんにちは。

この夏、富士山に登ったのですが、須走下山道を降りて行くと、砂走りがおわったあたりに、
富士山の山頂火口のミニチュアみたいな大きなくぼみがありました。
それに対して、いっしょにいった仲間の間で、これは、「側火山の火口だ」
「いや、単なる侵食された穴だ」という意見に分かれました。
これが側火山かどうかはともかく、宝永火口以外に、見てわかりやすい
(ついでにできれば見にいきやすい)側火山はありますでしょうか。
よろしくお願いします。 (11/09/01)

富士山クライマー3世:会社員:29

A
 富士山は宝永火口以外にも100以上の側火山があることが知られています。富士山 の側火山の多くはスコリアという黒い火山礫が積み重なった小さな山で、スコリア丘 と呼ばれています。この他に山頂火口や宝永火口のよう大きな穴だけが開いた爆裂火 口と呼ばれる火口もあります。スコリア丘は北西麓では大室山、南東麓では日本ラン ド遊園地の中にあるカンス山が大きなものです。このうちカンス山は火口周辺が自転 車周遊道路になっていて火口一帯の断面を観察することができます。スコリアよりも さらに柔らかい溶岩の破片(スパター)が積もった丘をスパター丘と言いますが、富 士スバルラインの御庭というところにはこれらのスパター丘がいくつも連なっている 様子を観察できます。御庭の駐車場からは山頂側にハイキングコースがあり、これら のスパター丘とその中の火口を見ることができます。側火山の火口からは火山礫やス パターが周辺に積もっていたり溶岩が流れ出しており、火口から吹き出した噴出物が 有るか無いかが火口を見分ける鍵となります。
 ご質問の須走口下山道の穴ですが、この穴の断面には溶岩や雪崩で流されてきてた まった砂礫が重なっているものの、この穴から吹き出したと思われる噴出物は穴の周 辺で見つかりません。このため、この穴は浸食によりできた谷と思われます。
 さて、富士山の側火山の多くは富士山の北西ー南東方向に分布しますが、この穴の ある富士山の北東斜面にも多数の側火山があることが最近判ってきました。しかし、 これらの側火山がいつどのような噴火をしたのか、もっと他の地域にも側火山はない のか、といった点は判っていません。
 日本一の富士山は調べれば調べるほど新たな疑問が生まれる不思議な山でもありま す。
 (01/11/21)

宮地直道(野菜茶業研究所・葉根菜研究部・土壌肥料研究室)


Previous 10-QAs Next 10-QAs