火山についてのQ&A集

Question #2218
Q 磐梯山の岩屑なだれ堆積物や地形を見る機会があり、火山のエネルギーにびっくりした次第です。ところで、このような岩屑なだれはいろんな火山で起きた現象と思いますが、磐梯山に近い吾妻連峰でも大規模な岩屑なだれは知られているのでしょうか。吾妻連峰の大まかな形成史と岩屑なだれ堆積物の概要が判りましたら教えてください。 (05/07/02)

初老のやまひめ:会社員:50

A 初老のやまひめ様
 岩屑なだれ,という用語を知っておられるということは,かなり火山の地質や噴火 現象に詳しい方だと思います.すでにご存じでしょうが,岩屑なだれは,火山噴火が 直接,間接的な引き金となって,すでに存在する火山体を大規模に崩壊させ,バラバ ラになった山体構成物,つまり,溶岩や火砕岩の破片が,なだれをうって流れ下る現 象を指します.このような現象は,歴史上の噴火でもしばしばみられます.1792年, 雲仙火山の眉山の崩壊によるものは,島原大変,肥後迷惑と呼ばれる,大津波を引き 起こしました.また,1980年アメリカ合衆国のセントへレンズ火山で起こったものは ,当時,全世界の人たちの目を釘付けにしました.初老のやまひめさんもご記憶のこ とと思います.
 さて,吾妻連峰についてですが,火山体としてみますと,東吾妻火山,中吾妻火山 ,西吾妻火山の3火山が東西に配列したものと見ることができます.茨城大学の火山 研究グループ(鴨志田;1991手記,野口;1995手記,齋藤;2002手記)でも10年近く 地質や岩石を調べていますが,今のところ明らかになっている形成史は次のようなも のです.今後,正確な年代測定値がでると,もっと説得力のある「改訂版」が出せる と思います.
 約150万年前頃,東吾妻火山の東部に初期の山体が形成されていました.東吾妻火 山北東部の形成は60万年前頃まで続きました.一方で,60万年前頃,中吾妻火山では 継森および箕輪周辺の山体,西吾妻では西吾妻,中大巓,籐十郎の山体が形成されま した.50-40万年前頃には東吾妻火山では,今のつばくろ谷から高湯温泉あたりの地 形を作っている溶岩流や,東吾妻山ができました.この時期,西吾妻火山では西大巓 の下部が形成されています.ついで約35万年前頃,東吾妻火山では高山周辺の山体が でき,中吾妻火山では東大巓や中吾妻山が形成され,西吾妻火山では西大巓の山頂が できました.この頃に中吾妻,西吾妻両火山は活動をほぼ終息しました.30万年前頃 ,東吾妻火山の一切経山が形成されました.その後,28-8万年前の間のいつかに今の 浄土平を中心に,東側に開口する大規模な山体崩壊が起こり,岩屑なだれが,今のあ づま競技場などがある東麓に下りました.そして,8万年前頃から浄土平周辺を噴出 口として,溶岩や火砕物の噴出が起こり,約5千年前には吾妻小富士や桶沼ができま した.
 上で述べましたように,岩屑なだれは東吾妻火山の大崩壊で東麓に堆積物を残しま した.しかし,その後の堆積物によってほとんどが埋積されてしまい,直接露頭で観 察できるところはほとんどありません.10年ほど前,東麓の竹の森産廃場建設時に地 表面下10数メートルの所にこの岩屑なだれによると思われる堆積物を見つけました.
 (05/08/02)

藤縄明彦(茨城大学・理学部・地球生命環境科学科) --


Question #2210
Q 先日、家族で阿蘇に行きました。外輪山がカルデラの外側だと知らなかったのですが闡蛯謔B感動しました。噴火・爆発して今のカルデラになってしまう前の阿蘇山は、富士山より高かったと聞きます。どれぐらいの高さだったのですか?私だけでなく、子供も知りたがっていますので、教えていただければありがたいです。 (04/30/02)

さむさむ王子:子育て中の主婦:41

A 文字化けして一部判読できませんが,No. 1996の質問と同じですのでその回答を参照 してください.
 (5/01/02)

ホームページ管理者 --


Question #2209
Q 火山ができる場所としてプレートが沈み込むところがあるのは理解できるのですが、海嶺ではできないのですか?世界の火山分布は沈み込み帯にはあるのですが、海嶺には分布していないように思います。アイスランドなどのように海嶺が大陸にむき出しになっているところは火山が並んでいるのように思うのですが? (04/30/02)

一児の母:主婦:35歳

A まさにお考えになったように,日本のようなプレートが沈み込む場所(沈み込み帯) におけるよりも,海洋プレートが生産される海嶺の方がマグマの活動はずっと盛んで す.海嶺の軸に沿って,無数と言っていいほどの火山の列が数珠状に並んでいます. これらの火山の内,陸化している場所がアイスランドなどのように特殊な場所に限ら れるので思い違いされたのではないですか.
 (5/01/02)

中田節也(東大・地震研・火山センター) --


Question #2206
Q 九州の山、多良岳、金峰山は火山と聞いたのですが、いずれは噴火するのでしょうか?調べてみたら何千年も噴火していないと書いてありました。もう死んでいるのですか?また、阿蘇の米塚という形が整った山の火山っぽいのですが...。 (04/29/02)

境 健太郎:フリーター:25

A
 長崎県の多良岳と熊本県の金峰山は,どちらも十万年以上も前に活動を止めていま すから,再活発化する可能性はまずありません.「死火山」や「休火山」という言葉 は,活動を一時的に停止している若い火山に使うと誤解を与えることがあるので最近 では使いませんが,多良岳や金峰山は死に絶えた火山と言えるでしょう.
 米塚は活火山である阿蘇山(中央火口丘群)の火口の一つです.溶岩のしぶきであ る火山弾やスコリア(多孔質の黒っぽい溶岩礫)が火口の周辺に降り積もってできた 丘(スコリア丘)です.
 (5/01/02)

中田節也(東大・地震研・火山センター)

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Question #2187
Q 初めて、質問させて頂きます。今、学校の宿題で、楯状火山特にキラウエアとマウナロアについてリサーチしています。
論文で、この二つの火山の噴火スタイルの違いを記述しなければならないのですが、インターネット上の情報からは、二つとも同じような特徴(例:パホイホイなど。)のような説明しか見当たりません。
キラウエア火山と、マウナロア火山の噴火の特徴に何か決定的な違いは無いのですか?
教えてください。お願い致します。

(04/06/02)

kuni:学生:26

A
 キラウエアとマウナロアはともにハワイ島にある玄武岩の火山で,溶岩の性質も噴 火の仕方もよく似た火山です.場所,大きさや年齢以外に特に大きな違いはないとい っていいでしょう.質問にあるように,両者の決定的な違いを探せという「宿題」で すか?もしそうならこのような質問コーナーに安易に頼らず自分で答えを見つけるこ とです.ハワイの火山に関する英語のホームページは充実していますからそちらを真 っ先に調べることです.
 マウナロアは標高4000m以上もあり,深さ4000mを越える海底からそびえている巨 大な火山です.キラウエアはマウナロアの斜面に寄りかかるように成長したより新し い火山です.いずれも盾状火山ステージと呼ばれる,ハワイ火山の主要な成長時期に あると考えられいます.両火山とも,山頂火口のほかリフトと呼ばれる山頂から長く 伸びる割れ目帯から噴火することが多く,地表を流れる溶岩は粘り気が非常に低いた め,パホイホイやアアと呼ばれる溶岩を作ります.パホイホイ溶岩は,皿の上に少量 こぼした蜂蜜のように,表面が平らで先端が水風船のような形をした房状の頭部を持 ちます.ちょうど味付け海苔を張り付けたような色とつやをしています.パホイホイ 溶岩が流れている間に温度が低下して粘り気が増すことや,崖などに近づき流れる斜 面が急になった時には,溶岩がちぎれてトゲトゲの表面からなるアア溶岩へと変わり ます.
 (04/07/02)

中田節也(東京大学・地震研究所・火山センター) --


Question #2179
Q マグマの成因についての質問です。

 中学校で、理科を教えています。マグマの成因について、プレートの沈み込みで陸のプレートと海のプレートの圧力などによる摩擦が原因だと思っていたのですが、最近以下のような説を聞きました。

「海水が沈み込むプレートといっ
しょに運ばれ,水のためにマントルの融点が下がって液体になる。」

マグマの成因に、プレートにしみ込んだ海水が影響していたという説は初めて聞きました。
勉強不足で、新しく正しい知識を子供達に伝えたいと思っています。この説の詳しい説明と、できればこの説をわかりやすく書いた文献などありましたら教えてください。 (03/23/02)

にらいかない:中学校教員:37

A
 以前にはプレート間の摩擦熱という説がありましたが,最近ではあまり重要視され ていません. それは,仮に摩擦で多少温度が上がっても,こんどは高温になった部分の流動性が高 まるので, 摩擦自体が小さくなってしまい,プレートの沈み込み帯でのマグマ生産に見合うだけの 十分な摩擦熱を生じさせるのか困難だと思われるからです.


 最近では,水の存在によって岩石の融点が下げられているという説のほうが一般的 です. 地下の高い圧力のもとでは,水が豊富に存在すると岩石の融点は数百度も低下します. 地下100kmあたりのマントルの平均的温度は1300〜1400度程度で,水が存在しない 場合には,マントルの岩石は融けることはありません.しかし沈み込んだ海洋プレー トから 脱水によって大量の水が供給されると,岩石は容易に融けることができるのです.


 島弧で噴出しているマグマについては,海洋プレートの真上のマントルの岩石が融 けてできた ものの関与と,沈み込んだ海洋プレートの海洋地殻部分が融けてできたものの関与と が認識され ていますが,いずれにせよ,岩石の融解には海洋プレートから放出された水が大きな 役割を担って いると思われます.

Q&Aの#289にも多少関連することが書いてあるので,そちらもご覧ください.


 参考となる文献としては, ・岩波ジュニア新書 「大地の躍動を見る:新しい地震火山像」 山下輝夫編著 の第7章が最適だと思います.やや専門的になりますが, ・東京大学出版会 「沈み込み帯のマグマ学」 巽好幸著 にも詳しい説明が述べられています. (04/01/02)

安田 敦(東京大学・地震研究所・地球ダイナミクス)


Question #2174
Q 私は、高校2年になるものです。春休みの宿題で北海道の自然についてレポートを書かなければいけません。そして、私は大沼湖にしたのですが・・・・。
大沼湖は、駒ケ岳のカルデラ湖ですよね??(違ったら、訂正してください)
で、大沼湖の出来方について教えてください。調べてみたのですが出てないので、質問します。大沼湖でなくても、カルデラ湖の出来方を教えてください。

(03/16/02)

ひろこ:高校生:16

A 「大沼湖は、駒ケ岳のカルデラ湖?」という質問ですが,答えは「いいえ」です.
 大沼のでき方は駒ヶ岳の火山活動に深く関係しますが,カルデラ湖ではありませ ん.火山から流れてきたもの(火砕流,岩屑なだれ,泥流)によって川がせき止めら れてできた堰止め湖です.大沼がいつから堰止め湖として存在していたかは解明 さ れていませんが,幾たびもの駒ヶ岳の噴火によってせき止められ,今から約350年 前に現在の形になったと考えられています.駒ヶ岳は西暦1640年7月31日(寛 永17年6月13日)に,約5000年ぶりに大噴火を起こし,山が大きく崩れまし た(山体崩壊).崩れた山は南(大沼の方向)と東(鹿部の方向)に流れ下り,流れ 下った堆積物が川を堰き止め,大沼,小沼,じゅんさい沼が形成されました.大沼周 辺に点々と分布する小さな丘はそのときの火山体の崩壊物がたまった時にできる特徴 的な地形です.
 大沼と同じようなでき方をした堰止め湖は磐梯山の1888年の火山体の崩壊によ ってできた檜原湖,小野川湖,秋元湖,五色沼などがあります.
 カルデラ湖は噴火などによって陥没した火山性の凹地(カルデラ)の中に水がたま って形成された湖です.北海道では摩周湖,洞爺湖,支笏湖などがカルデラ湖です.
 (3/27/2002)

吉本充宏(東京大学・地震研究所・火山センター) --


Question #2171
Q 火山性地震といわゆる普通の地震との違いをご教示ください。普通の地震では形の上でもP波・S波・表面波が認められといわれますが、火山性地震の場合はどのような特徴があるのでしょうか。火山性地震には低周波地震と高周波地震があると聞きました。どのようにしてそれらが発生するのでしょうか? (03/09/02)

山親父:公務員:54歳

A
 多くの場合、地震記録だけからでは「火山性地震」といわゆる「ふつうの地震」は 区別できません。両方ともP波とS波と(場合によっては表面波も)が発生しますし、 深い場所で起きた場合には記録の上でP波、S波がはっきりと区別できますから、どち らも同じような波形が記録されます。
 「火山性地震」と「ふつうの地震」との区別はその地震が発生した場所を手がかり にします。つまり、火山とその近くの特定の範囲内で起きた地震を「火山性地震」、 それ以外の範囲で起きた地震をいわゆる「ふつうの地震」とします。さらに、火山と その近くの特定の範囲の広さというのは、火山ごとに経験的に決められています。
 冒頭で、「多くの場合....」と書きましたが、波形の特徴から「火山性地震」 とはっきりとわかる場合もあります。それは、火山の内部の浅い場所で地震が起きる 時です。このような時には地震記録の上でP波とS波、表面波との区別がつきにくくな ってくることがあります。このようになったら地震が起きた場所を決められなくても 間違いなく「火山性地震」です。「???」と思われるかもしれませんが、「火山性 地震」には「観測記録上の特徴だけでは区別できないタイプ」と「区別できる特徴を もつタイプ」とが複数あるのです。火山で地震観測をしているとこれらの種類分けで 悩むものなのです。
 それから、最近、富士山の深部低周波地震のことが話題に上ることが多いですが、 低周波地震と高周波地震との区別はもっぱら地震記録にあらわれた周波数(一秒間に ピークがあらわれる回数)をもとに分類されます。記録された震動の周波数が、通常 に記録される例より目立って低い場合に「低周波地震」として扱われます。低周波地 震と高周波地震という2つのタイプは震源の動き方の違い(たとえば地下の岩盤の一 部が壊れる速さ)を反映していると考えられています。ふつうの例より時間をかけて 震源がゆっくり動くと低周波地震になります。震源にゆっくりとした動きが出る理由 は地下のマグマなどの流体と関連したものと考えられています。
 (3/27/2002)

筒井智樹(秋田大学・工学資源学部・地球資源学科) --


Question #2169
Q 世界最大の活火山はどこにあり、どんな名前なのでしょうか?
以前NHKの番組で、アメリカの国立公園…確か、ノースカスケード国立公園だと思ったのですが、その国立公園の地下全体に超巨大なマグマ溜りがあり、これが60万年周期で爆発しているとききました、もしこれが本当ならおそらく世界最大の爆発エネルギーを秘めているのではと思っているのですが、本当にそうなのでしょうか?
さらにこの様な、超の形容詞がつくような火山が世界に何ヶ所かさらに存在していると聞きました、その名前と場所が知りたいです。 (03/07/02)

LonLon:フリーター:26

A
 おたずねの件は,ワイオミング,アイダホ,モンタナ州にまたがるイエローストー ン国立公園のことであると思います.そこでは50〜80万年おきに規模の大きな噴火が 起こり,そのつど約300〜2500立方キロメートル以上もの軽石や火山灰が放出されま した.また,これらの火山噴火のたびに直径20〜50キロメートル以上の大きさの陥没 カルデラが出現しました.地球上で,ここ2百万年間におこった火山噴火のうち,最 も規模の大きい部類に入るであろうと考えられています.イエローストーンの地下に は現在でも直径が10キロメートルを大きく上回る大きさのマグマ溜まりがあると推定 されています.
 一方,インドネシアのスマトラ島北部にあるトバ火山はわずか7万4千年前に大噴 火をしました.その時に噴出された火山灰や軽石の量は2800立方キロメートルにもな ると考えられています.トバ火山にも巨大なカルデラ(100×40キロメートル)が存 在しています.ここでもやはり地下に巨大なマグマ溜まりが存在しているでしょう.
 (3/26/2002)

中田節也(東京大学・地震研究所・火山センター) --


Question #2163
Q はじめまして。私はイギリスで暮らしています。家の周辺にはに黒曜石(obsidian)のような石が多く見られます。イギリス人に聞いたところ、それは「flint」(火打石)だと言っています。見た目は白っぽく丸みを帯びた石ころなのですが、割ると中はきれいな黒いガラスのようで、エッジはシャープです。昔は石器に使われていたらしいのです。黒曜石と火打石は全く別のものなのでしょうか?あと、黒曜石はマグマが急に冷えてできたものと聞きましたが、ここ(suffolk州)も昔は火山活動があったという事ですか?

(02/28/02)

なまこ:馬使い:29

A イギリスからのアクセスありがとうございます. suffolk州ということですし,flintということであれば,おそらく “チャート(chert)”ではないかと思います.特にチョーク層の中の黒色 団塊状チャートのことをそう呼びます.これらは堆積岩の一種で,石英の 微細な結晶の集合で非常に硬く,鉄などに打ちつけて火をおこすのに使われ ました. 黒曜石は,成分としてはチャートと同じく石英成分が多目の火山岩ですが, こちらは石英のような結晶ではなく主に急冷したガラスからなります. どちらも割ると非常に鋭いエッジが生じますので,石器の原材料として 広く使われました.ただ黒曜石のほうがやや柔らかく,加工はしやすかった ようです.

suffolk州があるイギリス・ブリテン島の南部は,主に中生代以降の 堆積岩からなり,火山岩は産出しません.ただイギリスに火山活動が なかったかというとそんなことはなく,若い火山こそありませんが, 大体バーミンガムからシェフィールドを結ぶ線より北西側には,ぽつぽつ と古い火山岩が見られるようになります. 特にスコットランドやアイルランドには第三紀の火山岩が見られ, アイルランドのGiant's Causewayは,玄武岩溶岩が作る柱状節理で 名高い場所です.このほか侵食され残った火山岩頚や岩脈の上に城が 建造されたりしています.
 (2/28/02)

川辺禎久(産業技術総合研究所・地球科学情報部門) --


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