火山についてのQ&A集 | |
---|---|
![]() ![]() | |
Q |
富士山の最近の噴火はいずれも側噴火だと聞きますがなぜなのでしょうか、もう中央火口からは噴火しないのでしょうか? また、マグマが上昇するためには重力に逆らわなければならないと思うのですが、そのためにマグマが上昇して噴火に至る限界高度というものがあるのでしょうか?
(06/23/02)
しろしろ:フリーター:24 |
A |
富士山の最近の噴火でどうして側噴火が多かったのかはあまりよく分かっていませ ん.マグマがいろんな方向に入って側噴火を繰り返しているうちに,ついにはマグマ の入る余裕がなくなって中央(山頂)火口から噴火せざるを得なくなるという考え方 もあります.富士山の長い歴史の中では,側噴火と山頂噴火を一定の長さで繰り返し て起きているようです.次の噴火が側噴火なのか山頂噴火なのかははっきり分かりま せん. マグマの上昇限界についてですが,原理的には,地下でマグマのたまっている場所 (マグマ溜まり)の「マグマの圧力」と,マグマが溜まりから火口までつながって作 る「マグマ柱」が作る荷重(負荷)とが釣り合う高さまで,マグマは上昇することが できます.この高さは,「マグマの圧力」の周囲の岩石より余分に持つ圧力(過剰 圧)と「マグマ柱」の密度によって変わります.標高が高い火山でも,マグマが泡立 つなどしてその密度が小さく(軽く)なればより高く上昇することができます. ハワイのマウナロアは標高4000mを越えてもマグマが勢いよく噴き出していま す.中部アンデスの火山は標高6000mを越えています.これは過去には6000 mを越えて噴火したことを物語っています.地球上ではこの辺が高さの限界でしょ う. (07/23/02) 中田節也(東京大学・地震研究所・火山センター) -- |
![]() ![]() | |
Q |
最近、新聞等で活火山の定義が変更されると記事が載っていました。 そこで興味を持って、お尋ねしたいのですが。 現在から過去1万年前の間に活動した火山となってますが、何時活動 したのか不明な火山はどのようになるのでしょうか。 若い火山でも1万年前に遡って活動してなければ、活火山の対象から 外れるのでしょうか。 (06/15/02) 石見の住人:公務員:28 |
A |
気象庁では来年度から活火山の判定基準として、最新の噴火活動がおおよそ1万年以内
か否かとする予定です。噴火判定のためには、観測事例や古文書の記載がないときは
火山噴出物の噴火年代測定を行うことになります。しかし、噴出物の地質学的な調査
研究が不十分であったり、年代測定を行うのに適切な測定試料が採取しにくい場合に
は、地形などから判断して恐らく1万年以内に噴火があったに違いないが年代が求めら
れていないケースが出てきます。これらは今後調査研究成果が出てきたところで追加
認定されるでしょう。
今回発表になった気象庁の活火山の定義は、防災上の見地から今後火山噴火の可能性
のある火山を活火山として指定し、観測を行い防災対策を講じるためのものです。日
本の火山は噴火と噴火の間の休止期間が比較的長いケースが多いのですが、1万年まで
遡って観測対象としておけば、活火山としなかった火山が噴火してしまうケースは殆
どないと思われます。
宇井忠英(北海道大学大学院・理学研究科・地球惑星科学専攻) -- |
![]() ![]() | |
Q |
先日礼文島観光に行ってきました.そのとき「桃岩」という桃の形をした岩を遠くから見ましたが,その裏には高增vというたまねぎの皮状に割れ目の入った丸い形の岩が露出していました.溶岩かマグマが冷えて固まったものだと思いましたが,崖になっていて近づけませんでした.実際あれはなんだったのでしょうが?どなたかご存知の方教えてください.
(06/11/02)
ちたん:会社員:29 |
A |
礼文島の桃岩は、御質問に書かれているように、マグマが冷えて固まったものです。
もう少し詳しく説明すると、粘性の高いマグマ(シリカに富むデイサイト質マグマ)
が冷えて固まったものです。
粘性が高いマグマが地表に噴出すると、お饅頭のような形のドームを作ります。こ れが溶岩ドームです。九州の雲仙普賢岳の噴火(1990-1995年)で形成された平成新 山や、北海道の洞爺湖の近くにある昭和新山、屈斜路湖にある硫黄山などが、有名な 溶岩ドームです。 さて、礼文島桃岩のドームは、これらの溶岩ドームと少し異なります。普通の溶岩 ドームは、マグマが地表に顔を出してから成長しますが、桃岩はマグマが地表まで到 達しないで「地下」でふくらんで成長したドームです。桃岩の場合、正確に言うと「 地下」ではなく、「海底下」でした。 桃岩ドームは、礼文島がまだ海の底だった頃(1300万年前)、浅海の底に堆積して いた泥や砂の中にマグマが貫入し、ドームの内側からふくらむように成長したことが 明らかにされています。ドームの形成・固結後、かなり時間がたってから、この地域 は隆起し、礼文島になりました。ドームのまわりの泥や砂は柔らかいので浸食され、 硬いドームだけが残ったのです。 桃岩の「桃」の形はドームの外形そのものです。桃岩の西側(裏側)は浸食され、 ドームの内部(縦断面)がむき出しになっています。「丸い形の岩」はドームを輪切 りにした面です。この面に出ている「たまねぎの皮」は、ドーム内部の流理構造(マ グマの流れでできた縞模様)です。このように内部構造がむき出しになっているドー ムは世界的にめずらしく、地質学的に貴重です。 (06/13/02) 後藤芳彦(東北大学・地球工学) -- |
![]() ![]() | |
Q |
突然ですが、マグマと溶岩とマントルと海洋プレートの関係を教えてください。 特に、マグマとマントルの違いが、良く分からないのですが・・・・・ あるHPで、「中央海嶺では、実に地球上で発生するマグマの80%が生産されています。」という記載があったのですが、マグマはマントルなんでしょうか。 中央海嶺とは、プレートが裂けて、マントルが見えているところなのでしょうか。 マグマが冷えると、即プレートになるのでしょうか。 固さだけの違い?なのでしょうか??? (06/05/02) りょん:会社員:34 |
A |
基本的には,あたたかくてやわらかいマントルと冷たくてかたいプレートという認 識で いいのですが,マグマのことを考える場合には,若干の修正が必要です.
安田 敦 (東大・地震研・地球ダイナミクス) |
![]() ![]() | |
Q |
富士山の側火山である宝永山について二点ほど質問です。 その1 以前宝永山に登った時に、その巨大な火口と同時に、山頂付近の赤い岩が印象に残りました。 後で調べたところ、その赤い岩は古富士火山の一部だという記述を目にしました。 ということは、宝永の噴火以前にも富士山の山腹には宝永山の元になるような出っ張りや 側火山があったということでしょうか?それとも宝永山は宝永の噴火の一度で形成され、 赤い岩は噴火に起因する何らかの原因で押し上げられて地表に現れたのでしょうか? もしくは、その赤い岩は古富士火山とは全く関係の無いものでしょうか? その2 宝永噴火の後で、宝永火口で噴気などの何らかの火山活動はあったのでしょうか? また、宝永火口から再び噴火が起こる可能性はあるのでしょうか? 以上ですがどうかよろしくお願いします。 (05/30/02) 静岡人:学生:18 |
A |
(その1)
たしかに宝永山に露出する赤い岩(赤岩)は,現在の富士山(新富士火山)をつく る噴火堆積物とは特徴の異なる赤褐色火山れき・火山灰層からできており,古富士火 山の一部と考えられています.この点については,学者の間にあまり異論はないと思 います. 宝永山自体は,さまざまな古記録に「噴火でできた」「噴火の後に見つけた」など と書かれています.また,地形的にみると,宝永火口のうちの初期にできたものの一 部が,宝永山の隆起によって変形しているように見えます.以上のことから,宝永山 は宝永噴火の最中に隆起してできたとする解釈が一般的です.しかし,かたや宝永火 口で爆発的な噴火をしながら,そのすぐわきで隆起を起こさせるメカニズムが不明な ので,宝永山という出っ張りの成因についてはまだ再検証する余地があると思ってい ます.
(その2)
小山真人(静岡大学・教育学部・総合科学教室) -- |
![]() ![]() | |
Q |
はじめまして。月山、鳥海のふもとに住んでいるものなのですが見上げる山についてその形成の過程を知りたく思い投函させていただいた次第です。月山は現在の山頂部から西に大きく崩れて旧山頂部が消失した成層火山であるように見えます。また鳥海山も北側に大規模な山体崩壊を思わせるカルデラが見られます。資料をみて勉強もしたのですがいまいち昔の姿が想像できません。これらの山が最大であったときはいったいどのような姿をしていたのでしょうか?また月山は死んでいるという話を聞きますが死んだ山とはいえ、かつてマグマの上昇を許したプレートの弱い部分であるはずです。今後その場所で再びマグマの上昇が起こることはないのでしょうか?
(05/28/02)
中野:学生:21 |
A |
まず鳥海山についてですが、火山の層序を基に復元してみますと、最大時には現在 よりも山頂がやや高く、今よりもさらにきれいな円錐形をしていたと考えられます。 約50万年前にそのような姿だったと考えられます。月山の最大の地形的特徴は、山頂 部から北西に開く崩落型のカルデラといって良いでしょう。ご指摘のように、これは 旧山頂部が崩壊した結果でき上がったものです。このほかにも大小様々な規模の崩落 の痕跡が認められます。一方、月山は山体のほぼ中央を北北西~南南東に走る断層上 に噴出しており、形成後この断層の運動によって東部が相対的に約 300 m盛り上がっ たものと思われます。さらに、月山には複数の噴火口が存在していたことが推定され ています。よって最大の時の姿を復元するのは難しいのですが、やや強引に想像して みますと、最盛期には現在の山頂のやや西方に幾つかの小高い山頂を持ち、その付近 から全方向になだらかな裾野を持つ山容だったのではないかと考えられます。月山の 最後の噴火活動は約30万年前です。また、山体は大規模な断層によって断ち切られて います。よって月山をもたらした地下のマグマは既に冷え固まっている可能性が高い と思われます。新たなマグマが上昇してくる可能性は否定できませんが、現在のとこ ろ全くそのような兆候はありませんので安心してください。 (06/06/02) 伴 雅雄(山形大学・理学部・地球環境) -- |
![]() ![]() | |
Q |
すいません、もう一つ質問します。その他の秋田県内で乳頭山、田代岳、藤里駒ケ岳等、形成史構成などの火山についての文献等について何かわかりましたらお願いします。あと秋田大の林先生、10年くらい前になりますがその節(卒業論文、寒風火山の件、東北学院大94.3卒)にお世話になりました。
(05/24/02)
木村造園:自営:30 |
A |
ああ,あの時の!!お元気でお暮らしのようでなによりです.
そうそう,先程のNO. 2254の質問では大事なことをお答えすることを忘れていました.
日本の火山カタログをご覧ください.
日本火山学会から販売されていますが,web版でもほとんど同じ内容を見ることがで
きます.
http://www.geo.chs.nihon-u.ac.jp/tchiba/volcano/index.htm
ここの個別火山データのところに文献が入っています.
ぜひ,ご参考に.
林信太郎(秋田大学・教育文化学部・地学) -- |
![]() ![]() | |
Q |
秋田県の火山について質問します。主要な火山にについては各種文献により形成史が明らかにされていますが、「森吉山」「八幡平」については見受けられないように思います。構造、形成史についての文献の所在、閲覧出来る図書館などわかりましたら教えてください。秋田大の林信太郎先生ならご存知でしょうか?
(05/24/02)
木村造園:自営:30 |
A |
木村造園さん,こんにちは.御指名ありがとうございます.林です.
「森吉山」「八幡平」ですね,両方とも文献がありますので御紹介いたします. 森吉山はたいへん古い火山です.北大の中川さんの昔の仕事の,中川 光弘 (1983) 森吉火山の地質と岩石.岩鉱 ,78,197-210.ならたいていの大学図書館にあるはず です. 須藤 茂, 板谷 徹丸, 向山 栄 (1989) 森吉山火山噴出物の年代と古地磁気(演 旨).日本地質学会第96年学術大会講演要旨 ,527-527.は入手は難しそうです ね.
「八幡平」は,須藤茂(1992)5万分の1 仙岩地域中心部地熱地質図説明書. 特殊
地質図(21-5),地質調査所,73p.がもっとも楽に手に入るでしょう.
八幡平の最近の火山活動については,最近までその存在が疑われていました,しか
し,最近,和知さんによって画期的な進歩があったのです.合同大会の講演要旨の
http://earth.jtbcom.co.jp/session/v032.html
の中のV032-P005の講演要旨をご覧ください.6000年前の火山灰が発見されていま
す.これで,八幡平は立派な活火山になったと言うわけです.
|
![]() ![]() | |
Q |
花崗岩について御教授願います。 ヨセミテ公園のハーフドームような花崗岩質のドームってどうやって出来たのですか。地下深くでドーム状に固まったのがたまたま地表に出てきたのか、それとも半溶解状態の花崗岩が上昇して潜在円頂丘のように成長したのでしょうか。よろしくお願いします (05/09/02) アマンタジン:医師:27 |
A |
ヨセミテ渓谷の地形は,氷河による浸食でできたものです.ハーフドームのような地
形も,基本的には氷河浸食によってできたものです.花崗岩自体は,今から約1億年
前ころの白亜紀という時代に,もっと深い場所でマグマがゆっくりと冷却固化してで
きたものです.それが,後の地殻変動で全体として隆起し,浸食を受けて現在の姿に
なったわけで,火山の溶岩ドームのようなものではなく,またマグマがドーム状に上
昇してきた貫入岩体そのものの形態を示しているわけでもありません.氷河の浸食が
作った,見事な自然の彫刻なのです.
(5/25/02) 高橋正樹(日本大学・文理学部・地球システム科学科) -- |
![]() ![]() | |
Q |
北海道の三松記念館で買った本を読んでいてふと思ったのですが、溶岩円頂丘や溶岩尖塔は火山の「フタ」になっているそうで、これが増えすぎ、やわらかい場所がなくなった時、火山は噴火する場所がなくなってしまうことになります。 「火山が死ぬ」というのは、火山にこの「フタ」を吹き飛ばす体力もなくなり、やがてマグマが完全に冷えて全部岩になった、という状態のことなのでしょうか? だとすると有珠山や箱根は、至る所にフタがありますので火山としての寿命が近づいているように思えますが、いかがでしょうか? (05/07/02) 取立人:会社員:30 |
A |
疑問のような形であちこちフタをされると確かにマグマは出口をふさがれた形にな ります.しかし,これは一時的なもので,マグマがこれをうち破るだけの圧力を地下 で蓄えさえすれば再び噴火は起きます.普賢岳の噴火でできた溶岩ドームは,昔の溶 岩ドームがいくつも積み重なった上にでてきました(月見団子を積み上げた上に別の 団子を乗せるように).マグマが火山のわざわざ高い場所や,いったん,フタをされ た場所をわざわざ好んで噴火するのも不思議な話ですね.しっかりしたフタだと思っ ているのが実は割れ目がたくさんあって隙間だらけなのかもしれません. その火山が永久に活動を停止する(火山が死ぬ)と言うことは,地下深部からのマ グマの供給が途絶え,火山直下の溜まりに残っていたマグマも冷え固まってしまうこ とでしょう.ご指摘のようなフタができてしまうことが火山が活動を永久に停止する 直接の原因ではないでしょう. (05/09/02) 中田節也(東京大学・地震研究所・火山センター) -- |