火山についてのQ&A集

Question #47
Q アメリカの見ず知らずの人から 隕石かどうか見てほしいというメールをもらいました 火山弾のようにも見えるので 専門家のみなさんの ご意見をいただければ幸いです http://www.geo.chs.nihon-u.ac.jp/tchiba/meteo/meteo.html に、写真と手紙があります (10/11/97)

Tatsuro CHIBA:会社員:40

A 上のような質問が,いつもは回答する側の千葉さんから寄せられました.興味 ある人はホームページの写真をごらんになって,感想・意見を千葉さん,ある いは,英語で,直接,元の質問者に寄せてみては. (10/15/97)

中田節也(東大・火山センター)


Question #46
Q 溶岩流には地表を浸食する力はありますか。 (10/2/97)

K.F.:学生:22

A 溶岩流は火砕流ほどには地表を侵食する能力はありません.しかし,がさがさ のスコリアなどからなる火砕丘を,重い溶岩流が削ったり,その下に潜り込 んで,火砕丘を決壊してしまうことがよくあります.そのようにして壊した火 砕丘の断片を溶岩の上に乗っけている玄武岩や安山岩の溶岩流がしばしば見ら れます. (10/18/97)

中田節也(東大・火山センター)


Question #45
Q 1979年の木曽御岳の噴火について、詳しい情報を知りたいと思います。 特に噴火活動の期間、火山灰の噴出状況、火山灰の影響を受けた地域などにつきまして 教えていただけませんでしょうか? また、この噴火について詳しくまとめてある資料などありましたら 教えていただきたいと思います。

(9/23/97)

ほやほや:学生:22

A
 御岳山は1979年10月28日早朝,山頂部地獄谷谷頭部にできた,全体として NW-SE方向にならぶ,長さ約500mほどの雁行状の割れ目から噴火を始めまし た.噴火は静かに始まったため明確な噴火開始時刻ははっきりしませんが,午 後2時ごろに最盛期をむかえ,カリフラワー状の噴煙を約500-600mの高さにま で噴き上げました.噴煙活動の中心は割れ目の北西端近くの地獄谷底の小火口 で,火山灰などの固形放出物はほとんどこの火口から放出されました.地獄谷 底の小火口の活動最盛期ごろには他の火口での活動が衰えはじめ,28日夕方に は地獄谷底の小火口からの噴煙も衰えだし,翌29日早朝にはほぼ噴火活動は終 了しました.この噴火による火山灰は御岳山から北東方向に分布し,約140km 離れた群馬県前橋市でも降灰が確認されています.火山灰は主に変質鉱物から なり,新しいマグマ由来のものは含まれないため,この噴火は水蒸気爆発であ ったと考えられています.
 御岳山には噴火記録がなかったため,この噴火は突然の噴火として驚かれま した.地質調査の結果,ここ約6000年間の間に少なくとも5回の同じような水 蒸気爆発が起きていることがわかっています.

参考文献 山田直利・小林武彦(1988) 御嶽山地域の地質,地域地質研究報告(5万分の一地質図幅),
     地質調査所. (9/26/97)

川辺禎久(工業技術院・地質調査所)


Question #44
Q 単成火山に興味があります。夏休み、小値賀島に行ってきました。壱岐 には温泉がありますが、小値賀島を中心とする周りの諸島には温泉が噴出していません。 阿武火山、青野山火山の周辺には温泉があります。また徳山北方にも あります。小値賀島に温泉がないのはなぜでしょうか? (9/22/97)

平木 英治:会社員:48

A
 温泉の成因には第一に熱源が必要です。日本の温泉分布を見てみると、ほと んどの温泉が第四紀や新第三紀の火山周辺に密集しているので、火山が温泉の 熱源となっていると考えられます(非火山性の熱源もあります)。平木さんが 挙げられた小値賀島、阿武火山、青野火山群(青野山)などは第四紀の火山 で、温泉の熱源となる母岩があることは十分に考えられます。
 また、温泉の分布は地質条件によっても支配されます。温泉水は、地下深く から断層や割れ目に沿って上昇して、湧出したり、浅所の透水性の地層に滞留 したりします。ですから、断層、割れ目、透水性の地層の有無や位置関係とい った局所的な地質構造によって温泉の分布はきまります。
 さて、小値賀島の場合、現在も熱源となりうる母岩が存在するかどうかはわ かりませんが、局所的な地質構造が影響して温泉が湧出してないことも十分に 考えられると思います。
 ちなみに、小値賀島から南に20kmの新魚目町(中通島)には新魚目温泉 という、単純泉(源泉での温度が27度)の温泉があるそうです。(この温泉 が平木さんの「温泉」に該当するかは分かりませんが...) (9/27/97)

森 俊哉(東京大・理学部)


Question #43
Q デカン溶岩台地やコロンビア川溶岩台地を形作っている溶岩は、いったいどのような 噴火形態によって地表に噴出されたのでしょうか。溶岩が玄武岩質溶岩ということで すから、ホットスポット型火山或いは海嶺に関連した火山活動のどちらかに似ている のでしょうか。よろしくお願いします。 (9/22/97)

武藤君:学生:22

A
 インドのデカン高原を作る溶岩(約6千5百万年前)や合衆国のコロンビア川 平原を作る溶岩(約千6百万年前)は,短期間に大量に噴出した玄武岩(一部は 玄武岩質安山岩)マグマで,洪水玄武岩とも呼ばれています.これらは,極 めて高い噴出率で生じたことになります.おそらく,いくつもの長い割れ目か ら,高温で粘度の低い溶岩が一斉に噴出したものと推定されます.現在の火 山では,ハワイやアイスランドの割れ目噴火がどちらかというとこれに近いと 思いますが,もっと規模の大きい派手なものであったと考えられます.
 なお,溶岩が玄武岩質であるからといって,場所がホットスポットや海嶺に 限られる訳ではありません.誤解のないように.
 最近の研究では,これらの洪水玄武岩は通常のホットスポットよりは巨大な マントルプルームが上昇したために生じたと提案されています. (10/15/97)

中田節也(東大・火山センター)


Question #42
Q 火山帯に属さない、単成火山というものがあると聞きましたが、具体的にはどのようなものなのでしょうか、なぜ、そのような火山ができたのでしょうか教えてもらえないでしょうか (9/18/97)

山口:会社員:34

A
 プレートテクトニクスの登場以来,「火山帯」という漠然とした言葉はあま り使われなくなりました.おそらく,日本付近のような島弧火山列(帯状の火 山密集帯)をさして「火山帯」と呼ばれておられるのだと思いますので,その 観点からお答えします.
 おっしゃる通り,通常の「火山帯」とは異なる中国,オーストラリア,フラ ンス,ドイツのような大陸の内部に点々と火山が分布する例があります.それ らの多くは単成火山です.
 単成火山は,1回きりの噴火(通常は数年以内)を起こし,それ以降は二度 と噴火しない火山のことです.単成火山の噴火の結果として,小さな(通常は 直径数km以内)火山体や火口が作られます.
 大陸地域に点々と分布する火山がなぜそこに存在するかについては,(1)そ の場所の地殻に引っ張りの力が加わっている,(2)その場所に地下深くから マントルの流れがわき上がっている,などの原因が考えられています.
 ただし,単成火山自体は大陸地域特有のものではなく,日本のような「火山 帯」にも存在します.お住まいの近くでは日本海側にある阿武単成火山群がそ の例です. (9/19/97)

小山真人(静岡大・教育)


Question #41
Q 化学組成が一定とした時、揮発性成分の含有量が高くなると、 何故マグマの粘性度が下がるのでしょうか。ただ、この事も、 気泡のサイズが大きい時に当てはまり、サイズが小さい時には 粘性度は逆に高まるということなのですが、その理由も教えて 頂きたいのですが。よろしくお願いします。 (9/16/97)

武藤君:学生:22

A 揮発性成分の含有量が高くなるとマグマ粘性度が下がるかどうかを考える場 合、その揮発成分がマグマに溶けているか、あるいは気泡として析出している かによって考え方がことなります。 (1)溶けている場合 マグマの粘性は、基本的にマグマ中の元素の化学結合の程度によってきまって います。マグマは液体ですので、マグマ中で元素は不規則な配置をしています が、ある程度元素同士が化学的に結合している状態にあります。化学結合の程 度は化学組成によって変化します。たとえば、珪酸が多くふくまれると相対的 に元素同士が強く結合してマグマの粘性があがります。揮発成分はマグマ中の 元素の結合を弱める性質があるため、揮発成分を多く溶かしこんでいるマグマ の粘性は小さい傾向があります。 (2)気泡がある場合 液体と気体の混合物の粘性というのは、その混合物に力(正確には応力)を加 えた時の変形のしやすさによって決まっています(それが粘性の定義)。言う までもなく、変形しやすいものほど粘性が小さいことになります。気泡のサイ ズが大きいときには気泡そのものが変形しやすいので、混合物全体としても変 形しやすくなり、実効的な粘性が低下します。しかし、気泡のサイズが小さく なると気泡は表面張力のために球形を保ったまま変形しないようになります。 この場合、混合物全体は、液体が変形する(気泡の間を流れる)ことによっ て、はじめて変形することができるようになります。このとき、気泡の存在は 液体の変形にとって邪魔な障害物でしかありません。したがって、混合物全体 の実効的な粘性は増加することになります。なお、混合物の実効的粘性につい ては、未だ研究の発展段階で、単純な公式があるわけではありません。ここで 説明したことは、定性的な概略であると理解してください。 (9/16/97)

小屋口剛博(東京大・地震研)


Question #40
Q 焼岳の噴火記録について教えてください。昭和37年の6月に噴火したと、聞いたのですが、その日時と、 その際の噴火規模を知りたいのですが。 (9/15/97)

陸のイルカ:会社員:35

A Murai,I(1962)AbriefnoteontheeruptionoftheYake-dakevolcanoof June17,1962.Bul.EarthquakeRes.Inst.,40,805-814. 焼岳は昭和37年(1962年)6月17日午後9時55分ごろ爆発しました.噴火は山体 北斜面にできた約700mほどの北東方向に伸びた割れ目から起こりました. 山頂から約600m北にあったかつての焼岳小屋は噴石で破壊され,管理人2 名が負傷しました.噴火は地下にたまっていた高温の泥水が沸騰して起こった 水蒸気爆発です.溶岩や火砕流はでませんでしたが,火山灰と噴石,それに泥 水の流れが起こりました.火山灰は,35km東の松本市内にもうっすらと積も りました.その後6月21日まで,雨などの影響もあって火山灰が泥流となっ て梓川にまで流れ込みました. (9/16/97)

三宅康幸(信州大・理)


Question #39
Q 栃木県の塩原で地質調査を行ったとき、同じひん岩の貫入岩でありながら川の右岸と左岸での亀裂の走向、傾斜や性状が明瞭に変わるのに興味を持ちました。 たぶん貫入時の冷却の状態の違いによるものと思われますが、貫入岩に関する本は少なく、 どうもわかりません。貫入岩の一般的な節理の入りかた。貫入岩に関する書物を教えてください。 (9/13/97)

コウジ:会社員:23

A
 節理はさまざまな成因でできますが,ひん岩なので,単純化のために冷却節 理に問題を限ります.冷却節理であれば,貫入岩という限定は必要でなく,高 温の岩体からの冷却節理一般の問題として,岩体の形と母岩の状況だけを考え ればよいでしょう.たとえば,陸上溶岩流とシルとをくらべれば,溶岩は片側 が空気,片側が岩盤に,シルは両側とも岩盤に接しているだけで,形は同じと 考えてよいはずです.
 特別に巨大でないかぎり,板状の岩体の冷却節理の代表は柱状節理です.こ れは,冷却とともに,(ある温度の)等温面が冷却面(岩体の周縁)から岩体 の内側に平行移動することによって作られるもので,泥田の表面にできた干割 れとよく似ていて,一旦割れ目ができれば,先端への応力集中でそれが内側に 延びてゆくのです.経験的には,岩体内部まで径10cmというような細い径の柱 状節理は,水中(あるいは水に飽和した未固結堆積物中)の岩体に限られま す.
 一般に冷却のrateが大きい岩体の縁近くでは,柱の径が細く,それらの何本 おきかが内側に向かって成長を続けることで,岩体内部は(周縁よりも太い) 一定の径の柱状節理が安定して作られます.溶岩等の水平の岩体であれば上下 から,岩脈であれば左右両側から,別々の柱状節理系が成長し,通常は中間で 両者が接合しているのを観察できます.溶岩等の水平の岩体で,上下の整然と した柱状節理に挟まれた中間に,屈曲した異様な節理帯が発達することがあ り,その場合には,上部(下部)コロネード(upper(lower)collonade)とエ ンタブラチャー(entablature)という術語が用意されています.これは,そ れまでの等温面の平行移動では温度勾配の向きが一定していたのに,両側から 等温面が近づくと温度に関してほぼ等方的な領域が生じ,そこでは,岩体の外 形によらない副次的要素によって節理が生じるためと解されます.
 柱状節理については,Spry(1962)*の論文があります.かなり古いもので,も っと新しい論文もありますが,これが最も一般的でわかりやすいと思います. 国内の実例としては,Aso-4火砕流堆積物の溶結凝灰岩についての記載が5万 分の1図幅「諸塚山地域の地質」にあります.
 冷却固結時にできた節理には,板状節理もあります.これは,流理に起因す る不連続面から発生するものと,岩体内の差動に起因する剪断応力によるもの とあるようです.一般に固結時に剪断応力が働くような条件では,冷却節理の 成長ももそれに影響されると思われます.注意すべきことは,冷却節理は収縮 による引っ張り応力の解放なので,解放がどんな方向の節理で実現されてもよ いことです.具体的には,岩体の外周部は柱状節理で包まれ,内部は板状節理 が発達し,中間の遷移帯はなく,ほとんど突然に両者が入れ替わるという例も ありました.
 ながながと書きましたが,上はすべて一般論です.ご質問だけでは現場の状 況がわからず,とても個別的な回答はできません.現実の節理は,上記の単純 化したモデルが複合してわかりにくいことが多いのです.岩体と母岩の関係が 最も重要ですが,現場での観察から理解に近づけばとてもうれしいことです.

*Spry,A.(1962) Theoriginofcolumnarjointing,particularlyinbasaltflows. Geol.Soc.AustraliaJour.vol.8,191-216. (9/22/97)

小野晃司(応用地質(株))


Question #38
Q 空震について再び質問なんですが、回答していただいた文章の中に各地点での衝撃圧は爆発エネルギーと火口からの距離によって大ざっぱに定まるとされているのですが、実際にはどのような関係があるのか具体的に教えていただけないでしょうか。 (9/3/97)

野元洋一:会社員:29

A
 爆発エネルギー量:Q(kgTNT)、火口からの実距離:R(m)、火口からのス ケール化距離:λ(m/kgTNT**1/3)とすると、cube-rootscaling則により、
  λ≒R/Q**1/3 が成立します。
 スケール化距離と衝撃圧(ΔP、bar)との間にはTNT爆発実験にもとづき、例え ば次のような実験式が与えられています。
  ΔP=6.91×λ**-1.69 ...  (ただし、ΔP≒0.2〜0.7、λ≒4〜8の間で成立する) (9/3/97)

谷口宏充(東北大・東北アジア研究センター)


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