火山についてのQ&A集

Question #2758
Q こんにちは。火山の分類についてお伺いします。日本の中学校では溶岩の粘性によって楯状、成層、釣鐘状火山の3つに分類していますが、外国ではFissure, Shield, Dome, Ash-Cinder, Composite, Calderaなどに分けて教えられているようです。これらもまた溶岩の粘性による分類なのでしょうか?分類の基準とその種類について教えてください。 (09/27/02)

ナオッグ:教師:27

A こんにちはナオッグさん.火山の分類ということですね.

昔はもっぱら火山の地形だけで分類していました.例えばシュナイダー(1911)のコニ ーデ,トロイデといった分類は今でもマスコミや観光地の説明などで残っています. しかし今は表面の地形だけでは,その火山の成り立ちを必ずしも反映していないこと がわかってきたので,シュナイダーの分類は学術用語としては使われません.現在で は内部構造により注目した,成層火山,盾状火山などの用語が使われます.

盾状火山は粘性の低い,あまり爆発的噴火をしないマグマが,主に溶岩となって重な り,傾斜が緩やかな山体を作った火山です.ハワイが盾状火山の典型で,英語では Shield Volcanoです.一方,成層火山は粘性がやや高く,爆発的噴火による熱いマグ マのしぶき(火砕物)の割合が多いため,溶岩と火砕物の互層からなる傾斜の大きな山 体を持つ火山です.英語ではStrato Volcanoです.成層火山はスコリア丘(Scoria Cone, Cinder Cone)や溶岩ドーム(Lava Dome)などを火山体全体として含むことが多 いので,外国ではComposit Volcano(複合火山)と呼ぶことがあります.富士山や三宅 島など日本の火山の大部分はこの成層火山です.

釣鐘状火山というのは火山学用語では使われません.おそらく溶岩ドームのことだと 思いますが,粘性の大きなマグマが爆発的な噴火をすることなく地表に噴出してでき ます.有珠山の昭和新山や雲仙の平成新山が典型例です.マグマが地下を移動すると きは板状になって移動すると考えられていますが,この板状のマグマが地表に達する と,割れ(Fissure)噴火を起こします.粘性の低いマグマの噴火に多く見られます. 1983年の三宅島噴火がその例です.

カルデラ(Caldera)は,噴火や崩壊でできた大きな火口状地形のことで,おおよそ直 径1.6-2km以上のものをいいます.大量のマグマが爆発的な噴火で一気に噴出してで きたもの(例:阿蘇カルデラ)や,噴出物は多くないが地下でどこかにマグマが移動し てしまってできたもの(例:2000年三宅島噴火のカルデラ)などがあります.

これらの火山の形の違いは,どんな噴火様式で,どんな噴出物を,どのくらいの噴出 率で噴火するかで決まってきます.その噴火様式を決める大きな要因としてマグマの 粘性がある,と理解されればいいかと思います.なお,Q&Aの#3010にもありますよう に,自然は完全に分類できるものではなく,中間的なもの,複合したもの,例外的な ものが少なからず存在します.学校の先生にはマグマの粘性だけで一意に火山の形が 決まるわけではないということも,頭の片隅にでも記憶にとどめておいていただける と幸いです.
 (10/29/02)

川邉禎久(産業技術総合研究所・地球科学情報部門)


Question #2732
Q 今、素人が地学を教えています。変成岩をしているのですが、大理石は広域変成岩としても分類している本と、接触変成岩のみとして紹介している本があります。どちらが本当でしょうか?。私としては熱変成なのだから広域にも存在するのが自然だと思いますが、残念ながら高校の参考書等は接触変成岩のみに絞ってあるほうが多勢のような気がします。ホルンフェルスについても同様なぜ接触変成岩のみに限っているのか不思議なのですが。教えてください。 (09/24/02)

一児の母:教員:39

A
 これは火山とはあまり関係のない質問ですが,地学を教えていらっしゃるというこ となので,地学教育の発展のためにお答えしましょう.大理石(マーブル)は地学で は結晶質石灰岩のことを言い,広域変成帯・接触変成帯どちらにも産します.例え ば,日本の代表的な広域変成帯の一つである飛騨変成帯は結晶質石灰岩に富むことが 特徴です.大理石は「結晶質」であればよく,鉱物(方解石)が並んでいてもいなく ても,縞模様があってもなくても構いません.因みに,マーブル模様と言えば墨流し 様の模様ですが,縞模様のない「おはじき」の石もマーブルと言いますよね(例えば マーブルチョコレート).なお,市場では結晶質でない(変成されていない)石灰岩 や,蛇紋石と混合した蛇灰岩など,装飾石材になる美しい石灰質の岩石は何でも大理 石として売られているようです.


 一方,ホルンフェルスは接触変成岩の代表です.広域変成岩は片理(鉱物の並び) が発達していて粒が細かい「片岩」や縞状構造が顕著で粒が大きい「片麻岩」が代表 ですが,接触変成岩は一般に各結晶が細粒でランダムな方向を向いていて,ハンマー で割ると片岩のように板状に割れず,角張った形に割れます.そのような変成岩を 「ホルンフェルス(角張った石の意味)」と言います.広域変成岩は造山運動による 強い圧縮力を受けながら鉱物が再結晶するので片状や縞状になり,多くの場合強く褶 曲していますが,接触変成岩はマグマの熱の影響だけで再結晶するので,鉱物は方向 性を持ちません.


 要するに,大理石は結晶質の石灰岩であることだけが要件なので,広域変成岩でも 接触変成岩でもいいのですが,ホルンフェルスは方向性のない組織であることが要件 なので,接触変成岩の代表ということになります.もちろんこれは「教科書的な一般 論」であり,広域変成帯でも圧縮力が弱い部分では「ホルンフェルス状」の岩石がで きることもあり,接触変成帯でも圧縮力が強い部分では顕著な片理をもつことがあり ます.しかし,例外をことさら強調して教えるのはよくないでしょう.実例を示しな がら,岩石ができるプロセスに踏み込んで教えていただければいいと思います.
 (09/24/02)

石渡 明(金沢大学・理学部・地球学教室)


Question #2730
Q ぼくたちは、奈良県吉野郡十津川村にある二村小学校の4年生です。総合学習で火山と温泉について調べています。温泉がわくところには、火山があるとかんがえています。しかし、十津川村には、火山がないようです。どうして温泉が多いのでしょうか。教えてください。  (09/24/02)

耶麻もと:小学生:10歳

A 二村小学校の皆さん,こんにちは. 十津川村のある紀伊半島にはたくさんの温泉がありますね.そしてほんとうに熱い温 泉が多いですね.十津川村の十津川温泉や湯泉地温泉は60℃ほどの温度で湧き出して います.近くの竜神温泉・湯ノ峯温泉(和歌山県)も含めて,これらの紀伊半島の熱 い温泉は地下水が地下にある”熱いもの”によって温められたあと,断層などの割れ 目に沿って地表まで上がってきたものと考えられています.

では,その”熱いもの”とは何でしょう?それは地下にあるマグマです.

紀伊半島では今から1400万年前に火山が活発に活動していました.その頃の紀伊半島 の地下では火山活動を起こすためにたくさんの熱いマグマがあったと考えられていま す.そのマグマが1400万年後の今も完全には冷え切らずに,地下水を温め続けている ようです.

もう少し詳しいことは奈良教育大学地学教室のホームページにある「大和の一億年 -奈良の自然誌-」(http://earth.nara-edu.ac.jp/nishida/y100ma.html)の「温泉」についての解説を一度読んでみて下さい.奈良や十津川村の温泉の話がありますよ.
 (09/25/02)

和田穣隆(奈良教育大学・地学教室)


Question #2692
Q
 火山ガス噴出に伴うSPM(特にPM2.5)の挙動について教えてください。当方、行政で健康問題に携わっています。火山ガスのなかで二酸化硫黄はぜん息患者の健康に影響しますが、PM2.5が関与するとより悪い結果になるといわれています。自分なりに探したつもりですが、火山のSPMに関する資料が手に入りません。ご助言をお願いします。 (09/18/02)

SHIROGISU:公務員:42

A
 三宅島や桜島など,大量の火山ガスを放出する火山では火口からたなびいた火山ガ スから白い霧が分離して降下する様子がみられることがあります.この霧は火山ガス のSO2と空気中の水分が結合してできた,硫酸の微小液滴(SPM,エアロゾル)だと考 えられてい ます.
 私はこれまで火山ガスの化学的な研究を行ってきましたが,火山ガスから発生する エアロゾルについては研究の経験がありませんでした.日本では火山性エアロゾルの 研究があまり行われていません.ここでは若干の文献調査を行い,ご質問にお答えし たいと思います.
 巨大火山噴火により成層圏でエアロゾルが発生し気候変動が起きることなどについ てはいろいろ文献があるようですが,SHIROGISUさんの質問を読むと,そのような全 地球的な現象ではなく,火山ガスが火口から放出された直後に発生するようなエアロ ゾルのことをお調べになっているようです.そのような研究に関する日本語の文献と して1)があります.この文献の著者の木下紀正氏は鹿児島大学の教授で,火山ガス の拡散現象に関してご研究をされています.文献1)に載っているデータを解析する と,火口から東方に4.6 km離れた山麓で,SO2濃度 X (ppb) とSPMの濃度 Y (microgram/m3) に以下のような正の相関が見出されました.
 Y = 0.3638 X + 39.12
 この関係はあくまでも桜島で得られたものであり,普遍性があると断言できません が,他の事例の目安にはなると思われます.ここでSPMは10ミクロン以下のものを観 測しています.
 海外の研究として文献2,3)を見つけました.この二つの文献はイタリアのエト ナ火山で,火口から出た直後の火山ガスを地上からリモートセンシングで観測した研 究です.これによると火山灰を含まない,白っぽい噴煙の場合,エアロゾルの平均半 径は約0.8ミクロンです.ただ,この平均値は,観測可能なエアロゾルの半径範囲, 0.35〜1.6ミクロンの範囲での平均値なので,これよりも大きな SPMが存在している 可能性はあります.また噴煙に時折火山灰が混ざり,色が黒っぽくなると1ミクロン よりも大きな分割が増加するとのことです.観測を行った期間で,観測に引っかかっ たエアロゾルの総放出量は,400〜700 (ton/day) と推定されました.前述したよう に,このエアロゾルは硫酸の液滴からなると推定されています.この観測期間のエト ナ火山からのSO2ガスの放出量が論文中で示されていないので,あいまいな比較にな りますが,別の論文から推定すると,同時期のSO2放出量は約5000 (ton/day) です. 火山起源の硫黄成分のかなりの部分がエアロゾルとして運ばれていることになりま す.お示しした論文は専門的な内容ですが,多くの参考文献が載っています.
 以上,はなはだ不十分な回答ですが,私はSHIROGISUさんの質問に回答を考える過 程で, 火山起源のエアロゾル(SPM)の研究が不十分な段階にあり,火山ガスの研究 者として真剣に取り組まなくてはならない課題だと認識しました.火山Q&Aの回答 者をやっていて良かったと思いました.

文献リスト
 1)木下,他(1999)桜島火山周辺におけるエアロゾルと火山ガスの高濃度事象の 解析,鹿児島大学教育学部研究紀要,自然科学編,50,p11〜
 2)Watson,I.M. and Oppenheimer,C. (2001) "Photometric observations of Mt.Etna's different aerosol plumes", Atmospheric Environment, vol.35, 3561-3572.
 3)Watson,I.M. and Oppenheimer,C. (2000) "Particle size distributions of Mount Etna's aerosol plume constrained by Sun photometry", Journal of Geophysical Research, vol.105(D8), 9823-9829.
 (09/30/02)

大場 武(東京工業大学・火山流体研究センター)


Question #2689
Q 偏光顕微鏡を使用して、岩石の同定等を命ぜられました。何がどういう風にすればよいのか全くわかりません。花崗岩、安山岩、玄武岩くらいの説明をしなければなりません。なにかひんとをください。取り留めのない質問ですみません。 (09/17/02)

くずきり丸:アルバイト:30

A
 あなたが偏光顕微鏡や岩石についてどの程度の知識と経験をお持ちなのかわからな いので,具体的な指導はできませんが,大学で一通り偏光顕微鏡の原理を理解し,使 い方を覚え,岩石学の基本を学習し,岩石鑑定の実習を受けて,一応普通の岩石を同 定できるようになるまでには最短でも1年間かかります.大学の地学関係の先生と相 談し,「科目等履修生」として勉強させてもらうのが最も早道だと思います.岩石は 動物や植物と違い,それぞれの種類が固有の色や形を持つわけではないので,図鑑と 見比べただけでは同定困難な場合がほとんどです.従って独学での鑑定はどうしても 間違いが多くなりますが,それでもやってみようという場合は,次の書籍のうちのど れかを購入し,よく読みながら勉強して下さい.いずれにしても,偏光顕微鏡で見る 岩石の世界は非常に美しくて奥が深く,単に「鑑定技術を身につける」以上の経験が できると思いますよ.


 「かわらの小石の図鑑. 日本列島の生い立ちを考える」千葉とき子・斉藤靖二東海 大学出版会,\2,500+税.
 「岩石学I. 偏光顕微鏡と造岩鉱物」,「岩石学II. 岩石の性質と分類」都城秋穂 ・久城育夫,共立全書.\2,300+税, \1,900+税.
 「偏光顕微鏡と岩石鉱物. 第2版」黒田吉益・諏訪兼位,共立出版,\5,300+税.
 「岩石学概論上. 記載岩石学.岩石学のための情報収集マニュアルCD-ROM付」周藤 賢治・小山内康人\3,700+税(最近「下」も出た).
 「日本の岩石と鉱物」地質調査所編,東海大学出版会,\8,000+税(フルカラーの 美しい岩石・鉱物図鑑).
 「日本の火成岩」久城育夫・荒牧重雄・青木謙一郎,岩波書店,\4,400+税,
 「日本の変成岩」橋本三男,岩波書店,\4,000+税,
 「日本の堆積岩」水谷伸治郎・斎藤靖二・勘米良亀齢,岩波書店,\4,500+税.
 「新版顕微鏡観察シリーズ4. 岩石・化石の顕微鏡観察」井上勤監修,地人書館, \3,000+税.
 「偏光顕微鏡鉱物鑑定表・干渉色図表下敷き」石渡明・加藤丈典,日本地質学会, \300(実際の偏光顕微鏡鑑定に便利).
 (09/19/02)

石渡 明(金沢大学・理学部・地球学教室)


Question #2670
Q 宮城、秋田県についての火山について質問です。大学時代仙台に住んでいた関係もあり、当時宮城県内の火山についての文献を色々と読み漁っておりました。そこで先日の質問で気づいた事、及び今まで分かり得なかった事なのですが、「花山カルデラ」「安達火山」についてどのような形態であったものなのか、ご教授いただければ幸いです。また秋田県についても、あまり知られていないカルデラ、火山等ありましたら、ご教授願います。 (09/14/02)

木村 昭彦:会社員:30

A まず安達火山からお答えします。宮城県川崎町釜房湖北方の丘陵地に安達という集落 があり、その集落の周辺が凹地になっています。この凹地が安達火山です。現在は開 析が進んでおり、火口地形はあまり明瞭ではありません。7〜8万年前に一度だけ噴 火した単成火山であると考えられています。この時に噴出した軽石は、仙台市付近に も1m程度の厚さで堆積しています。

次に花山カルデラについてお答えします。通常、「カルデラ」という言葉は火山性の 大きな凹陥地を差し、地形的な意味が含まれています。そのような凹地形は、時間が 経つとやがて浸食作用などで次第に元の地形が失われてしまいます。しかし、地形が 失われてしまった場合でも、その地域の地質を詳しく調べることによって、大昔は火 山性の凹地があったことが分かります。そのように地形が完全に失われてしまった大 変古いカルデラについても、地質学者は「カルデラ」の名称をもちいることがありま す。花山カルデラも地質調査によって初めて存在を確認できる古いカルデラの一つで す。ただし、大部分が鬼首火山からの火砕流堆積物に覆われているため、地質調査を しても詳しい形態は分かりません。

秋田県で良く知られているカルデラ火山は青森県との県境にある十和田火山です。そ の他、開析が進んでいますが、鹿角市と田沢湖町境の玉川カルデラ、宮城−秋田県境 付近の三途川カルデラなどもカルデラ火山です。どんな火山があるのか調べたいので あれば、第四紀(約160万年前以降)の火山については、日本火山学会発行の「日本の 第四紀火山カタログ」 (第四紀火山カタログ委員会)CD-ROM版に掲載されています のでそちらをご覧ください。また、花山カルデラのように古い火山は、あちこちに数 多くあることは確かなのですが、未だよく分かっていないものが多いです。現在研究 が進行中です。例えば秋田県雄勝町の院内盆地は、古いカルデラ(院内カルデラ)と 考えられています。
 (09/21/02)

大場 司(東北大学・理学部・地球物質科学教室) --


Question #2660
Q 高校生です。宿題で天人峡の柱状節理を調べているのですが、柱状節理の間隔または柱状節理そのものによって柱状節理もとになった火砕流が堆積されたおおよその年代・年がわかるのでしょうか。もしわかるのなら、その年代・年の具体的なもとめかたを教えてください。よろしく御願いします。 (09/12/02)

ソラ:高校生:16

A 天人峡の火砕流堆積物を作った大雪山の火山活動についてはhttp://www.asa.hokkyodai.ac.jp/research/staff/wada/TAIS/taisetu-text.htmlで紹介されています。

柱状節理は溶岩や溶結した火砕流堆積物(溶結凝灰岩)などが冷え固まる時に体積収 縮することによって生じるものです。冷却の速度、冷却の向き、柱となる元の材質な どによって柱状節理の間隔や性質(できる方向や内部構造)が大きく異なります。柱 ができた後の年代(時間)には関係がありません。
 (09/14/02)

中田節也(東京大学・地震研究所・火山センター)


Question #2651
Q 火山による災害をリサーチしております。
損害保険料率算定会編の「火山災害の研究」をひもといておりますと、ストロンボリ式・ブルカノ式・プリニー式の各噴火形式の活動の特徴として、”中心噴火”という記述がされていました。いろいろ調べてみましたが、”中心噴火”という表現がされているものがほかにありません。これは山頂噴火のことと考えてよろしいのでしょうか?

(09/12/02)

青木:会社員:35

A 平凡社の地学事典によると、「火山体の中央にある火口から起こる噴火、または割れ 目噴火に対し、噴火口が点に近い限られた面積であるような噴火」を中心噴火として います。
 (09/14/02)

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Question #2650
Q 海底地形図を見て思ったのですが、南鳥島は、もともと、火山島なのですか?
天皇海山列とも離れていますが、どこかハワイとは別のホットスポットがあって、
そこで生じたものなのでしょうか。
それとも東太平洋海嶺で、マグマが湧きだした際に(もっとも海嶺で島が出来るのか分かりませんが)生じた島が元なのでしょうか。
もしお分かりでしたら、教えていただきたく思います。宜しくお願いします。 (09/12/02)

とも:会社員:29

A 南鳥島は古いホットスポット起源の火山島です。ただし現在海上に出ている部分は沈 降した火山島の上にできた珊瑚礁です。この島はマーカス-ウェーク海山列に属する とされ、ハワイー天皇海山列のようなホットスポット起源の火山列を構成していると 考えられます。ただしこの火山列を構成するすべての海山が同一のホットスポットに 由来するものかどうか明らかではありません。南鳥島を形作る火山島ができた時期に ついて 詳しいことはわかっていませんが、同じ海山列の南東部(ウェーク島に近い 部分)の海山から採取された溶岩は、8600-9300万年前の白亜紀に噴出したことが知 られています。
 (09/30/02)

石塚 治(産業技術総合研究所・地球科学情報研究部門) --


Question #2644
Q こんにちは、
2001年6月に箱根山において山体膨張を伴う地震がありましたが、その後の箱根山の活動はどうなっているのでしょうか?いざ本格的な噴火が起きたときには首都圏に与える影響は富士山より大きいと思われ、かなり心配しています。
また山体の膨張には、やはりマグマ活動が直接関係しているのでしょうか?それとも直接マグマが関与せずとも山体が膨張することがあるのでしょうか?

PS、安田 敦先生、ホットスポットに関する質問に丁寧なお答えを頂き、ありがとうございます。地球のダイナミックな活動に非常に驚くとともに深く感動しています。 (09/12/02)

しろしろ:フリーター:24歳

A 箱根火山は2001年の6月はじめごろから地震が目立ちはじめ,多数の有感地震を伴う 規模の大きな群発地震となりましたが,地震回数は7月はじめを頂点 に指数関数的に 減少して,年内にはほぼ普通のレベルに戻りました.その後も群発地震は発生してい るのですが,それらの規模は大きくありません.箱根火山 はもともと群発地震がし ばしば観測されるところなので,現時点では異常があるとは考えていません.

2001年6月の群発地震は箱根カルデラの中で地震の連続観測が始まった1960年以降で はもっとも規模の大きい群発地震でした.ただ,1960年より 前には 1917,20,43,44,52,59-60年に大量の有感地震を伴う群発地震の記録があり,有感地震 の回数や感じた範囲を比べると,2001 年の群発地震の規模はこれらに比べて相当小 さいと考えられています.

さて,今回の群発地震がマグマの活動に関係するかどうかですが,これに関しては現 在も検討中で結論はまだ出ていません.地殻変動は,水などマグマ以外の 流体が移 動することによっても起こりうると思います.たとえば,長野県の松代市では1965年 から67年にかけて,大規模な群発地震と地殻変動を観測し ましたが,マグマではな く水が大量に「噴出」してその後急速に沈静化しました.松代群発地震の発生域は昔 火山だった所なのですが,群発地震と地殻変動の 犯人は「水」だったと考えられま す.箱根は大涌谷の噴気でもわかるとおり熱水の循環系が発達していると考えらま す.ですから,火山の地殻変動だからと いってマグマ活動に結びつけて考えるわけ には行かないと思うのです.

また,箱根火山は北伊豆断層系(有名な丹那断層はその一部)という伊豆半島から南 北に延びる断層によって真ん中を切られていると考えられています.個人 的には, 箱根火山の地震や地殻変動は,マグマや熱水の活動としてだけでなく,断層活動とし ての側面を持っていると考えています.

なお,箱根火山の噴火活動は最近3-4万年間の噴火を見る限り,溶岩ドームの成長と その崩壊による火砕流の発生といった雲仙火普賢岳噴火(1990- 95)と似たようなパ ターンの活動が主流です.従って,東京や横浜などに火山灰が降るなどの直接的な被 害が及ぶ可能性は非常に低いと考えています.
 (09/16/02)

萬年一剛(神奈川県温泉地学研究所) --


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