火山についてのQ&A集

Question #70
Q 鹿児島市内に新設されるビルの壁面をどのようなものにするか検討しています。 鹿児島市内は桜島の噴煙等で屋根、壁が非常に汚れ易いと聞いています。 その汚れの対策を打ちたいのですが噴煙の成分とは どのような物なのでしょうか? (どのような汚染物質を想定して対策を打てばよいか) 是非ご教示お願いします。 (4/9/98)

URANO:建築関係:37

A
 噴煙は火山から放出された火山灰などの細粒物質と火山ガスや水滴から成っ ています。火山ガスには水蒸気のほか、二酸化炭素ガス、亜硫酸ガス、塩化水 素ガス等が含まれています。
 屋根や壁が非常に汚れやすい原因としては、細かい火山灰が屋根や壁に付着 することが第一に考えられます。また、火山灰には微少な水滴や火山ガスの成 分などが付着しています。雨などで火山灰が湿ると、火山灰に付着している亜 硫酸ガスや塩化水素ガスなどが溶けて、火山灰に含まれる水が強い酸性を示す ことが考えられます。これは、ちょうど酸性の溶液が屋根や壁についてしまっ ているのと同じ状態になります。
 屋根や壁に対して、酸性の溶液がどのような影響を及ぼすかは、私にはわか りませんが、酸に対してなんだかの検討をすることが必要なのではないかと思 います。 (4/15/98)

森 俊哉(東大・理・地殻化学実験施設)


Question #69
Q 友達とマグマ溜りについて話していて疑問に思ったのですが、 マグマ溜りは地下水(帯水層)の様に固体の空隙に液体が入っている のか、液体がある程度の空間をしめているのかどちらでしょうか。 もし、岩の隙にはいっているのなら溶岩のなかにその岩があるとおもいます 。友達は減圧で溶けたのかもしれないと言ってました。 また、マグマがある程度の空間をしめているのなら、物理探査などで見つけ れるのではないかと思います。 そこで質問ですが、今のマグマ溜りのイメージはどういうものなんですか? それに関連してマグマ溜りのできる辺りの状態(圧力、温度、物性、空隙 )などはどのようなものと考えられていますか?

(3/24/98)

senda yoshimichi:学生:21

A
 質問を拝見しました。ご質問は、


 1.マグマ溜まりに対して、現在もたれているイメージ(内部構造)は?
 2.マグマ溜まりのできる深さでの物理的環境は?
 3.マグマ溜まりが物理探査で検出できるか?


 この問題は現在の火山学ではとても重要な問題であると思います。


 質問を受けて私もあらためて調べてみましたが、「マグマ溜まり」とはいっ たいどのような概念でしょうか。なんとなく頭の中では、火山の下に高温の流 体が蓄積された場所、というイメージがあるのではないでしょうか。
 この「マグマ溜まり」の概念をもっともドラマチックに表現しているのが、 カルデラの成因を説明する諸説です(大容量のマグマを溜める領域を想定する ことによって、短期間に大量の噴出物を出し陥没することが説明できる)。ま た、富士火山のような複成火山では噴火が繰り返し発生することや、その過程 で鉱物組成が変化するということもマグマ溜まりの存在を示す地質学的な証拠 として取り扱われています。さらに、活火山周辺の地震観測から地震波の振幅 異常や特徴的なスペクトルのピークを持つ火山性微動が見つかったり、水準測 量をはじめとする地盤変動観測から変動圧力源が推定されるなど、地球物理学 的な観測データからも火山活動に関連した、ある程度の広がりを持つマグマ溜 まりの存在が示唆されています。しかし、マグマ溜まりの地質学的な点からの 存在の要請と、地球物理学的な点からの要請は、質的には異なるものであるこ とにご注意ください。その存在は複数が推定されることが多く、地表から1キ ロの深さとか、地表から10キロの深さという話が頻繁になされます。このよ うに特定の深さにマグマの溜まり(あるいは圧力源)が推定されるのは、マグ マとその周囲の密度が等しくなって、浮力がゼロになるからだ、という説明が なされることがよくあります。だいたい、地下10キロ付近では静水圧 0.25GPa程度、マグマ溜まりの温度は800〜1000度ということで話を進めること が多いようです。空隙率については、手元に資料がないのでご了承ください。
 マグマ溜まりの内部構造に関する研究としては、噴出物や古代の火成岩体か らその手がかりを得る方法と、地震観測などの地球物理学的なデータから手が かりを得る方法があります。噴出物の岩石学的な検討(斑晶鉱物組成の変遷の 追跡)では、マグマ溜まり内部ではマグマ混合が起こり得る可能性が示されて います。つまり、これは「いわゆるマグマ溜まり」の中では、マグマが流体と して流動し得る条件があることを示唆しています。しかし、これだけではマグ マがじゃぶじゃぶにたまっているのか、それとも岩石の隙間にしみこんでいる のかについて結論は出せません。速さは違えども流動が可能であるという点で は区別ができません。古代の火成岩体の研究からでは、冷え固まる過程の最終 的なマグマ溜まりの内部構造や温度・圧力の履歴はわかっても、現在活動中の 活火山の「マグマ溜まり」の内部構造はわかりません。
 一方、最近では地球物理学的な観測データからマグマ溜まりの形態を検出し た例も出てきました。日本では1990年代になって伊豆大島の地震観測デー タ(そのなかでも後続波)から深さ10キロ付近に扁平で地震波の散乱強度が 大きい領域があることがわかってきていますし、ハワイでは1970年代にす でに地盤変動のデータから水平方向に薄く広がるシート状のマグマ溜まりの存 在が推定されています。
 これでマグマ溜まりのことがわかった!と言いたいところですが、これらの 結果の取り扱いには注意が必要です。伊豆大島の例では火山の地下に存在する 地震波速度の異常な場所で発生する地震波の散乱効果を用いていますが、この 散乱効果の大きさはその散乱体の密度と地震波速度が周囲と比べてどれだけの 差があるのかということと、解析の対象とする地震波の波長に大きく依存しま す。伊豆大島で使った地震の主な周波数成分はおそらく数ヘルツ〜十数ヘルツ でしょうから、地震波速度を2キロ毎秒ぐらいとすると、波長は数キロから数 百メートル程度です。つまりこの例では目安として波長の1割以下のスケール (数百メートルから数十メートル)のものはあまりよく見えない(散乱波とし て検出しにくい)のです。そのために伊豆大島の結果もぼんやりとしか散乱体 がみえません。話に出ていたマグマの存在形態を議論して決定的な証拠を押さ えるためには、波長を選んで現在よりも少なくとも3桁以上分解能をあげる必 要があります。また、地震波速度と密度の周囲との差についてもマグマが液体 そのものとして存在するのか、それとも岩石にしみこんでいるかという存在形 態の差が直ちに反映されるものではありません。間違いなくわかるのはただ、 地震波速度または密度の異常が地震波の波長に対して無視できない大きさで存 在することだけです。
 また、ハワイの例では地殻変動のデータからの推定ですので、扁平なマグマ 溜まりの広がりや厚さについてはあまりはっきり特定できているとは思えませ ん。少なくとも深さは特定できているとは思います。間違いなくいえることと しては、時間を追っていろいろな場所に地盤変動の圧力源が移動するというこ とだけなのです。地球物理的な観測データからも、マグマがじゃぶじゃぶにあ る程度の空間を確保してたまっているのか、岩石にしみこんでいるのかという 問題を解決する決定的な証拠にするためには分解能がたりません。
 マグマ溜まりがある程度の大きさで、周囲に比べて明らかに地震波速度など の物性の差があれば、一応、物理探査ではそれとおぼしきものが見つかるはず です。むしろこれからの問題として、マグマ溜まりの内部構造を探る有効な手 法は探されなければならないのではないかと思います。質問を機会として、こ のような問題に取り組んで話を進めてくれるといいのですが・・・・。 (3/24/98)

筒井智樹(京大・理・地球熱学研究施設)


Question #68
Q もう既に、質問されたことがあるのかもしれませんが。 桜島の噴火時にいつも不思議でなりません。一般的には、 地下のマグマ溜まりからエネルギー(溶岩?)がこみあげて、 噴火すると理解しています。しかし、例えば溶岩がこみ上げてくるのであれば、 噴火したときに必ず火口低に溶岩がくるとおもうのですが、大体は 噴煙を黙々と上げるだけです。 質問は、マグマ溜まりでのマグマから、どのような物理過程を経て、 噴煙のみの形へ変化するのでしょうか。「マグマ溜まりには、噴煙の 元となるガスだけが貯まっているのですよ」という話しなら理解できるのですが そうではなさそうですし。 よろしくお願い致します。

(3/18/98)

幸田 晃:鹿高専助教授:43

A
 ご質問ありがとうございます.鹿児島にお住まいの方は,実際に噴火をご覧 になりながら地下の現象に思いを巡らすことができるのですね.ときどき羨ま しくなります.
 さて,マグマ溜まりのマグマが噴煙に変化する過程を,簡単に説明してみま す.まず知っておきたいのは,マグマは単なる液体ではなく,その中にガスを 含んでいるということです.ビールやコーラを思い浮かべてください.ビール は炭酸を含んでいますから,急に圧力を低下させると(たとえば急に栓を抜く ととか)発砲して中身がビンの口から溢れ出てきますよね.噴火はそれに似て います.
 ガスを含んだマグマが地下から上昇してくると,発泡(はっぽう)という現 象が起こります.この発砲は,主にマグマが上昇してくる過程で圧力が低下す ることで起きるのです.発砲したマグマがさらに上昇すると,岩片(火砕物と いう)とガスの混合気体ができます.この気体はさらに速度を増して火口から 噴出し,噴火となります.噴煙柱は,噴出した高温の混合気体が周囲の空気を 取り込みながら上昇することによって形成されるのです.
 マグマはこのようなプロセスで噴煙となります.ですが,このプロセスはと ても複雑で,簡単なモデルでは実際の現象はなかなか説明できません.一口に 噴火と言っても,火山灰や軽石を噴出する噴火,爆発的な噴火,溶岩流を出す 噴火など様々です.その理由は,マグマの組成,温度,マグマの中にもともと あるガスの量,マグマ溜まりの深さ,マグマが上がってくる火道の大きさ,そ の上昇速度など,噴火様式を決める要素はたくさんあり,それらが火山ごと に,また噴火ごとに異なるからだと考えられています.
 ご質問に帰ると,例えば,ガスをあまり含まないマグマがゆっくりと上昇 し,粉砕されずに火口から出てくれば,それは溶岩流になります.噴煙柱をつ くる噴火との違いは,なんとなくイメージできるでしょうか? (3/19/98)

西村裕一(北大・理・有珠火山観測所)


Question #67
Q 地理では、"富士火山帯"とか"白山火山帯"のように、"火山帯"と呼ばれるものがあると習いましたが、日本にある7つの火山帯はどのような基準のもとでこのように分類されたのでしょうか。また、それぞれの火山帯の火山活動には、どのような特徴があるのでしょうか。

(3/13/98)

山屋さん:学生:21

A
 火山帯というのは,まず地表での火山の並びに基づいて定義されたもので, ちょうど空の星をその天空上の位置から星座に区切ったのと同じような,地理 的な記載の便宜上が始まりです.
 とはいえそれぞれの火山帯には,噴出するマグマに特徴が見られることがあ ります.特によく特徴がわかるのが,東北地方の那須火山帯と鳥海火山帯で す.那須火山帯の火山は,主に輝石という鉱物を含む安山岩を噴出しているの に,その日本海側にある鳥海火山帯はしばしば角閃石という鉱物を含む安山岩 が噴出します.また化学組成も鳥海火山帯のほうがナトリウムやカリウムなど のアルカリ成分が多いという特徴があります.また乗鞍火山帯では角閃石安山 岩がよく見られます.
 ところが必ずしも各火山帯が共通の特徴を持っているわけではないのもまた 事実なのです.例えば富士火山帯では北部に輝石安山岩,角閃石安山岩,南部 に輝石玄武岩,安山岩が噴出するほか,一部にはアルカリがかなり多いマグマ も活動しますし,大山火山帯や霧島火山帯も様々なマグマが噴出しています.


 このようにそれぞれの火山帯は,共通する特徴を持つこともありますが,必 ずそうかと言われると,そうでもありません.元が地理的な区分ですから仕方 がないのですが,それでも意外と重要な情報をもたらしてくれることあるので す.以下に簡単に紹介します.


 よく地図を見ると日本周辺の海溝に平行して火山帯が並んでいることに気付 かれると思います.いろいろなマグマが活動している富士火山帯でも,海溝側 の火山ではアルカリが少なく,海溝から遠い火山ほどアルカリが多いという, 那須・鳥海両火山帯で見られたのと同じ傾向が見られます.この傾向は千島火 山帯などでも同様なほか,世界的にも海洋プレートが沈みこむところの火山帯 で共通して見られます.このような海溝側から遠ざかる方向へのマグマの性質 の変化は沈みこみによる深発地震面の深さとよい関係があり,このことから沈 みこみが起きる場所の火山は,沈みこむ海洋プレートと関係するのではないか と考えられています.
 そこで海洋プレートの沈みこみと平行な複数の火山帯を同じ火山帯として呼 ぶ考えがあり,千島・那須・鳥海・乗鞍・富士各火山帯は太平洋プレートが関 係する東日本火山帯,大山・霧島火山帯はフィリピン海プレートが関係する西 日本火山帯と呼ぶことがあります. (3/17/98)

川辺禎久(工業技術院・地質調査所)


Question #66
Q 富士山の生成した歴史や構造を調べたいと思います。何か参考となる書籍がありますか? (3/8/98)

しげ:会社員:34

A Question#64の回答でも取り上げましたが,
 つじよしのぶ著「富士山の噴火―万葉集から現代まで」築地書館が格好の入 門書だと思います.肩の凝らない読み物です.ただし,この本は歴史時代のみ を扱っていますから,それ以前の歴史や構造のことが知りたければ,
 町田 洋著「火山灰は語る」蒼樹書房
 諏訪 彰編「富士山―その自然のすべて」同文書院あたりがよいと思いま す.ただし,火山学はいま伸び盛りの学問ですから,これらの本の内容は今後 の研究の進展によって大幅に塗り替えられていく性質のものであることに注意 してください.(3/9/98)

小山真人(静岡大学教育学部)


Question #64
Q
 先日火山地帯を貫くトンネルとして安房トンネルが開通しました。そこで、馬鹿な質問ですが、富士山のど真ん中を貫くトンネルを掘るとすると、どのような事態が生じ、どのような工事になると想像されますか?お教え下さい。 (1/8/98)

火山学者になりたかったなー:公務員:41

A
 「ど真ん中」というと山頂火口の真下かしら.あまり,ぞっとしませんね.
 現在の富士山に顕著な地熱地帯の存在は知られていませんが,かつて山頂火 口には荒巻と呼ばれる地熱地帯があり,卵をゆでて売っていたそうです.その 場所の噴気の温度が1928年に80度,1954年に50度の測定記録もあります.この 地熱地帯は,1963年にもわずかに熱気があったそうですが,現在は無くなりま した.ただし,それは地表での話であり,トンネルを貫く場所の地下はまだ熱 い状態でしょう.仮に山頂火口の下を横断するトンネルを掘るとなれば,間違 いなく高温の地熱地帯を貫くことになり,つねに熱水・高温蒸気の噴き出しや 水蒸気爆発の危険と隣り合せる難工事になることは間違いありません.
 富士山の山頂の地熱地帯の変遷や噴火の歴史にくわしい以下の本の一読をお 勧めします.
 つじよしのぶ著「富士山の噴火―万葉集から現代まで」築地書館 (1/10/97)

小山真人(静岡大学・教育学部)


Question #63
Q 大陸地殻を形成している岩石が花崗岩と言う事を授業で習いました。また、花崗岩は玄武岩質マグマの結晶分化作用で作られる事も習いました。しかし、この2つの事と同時に、大陸地殻に存在する大量の花崗岩全てが玄武岩マグマの結晶分化作用で作られたのではないと言う事も習いました。それでは、一体どのようなプロセスを経て、大陸地殻を形成している花崗岩は作られたのでしょうか?授業では、明確な説明がなされなかったのでよろしくお願いします。ただ、花崗岩化作用なる物が存在すると言う事だけ先生から聞き出せました。 (12/21/97)

地学選択の勇気ある高校生:高校生:17

A
 学校では大陸地殻は上部を占める花崗岩層と下部を占める玄武岩層からでき ていると習いますが,大陸地殻がどのようにして形成されたかは,まだはっき りとは解明されていません.また,花崗岩層の平均組成は「花崗岩」というよ りは安山岩(あるいは閃緑岩)に近いものです.
 大陸地殻の大半を占める安定地塊は始生代などの古い時代に形成されたもの です.始生代の地球の温度構造は現在とは大きく異なっており,地下増温率も 現在よりは高かったと考えられています.そこでは海洋プレートの沈み込むに よって,直接,安山岩質のマグマができる可能性や,沈み込む海洋プレート (玄武岩)自身が融解して,安山岩やデイサイト(安山岩と流紋岩の中間的な もの)マグマができる可能性などが指摘されています.
 花崗岩化作用は,大陸地殻が侵食されてたまった堆積岩などが,融解しない で直接花崗岩になるというモデルです.大陸地殻形成にはマグマが関与してい るはずですから,花崗岩化作用は地殻形成には直接は関係がないでしょう. (12/21/97)

中田節也(東大・火山センター)


Question #61
Q 火山は、なぜ出来たのですか?また、火山の利用法などはないのですか (12/18/97)

karen/s:中学生:15

A
 普通の岩石は1200℃くらいの温度まで熱すると、どろどろに溶けてしまいま す。このようにして溶けた岩石をマグマと言います。地球は内部に多量の熱を たくわえていて、例えば日本で深い穴を掘ると、その穴の中では、深さ1kmご とに約30℃ずつ温度が高くなります。つまり、単純に計算すると、地下40kmで 温度が1200℃になり、そこでは、普通の岩石は溶けていることになります。実 際には、深くなるほど圧力も高くなるので、岩石は溶けにくくなるし、地下 40kmはもうマントルの中で、そこはカンラン岩という溶けにくい岩石でできて いるので、どこでも溶けているわけではありませんが、地球のマントルはプレ ート運動とともにゆっくり動いていて、マントルのカンラン岩が上昇している ような場所では、特に溶けやすくなります。溶けてできたマグマは集まって上 昇し、それが地表に噴出する場所が「火山」です。
 火山では、マグマが地下から多量の熱を運んで来るので、その熱を利用して 地熱発電が行なわれています。この熱は温泉の水を温める役もしていて、入浴 はもちろん、農作物の温室栽培などにも利用されています。富士山のような大 きな火山体は、大気に上昇気流を生じてしばしば雨を降らせ、穴だらけの溶岩 の中に多量の水をたくわえて、貴重な水源の役もしています。地下のマグマの そばでは、岩石から熱水へいろいろな元素が溶け込み、熱水の温度が下がると それらが沈澱して、銅・亜鉛などの金属鉱床を作るので、我々にとって貴重な 資源を作り出してくれる役もしています。 (12/18/97)

石渡 明(金沢大学・理学部)


Question #59
Q おはようございます。私は、鹿児島県旅館組合青年部 橋本龍次郎と申します。突然で、申し訳ないんですが、私の夢を聞いて下さい。鹿児島の地域特性、シンボルでもある桜島ですが、地元では3s(桜島、焼酎、西郷さん)といわれ、あまり活かされていない現状です。そのため、まず、身近にあるものに、もう一度、目を向けてみようという事で『桜島に桜の花を咲かせ、本物の桜の島にして、夜桜のライトアップを、桜島自身の火山エネルギーで可能にし、そこに、市民を集め、夜桜を見、相集い、そして、桜島から見る鹿児島の夜景を見て、喜んでもらい『我が鹿児島のまちを誇りにおもう運動』を考察したいと、願っているのです。 そこで、質問ですが、 1,現在の桜島の、火山エネルギー(地熱、温泉、マグマ...?)で、それをライトアップのエネルギーに変換することが、可能だとおもいますか? 2,桜島に桜の木を植えたら、育つのですか?また、火山灰に桜の苗木はダメージをうけるのでしょうか? 3,桜島に京都大学研究所があるのですが、どなたか、ご進言、アドバイスを頂ける方を、ご紹介していただけないでしょうか? 4,もし、仮に火山エネルギーでライトアップが、可能ならば、その協力団体は、どのような団体になることが、予想されますか? 5,この私の考えに、懸念、ご進言、アドバイスをお願いいたします。

もし、この夢が、かなえば、これから時代を生きる私達の子供たちに、夜に灯る桜島が、桜島自身のエネルギーで灯る(桜島が、私達同様、生きている存在)というメッセージを伝えることが、出来るのではないかと、おもうのです。

大げさですが、たとえ、世界が滅亡しても、桜島だけは、自分のエネルギーで、闇夜のなか、灯っている姿を、想像するだけで、心がふるえます。 ちょっと、最後は、感情オーバーになりましたが、よろしくご進言の程、お願い申し上げます。

尚1998年、11月、『活火山サミット』楽しみにしております。 おじゃったもんせ!!かごっまへ!!

(12/12/97)

橋本 龍次郎:サービス業:33

A
 夢のある壮大な計画ですね.
 マグマの熱を利用した地熱発電は日本でも何ヶ所か実用化されています.鹿 児島県内でも牧園・栗野町の大霧地熱発電所(出力3万kW)と山川町の山川地熱 発電所(3万kW),それと小規模ながら霧島国際ホテル地熱発電所(100kW)の3つ が稼動しています.
 いずれも地下のマグマの熱で温められた熱水を利用した発電施設です.出力 としては十分でしょう.
 熱を直接電力に変換する方法もないわけではありませんが,火山での応用に はまだ解決しなければならない技術的な問題が多いようです.
 桜島は活火山ですし,温泉もありますから,潜在的な能力はあるかもしれま せん.ただし実用化するには,熱水が利用できる場所に十分な量溜まっている 必要があり,そのような場所を見つけて,開発するのには結構な額のお金がか かるのが現状です.またいくら自然のエネルギーとはいえ,それを電力に変換 する機械や施設の維持・管理が必要ですから,そのコストも考えなければなら ないでしょう.
 桜の火山灰や火山ガスに対する耐性はよくわかりません.ただ桜島・南岳火 口から常時噴出している亜硫酸ガスを主体とする火山ガスの植物へのダメージ はかなり大きいと思われます.南岳ではなくて北岳山麓などを選べば火山ガス の影響はある程度避けられるかもしれません.
 いずれにせよ実現するには,予算などかなり大きな話になると思います.ち ょっと直接ご紹介はできかねますが,鹿児島県庁のしかるべき部署などにご相 談されるなどしてみてはいかがでしょうか. (12/29/97)

川辺禎久(工業技術院・地質調査所)


Question #58
Q 今年の8月に和歌山県の湯の峰温泉に行ってきましたが、100度近いお湯が湧き出る「湯筒」というのがありました。このあたりには火山が全くないのにどうしてこんな熱い温泉が湧きだしているのでしょう。地質図を見るとこのあたりに火山岩が存在しているようですが、古い火山があるのでしょうか。近くの名勝の橋杭岩は火山岩が地表に出てきて冷えたものだと聞いた記憶があります。 (12/5/97)

中学生の時は火山学者を夢見てたおじさん。:公務員:41

A
 さすがに火山学者を夢見たロマンチストのおじさんでいらっしゃるだけあっ て,重要なポイントに興味をもたれましたね.和歌山県の温泉,特に龍神・湯 の峰・川湯などの温泉は温度の高いものです.これらの温泉の分布地域には何 千万年前の海底にたまった砂岩や泥岩が広く分布しているのですが,龍神・湯 の峰・川湯などの温泉のある一帯ではその岩石が白く変質しています.この変 質帯は果無山脈から大塔山の南まで南北に延びて帯をなしていて八丁涸漉(は っちょうこしか)変質帯と呼ばれています.この変質作用は熱をもった水によ るもので,しかもこの変質帯の中,およびその南延長上には石英斑岩という火 成岩の岩脈がだいたい南北にならんで分布しています.橋杭岩もその一つで す.これらの火成岩ができたのは千数百万年前ですので,この変質帯ができた のもそのころだと考えられています.
 で,湯の峰などの温泉の熱源なのですが,諸説ありまして,ひとつはこの千 数百万年前の火成岩の熱がまだ地下には残っているのだというものです.しか しこんなに長期間マグマの余熱が残っているということには懐疑的な学者もい て,昔マグマが上がってきた通り道であったこの地域は,今でも地下からの熱 を帯びた水や,地表から浸透した地下水の通り道になっているのであって,地 下深くからの熱がこれらの水にバトンタッチされながら運ばれてきているのだ という漠然とした考えもあります.
 疑問はつきませんが,湯の峰に限らずまわりには見かけ上火山がないのに高 温の温泉が出ているところは有馬温泉などほかにもあります.これらの成因を 探ることは重要な問題だと思います.火山学をさらに夢見てください. (12/30/97)

三宅康幸(信州大学・理学部)


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